都市計画論文集
Print ISSN : 1348-284X
第42回学術研究論文発表会
選択された号の論文の161件中51~100を表示しています
  • 姫野 貴司, 中瀬 聡, 村橋 正武
    セッションID: 51
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    今日の都市開発事業は、公民連携を基本として、民間事業者主導により事業推進が図られている。 しかし、利益追求を優先する民間事業者の本質と昨今の規制緩和の流れに対し、景観問題・地区全体の一体性の欠如等による社会性の欠如という問題を生じさせている。また、人々の都市に対する要求が多様化・高次化する中で高いアメニティ性や社会性が求められている。 このような流れの中に、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の概念が有効であることが各所で述べられているが、都市開発事業におけるCSRに関し具体的に論じられたことはない。 そこで、都市開発事業におけるCSRとは如何なるものなのかを論じ、現状で見られる都市開発事業におけるCSRへの民間事業者の行動と公共セクターの関わり方を整理する。その上で、都市開発事業におけるCSRの課題を抽出し、都市開発事業におけるCSRの取組みを行うにあたっての民間事業者の行動と公共セクターの関わり方の今後の方向性を提示する。
  • 大沢 昌玄, 岸井 隆幸
    セッションID: 52
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    近年、土地区画整理事業が保有する換地手法と任意の土地先買いを最大限に活用した市街地整備が多く見られるようになった。この方策がどの時点から用いられるようになっていたのか過去を遡り調査した結果、関東大震災復興土地区画整理事業で、当時の鉄道省が土地先買いし内務省及び東京市の土地区画整理事業により先買い地を鉄道用地へ換地し鉄道用地を確保していたことが判明した。 そこで本研究は、関東大震災復興土地区画整理事業における鉄道省による土地先買いと土地区画整理事業による鉄道敷への鉄道用地換地実態を明らかにすると同時に、鉄道省が本方法を採用するに至った背景と土地区画整理の技術的方針を解明することを目的とする。 その結果、鉄道復興計画を明らかにし、鉄道省の土地の先買い状況を土地所有者名簿から詳細に把握した上で、土地区画整理事業を活用した鉄道用地創出状況を解明した。また土地の先買いと換地方法は法に定めず、任意の運用レベルで行っていたことが判明した。本手法採用の背景として、鉄道省は都市復興をチャンスと捉え、さらに鉄道用地確保に土地区画整理事業を活用する方策が良策であると認識していたことがわかった。
  • 山住 修平, 柴田 久, 石橋 知也
    セッションID: 53
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    2004年度より、地域住民の生活の質の向上と地域経済・社会の活性化を目的とした、まちづくり交付金制度が創設されている。本交付金の対象とする都市再生整備計画(以降:整備計画)の策定期間は3~5年であり、2006年度は制度が始まって以来初の交付期間終了年度となる。現在までに本交付金は全国各自治体の有力なまちづくり予算として認知されつつあるが、未だ創立3年目の新しい制度であることから、現場での問題点や制度的改善点等の把握は急務の課題といえる。 そこで本研究では、1.全国にわたるまちづくり交付金の交付状況を踏まえたうえで、2.平成16~18年度までに交付期間を終えた地区の整備計画を各自治体より収集し、その内容分析を行った。さらに3.整備計画に対する事後評価を主な内容とした自治体アンケート調査の結果より、本交付金制度の現状と今後の課題について検討を試みる。
  • 小布施町と桐生市のまちづくり運動の比較を通して
    島田 昭仁
    セッションID: 54
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     これまでの都市計画の既往研究においても住民の合意形成手法について論じてきたものがあるが、それらは技法として紹介することに目的が置かれ、その手法の合理性についてはほとんど検証されてこなかった。  そこで、この論文は、実証的なフィールド調査の裏づけを踏まえて「まちづくりイベント」の担い手を分析し、コミュニティの意思決定のメカニズムについて、従来の都市計画にはなかった「参加の組織化」という視点を加えて新たな形で表現することを試みる。  そのメカニズムとは、運動の担い手が限られた参加機会の中で交代されていく点に着目したものであり、その交代が秩序だった形で可能にする共同態の存在によって説明されるものである。
  • 室田 昌子
    セッションID: 55
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本論文は、ドイツの市街地再生プログラムである「社会都市」に着目し、なかでも先進事例と言われるノルトライン・ベストファーレン州を対象に、30地区の地区の特徴、問題とその構造、実施したプログラムの内容、地区ビューローの設置状況を把握した。経済衰退を発端とした構造的な問題を抱え、多分野にわたる総合的なプログラムを実施し、特に雇用・経済対策、コミュニティ活性化策、居住環境改善策が充実している。多分野の事業を総合的に実行する手段として多くの地区で、地区マネージメントを行う現地事務所として地区ビューローが設置されていた。行政設置タイプと登録協会設置タイプの2地区について、地区マネージメントの役割を把握したが、行政の部局と地区の住民や団体を結び、かつ住民や団体同士を結び、住民のネットワーク化や調整、協力体制づくり、住民活動の活性化を図る役割を持っているが、事業の実施や支援については、地区による、または設置者による違いがある。ハード事業とソフト事業のバランスをとりつつ総合的に進めることが「社会都市」の理念であるが、どちらかが中心となりがちで、2つの地区を見る限りバランスの難しさが指摘できる。
  • ~都市計画法・建築基準法を対象として~
    饗庭 伸, 内海 麻利, 桑田 仁, 野澤 千絵, 真鍋 陸太郎, 米野 史健
    セッションID: 56
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    2002年より実施されている構造改革特別区域制度の10次にわたる提案を対象として、都市計画法と建築基準法に関連する特区提案の内容と、国と提案主体との検討プロセスを分析し、特区提案を通した都市計画・まちづくり分野の「構造改革の要望」を明らかにすることにより、規制緩和や地方分権の進展に関する論点を明らかにする。具体的には、特区制度の成果の概要を解説した上で、全提案における都市計画法と建築基準法に関連する特区提案の法令条項別の提案件数と判定をまとめ、提案の内容と判定にいたる応答プロセスを明らかにする。結果として2つの法律とも特区提案の実現が少ないこと、提案内容を見ると、社会経済状況変化や新しいニーズ・課題を背景とした、適地性、迅速性・機動性といった観点からの要望が多いこと、応答プロセスからは、国が技術的な助言を示すことの意義、広域性の担保、事前明示性の担保が論点となっていることが明らかになった。
  • 新潟県村上市における都市計画道路の見直しを事例として
    梅宮 路子, 佐野 育実, 岡崎 篤行
    セッションID: 57
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    都市計画道路の見直しに関しては、住民間の合意形成が問題であり、特に意見調整期内における合意形成の方法が重要である。村上市では近年話し合いの場が設けられ、住民代表者による委員会において合意が進んだが、住民全体の合意には至っていない。調査により、県が「16m拡幅は困難」であると公言したことが促進要因となり、道路の幅の議論に終始したこと、住民全体での合意形成システムがないことが阻害要因であることが分かった。また、目標都市像の議論ができないことが課題である。
  • 地域への「誇り」や「信頼」がもたらす影響
    芝池 綾, 谷口 守, 松中 亮治
    セッションID: 58
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    近年、まちづくりに住民の意見を取り入れるだけではなく、参加や主体的な運営が期待されるようになってきている。住民の地域への参加や関わりをいったい何が左右しているのか、その構造を明らかにすることは今後のまちづくりを進める上で重要な課題である。ちなみに、社会や地域に対する信頼関係と住民活動・参加の関連を一種の地域資本としてとらえたソーシャル・キャピタルという概念が以前より提示されており、この課題を考究する際にキーとなる概念といえる。これまでのソーシャル・キャピタル研究では、その測定指標は様々であり、統一されておらず、計測結果についても様々な見解が存在しており、実態は明らかでないという問題がある。そして、ソーシャル・キャピタルとまちづくりの関連性については十分に明らかにされておらず、実際のまちづくりにおいて、ソーシャル・キャピタルがどのように影響するのかについては研究されていない。そこで本研究では、倉敷市民1万人を対象としたアンケート結果から、個人の参加実態と今後の意識について調査し、多変量解析を通じてその形成にかかる構造を把握する。
  • 高橋 美寛, 久保 勝裕, 赤川 友美
    セッションID: 59
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     北海道の小規模自治体の中に、「山村留学」によって地域の活性化を目指す動きがある。これは、留学生の受け入れる小学校校の問題として捉えられがちである。しかし実際は、市町村の支援の基で地域住民が参加する団体が運営している。つまり、地域全体の取り組みとして理解するのが適切である。従って、廃校の防止等という住民が共有しやすい目的のもとに活動を継続することは、地域社会を活性化させる一手法に成りえる。本論では、主に地域社会との関係から、北海道での山村留学の運営の実態を検証し、以下を明らかにした。  (1)山村留学を存続させるためには、受け入れ体制と生活支援の強化が直接的な課題である。(2)山村留学を、留学生と地域社会の両者にとって有効なものにするには、留学プログラムの質の向上が必要である。これによって住民の山村留学に対する意識が向上すると、長期的には、(1)の解決にもつながる。
  • 馬場 健司, 田頭 直人
    セッションID: 60
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,自治体の施策担当者を対象とした質問紙調査やインタビュー調査,ウェブサイト調査より,自治体による市民の環境配慮行動への変容促進を意図した省エネルギー普及啓発施策の動向を把握し,環境配慮行動への変容促進に有効とされる心理学上の仕掛けに係わる視点を用いて,施策の可能性についてレビューした.得られた知見は以下のとおり.第1に,自治体担当者への質問紙調査データの集計結果より,自治体は,省エネルギー普及啓発施策や,太陽光発電や風力発電を中心とする新エネルギー設備・機器の導入施策を実施しており,それにより環境配慮行動への変容促進を期待する傾向にある.第2に,省エネルギー普及啓発施策は,「一般情報提供型」,「気づき喚起型」,「短期的実績報告型」,「継続的自己管理型」,「効果可視化[設備・機器導入]型」という5つのカテゴリーに分類され得る.第3に,個人や世帯に直接働きかける施策では,初期的,短期的な「物理的報酬」による動機付けを「心理的報酬」により持続させるために「情報提供」や「コミットメント」,「目標設定」,「フィードバック」を効果的に組み込む工夫が必要である.
  • 土地所有者の組合方式による住環境マネジメントの可能性に関する研究
    齊藤 広子, 中城 康彦
    セッションID: 61
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、地域の文脈を踏まえ、地域が主体となり、必要に応じて農地と共存させながら、良好な住環境の住宅地の開発・管理主体となることが制度上可能である「農住組合」に注目し、住環境マネジメントの実践と効果、課題を明らかにし、今後の住環境マネジメントの可能性を検討した。対象とする農住組合は、2007年3月までに設立された80組合である。さらに農住組合による住宅地開発が行われた80事例から、9事例を抽出し、事業内容を把握するためのヒヤリング調査及び現地調査を2007年2~3月に実施した。結果、組合による住宅地開発は良好な住環境形成に寄与している。管理も集積と規模の効果から、統一した管理・経営リスクの低下・現場管理体制の強化が図られている。今後、土地所有者による組合方式の住環境マネジメントを土地基盤整備後も実施する方法として、農住組合を残す方法、集合住宅所有者で管理組合を作る方法、新所有者(住民)で管理する方法などが考えられ、管理支援体制の強化が課題である。
  • -TEAM言語理論を基準として-
    安達 義通
    セッションID: 62
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    1980年代後半、ハーバマスの社会理論をベースにしたコミュニカティブ・プランニング論が提唱され、その後、その関心が急速に高まったが、1990年代後半以降、特に、その中核概念であるコミュニカティブ・ラショナリティに対する批判が高まってきた。本論文においては、このような潮流を踏まえ、言語論をベースとしたTEAM理論を新たな分析枠組みとして用いて、コミュニカティブ・ラショナリティという概念の有効性を再検討した。また、近年のコミュニカティブ・プランニング理論への批判もTEAM理論のなかに位置づけた。その結果、コミュニカティブ・ラショナリティはTEAM理論の4つの言語の意味機能(および4つの社会言語)のうちの1機能のみに依存しており、概念として狭隘であることが明確化となった。
  • 日治時代(1895-1945)中期における西門町形成過程の形態学的分析を中心として
    木川 剛志, 加嶋 章博, 古山 正雄
    セッションID: 63
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    西門町は、現在でも台北市有数の繁華街であり、その歴史は台北市が近代化する過程で始まった。西門町の生まれる前の台北にはダイトウテイ、バンカと呼ばれる自然発生的集落とそれらを管理する台北府城のいわゆる三市街が分離して成立していた。日治期の近代都市計画はこれらを統合し、その副産物として新しい商業中心地区、西門町が形成された。本稿では当時の都市状況を示す文献の調査とともに、この歴史的な都市変容をスペース・シンタックスを用いて分析した。その結果、三市街が分離して成立した原因が移動効率上の要求ではなかったこと、効率性の視点が都市に導入されて初めて西門町が成り立ったことが見出された。そして、西門町の誕生に象徴的に現れていたことは、近代化によって“儀礼的”に都市が構成されていた時代から“効率性”が都市を構成する時代に移り変わったことであったことが結論として示される。
  • 旧東ベルリン、プレンツラウアー・ベルグ地域を事例として
    太田 尚孝, 大村 謙二郎, 有田 智一, 藤井 さやか
    セッションID: 64
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は、再統一後のベルリン市における再開発の特徴と課題を明らかにすることである。本研究の方法は、ベルリン市の再開発政策の分析と、再開発地区が集中化している旧東ドイツのプレンツラウアー・ベルグで行われているプロジェクト分析に基づく。 本研究から得られた知見は、以下の三点である。1.再統一後のベルリンには、東側を中心に前時代的な住宅ストックが大量に存在していた。これに対して、ベルリン市は西独時代に築かれた「慎重な都市更新」を理念としては引き継ぎながらも、新しい社会経済環境の中で現実には変容を迫られている。2.プレンツラウアー・ベルグでは再統一後に住宅の近代化や居住環境の改善が進んだが、市場性や目的性に強く左右されている。3.戦後のベルリンの再開発は、19世紀型の市街地をいかに改善するかが主要課題であったが、その時代ごとで再開発の理念や手法は大きく変化している。
  • 土田 哲也, 土肥 真人
    セッションID: 65
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    トルコ共和国は1923年の建国以来、西洋を規範とした新しい制度や技術を導入して、旧来の体制を一新しようと試みる。そうした近代化政策の一環として、新しい国家像を象徴する新首都アンカラの建設が行われた。本研究はアンカラ新首都建設に際し西洋の専門家によって計画案、実施案の作成が行われた1924年から1932年までを対象として、当時の文献から都市計画案の詳細および計画案を実行に移すまでの過程を把握し、トルコ共和国の近代化におけるアンカラ新首都建設の意義について考察することを目的とするものである。近代都市計画技術を受容することによって近代的な都市空間が整備されたが、旧来の都市構造の一部は取り残された。旧市街を凍結保存せざるを得なかった点で本来の目的である空間の刷新を完全に達成することは出来なかったものの、アンカラ新首都建設を通じて近代的行政機構の組織や都市管理制度といった社会的諸制度の近代化が成し遂げられたことを明らかにした。
  • 五島 寧
    セッションID: 66
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     本研究は,京城における市区改修予定計画路線や建築取締規則の内容に着目し,近代都市計画的特徴の有無を分析した。市区改修予定計画路線は道路整備そのもので,それ以外の施策との連動を想定していなかった。また,建築取締規則には萌芽的な区域体系があるものの,道路計画に関連せず,朝鮮市街地計画令とも関連していない。本研究は,京城における近代都市計画導入は朝鮮市街地計画令以降であると結論した。
  • 青木 いづみ, 進士 五十八
    セッションID: 67
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    都市公論記事から戦前日本の建築行政において建築高さについてどのように捉えられていたかを時系列に分析し、またそれが現代へと連続している点について考察した。 市街地建築物法制定時には、建築高さの規制目標がなかった。1930年以降高層化の圧力が強くなり、厳しい高さ規制が必要となったが、建築技術の進歩で規制の根拠が薄くなってしまった。_丸2_日照・通風・相隣関係、交通問題、建築構造といった建築高さ規制の根拠の代わりに自然(大地)との接触機会、国民性といった根拠を挙げるようになった。_丸3_高層の共同住宅に対する反対意見が多くあった。_丸4_建築の高大化が景観的に良いとされたが、実際には建築高さは仰角や前面道路幅員とのD/Hの関係も考慮に入れないと良い景観にはならないことに気づいた。
  • 『都市計画及び国土計画』に着目して
    中島 直人
    セッションID: 68
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本論文は石川栄耀による都市計画の基盤理論の探求の特徴を把握することを目的としている。石川の主著書である『都市計画及び国土計画』は1941年に初版が出版された後、1951年に改定版、1954年に新訂版が出版された。先ず、初版出版に至るまでの過程の分析により、石川が都市計画の基盤理論構築のための都市学の確立を強く望んでいたことが明らかになった。石川は『都市計画及び国土計画』では、独自の基盤理論である「都市構成の理論」で都市計画を体系化してみせたのである。また、2度の改訂内容の分析からは、石川が「生態都市計画」と呼んだ新しい都市計画の姿を目指して、「都市構成の理論」に都市動態の理論を組み込もうとしていたことが明らかになった。こうした都市計画の基盤理論を探求する姿勢は、石川の同時代の誰よりも先進的であり、かつ現代的意義も有している。
  • 西成 典久
    セッションID: 69
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、東京の戦災復興区画整理事業で交通の要衝ではない場所につくられた矩形の空地(本研究では広場状空地と呼ぶ)に着目し、東京戦災復興区画整理事業で試みられた広場状空地の全容を明らかする。そして、それらの出自とその後の経緯を明らかにしたうえで、それらがどのような意図で試みられたのか、その事業的背景を考察する。結論は以下のとおりである。 ・東京の戦災復興区画整理事業6地区(麻布十番、錦糸町、五反田、大森、池袋東口、新宿歌舞伎町)で交通のためではない広場状の空地が創出された。 ・6地区全ての広場状空地は、従前それらの空地を創出するための積極的な理由は見当たらず、新たな意図をもとに計画設計されたといえる。 ・麻布十番、新宿歌舞伎町、池袋東口に創出された広場状空地は、人が集う賑わいの場として計画された。その他、錦糸町、五反田、大森については、残された資料からその計画意図は読み取れなかった。
  • 耐火建築促進法成立の背景
    初田 香成
    セッションID: 70
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は戦後期における都市不燃化同盟を中心とした都市不燃化運動の理念の変容を探り、その歴史的意義を探るものである。まず運動の主体であった都市不燃化同盟の誕生の過程と背景を明らかにし、その誕生の意義を考察する。続いて特に1950年の前後で、都市不燃化に関する構想が大幅に縮小されたことを明らかにし、その背景としてGHQによるドッジラインの影響を指摘する。そしてそれがもたらしたその後の不燃化運動、再開発への影響を学識者、建設省の官僚、商工会議所、ディベロッパー、損害保険会社と言ったそそれぞれの運動主体の観点から考察する。
  • 旧京橋区東側地域を事例として
    中島 伸
    セッションID: 71
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本論は旧京橋区東側地区において、帝都復興区画整理事業の当時の設計思想と事業実施による街区形成の実態において、必ずしも一致する計画が実施されたわけではないことを実態より明らかにした。また、それらの中には江戸時代の町人地の敷地割りが継承されたものも存在し、既成市街地整備型の区画整理事業と雖も、従前の街区・敷地形状の影響が残存することを明らかにした。そして、事業後の建物立地を分類し、建物配置の違いを生む要因として街区の形状、規模の影響があることを示した。 これらの街区の変遷を辿ると、事業後から70年を越える年月をかけて、漸進的に裏宅地を解消して、建物規模が大きくなる傾向にある。ただし、事業直後の建物立地の分類から、裏宅地の解消の速度は裏宅地の配置の連なり方によって異なることが明らかとなった。また、解消後の建築物の建ち並ぶ様子は、裏宅地の配置の影響に付随して変わってくる。つまりは、一律に広域な事業範囲を持つ帝都復興事業であっても、現況において形成された街区を見ていくと必ずしも画一的な市街地が形成されたわけではないと言える。
  • 1956~1965年度の国有財産地方審議会における決定事項の考察を通して
    今村 洋一, 西村 幸夫
    セッションID: 72
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、『国有財産地方審議会の審議経過』を用い、高度経済成長期前半における旧軍用地の転用と都市施設整備との関係を明らかにしている。旧軍用地の大部分は自衛隊用地や農地へと転用されたが、それでも5,081haという大量の旧軍用地が、工場、官公庁施設、公園、学校、公営住宅などに転用されることとなった。旧軍用地の都市的用途への転用には、高度経済成長下の都市化に伴う都市問題への対応という、変わりゆく都市の在り様に柔軟に対応するための予備資源としての役割と、戦後の制度改革や政策の実現に貢献するという、時代あるいは都市を変えてゆく推進装置としての役割の2側面があった。また、転用上の特徴としては、公的利用という基本的方向が見出せる一方で、地域や各施設に固有の条件との関係も見られた。
  • 野中 勝利
    セッションID: 73
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は、1873年に廃城となった城址の公園化の経緯と背景を明らかにすることである。1873年1月、政府から全国の城郭について存続か廃止の区分が通達された。その翌日には初めての公園制度が政府から府県に布告された。政府は廃止後の城郭の跡地利用の方針を示さなかったし、城跡を公園開設の場所としても想定はしていなかった。しかし同年には米沢と高知から城跡公園の申し出があり、認可された。城跡の土地を官有地として保全を担保するとともに、一般に開放するという地域側の意向が強く反映された。
  • 歴史的資源を活かしたまちづくりにむけた歴史的建造物悉皆調査
    齊藤 知恵子, 三浦 卓也
    セッションID: 74
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    郡上市八幡町の市街地は川や水路を有する城下町として、また歴史的な町並みとして知られており、個々の建造物や町並み保存、景観形成に関する調査では市街地の一部や主要な通りについて町並みの調査はされてきた。本調査は歴史的資源を活かしたまちづくりに向けてた基礎調査であり、歴史的建造物(町家を中心とする伝統的な工法で建てられた築50年以上と思われる建造物)を46町内の路地を含めて153haで網羅的に実施した。調査結果では1200棟を超える歴史的建造物が確認でき、なかでも16町内地17.8haでは5割以上歴史的建造物が残存しており、その数は500棟を超える。歴史的建造物のなかには町家建築がそのほとんどをしめ、その意匠細部には建物により格子、袖壁、幕板、蔀戸などがみられ、軒構造には板庇、垂木、出桁、軒天井に多様な種類があった。今後は町並みの特徴だけでなく、間取りや工法なども調査研究が望まれる。
  • 近世城下町を基盤とする府県庁所在都市を対象として
    松浦 健治郎, 二之湯 裕久, 巌佐 朋広, 浦山 益郎
    セッションID: 75
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、近世城下町を基盤とする府県庁所在都市30を対象として、戦前の府県市庁舎が敷地内に保存された場合に、1)城下町基盤を活用した都市デザインが影響を及ぼしているのか、2)新庁舎をどのように増築しているのか、を明らかにするものである。  明らかとなったのは、1)「建築空間」の保存については、建築的条件(罹災が無いこと・耐火造・建築年が昭和以降)と立地的条件(敷地面積)が主要な要因となっていること、2)「都市空間」の保存については、都市デザイン的条件(主要街路のアイキャッチ・堀沿い等)が主要な要因であること、3)庁舎を保存するための工夫として、「新庁舎の高層化」・「重要な部分の保存」・「新庁舎を郊外に移転」の3つの手法が確認されたことである。
  • 小林 優介, 安岡 善文
    セッションID: 76
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は、都市計画や緑地計画のために樹林地の環境価値を評価することである。このために、本研究ではヘドニック・アプローチと、ポテンシャル・モデルをもとにした樹林地ポテンシャルを用いる。そして、東京都区部の南西部を対象に衛星リモートセンシングデータであるASTER画像をもとに分類した樹林地分布により分析を行った。その結果、1)樹林地ポテンシャルの範囲が100m、地価地点から250m以内における樹林地の環境価値が最も地価との相関が高いこと、2)樹林地1m2あたりの住宅地地価へ与える影響は最大で314,130円/m2、平均で68,650円/m2であること、3) 概ね1~5ha程度の中規模に集塊した樹林地が最も効果が高いことがわかった。
  • ドローネ網における最短距離を用いた作図法の提案
    今井 公太郎, 藤井 明
    セッションID: 77
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本論稿は、障害物の配置された平面におけるボロノイ図を、現実的で簡単な計算機アルゴリズムにより、近似的に求める方法を提案している。アルゴリズムには、多数のランダムな母点を元に作図したドローネ網(rDn)を用いる。rDnにより平面をセグメント化し、迂回距離を測定することにより障害付ボロノイ図の近似解を求めている。そのため、利用するrDnの等方性と歪の安定性を計算機実験により検証している。また、厳密解が求まる単純な事例において、実験により障害付ボロノイ図の近似解を求めている。これを厳密解と比較して得られた境界の信頼性を分析し、この方法の有効性を示している。そして自由形状の障害物が配置された事例に対して障害付ボロノイ図を作図している。
  • 奥 俊信
    セッションID: 78
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    ボロノイ図の既往研究では,明確にボロノイ領域に分割することに焦点があった.そこではボロノイ図は境界線として表される.それに対し本研究ではボロノイ領域の境界に注目し,曖昧な境界すなわち母点からの距離差に幅をもたせた境界を検討した.ここではボロノイ図は境界領域として表される.曖昧な境界を設定する具体的意義は,都市での施設の圏域を考えた場合,その境界は曖昧であり距離差に許容範囲をもっていると想定されるからである.さらにボロノイ図の空間を正方格子状に分割されたセルの集合とした.セルの位置座標は離散値となるので離散ボロノイ図となる.また空間領域はセルの集合となるので,計算のアルゴリズムが簡単あり,面積もセルを集計することで容易に求めることができる.本研究では距離概念として,ユークリッド直線距離,格子状直交距離(マンハッタン距離),放射環状距離(カールスルーエ距離)の3種類を取りあげた.また距離差として絶対距離差と相対距離差の2種類を考慮した.そして成長モデルによる計算アルゴリズムで離散ボロノイ図を作成しその特徴を検討した.
  • 稲川 敬介, 古田 壮宏, 鈴木 敦夫
    セッションID: 79
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本論では,対応時間に注目して救急車の配置場所について考える.われわれは救急車の配置場所を適切に評価するために,確定的な評価指標と確率的な評価指標を提案する.適用例として,実際の救急データを用いてこれらの評価指標を実際の都市に適用する.この適用例では,pセンター,pメディアン,最大被覆問題などを適用して,いくつかの新たな救急車の配置を求める.さらに,われわれの評価基準を利用して,これらの新たな配置と適用都市の現状の配置とを比較する.この比較より,救急車の適切な配置場所と確率的評価指標の重要性について議論する.
  • 玉川 英則
    セッションID: 80
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     本稿は、古典的なハフ・モデルによる圏域設定に対し新たな考察を行ったものである。線分状の都市に立地する2つの施設が、確定的に解釈したハフ・モデルにもとづき圏域を分割するという設定において、当期の圏域の大きさが次期の施設規模に反映されるという「再帰的過程」と、施設の立地点が端点に限らないという意味での「後背地の効果」を組み入れたモデルを開発した。  このモデルの挙動を検討した結果、大局的には「距離抵抗係数が減少するほど一極集中がおこりやすくなる」という一般的な傾向が確認されたが、一方で、最初小さな施設が「逆転」して拡大する現象や、距離抵抗の小さい場合でも2つの施設が「共存」するケースなど、後背地のある場合に特徴的な傾向が新たに見いだされた。
  • 酒田市・鶴岡市の中間に立地するショッピングセンターを例として
    讃岐 亮, 吉川 徹, 饗庭 伸
    セッションID: 81
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    近年日本では、大規模商業施設が田園地域の真只中に立地している現象が多く見られる。本研究はこの現象に対する理論モデルを作成することを目的とする。そのため本研究では、2つの都市中心とその中間の地域における立地ポテンシャル優位性の逆転に焦点を当てた、商業施設の立地モデルを提示する。このモデルは自動車移動可能性と人口分布という2つの変数とするものである。立地ポテンシャルは二乗距離の指数関数によって表される。このモデルを、2001年開業の大規模ショッピングセンターが中間地域に立地する酒田市・鶴岡市の地域に適用し、適合性の高い結果が得られた。
  • 高橋 美保子, 出口 敦
    セッションID: 82
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    サステナブルな都市の実現へ向けコンパクトシティに対する関心が高まっているが,コンパクトシティの効果の定量化については研究途上にある.また,限りある財源の集中的かつ効率的な投資のためには,都市の方向性や政策を立案する段階で費用便益を考えていくことが必要である.本研究では,コンパクトシティの効果を貨幣単位で定量化する手法を構築し,コンパクトシティ政策を費用と便益の両面から定量的に分析できる手法を開発することを目的としている.まず,環境会計を援用し,コンパクトシティの形成にかかる費用と効果を分析するための会計システム(都市形成会計システム)を構築し,システムに基づいて費用と効果を定量化する指標を開発した.次に,構築したシステムを仮想都市モデルと実在の都市に適用したところ,人口増減及び人口減少化における人口配分や土地利用の異なる土地利用モデルの費用便益を定量的に示すことができた.また,仮想都市モデルと実在の都市でのシステムの検証を通じてシステムの課題を明らかにすることができた.
  • 筑波山を対象として
    小林 隆史, 大澤 義明
    セッションID: 83
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は,近年増加している携帯電話基地局が景観に与える影響を数量的に分析することにある.影響の測り方は,地域特有の景観に与える影響を,地域のランドマークよりも大きく見えるか否かとした.位置の特定が困難な携帯電話基地局に対して,平面或いは線分上に一様にランダムに配置されているものと仮定した確率モデルを構築した.ランドマークの高さの比較における確率モデルを,平面領域に拡張した点が大きな特長である.茨城県南部の筑波山を対象とし,携帯電話基地局の見た目の高さが,筑波山の見た目の高さよりも大きくなる確率を平面領域と常磐自動車道において導出した.そして,鉄塔の共同利用,鉄塔の高さ規制といった政策変数が,確率に与える影響を定量的に分析した.
  • 空間ポアソン分布に基づく確率論的アプローチ
    栗田 治
    セッションID: 84
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    周知の通り,地震後の火災は都市地域とそこに住む人々に甚大なる害を与える.この論文では,出火時刻がランダムな出火候補点が都市平面にランダムに存在する状況下において,延焼モデルを構築する.主たる目標は,地震後の火災による焼失率を導出することである.ただし,個別の延焼領域は円盤あるいは卵型で与える.後者は延焼速度が風向きに依存することをモデル化したものである.論文の要点を述べると,焼失率がその時点での平均延焼面積の指数函数で表されることが明らかになった.
  • スペースシンタックス理論におけるアクシャルラインとイソビスタを用いて
    永家 忠司, 猪八重 拓郎, 外尾 一則
    セッションID: 85
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の主たる目的は防犯環境設計における「監視性」、「領域性」を対象にスペースシンタックス理論を基に都市空間の防犯性能を考察すること、及び犯罪不安とスペースシンタックスとの関係を分析することである。分析の結果、主に次のことが明らかになった。1.都市全体から見たアクセシビリティの高低が容易に判断できるアクシャルマップを作成することにより、人通りがもたらす潜在的な監視性の強度の推定が可能となった。2.イソビスタマップの作成により都市の死角を明らかにする一方、地域としてのまとまりを明らかにした。3.アクシャルマップ、イソビスタマップによって領域の同定が可能である。4.インテグレーション値及びイソビスタエリアの高さは犯罪不安と関係している。
  • 内田 賢悦, 佐々木 恵一, 加賀屋 誠一
    セッションID: 86
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    DEAは経営分析手法の一つであり,民間から公共事業の評価までと幅広く用いられている.DEAの基本的な考え方は,最も優れたパフォーマンスを示した事業体を基に他の事業体の業績評価,効率値を測定する.計算の容易性,理解の容易性から,効率性評価手法として利用されてきた.しかしながら,手法の性質上,相対評価には適用できるが,総合評価には適用してはならない. 本研究は,DEAによる評価の問題点を考察し,総合評価のためのDEA手法を提案し,適用例を示す.
  • 大分県大分市の主要幹線道路沿線を対象として
    永冨 太一, 佐藤 誠治, 小林 祐司, 姫野 由香
    セッションID: 87
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    現在、各自治体において中心市街地活性化基本計画策定に関連した準工業地域における土地利用実態、大規模店舗立地の動向、沿道型用途地域等の詳細な調査の実施や把握への取り組み等がなされている。これは、従来から続く中心市街地の空洞化、郊外での開発等に新たに対応するためのものである。そこで本研究ではまず、大分市における主要幹線道路沿線における土地利用現況を街区単位で把握する。そして建物の許容容積率や実容積率等の土地利用から現在の用途地域指定とその規制による詳細な実態を把握する。この結果を基に主要幹線道路沿線での土地の高度利用、有効利用、環境改善という視点から、各路線における土地利用実態を明らかにするため、各指標間の関連性や類型化を行い、地方都市が抱える土地利用の現状と課題を見出す。本研究の結果として、沿線土地利用の傾向として、充足率がそれほど高くない傾向があることを把握した。また、対象とした路線が4つに分類され、その特徴が明らかにされた。最後に、今後の方針などについて述べた。
  • 中野 光治, 青山 吉?
    セッションID: 88
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、都市アメニティ要素の外部性を,ヘドニック・アプローチや空間計量経済学を用いて空間的に把握ものである。特に、その上で、アメニティ要素が外部にもたらす影響とその範囲を定量的に把握することで、都市計画におけるアメニティを有する施設の充足やその配置計画につながる基礎的な指針を提示するものである。 本研究では、緻密かつ連続性をもつ空間データを扱うことから、空間的自己相関による影響が懸念される。そのため、通常の最小二乗法による計測の他、GWRモデル・SEMモデルの二つの空間的自己相関を考慮した方法を提示している。またそれぞれについて、適合度を検証し、外部性の影響範囲を算出するまでの流れを、京都の中心部を事例として検証している。結果としては、本調査で対象としたアメニティ要素の外部性の評価に関して空間的自己相関が認められるとともに、これらのモデルの有効性が確認された。
  • 小西 俊作, 佐藤 要祐, 太田 充
    セッションID: 89
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    住宅が「量より質」の時代となって久しい。これまで主流であった「住まいにあわせた暮らし」はもはや過去の価値観であり,現在は各々の価値観に沿った住宅,いわば「暮らしにあわせた住まい方の実現」が模索されている。本論文はヘドニック・アプローチを用いて東京都心部の賃貸集合住宅価格を推計することで,人々が現在の住宅にどのような付加価値要因を求めているのか,その中でデザインや地域ブランドといった質的な要素がどのように評価されているのかを示すことを第一の目的とした。その結果,「優れたデザイン」という質的な付加価値を表す代理変数として「デザイン賞受賞暦」を取り扱うことにより,建築デザインの価値を計測できる可能性を示すことができた。
  • 渡辺 美穂, 羽藤 英二
    セッションID: 90
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    仕事に向かう人,お気に入りのCDショップに向かう人,恋人と手をつないで歩く人. 遅刻しそうな時,初めての場所を訪れた時,疲れている時. 歩く速さはそれぞれ異なるはずだ.街には様々な人が織り成す様々な速度が溢れている. そしてそれらの速度が集まることでその場所の速度―空間速度―が生まれる. 従来の都市においては空間速度の違いを考慮した空間設計はあまり為されてこなかった. また,近年の複雑・高速化し続ける交通体系において,基本交通手段である歩行の挙動解明の重要さが見直されている. そこで本研究では,GPS搭載の携帯電話を用いたプローブパーソン技術により歩行者の行動文脈の流れに沿ってデータを蓄積する,従来の歩行者研究とは異なる手法を用いて, 個人間・個人内の歩行速度を分析し,空間速度を明らかにすることにより,空間速度を考慮した空間デザインの一手法を提案する.
  • 都市空間におけるアクトファインディングに関する研究
    平井 浩将, 森 傑
    セッションID: 91
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、目的地にたどり着くまでの歩行におけるアクションに注目し、ナビゲーションツールの利用がその生起傾向に与える影響を分析することで、都市空間における状況的認知と歩行との関係性について考察することを目的とした。ナビゲーションツールを用いたときの人々の歩行の特性と都市空間の記憶について実証的に分析した結果、GPSのような誘導的なナビゲーションは、人間と実空間との直接的な相互関係を希薄にする方向へとアクティビティの質を変容させ、ナビゲーションツールを用いない場合とは異なる記憶を形成させる可能性が示された。今後は、GPSナビゲーションの特性を考慮した上で、街のリアルな身体感覚がもたらす安全で快適な外出活動を支える都市空間構造の検討や、直接的な空間体験とそれによって形成される記憶がもたらす街の魅力を向上させるような都市空間デザインのあり方の具体的な探求を目指す。
  • 石崎 博之, 室町 泰徳
    セッションID: 92
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、実際の探索財の選択状況として、学生による賃貸住宅選択状況を対象とし、実際の選択状況に即した選択肢の探索、選択肢集合の形成、選択の実験を行い、探索行動に影響を与える要因はどのようなものか、また、それらが選択肢集合の形成にどのように結びついているのか、を検討した。分散の大小と期待効用の大小に関しては、期待効用が大きい場合、期待効用が小さい場合よりも探索時間、探索選択肢数が多くなった。選択肢集合数については、分散が大きい場合に多くなるという結果となった。探索経験の有無による探索選択肢数、探索時間、選択肢集合数の違いについては、探索経験がある被験者の場合、選択肢集合数が小さくなる傾向にあった。また、探索行動を反映した探索選択肢数推計モデルの適用により、若干ながら探索実験結果をより良くの再現できることが確かめられた。
  • 力石 真, 張 峻屹, 藤原 章正
    セッションID: 93
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    時間は,活動を行うことで得られるあらゆるサービスを生産するための非代替性を持つ資源である.そのため,個人は活動を遂行する際,時間の制約(例えば一日24時間をどのような活動に割り当てるか)を意識的又は無意識的に考慮していると考えられる.個人が時間制約を考慮することで直面する,1)特定の活動を遂行するかどうかの意思決定,2)特定の活動に対して一定時間を割り当てることによって,他の活動へ割り当てられた時間が減少する際の意思決定,という2つの意思決定メカニズムの存在が考えられる.しかしながら,既存の時間配分モデルにおいては上記2種類の意思決定メカニズムを十分に表現できていない.本研究では,前者の影響はトビットモデルの応用により自己選択バイアスを考慮し,後者の影響は多項線形効用関数により活動間の相互作用を考慮することで表現することで,上記2種類の意思決定メカニズムを同時に取り入れた新たな時間配分モデルを構築する.また,本研究で開発したモデルの有効性を検証するため,メトロマニラのパーソントリップデータを用いて実証分析を行う.
  • 阪井 清志
    セッションID: 94
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     わが国の都市圏において、交通実態を把握する主な調査として、パーソントリップ調査が挙げられる。1967年の広島以来、数多くの都市圏で実施され都市交通計画の策定に活用されてきた。しかしながら、人口減少時代においては、交通施設整備に対するニーズは量的拡大から質的向上に変わりつつあり、また、投資の効率化や交通管理面での工夫など多面的な検討が求められるようになってきており、調査についても再構築が求められている。さらに、近年では、プライバシー意識の高まりによる回収率の低下などから、調査方法自体についても課題となっている。  そこで、本研究では、現地調査及び文献調査により現在の仏独米英のパーソントリップ調査の実施状況について明らかにし、日本と比較するとともに、交通機関分担率データの比較を行う。また、これらの都市内交通実態データに関する最近の活用状況について、イギリスやEUの最近の取組を紹介する。最後に、比較・分析の結果を踏まえ、冒頭で掲げた課題への対応の方向性についてとりまとめた。
  • -確率的統合均衡モデルと非集計モデルの比較-
    金森 亮, 三輪 富生, 森川 高行
    セッションID: 95
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    TDMなど個人の交通行動の変更を促す施策導入の検討をより適切に行うために,従来の四段階推定法に代わって,非集計モデルや統合均衡モデルなどが都市圏レベルの交通需要予測手法として研究・構築されている.しかしながら,非集計モデルでは,施策導入時の行動変化を予測する際,自動車LOSは施策導入前と同じデータなど,事前に外生的に設定することが多い.これは一般的に説明力を欠く設定方法である.本研究では,交通基盤整備時における自動車LOS変化の考慮の有無の影響を把握することを目的として,名古屋都市圏を対象に確率的統合均衡モデル(考慮有り)と非集計モデル(考慮無し)の両モデルを適用し,予測値の差を比較分析する.その結果,均衡モデルと比較して非集計モデルは,総発生量に大差はみられないものの,交通手段別交通量は自動車LOSの設定方法によって大きく変動し,特に自動車OD所要時間差が大きい場合や,短・中距離トリップにて予測値の差が大きくなることが明らかになった.つまり,自動車LOSの変化を内生的・整合的に取り扱わなければ,無視できない程度の予測誤差を招く可能性があることを,定量的に確認している.
  • 桑野 将司, 藤原 章正, 張 峻屹, 岡 英紀
    セッションID: 96
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,多様化する自動車保有形態を世帯のライフステージの違いによるものと仮定し,生存時間モデルに潜在クラス手法を援用することで,世帯により複数存在する自動車保有形態を明示的に考慮した自動車保有期間モデルの開発を行った.具体的には,世帯を類似する保有形態を持つ潜在的なクラスに分類し,クラスごとに異なる確率分布を仮定することで,複数の分布形状の重ね合わせにより異質な自動車保有行動の記述を試みた.中国地方で収集した世帯自動車保有・利用アンケート調査データを用い,開発したモデルを適用した結果,2個の潜在クラスが検出され,それぞれ異なる分布形をもつことが明らかとなった.
  • 新潟都市圏を対象として
    榎本 拓真, 中村 文彦, 岡村 敏之
    セッションID: 97
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    中心市街地衰退が私用目的交通行動へ及ぼす影響を、新潟都市圏を対象に実証的に評価した。結果として、集中トリップの増減と大型SCの業態別面積の増減の関係から、複合業種を有する店舗形態のトリップ吸引力が大きく中心市街地との競合関係が最も強いことが明らかとなったが、郊外部では大型SCの立地に伴うトリップ距離やトリップ回数の増大は見られず、中心市街地衰退に伴うODパターンの大きな変化は中心市街地フリンジ部に限られることが明らかとなった。また、ハフモデルによるシミュレーション分析による結果から、郊外全域を対象とした大型SCの立地規制はトリップ距離を増大させ、環境負荷の増大を引き起こす可能性が高いことが示唆された。
  • 高瀬 達夫
    セッションID: 98
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    近年では環境への影響を配慮して自動車交通から公共交通への再転換を図ろうとする取り組みが、国や地方自治体でなされるようになってきた。それにともない事業所等でもノーマイカーデーや最寄り駅からの送迎バスの運行といった取り組みがなされるようになってきた。しかしながらこれらの取り組みによって公共交通機関利用へと転換される効果を把握するためには、従業員の居住地の分布形態を捉える必要がある。なぜなら駅周辺地域に居住している従業員は容易に公共交通へ転換することが可能であり、反対に駅から離れたところに居住している従業員と同一に取り扱うことは難しく、さらに地方都市では仕事のために転居してきた人よりも元来住んでいる人が多いので分散傾向が強いからである。そこで本研究では地域における居住地の分布形態を表す指標として近年自然科学の分野で扱われるようになってきたフラクタルの概念を導入して、事業所ごとに公共交通機関利用者の居住地の分布状況を数値化する。そして各事業所における様々な取り組みが公共交通利用通勤者の分布状況にどれだけ影響を与えているのかを包括的に捉えることを目的としている。
  • 熊本市都心商店街への適用例
    磯田 節子, 田中 聖人, 渡辺 千賀恵
    セッションID: 99
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     駐輪場計画においてまず必要となる知見は、自転車来客が発生する圏域の空間的構造であろう。自転車商圏の形と広さが判明すれば、それを基に駐輪場の空間計画を的確に行うことができる。  そこで本稿は熊本市の都心商店街をケーススタディとして、修正ハフモデルに基づき、自転車商圏の境界線を区画するための計算式を考察し、実際の発生地点分布と照合することにより計算式の妥当性を検討するものである。調査対象を商店街来客頻度が高い主婦とした。  まず、自転車来客の基本的性質を明らかにした。得られた主な知見として、主婦の自転車来客には、所要時間を判断基準にして「速い」から自転車を選んでいる群が多いものの、時間面では不利なことを知りつつ「健康に良い」などの理由であえて自転車を選ぶ群も存在する。また、都心商店街の場合、自転車商圏の最遠地点(体力限界)は6kmに設定できる。修正ハフモデルから式Aを求め、都心商圏と他の3商圏との境界線を地図上に描いたところ、実態分布とほぼ適合する結果が得られた。自転車商圏の形や広さを区画する上で、式Aは実用性を持つであろうと思われる。
  • 選択肢間の類似性を考慮した集計型離散選択モデルを用いた分析
    山根 公八, 張 峻屹, 藤原 章正
    セッションID: 100
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    コンパクトシティ政策を扱う従来の研究と異なり、本研究は地方都市のコンパクト化が、生活の質の水準に直接につながる生活者の交通行動パターンに与える影響を評価する。実務的な視点から、相対性効用の概念に基づき交通行動パターン間の観測類似性を取り入れた集計型離散選択モデルを構築した。解析に使用したデータは広く使われているパーソントリップデータである。このようなモデリング手法はモデルの政策評価のアカウンタビリティを向上させることが可能である。構築したモデルの有効性を実証的に確認した。そして、都心付近の人口密度を変化させることにより都市のコンパクト化の影響をシミュレーションにより評価した。
feedback
Top