臨床リウマチ
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23 巻, 4 号
臨床リウマチ
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Editor's Eye
誌説
総説
  • 槇野 茂樹
    2011 年 23 巻 4 号 p. 255-260
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
       RAに伴う肺病変は,RAそのもの,RAの合併病態によるもの,薬剤性,感染性,偶発性などがあり,胸膜,気道,肺実質,肺間質,腫瘤/結節,肺血管などを冒し多彩である.
       気道病変は,ろ胞性細気管支炎,閉塞性細気管支炎があり,薬剤性や感染性もある.
       実質性病変は感染性肺炎が主体である.一般細菌性肺炎,肺結核,肺真菌症,ニューモシスチス肺炎,サイトメガロウィルス肺炎などがある.RA治療薬の抗TNF-α剤では肺結核,非結核性抗酸菌症が問題になる.
       腫瘤/結節性病変では,リウマトイド結節があり腫瘍との鑑別が問題となる.
       RAの間質性肺炎の合併は約5%で男性に多い.COP,DAD,UIP,NSIPの4病型が見られる.慢性型ではNSIPよりUIPの方が多くUIPは男性,かつ喫煙者に多いようである.
       RA治療薬は薬剤性肺炎を起こしやすく,金剤,MTX,レフルノミドなどで頻度が高いが他の製剤でも起こる.DAD様,COP様など種々のタイプの薬剤性肺炎がみられるが,1つの薬剤で多くのパターンが見られる.
       RAに伴う肺病変に対する対応では,治療前スクリーニング,RAに伴う肺病変の管理・治療,治療中の新規肺病変への対応,肺病変を有する患者へのRA治療の対応の4つの局面があり,肺病変の知識を集める,胸部X線を必ずチェックする,呼吸器内科医への相談ルートを確保することが必要と考える.
  • 中村 郁朗, 西岡 久寿樹
    2011 年 23 巻 4 号 p. 261-268
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
       関節リウマチの治療においては生物学的製剤が次々と登場してきたが,リウマチ性疾患には難治性のものも多く,引き続き病因の解明とともに有効な治療薬の開発が望まれている.医薬品の開発においてはベンチャー企業が大きな役割を果たしてきているが,一方で開発資金の面も含めて大きな困難を抱えながら企業活動を行っている.医薬品の研究開発においては,ベンチャー企業においてもGMP,GLP,GCPをはじめとする法令やガイドラインに従い,高い倫理性と科学性に基づいてPOCを獲得しなければならない.リウマチ性疾患をはじめとする難治性疾患の治療における様々なunmet medical needsに応える上で,製薬企業にはない着眼点から創薬をめざすベンチャー企業の果たすべき役割は今後も大きく,官民一体となった支援が必要と思われる.
原著
  • Yuko Sugioka, Shigeyuki Wakitani, Masahiro Tada, Tadashi Okano, Hiroak ...
    2011 年 23 巻 4 号 p. 269-278
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:インフリキシマブ投与中(IFX)の関節リウマチ(RA)患者において,治療効果が得られている場合,メソトレキセート(MTX)の減量にて効果が維持できるかについて検討すること.また,IFXに効果不良例に対し,タクロリムス(TAC)の少量追加による3剤併用療法の効果についてあわせて検討すること.
    対象・方法:IFXとMTXの併用療法を22週以上受けている51名のRA患者が対象.Disease activity score (DAS) 28-CRPを使用し,DAS28≦3.2を効果良好とした.エントリー時点でIFX療法に対し,効果良好例ではMTXを8週ごとに2mgずつ最小2mg/週まで減量し,減量にてDAS28>3.2に増悪した際にはTACを1mg/日追加する.また,エントリー時,DAS28>3.2の効果不良例にはTACを8週ごとに1mg/日ずつ最大2mgまで追加投与し,32週間経過観察をした.
    結果:30名がエントリーし,21名(70%)が効果良好のため,MTXの減量を行った.21名中16名はMTXを平均7.18mgから2.50mg/週まで減量しても,良好な治療効果を維持することができた.罹病期間が5年以下,もしくはclass Iの患者は全員減量にても効果が維持できた.再燃した5名に対し少量のTACを追加したが,十分な効果を得られなかった.また,エントリー時に効果不良であった9名はTACを平均1.22mg/日追加したところ,3名のみがDAS28≦3.2に改善を認めた.
    結論:IFXに効果良好例ではMTXを平均2.50mg/週まで減量しても76%の患者が臨床的効果を維持することができた.また,効果不良例では,少量のTAC追加にて十分な治療効果はえられなかった.
  • 小早川 知範, 平野 裕司, 大石 幸由
    2011 年 23 巻 4 号 p. 279-284
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:現在,抗Tumor necrosis factor(TNF)療法が関節リウマチ(RA)の治療に広く行われているが,その治療効果予測因子として明確な指標はない.抗シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)は,2008年のAmerican College of Rheumatology(ACR)のrecommendationにて予後不良因子の一つであると示されたが,生物学的製剤の治療予測因子となりうる可能性もある.そこで我々はinfliximab(IFX)の治療効果と抗CCP抗体との関連について検討した.
    方法:対象は2006年9月~2010年4月にIFXを投与したRA患者64例のうち抗CCP抗体値をIFXの開始前後に測定した38例を対象とした.IFX開始時の抗CCP抗体値が100U/ml未満をA群:18例,100U/ml以上をB群:20例とした.Disease activity score in 28 joints(DAS28)とそのcomponent,血清Matrix metalloproteinase(MMP)-3値,薬剤投与継続率を両群間で比較した.さらに,IFXの効果と抗CCP抗体値との関連を調査した.
    結果:C-reactive protein(CRP)値に関しては,0週時,6週時,22週時においてA群がB群と比べ有意に低値だったが,他の項目では両群間に有意差を認めなかった.また,0週時と22週時の比較では,A群はMMP-3値以外の全ての項目が有意に低下したが,B群では,圧痛関節数,腫脹関節数,赤沈1時間値,MMP-3値は有意な低下を認めなかった.また,IFXの反応性と抗CCP抗体値の変化量では,治療反応群(good response+moderate response in EULAR criteria)は0週時と最終観察時の抗CCP値を比較すると有意に低下したが,治療非反応群(no response)は,抗CCP抗体値の有意な低下を認めなかった.
    結論:抗CCP抗体値100U/ml以上の群は100U/ml未満の群と比較するとIFXの治療反応性が悪い可能性が示唆され,抗CCP抗体値は治療反応群では有意に低下した.よって,抗CCP抗体値は抗TNF製剤の効果予測因子となる可能性も示唆された.
  • 佐藤 正夫, 清水 克時, 竹村 正男, 四戸 隆基
    2011 年 23 巻 4 号 p. 285-290
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)に対するインフリキシマブ(IFX)療法において,IFXの効果減弱例ではIFXの投与量増量(以下増量)と投与間隔期間短縮(以下期間短縮)が2009年7月に追加承認された.そこで,IFXの増量,期間短縮を行った症例について検討した.
    対象と方法:IFXを投与した症例は124例で,男性23例,女性101例であった.年齢は24歳~81歳,平均56歳であった.IFXの投与回数は4回~51回,平均17回であった.これらの症例において,IFXの増量,期間短縮の施行状況とその効果,有害事象の発生等からIFXの継続状況を検討した.
    結果:124例中,IFXの効果減弱のためにIFXの増量,期間短縮を行った症例が42例あった.内訳は増量14例,期間短縮15例,増量・期間短縮が13例であった.IFXの増量,期間短縮を試みたが,効果が得られず他剤に変更した症例は8例であったが,33例(78.6%)はIFX投与の継続が可能であった.
    結論:IFXの増量,期間短縮を行った効果減弱例42例中33例(78.6%)は効果減弱を回避してIFXの投与を継続中であった.効果減弱時におけるIFXの増量,期間短縮は有用な手段であると考えられた.
  • 竹内 公彦, 松下 正寿
    2011 年 23 巻 4 号 p. 291-296
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(以下RA)患者に対してエタネルセプト(ETN)投与法別にその臨床効果や発現する合併症に違いがあるかを調査した.
    対象および方法:当院にてETN を導入した72例のうちETN の投与方法別に3群に分けて比較を行った.A群投与開始時より25mg週2回投与を継続する群(36例),B群投与開始時より25mg週1回投与を継続する群(24例),C群25mg週1回投与で開始後に週2回投与へ漸増する群(12例)である.各群のETN 投与開始時の平均年齢,RA罹病期間,MTX投与量,PSL投与量,臨床指標(DAS-CRP,CRP値,血清MMP-3値)などの背景因子を比較し,ETN 投与前後の臨床指標の変動を調査した.
    結果:ETN治療開始時における年齢,RA罹病期間,MTX投与量,PSL投与量,血清CRP値,MMP-3値,DAS-CRPは,各群とも有意差を認めなかった.24週後のDAS28/CRPでの寛解率はB群(29.4%)が最も高かった.投与中止となった症例は9例で,うち6例が細菌感染による有害事象であり,52週時点でのKaplan-Meier法による継続率はA群(83%)が最も高かった.
    結論:ETN 25mg週1回投与でも週2回投与でも24週時点での得られる臨床効果には差はなかった.合併症発現による投与中止は週1回投与のほうがやや多い傾向にあった.
  • 平野 裕司, 金子 敦史, 藤林 孝義, 服部 陽介, 寺部 健哉, 大石 幸由, 小嶋 俊久, 石黒 直樹
    2011 年 23 巻 4 号 p. 297-304
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:多施設研究データを用いて関節リウマチ(RA)に対するアダリムマブ(ADA)の効果を解析すること.
    対象・方法:名古屋大学医学部整形外科関連施設による生物学的製剤研究グループ(Tsurumai Biologics Communication;TBC)のデータを使用した.ADAの効果を生物学的製剤(Bio)未投与群(N群:125例)と他Bioからの変更群(S群:75例)に分類して比較した.またS群においてインフリキシマブからの変更群(IFX-ADA群)とエタネルセプトからの変更群(ETN-ADA群)の治療成績を比較した.
    結果:N群とS群の間に患者背景には有意差はなかった.24週時のDAS28-ESRの平均値はN群が3.84,S群が4.40で統計学的有意差を認めた.24週時のEULAR基準による寛解率はN群が29.3%,S群が17.8%だった.24週時のMMP-3値の平均値はN群が215.2ng/ml,S群が262.0ng/mlで有意差を認めた.薬剤投与継続率はN群がS群と比較して有意に良好であった.IFXADA群はETN-ADA群よりも投与継続率,EULAR反応率,MMP-3値において良好な成績であった.
    結論:ADAの効果はN群ではS群よりも良好であった.またIFX-ADA群はETN-ADA群よりも良好な成績であった.
  • 三橋 尚志, 万波 健二
    2011 年 23 巻 4 号 p. 305-310
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:アダリムマブ(ADA)の長期成績をX線学的評価も含めて検討した.
    対象・方法:対象はADAを投与開始後2年以上経過したRA患者56例(男性14例,女性42例,平均年齢61.4歳)で,他の抗TNF製剤からのスイッチングは39例,抗TNF製剤未投与例は17例であった.ADAを2週間に1回皮下注射し,臨床評価は投与開始4,8,12,16,24,52,104週後にEULAR改善基準(DAS28CRP)を用いて行い,投与開始2年後にMHAQおよびシャープ法を用いて機能的評価,画像的評価を行った.
    結果:56例中2年間ADAを投与継続し得たのは22例で,DAS28CRPおよび血中MMP-3濃度ともに2年間有意な減少を認めた.効果不十分あるいは2次性無効による中止は25例であり,副作用による中止は5例,自己の都合による中止は4例であった.2年間継続し得た22例においてMHAQを用いた機能的評価では有意な改善が得られ,画像的評価でも特にgood response群(14例)において骨関節破壊抑制効果が認められた.
    結論:ADAにより疾患活動性が抑制された例では,2年後の機能および画像評価において明らかな改善効果が得られた.
  • 菊池 啓, 嶋田 亘, 宗圓 聰, 神谷 正人, 野中 藤吾, 西坂 文章, 船内 正憲, 生駒 真也, 入交 重雄, 山口 眞一
    2011 年 23 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:既存RA薬剤抵抗性のRAに対しADAの使用状況を調査し,使用状況による臨床効果を評価し,ADAの最適使用を検討する.
    対象・方法:2009-2010年近畿大学リウマチグループ多施設オープン試験としてADA治療を受けたRA患者55例の臨床評価を投与後24週で行なった.
    結果:24週経過した53例の医師効果判定は著効14例,有効25例,無効/効果減弱9例,判定不能5例で,有効以上が73.6%と高い有効性が得られた.最終寛解率はDAS寛解22.4%,CDAIで19.0%であった.LOCF解析するとDAS28は5.23が3.66に減少し,臨床成績はbio naïve群とMTX併用群で優れていた.
    結論:ADAの最適使用は生物製剤第一選択でMTXと併用して使用することである.
  • 佐藤 正夫, 清水 克時, 竹村 正男
    2011 年 23 巻 4 号 p. 318-322
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:近年,関節リウマチ(RA)の治療において,生物学的製剤の登場により患者のQOLは著明に向上した.しかし,様々な薬物の登場によりRA患者ならびにその家族に対して正確な情報が発信されているかについては疑問である.我々は日本リウマチ友の会岐阜県支部の要請で,大学病院において毎年4月にリウマチ講演会・療養相談会を患者とその家族を対象に開催し,4回を数えたので,その開催実績,反響等について報告する.
    結果:開催場所は岐阜大学医学部付属病院1階多目的ホールで,参加者数は70~100名であった.講演はリウマチ専門医のみではなく,臨床検査技師,理学療法士,薬剤師,社会福祉士にも広く依頼した.参加者に対するアンケート調査では,RAに対する知識が整理された,自分だけが苦しんでいるわけではないことがわかったなど,今後の治療に前向きになれたという意見が多かった.しかし,その反面,講演の内容が難しすぎる,もっとゆっくりと時間をかけて説明してほしいなどの意見もあり,参加者が多様であることが判明した.
    結論:いろいろな意見を参考に今後の講演会・療養相談会の運営を充実させ,患者およびその家族にRAに関する正しい情報を提供していく必要がある.
  • 近藤 直樹, 藤澤 純一, 荒井 勝光, 近藤 利恵, 和田 庸子
    2011 年 23 巻 4 号 p. 323-328
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
       トシリズマブ使用下に肺炎を生じた関節リウマチの2例を経験した.2例とも臨床症状は肺炎発症前より持続していた(症例1;全身倦怠感,悪寒,発熱,症例2;咳,痰,呼吸困難)が,初診時のCRPは陰性でありトシリズマブ投与の影響でマスクされていた.白血球数および好中球分画の上昇が見られ,肺炎発症前と比較しても高い上昇率を示していたことから,これらは肺炎の診断の一助となると思われた.2例とも肺炎軽快後RA疾患活動性が上昇し1例(症例1)はトシリズマブ再開,1例(症例2)はエタネルセプトへ変更した.
  • 手嶋 智子, 小川 英佑, 永井 立夫, 田中 住明, 石川 章, 廣畑 俊成
    2011 年 23 巻 4 号 p. 329-334
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
       症例は43歳男性.2010年5月中旬より両手指関節痛および顔面紅斑,6月初旬より微熱を認め,蛋白尿,抗核抗体陽性およびリンパ球減少から全身性エリテマトーデスと診断した.検査所見で抗DNA抗体は陰性であったが,免疫複合体と抗リボソームP抗体が陽性であった.腎生検にてclass Vのループス腎炎の組織型を示し,蛍光抗体法で腎糸球体にIgGと補体の沈着を認めた.本症例では抗DNA抗体が陰性であることから,腎炎の発症に抗リボソームP抗体の関与が考えられた.
誌上ワークショップ ACR/EULAR提案のRA診断基準について
  • 川上 純, 川㞍 真也, 中村 英樹, 玉井 慎美, 寺田 馨, 折口 智樹, 上谷 雅孝, 青柳 潔, 江口 勝美
    2011 年 23 巻 4 号 p. 335-338
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
       関節リウマチ(RA)の予後改善には早期からの抗リウマチ治療の介入が不可欠である.1987年RA分類基準は早期からのRA分類には不向きであり,2010年8月,米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)が協同で作成した新しいRAの分類基準(2010RA分類基準)が発表された.一方,私たちは自己抗体とMRI画像での早期RAの分類・診断基準をNagasaki scoreとして報告したが,今回は当科における早期関節炎の前向きコホートを用いて,2010RA分類基準とNagasaki scoreを同時に評価した.2010RA分類基準,Nagasaki scoreはほぼ同じ精度でRAを分類し得た.Nagasaki scoreの特徴としては,2010RA分類基準でRAと分類できない症例においても,特にMRI骨髄浮腫に着目すれば,RAと分類可能であることが示唆された.今回の結果より早期関節炎の鑑別には,2010RA分類基準が有効であることが明らかとなった.今後はMRIや超音波のより有効な用い方の検証が必要と考えられる.
  • 田中 良哉, 竹内 勤, 山中 寿, 針谷 正祥, 宮坂 信之
    2011 年 23 巻 4 号 p. 339-343
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
       関節リウマチ(RA)は,関節炎を主座とする自己免疫疾患である.発症早期から関節破壊が進行し,不可逆的な身体機能障害を生ずる.したがって,発症早期からの適正な診断と治療が必要である.2010年,将来的に関節破壊,遷延化する関節炎を分類する目的で,米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)から2010年RA新分類基準が公表された.第1段階では1つ以上の関節炎を認める症例を他の疾患と鑑別して分類し,第2段階では,関節炎,血清学的検査,罹病期間,急性期反応の4項目を重み付けに従い分類し,総合的にRAと診断する.また,ACR/EULARからは,関節破壊を生じないことを治療目標とした臨床的寛解基準が採用された.さらに,診断から寛解達成に至るまでの道程ともいうべき治療指針が提言された.2010年はRA診療の変革の1年であるが,本邦に於いても目標達成に向けた的確な治療の実施を目指した標準化を一層進めていく必要がある.
誌上ワークショップ 実地医によるRA寛解導入の実態と今後の治療ベストプラクティスの方向性
  • 安倍 千之
    2011 年 23 巻 4 号 p. 344-348
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:寛解基準を比較解析し,将来,日本国内での活用に資する情報を獲得することを目的とした.
    対象・方法:臨床的寛解基準6件,構造的寛解基準1件,機能的寛解基準1件を解析対象とした.とくに臨床的寛解基準に関しては,対比する形で検討した.
    結果:生物学的製剤アダリムマブ(ヒュミラ)による治療症例に,臨床的寛解基準を適用した.その結果,感度に差を認めた.Boole式<CDAI<DAS28の順になった.
    結論:臨床的寛解基準の感度に違いが認められた.その結果に鑑みて,さらなる解析が要求されることが判明した.
  • 山前 邦臣, 山前 正臣
    2011 年 23 巻 4 号 p. 349-355
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチの寛解導入には早期診断と早期治療が大切である.診断は治療に直結するため,各種診断基準を比較し,次に治療ガイドラインの課題を比較検討した.
    対象:診断基準の感度,特異度の比較は聖マリアンナ医大西部病院リウマチ内科の初診患者104人を対象にし,他は当院RA患者約2000人を対象に治療ガイドラインの課題を検討した.
    結果・結論:診断(分類)基準の比較では,旧ARA基準と2010年ACR/EULAR新基準は感度が低く早期診断の役に立たない.2009年ACR/EULAR基準と厚生省早期診断基準が感度,特異度ともに良く早期診断にも有用である.診断には「血清学的因子」よりX線,特に乳腺撮影用フィルム使用の高解像度X線写真(HRR)が優れている.治療ガイドラインの課題では,MTXの用量規制と生物学的製剤(Bio)が高額で使えない患者が多いことである.JCRはDMARDsを3ケ月使用後でも画像検査で進行性骨びらんを認めればBioの使用を勧めている点は重要で,Bio変更に際しても画像診断を規準とすべきである.HRRなど画像検査で治療効果を判定するタイトコントロールこそが関節破壊を止め,骨修復へと導く道と考える.
  • 松野 博明
    2011 年 23 巻 4 号 p. 356-364
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
       関節リウマチ(以下RA)に対する薬物療法は1980年代より疾患修飾性抗リウマチ剤(DMARDs)が中心に使用されてきたが,2000年代の生物学的製剤の導入により大きなパラダイムシフトが起こった.治療の目標もこれまでの消炎鎮痛から寛解を目指すようになってきている.しかし,生物学的製剤がRA患者のすべてに福音をもたらしているわけではなく,高い薬剤費,効果不十分症例,安全性などの問題もある.さらに,薬物使用法についても問題点があり,たとえば,①どのようなタイミングで生物学的製剤を開始するか? ②寛解に導入された場合中止は可能か? また,生物学的製剤を中止した後はどう対応すればよいか? ③ DMARDsと生物学的製剤の使い分けは? ④ DMARDsの治療は単剤か併用か? などについて明確にする必要がある.
       そこで著者らは,米国のTEAR試験を参考に日本のDMARD3剤の併用療法と生物学的製剤との比較を日本リウマチ実地医会を中心に臨床試験(JaSTAR study)を実施することにした.本論文ではDMARDsの併用について文献的考察をするとともにRA患者が真に望む治療方法や薬物療法の方向性についても考察する.
誌上ワークショップ RAの集約的治療:内科医から見た整形外科医のピットホールと整形外科医から見た内科医のピットホール
  • 神戸 克明, 中村 篤司, 千葉 純司
    2011 年 23 巻 4 号 p. 365-370
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
       関節リウマチ(RA)の治療に対して上肢の機能障害の早期改善は日常生活動作に直接つながる最も大切な要因である.生物学的製剤を使用しても寛解とならない症例や寛解を達成しても治りにくい上肢の関節に対して外科的治療は選択となる.RAの上肢の障害に対する手術のタイミングは滑膜切除として1.生物学的製剤効果減弱例の関節腫脹,疼痛残存,2.生物学的製剤有効例の関節痛残存,可動域低下症例,人工関節置換術として手指変形,肘,肩関節機能障害のある症例であり,手形成術として手伸筋腱断裂や手指ボタンホール変形残存症例などが考えられる.これらの症例は生物学的製剤が有効であっても機能障害は残存傾向があり進行RAにおいては特に積極的な手術治療も考慮すべきと考えられる.
  • 徳永 大作, 小田 良, 久保 俊一
    2011 年 23 巻 4 号 p. 371-375
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
       Disease modifying antirheumatic drugs(DMARDs)および生物学的製剤を中心とした,関節リウマチ(RA)に対する薬物療法の進歩はめざましく,発症早期からの積極的治療による疾患コントロールが可能となった.しかし,全身的な疾患活動性の制御のみならず,おのおのの関節における局所の変化を見逃さないことが重要である.手術療法に関しては,関節の変形や機能障害が進行する以前に,障害の発生を抑制することを目的とした手術の比重が大きくなると思われ,整形外科医と内科医の連携が重要と考える.
  • 鷲見 正敏
    2011 年 23 巻 4 号 p. 376-382
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
       最近のRA頸椎病変に対する手術成績は,比較的良好で安定したものになってきている.しかし,頸椎病変をきたしたRA症例の全身状態は不良のことが多く,大きい侵襲の手術が適応される機会が多いため,手術を適応するには慎重にならざるをえない.しかし,著者らのRA頸椎病変の自然経過についての前向き調査では,すでに不安定性を認める症例やムチランス変形を認める症例の多くは5年後にさらに強い不安定性をきたすことが判明した.さらには,不安定性を認めない症例であっても,その12.9%が重度の不安定性を発症し,4.3%が脊髄症をきたす可能性を有していた.また,症例を呈示することで,重度のRA頸椎病変例では呼吸麻痺による死亡の可能性があることについて述べた.このように,RA頸椎病変は進行性で,しかも重症になると致死性となる可能性も孕んでいる.このため,軽度であっても脊髄症を呈している症例については,積極的に手術を適応すべきであると考える.ただし,感染や嚥下障害などの術後合併症発生率は他の頸椎疾患のものよりも高いため,術前に手術のリスクについて説明する必要がある.さらに,軽度の脊髄症症例に対して手術治療を考慮する際,術前症状の改善が大きくはならないことについても理解を求める必要がある.
  • 野村 篤史, 岡田 正人
    2011 年 23 巻 4 号 p. 383-386
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
    目的:近年,関節リウマチの病態の理解と薬物療法の進歩が進み,早期からの抗リウマチ薬の積極的な使用により日常生活に制限が必要になるような機能障害を起こすことは少なくなっている.特に生物学的製剤の導入は著しく関節リウマチの治療を変化させた.どのような症例に対して,どの時点で生物学的製剤の治療を開始すべきであるか,近年の知見をもとに概説する.
    方法:抗リウマチ薬や生物学的製剤に関する文献や報告をもとに,関節リウマチの治療と活動性や関節破壊の進行について検討した.
    結果:生物学的製剤を早期から使用した群と遅れて使用した群の比較では生物学的製剤の開始時期がおくれると関節破壊の進行に差が生じることが明らかとなっている.関節破壊の進行を防ぐために,寛解の得られていない,特に活動性の高い症例に対しては生物学的製剤を早期から開始することが望ましいと考えられる.低疾患活動性の症例では生物学的製剤の使用をしなくても臨床的に有意な関節破壊の進行を認めない症例も多い.
    結論:寛解を目標にした治療をおこなうことで関節リウマチによる関節破壊を予防できる.高疾患活動性の症例に対しては早期に薬物療法を強化する積極的な治療法が望ましい.
誌上ワークショップ 生物学的製剤の新しい展開
  • 福田 孝昭
    2011 年 23 巻 4 号 p. 387-391
    発行日: 2011/12/30
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
       Infliximabは,用法・用量の増加・短縮が認められたものの,段階的に増量する方法や,投与間隔の短縮に対する有効性,安全性については,日本人におけるエビデンスがない.福岡RA生物学的製剤治療研究会では,増量あるいは投与間隔を短縮した際の,DAS28スコア改善効果や低疾患活動性の維持効果について検討した.今回,増量後6ケ月を経過した38例についてまとめた.男28.9%,女71.1%,平均年齢56.2歳,罹病期間は平均13.4年と罹病期間は長い症例が多く,MTX併用量平均7.7mgで,SteinbrockerのStageはⅠ:2.6%,Ⅱ:15.5%,Ⅲ:23.7%,Ⅳ:57.9%と進行例が多く,Classは1:2.6%,2:52.7%,3:42.1%,4:2.6%で,ステロイドの併用率は81.3%であった.結果:増量前と6ケ月後のDAS28の平均は,4.6から3.6へ有意(p<0.001:t検定)に低下した.増量前全て中疾患活動性以上を示していたが,6ケ月後は,低疾患活動性10例(26.3%),寛解症例が7例(18.4%)と,全体の約45%の症例が,低疾患活動性以下と明らかな有効性が認められた.副作用発現頻度は低く,IFXの段階的な増量は,より高い治療目標達成の実現に期待できる結果であった.
臨床リウマチ医のための基礎講座
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