臨床リウマチ
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22 巻, 1 号
臨床リウマチ
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Editor's Eye
誌説
総説
  • 大坪 秀雄, 松田 剛正
    2010 年 22 巻 1 号 p. 6-16
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
       関節リウマチの診療はメトトレキサートの導入に続き生物学的製剤やその他の免疫抑制剤が導入され,予後が大きく改善された.一方,有害事象の心配からか,現在でも一部ではメトトレキサートの投与量が少ない例や,生物学的製剤の使用を躊躇するなどの症例も見受けられる.本稿では治療の大まかな流れ,有害事象の予防,有害事象発生時の対応について共通の認識の下に連携を進めるツールとして利用される事を目指した.
       専門施設では診断の確認,活動性の評価,治療方針の決定,かかりつけ医で治療開始が困難な場合は治療の開始と効果判定等を行う.患者には診断の結果と今後の治療方針の大きな流れを十分に説明し,患者の不安を取り除く事が重要である.かかりつけ医に捩った後は必要に応じて定期フォローを行うが,効果減弱時に受診して頂き,治療方針の再検討を行う事が最も大切である.
       かかりつけ医は自施設や患者の状況に応じて,診断,治療方針の決定,治療薬の調整,免疫抑制剤や生物学的製剤の導入等のいずれかの時点で依頼する.今日のリウマチ診療では生物学的製剤が必要な症例に早期に導入する事を共通の目標として連携を進めていく.再び患者の診療を開始する場合は特に有害事象に対する注意が重要で,定期的に肝腎機能,末梢血等の検査が必要であるが,感染症が疑われる場合は早急な対処が重要であり,細菌感染が疑われる場合は免疫抑制剤を中止の上,抗生剤を投与する.
  • 生馬 敏行
    2010 年 22 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
       今日,抗リウマチ薬のアンカードラッグとして位置づけられ,リウマチ専門外の医師によっても広く使用されるようになってきたMTXや,近年益々使用頻度が高くなってきている生物製剤などによって,関節リウマチの治療法は大きく進展した.しかしながらその光の部分としての優れた治療効果の反面,陰の部分として特に呼吸器を中心とする感染症や間質性肺炎,血液障害など,重篤な副作用の報告例も増えている.その様な時に,日頃のリウマチ診療を担当する「リウマチかかりつけ医」と,重篤な副作用発生時に受け手となる基幹病院の各専門医との間の迅速な連携プレーの重要性は近年益々高まってきている.また,重い臓器障害を有するRAや治療抵抗性のRAに対して「リウマチかかりつけ医」と地域のリウマチセンターとの連携医療がうまく機能するとすれば患者側にとってメリットは大きく又,医療者側にとっても理想的なリウマチ医療を展開することが可能となるであろう.しかしながら演者の住む紀南地方においては,残念ながら現状では未だ充分な連携医療が構築されているとは云いがたい.今回演者は「地方におけるリウマチ診療を専門とするかかりつけ医」としての立場から,現状において我々の果たすべき役割や診療姿勢,基幹病院との連携体制の模索,診療IT化の現状と見通し,その他基幹病院側に対する要望等を述べると共に,どうすれば地方におけるリウマチ診療の質の向上が図れるかについて考察を試みた.最後に,リウマチ診療には内科系も整形外科系もなく,総合的,全人的に診療する姿勢が我々リウマチ医に求められている事を強調した.
  • 史 賢林, 橋本 淳
    2010 年 22 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
       RAでは,四肢ほぼすべての関節および頸椎が主に障害され,各部位で各種の手術が行われる.手術を検討すべき症状としては,保存療法に抵抗する疼痛やX線上の変形の進行が主であるが,痛みだけでなく変形や可動域制限等によって日常生活動作が障害される場合も手術が検討され,各部位において具体的な障害の評価が必要である.さらに隣接関節の障害を伴うことも多く,上,下肢全体の総合的な機能評価も手術適応の基準となる.
       RAの手術においては骨や靱帯等の組織が脆弱なため術中操作に十分な注意を要する.また,しばしば著明な骨欠損を伴い,関節の不安定性や逆に拘縮を来している場合も多い.さらに隣接関節や反対側の状態も考慮して,使用インプラントも含めた術式選択の検討が必要である.なお,生物学的製剤使用下の術後感染の診断にあたって,体温や血液データの変化は顕著でないため,局所の熱感や発赤といった基本的な診察を決して怠ってはならない.
       近年薬物療法が飛躍的に進歩した結果,疾患活動性の厳密なコントロールによって関節の変形や破壊が予防され,手術がやや回避される傾向にあるが,一度破壊された関節に対しては手術による機能再建がやはり必要である.さらに比較的早期の手術治療の導入により機能障害の発生や進行を予防し,身体機能や生活の質を維持しうるであろうし,今後は関節破壊の防止や損傷した軟骨や骨の再生という新たな手術方法の出現も期待されよう.
原著
  • 行岡 正雄, 七川 歓次, 行岡 千佳子, 小松原 良雄, 島岡 康則, 正富 隆
    2010 年 22 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)の尿中カテコールアミンを測定し,自律神経と気圧の変動との関連性を調査した.
    対象・方法:入院RA患者9例(男2例,女7例調査時平均年齢67.67±9.87)を対象とし低気圧(990~1000hPa)中間(1001~1010hPa)高気圧(1011~1020hPa)時の尿中アドレナリン(AD),ノルアドレナリン(ND),ドーパミン(DP),バニリルマンデル酸(VMA)を調査した.尿中AD,NAD,DP,VMAの測定方法はHCLP(2―シアノアセトアミド誘導体化)法で行い,午前1時より翌日午前1時までの間に畜尿した尿を24時間尿としてSRL®にて計測した.気圧は気象庁がホームページで公表している調査当日の大阪市の気圧を用いた.
    結果:尿中AD,NAD,VMAのいずれもが低気圧に比較して高気圧において尿中濃度が上昇していた.そのうちADで低気圧6.55±5.66μg/l と高気圧10.67±5.88μg/lとの間で統計学的有意差(p=0.0469)を認めた.またNADでは低気圧133.9±83.09μg/lと高気圧198.38±93.67μg/l(p=0.0265)及び中間気圧151.57±80.88μg/lと高気圧198.38±93.67μg/l との間で有意差(p=0.039)を認めた.
    結論:RAでは気圧の変動と伴に自律神経が変動している.すなわち,RAでは低気圧では副交感神経優位,高気圧では交感神経優位の状態となっていることが示唆された.
  • 岩田 康男, 立石 博臣, 楊 鴻生, 厚井 薫, 福西 成男, 今村 史明
    2010 年 22 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    目的:外来通院中の関節リウマチ(以下RA)患者の喫煙状況を調査した.
    対象・方法:RA患者115名,変形性関節症(膝)(以下OA)患者59名で,調査項目はRA罹患前や罹患時の喫煙歴,現在の喫煙習慣,喫煙量,その期間や検査データ(リウマトイド因子(RF),CRP,ESR,WBC,Hb)などである.喫煙者の定義はSmokers(以下S群)は罹患時に1日に少なくとも1本以上喫煙していた患者,Never smoked(以下NS群)は過去,現在を含めて全く喫煙をしていない患者,Ex-smokers(以下ES群)は罹患時に6ケ月以上喫煙を中止していた患者とした.
    結果:RA患者は女性92例,男性23例,OA患者は女性50例,男性9例であった.性別に見てみるとRAではS群は女性で92例中11例,12.0%,ES群は5例,5.4%であり,男性でS群は23例中15例,65.2%,ES群は13.0%であり,男性ではS群とES群を合わせると78.2%を占めていた.リウマトイド因子は男性RA患者のS群で平均210.0U/ml,NS群で21.5U/mlと有意にS群において高値であった.
    結論:男性RA患者の65.2%は罹患時に喫煙者であり,国民栄養調査結果と比較して高率であった.男性RA患者では喫煙者で有意にRFが高値を示した.男性喫煙者ではRAに罹患するリスクが高まっている可能性がある.
  • 青木 昭子, 須田 昭子, 岳野 光洋, 石ケ坪 良明, 前田 泉
    2010 年 22 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)患者の診療に対する満足度と影響する因子を検討する.
    対象・方法:リウマチ友の会全国大会(2009年5月)の参加会員を対象に質問票調査を実施した.質問項目⑴患者特性⑵通院医療機関と主治医の専門⑶ RAの状態⑷医師の態度⑸患者の知識と態度⑹患者と医師の関係と満足度.⑷⑸⑹は5段階Likert尺度で回答とした.2群の比較にはStudentのt検定とPearsonのχ²検定を行い,Pearsonの相関分析を行った.重回帰分析はステップワイズ法を用いた.
    結果:回収率は76.4%(382/500).60歳以上70.7%,女性90.8%.疼痛関節平均5.17個,腫脹関節平均3.12個.55.8%が診察に対して「非常に」「かなり満足」と回答した.重回帰分析の結果,患者満足度に影響する因子として「医師は患者の悩みや相談に十分応じている」.「視線を合わせて話をする」.「診察の終わりに“他に何かありませんか”と尋ねてくれる」.「医師の説明を十分に理解している」.「1回の診察時間は丁度よい長さである」の5項目が抽出された.
    結論:「患者と視線を合わせて,悩みや相談に応じ,診察に終わりに問いかけてくれる医師」「患者が説明を理解しているかを確認してくれる医師」が満足度の高い医師であることが明らかとなった.医師はコミュニケーションスキルを磨く必要があると考えた.
  • 浅沼 浩子, 西山 進, 相田 哲史, 吉永 泰彦, 宮脇 昌二
    2010 年 22 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    目的:RA患者において,経過中における抗CCP抗体価の変動と疾患活動性との関連についてIgM-RFと比較検討した.
    対象・方法:診断の確定したRA患者101例(男16,女85)について,抗CCP抗体とIgM-RFを経時的に2回測定した.発症時年齢48.5±13.0歳,初回測定時の罹病期間8.7±9.6年,測定間隔5.4±1.1年であった.最終観察時におけるRAの疾患活動性評価はDAS28-3CRPにより判定した.治療反応性については,測定期間内にDMARDsの増量または変更が行われた症例を治療反応性不良,DMARDsの減量または継続投与を行った症例を治療反応性良好と定義した.
    結果:抗CCP抗体とIgM-RFを陰陽性判定別に評価すると,抗CCP抗体陽性群と陰性群,IgM-RF陽性群と陰性群の間に,それぞれDAS28-3CRPの平均値および治療反応性の有意差は認めなかった.しかし抗体価の変動別評価では,DAS28-3CRPが抗CCP抗体価上昇群で非上昇群よりも有意に高く,治療反応性良好群の割合は抗CCP抗体価非上昇群が上昇群よりも有意に高かった.IgM-RF上昇群と非上昇群の間には,DAS28-3CRPおよび治療反応性の有意差は認めなかった.
    結論:抗CCP抗体価の変動を長期で観察した結果,抗CCP抗体価上昇群は抗CCP抗体価非上昇群よりも,DAS28-3CRPが高かった.
  • 柴田 朋彦, 柴田 俊子, 中野 弘雅, 山崎 宜興, 岡崎 貴裕, 永渕 裕子, 山田 秀裕, 尾崎 承一, 山崎 哲, 杉山 和夫
    2010 年 22 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    目的:プライマリケアの現場には,関節痛を主訴とする多くの患者が来院する.これらの患者の中には関節の疼痛のみで炎症所見を欠く症例(非炎症性疾患)も含まれ,しばしば局所の安静と保存的加療のみで症状の軽快を得る.一方,炎症性疾患には感染やリウマチ性疾患等が挙げられ,早期の診断と積極的な加療が必要となる場合が多い.抗CCP抗体は関節リウマチ(RA)に特異的な自己抗体で,「関節炎」患者のRAの診断補助に大きな意義を持つ.しかし,「関節痛」を呈する患者に抗CCP抗体を積極的に測定することが,これらの患者に含まれる早期RAの診断補助に有用かどうかは不明である.今回,我々は関節痛を主訴に来院した患者に抗CCP抗体を測定し,関節痛患者に対する抗CCP抗体測定がRAの進展予測と診断補助に有用かどうかを検討した.
    対象・方法:関節痛を主訴に来院した患者100名に抗CCP抗体を測定した.そして,患者の初診時診断と1年後診断を評価した.
    結果:抗CCP抗体は全症例中40例(40%)で陽性であった.また,初診時26例がRAと分類された.関節痛患者の1年後のRAへの移行を抗CCP抗体の有無で見ると,抗CCP抗体陽性の40例のうち1年後に30例(75%)がRAと分類されたのに対し,抗CCP抗体陰性の60例では4例(7%)のみがRAと分類された(p<0.001).
    結論:関節痛患者において抗CCP抗体のRAに対する特異性は84.9%と高く,抗CCP抗体は「関節炎」患者のみでなく,「関節痛」患者のRA進展予測と診断補助にも有用である可能性が高いと考えられた.
  • 黒田 龍彦, 吉田 寿雄, 酒井 敦史
    2010 年 22 巻 1 号 p. 66-72
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    目的:ブレディニン®錠(以下本剤)の関節リウマチ(RA)患者に対する使用実態と安全性,特に腎機能との関連性を確認すること.
    対象・方法:1996年から1999年までに実施された企業自主的調査において,本剤が投与されたRA患者の年齢,性別,体重,罹病期間,重症度(Class,Stage分類),合併症の有無および既存のRA治療薬,血清クレアチニンを調査した.同時に本剤の使用実態および副作用発現の有無と種類を調査し,副作用に対する影響因子を評価した.
    結果:情報が収集された6309例のうち,女性が77.8%を占め,その平均年齢は62.6±12.1歳であった.本剤の1日平均投与量は133.1±41.4mg,平均投与期間は203.2±111.2日であり,腎機能の低下に応じ,1日あたりの投与回数を減らす方向で投与量が調整されていることが確認された.副作用は690例(10.9%)に発現し,消化管障害,皮膚・皮膚付属器障害が中心を占めた.副作用発現の有無別で有意な差があった因子を用い,多変量解析を行った結果,罹病期間,既存の抗RA薬剤数,クレアチニンクリアランスが有意に副作用の発現と関連することが確認された.
    結論:高齢女性のRA患者に本剤を投与する場合,罹病・治療歴や腎機能を評価することが副作用の管理の上で重要であるものと考えられた.
  • 八木 信行, 岩下 輝美, 小柳 隆之, 石川 浩明
    2010 年 22 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ患者を対象に実施したPMSの症例を用いて,腎機能別のミゾリビンの有効性と安全性ならびに腎機能への影響を検討した.
    対象・方法:対象は1,805例の登録症例のうち,24週時にACRコアセットによる評価が実施され,投与開始時の推定腎機能(eGFR)が算出可能であった417例とした.eGFRはsCrと年齢から,日本腎臓学会CKD対策委員会が作成した日本人のeGFR推算式から算出しCKD stageに分類した.有効性はACRコアセットの20%改善症例率を検討した.有害事象は担当医師が本剤との因果関係を完全に否定したものを除き副作用と分類した.
    結果:CKD stageによるACR20の改善率は有意な差を認めなかった.副作用の発現頻度にもCKD stageで発現頻度に違いはあるが,有意な差は認めなかった.腎機能は各CKD Stageとも腎機能低下は認めなかった.特にStage 3では,開始時のeGFRが50.2mL/min/1.73m²±7.0から24週後には60.2mL/min/1.73m²±17.9と有意な腎機能の改善が認められ,Stage 2でも同様であった.
    結論:ミゾリビンはCKD stage 3までの患者や,高齢RA患者に対しても比較的使用しやすい薬剤ではないかと考えられた.
  • 角谷 昌俊, 新美 美貴子, 中村 薫, 妹尾 高宏, 山本 相浩, 濱口 真英, 石野 秀岳, 坪内 康則, 河野 正孝, 川人 豊
    2010 年 22 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    目的:tacrolimusは本邦で開発されたnon biologic DMARDsであり,T細胞の増殖・分化および炎症性サイトカインの産生を阻害することにより関節における骨・軟骨の破壊を抑制する.当科でデータの解析可能なtacrolimusを使用した関節リウマチ患者55例についての治療成績を報告する.
    対象・方法:当科通院中の関節リウマチ患者で2005年8月以降にtacrolimus(0.5~3mg/日)の投与を開始した55例を対象とした.『骨びらん』,『抗CCP抗体陽性』,『リウマチ因子陽性』を認めた予後不良因子群は53例(96.4%)含まれていた.投与開始6,12,18,24,30ケ月後の治療効果および副作用を検討した.治療効果に関しては治療開始前後におけるDAS28(CRP)により評価した.さらに,途中脱落した症例や投与開始後30ケ月に満たない症例に関してはLOCF(Last Observation Carried Forward)法にて補足解析を行った.
    結果:tacrolimus投与開始6ケ月後の継続率は78%と高く,治療成績は投与開始6ケ月の時点でgood responseまたはmoderate responseを獲得した症例が43例中26例と良好であった.LOCF法でもいずれの観察月においても有意差(P<0.001)をもって治療効果を認めた.さらにDAS28(CRP)が2.6未満の寛解に到達した症例は6ケ月目の時点で43例中16例,12ケ月では33例中15例であった.
    結論:tacrolimusは早期に他のDMARDsやステロイドとともに少量投与で開始し徐々に増量することで,予後不良因子を含めた関節リウマチに対し安全に使用でき,かつ治療成績も良好であった.
  • 元村 拓, 松下 功, 関 英子, 木村 友厚
    2010 年 22 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)患者に対するタクロリムスの臨床成績とX線評価による関節破壊抑制効果を検討すること.
    対象・方法:対象はMTXを含むDMARDs抵抗性のRA患者に対して,タクロリムスへの変更投与またはタクロリムスの追加投与を行った24例である.疾患活動性はDAS28-4/ESRにより評価し,治療反応性はEULAR基準改善度を用いて判定した.タクロリムス投与前後で両手,両足のX線撮影が可能であった8例に対してmodified total Sharp score(mTSS)を測定し,年間のmTSSの変化率であるΔmTSSにより関節破壊の抑制効果を評価した.
    結果:タクロリムス投与して1年後に13例(54.1%)でmoderate response以上の改善がみられた.一方,9例は効果不十分または有害事象により1年間継続できなかった.X線評価を行った8例のΔmTSSは投与前平均24.3であったが,タクロリムス投与後1年間の変化量は平均3.62となり1例を除いて関節破壊の進行が抑制された.
    結論:DMARDs抵抗性のRA患者に対するタクロリムス投与は,概ね良好な臨床成績を示した.症例数の限られた検討であるが,タクロリムスは関節破壊抑制効果を有していることが示唆された.
  • 三輪 裕介, 穂坂 路男, 佐藤 理仁, 高橋 良, 若林 邦伸, 小田井 剛, 磯崎 健男, 矢嶋 宣幸, 笠間 毅
    2010 年 22 巻 1 号 p. 91-98
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)患者の約14-42%は抑うつ傾向があり,一方エタネルセプト(ETN)はRA対する有効性が高く,抑うつ状態が改善すると推定される.その機序について血清TNF-α,IL-6,dehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)の測定も含めて検討した.
    対象・方法:ETN治療を開始したRA患者16例に対し,治療開始前,治療開始14,30週後にSelf-rating Depression Scale(SDS)とともにDAS28(ESR4),mHAQ,血清TNF-α,IL-6,DHEA-Sの測定を同時に施行した.治療前後のSDS,mHAQ,血清TNF-α,IL-6,DHEA-SをDAS28(ESR4)を用いたEULAR改善基準の改善度別に評価した.
    結果:EULAR改善基準で中等度以上の改善群では,治療後のSDS,mHAQ,IL-6,DHEA-Sはそれぞれ有意にに低下した.無反応群では,治療後のSDS,mHAQ,IL-6,DHEA-Sに有意な改善は見られなかった.両群とも血清TNF-αに有意な改善は認めららなかった.
    結論:ETN治療有効例では,血清IL-6,DHEA-Sの改善を介してRA患者の抑うつ状態が改善する可能性が考えられた.
  • 行岡 正雄, 行岡 千佳子, 村田 紀和, 前田 晃, 島岡 康則, 行岡 和彦, 三木 健司
    2010 年 22 巻 1 号 p. 99-105
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)に合併した線維筋痛症(FM)の合併頻度,及びその臨床的特徴を調査する.
    対象・方法:FM症状を呈していないRA患者88例(男性11例,女性77例,調査時平均年齢58.3歳±13.3)について圧痛点の検討を行った.RA215例(男性42例,女性173例,調査時平均年齢58.5歳±13.8)においてFMの合併頻度を調査し,RAに合併したFMの抑うつ状態を中心にその臨床的特徴を検討した.なお,FMの診断は米国リウマチ学会1990年のFM 分類基準を用い,調査時及び過去にFM症状を呈していた患者を後ろ向きに抽出した.
    結果:1)FMを合併していないRAの平均圧痛点数は2.7であった.2)RA215例中20例(9.3%)にFMを合併していた.3)20例中2例は初診時FM症状を呈しており平均1年でRAに移行した.4)初診時RAに合併したFMは12例で,そのうち10例(83.3%)に抑うつ状態を合併していた.5)RAの経過中FM症状が出現した6例中5例(83.3%)に抑うつ状態が認められそのうち3例にCRPの上昇を,2例に明確なストレッサーが確認できた.6)RAに抑うつ状態を合併しているにも関わらず,FM分類基準を満たさない4症例が存在した.
    結論:発症早期のFMはRAの前駆症状の可能性を念頭におく.RAに合併したFMの原因として抑うつ状態は重要な因子であるがFM=抑うつ状態ではなく,FM体質に加えて,抑うつ状態,精神的,肉体的なストレス,CRP上昇等の炎症性ストレスが複雑に絡み合ってFMが惹起されるものと思われる.
  • 髙山 真希
    2010 年 22 巻 1 号 p. 106-111
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    目的:神経ベーチェット病(NB)のMRI画像についての脳幹部萎縮の定量的な検討を行った.
    対象・方法:急性型NB9例と慢性進行型NB14例,及び,コントロール群として,種々の神経症状のため頭部MRIを撮影した非ベーチェット病の46例を対象とした.頭部MRI正中矢状断像における脳幹部面積をAdvantage Workstation ver3.0により定量し解析した.
    結果:中脳被蓋の面積は,急性型NBでは135.11±24.29mm²(mean±SD),慢性進行型NBでは98.64±24.40mm²,コントロール群では143.64±21.70mm²で,橋の面積は,急性型NBでは490.11±97.00mm²,慢性進行型NBでは395.71±88.90mm²,コントロール群では526.97±50.74mm²であり,いずれも急性型NBとコントロール群の間には有意差は認めず,慢性進行型NBは急性型NBあるいはコントロール群に比し,有意に面積の縮小を認めた.慢性進行型NBでは,脳幹部の萎縮は罹病期間と相関する傾向が見られた.
    結論:以上より,慢性進行型NBにおいては,急性型NBあるいはコントロール群と年齢には差がないにもかかわらず,脳幹部の萎縮が強いことが定量的に示された.脳幹部の萎縮の定量的評価は,今後早期診断や治療効果の判定への応用が期待される.
  • 畑中 良, 早川 純子, 金子 菜穂, 青木 正紀, 西成田 進
    2010 年 22 巻 1 号 p. 112-116
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
       MTXとinfliximabの投与により寛解中の関節リウマチ患者が,生物学的製剤を中止しても,長期(18か月以上)にわたって病状の再燃がみられず,臨床的寛解を維持している一例を経験したので症例報告する.本例は罹病期間の長く,高齢で進行したstageⅣのRA(established RA)にあっても寛解後infliximabが離脱できる可能性を示している.
  • 青木 正紀, 松川 吉博, 畑中 良, 西成田 進
    2010 年 22 巻 1 号 p. 117-124
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
       22才,女性.2002年に全身性エリテマトーデスと診断.2008年2月にループス腎炎を併発し,プレドニゾロンの増量後にタクロリムスを追加した.reversible posterior leukoencephalopathy syndromeを発症し,CNSループスによるものと考え,ステロイドパルス療法を施行した.免疫抑制剤関連脳症も否定できず,タクロリムスを投与する場合には注意すべき病態と思われた.
  • 和田 靖之, 南波 広行, 久保 政勝, 井田 博幸
    2010 年 22 巻 1 号 p. 125-132
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
       10歳時左足関節炎で発症した21歳の女性.low dose weekly MTXにて治療開始,速やかに症状軽快した.しかしその後さまざまな部位に関節炎が出現,各種免疫抑制剤に抵抗を示した.10年後に強い関節破壊が予測され,Infliximabの投与を開始し著明に改善した.Juvenile idiopathic arthritisでは,RF陽性例をextended oligoarthritisの範疇から除外しており,本症例のようなRF陽性例をどの病型に分類するかは今後の課題となった.
  • 森 佳幸, 安藤 麻衣子, 中原 英子, 比嘉 慎二, 森島 淳仁, 五十嵐 敢, 栗谷 太郎, 前田 恵治, 赤木 良隆, 水野 仁, 中 ...
    2010 年 22 巻 1 号 p. 133-137
    発行日: 2010/03/30
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
       TINU症候群はぶどう膜炎を伴う間質性腎炎を特徴とする.症例は42歳女性で主訴は発熱,頭痛であった.頭痛の出現後,39度台の発熱,霧視が出現した.検査値はCRP9.7mg/dlまで上昇を認め,その後血清クレアチニン値が3.3mg/dlに上昇した.プレドニゾロン40mg/日の投与を開始した.翌日から発熱は改善し,第16病日には血清クレアチニン値,CRPとも正常化した.同時期に霧視も改善を認めた.
臨床リウマチ医のための基礎講座
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