臨床リウマチ
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25 巻, 2 号
臨床リウマチ
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
Editor's Eye
誌説
総説
  • 篠原 正浩, 高柳 広
    2013 年25 巻2 号 p. 85-92
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
       骨の恒常性は,骨を形成する骨芽細胞と骨を吸収する破骨細胞のバランスによって保たれている.しかし,関節リウマチ(RA)をはじめとする炎症性関節炎では,関節局所における異常な免疫の活性化による炎症により,破骨細胞が異常に活性化し,骨破壊が進行していく.近年,骨代謝学と免疫学の融合領域である骨免疫学の発展に伴ってRAの病態理解も進んできており,破骨細胞の活性化の分子メカニズムも徐々に明らかとなってきた.RAにおける骨破壊を抑制するためには,破骨細胞分化・機能の分子メカニズムを正しく理解し,この分子メカニズムに立脚した治療が必要とされている.本稿では,免疫系による制御を含んだ破骨細胞分化ならびに機能の分子メカニズムを概説し,新たな骨破壊抑制のための治療戦略の可能性を探っていきたい.
原著
  • 佐伯 将臣, 平野 裕司, 富田 浩之, 大石 幸由
    2013 年25 巻2 号 p. 93-98
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    目的:週8mgを超えてメトトレキサート(MTX)を投与した関節リウマチ(RA)患者を対象に,その有効性と安全性について検討すること.
    対象・方法:当科で週8mgを超えてMTXを投与したRA患者,80例(男19例,女61例).有効性は,増量開始時,3か月後,6ケ月後で検討し,DAS28-CRP,MMP-3,CRPで評価した.安全性は,有害事象について調査した.
    結果:平均年齢は57±13歳.平均罹病期間は9±8年.生物学的製剤併用例は30例(38%)であり,葉酸は全例に投与し,平均投与量は5.2±1.2mg/週である.調査時において,6ケ月以上増量継続例は67例(84%)であり,MTXの中止又は週8mg以下への減量例は13例(16%)だった.6カ月間増量継続例では,平均DAS28-CRPは3.49(0m)-2.56(3m)-2.51(6m)に有意に低下した.平均CRP(mg/dl)は,1.5(0m)-0.6(3m)-0.8(6m)に有意に低下した.平均MMP-3(mg/dl)は157(0m)-115(3m)-82(6m)に有意に低下した.有害事象については,嘔気5例(6%),白血球低下3例(4%),肝酵素上昇7例(9%),倦怠感1例(1%),肺炎1例(1%)であった.いずれもMTXの中止又は減量により症状の改善を認めた.本研究では,8mgを超える増量開始時のALTの値が,増量継続群(ALT=16±7U/L)に比べ中止・減量群(ALT=26±14U/L)で有意に高かった.
    結論:週8mgを超えるMTXの増量により,DAS28-CRP,CRP,MMP-3で有意に改善を認めた.副作用による中止,減量例は13例(16%)で認めたが,早期の中止,減量により重篤な症状には至らなかった.中止あるいは減量のリスクとして,MTX増量開始時の肝酵素値が関与している可能性がある.
  • 都留 智巳, 原田 洋, 西坂 浩明, 大塚 毅, 前川 正幸, 福田 孝昭, 長嶺 隆二, 吉澤 滋, 吉澤 誠司, 宮原 寿明, 中島 ...
    2013 年25 巻2 号 p. 99-106
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
       福岡RA生物学的製剤治療研究会参加施設において2010年9月から2012年1月の期間に登録された111名を対象に,アバタセプト(ABT)投与24週の実臨床における有効性・安全性について検討した.全体のDAS28ESRは投与前4.96であったが24週後3.73であった.SDAIでは投与前23.51であったが24週後13.43であった.ABT投与前の生物学的製剤投与の有無では,Switch群では ABT投与前は平均5.03であり,24週目では4.31であった.Naïve群では4.90から3.12と改善した.活動性評価ではSwitch群の寛解は3.5%であったのに対し,Naïve群では31.5%と有意に寛解率が高かった.MTX併用の有無では併用有り群では投与前DAS28ESRは4.92であり,24週では3.56,MTX併用無し群では投与前5.02から24週で3.96と何れも改善を認めた.副作用は14例22件を認め,8例でABT投与が中止された.継続率は24週で86.5%であり,中止例は15例であった.中止理由は副作用8例,効果不十分7例であり1例は本人希望(重複)であった.以上から実臨床においてABTは関節リウマチ治療に有効な薬剤と考えられた.
  • 望月 猛, 矢野 紘一郎, 猪狩 勝則, 廣島 亮, 白旗 敏克, 桃原 茂樹
    2013 年25 巻2 号 p. 107-112
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)におけるアバタセプトの構造的有効性を検討した.
    対象・方法:アバタセプトを使用開始後52週以上経過した41例を対象とした.男性4例,女性37例,新規導入例は27例,平均年齢64.4歳,平均罹病期間は9.7年であった.CRP,ESR,MMP-3,DAS28-CRP,DAS28-ESR,SDAIを投与開始時,2週,4週,以下4週ごとに52週まで計測した.投与開始時と52週時点のvan der Heijde modified total sharp score(mTSS)を用いて年間進行度(ΔmTSS)を評価した.進行に関連する因子を検討した.
    結果:投与前/52週時の各値を示す.CRP:2.04/0.45,ESR:43.8/24.3,MMP-3:194.4/74.7,DAS28-CRP:4.05/2.44,DAS28-ESR:4.69/3.08,SDAI:22.8/7.5,ΔmTSS:8.59/0.63であった.寛解率はDAS28-CRP:43.9%,DAS-28ESR:39.0%,SDAI:26.8%であった.構造的寛解例は非寛解例に比して52週までのCRP値総和,MMP-3値総和が有意に低値であった.関節破壊進行因子はRF陰性,MTX非投与,Switch症例であった.
    結論:RAにおけるアバタセプト治療により各要素の改善を認め,関節破壊の進行は抑制されていた.関節破壊進行因子,構造的寛解に関与する因子が抽出され,とくに経過観察時にはCRP値とMMP-3値の推移を指標とすることが有効と考えられた.
  • 三橋 尚志, 万波 健二
    2013 年25 巻2 号 p. 113-118
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    目的:メトトレキサート(MTX)とアダリムマブ(ADA)の併用療法におけるMTX増量の有用性について検討した.
    対象および方法:MTXとADAの併用療法を行っていた関節リウマチ(RA)患者において効果減弱(二次無効)あるいは効果不十分(一次無効)を認めてMTXを増量した17例(男1例,女16例,平均年齢59.7歳)の臨床経過をDAS28CRP,SDAI等を用いて評価した.
    結果:MTXの平均投与量は増量前6.1mg/週で,最終評価時は9.4mg/週であった.17例の内訳は一次無効4例,二次無効13例で,MTX増量後,15例は寛解を達成したが2例(ともに二次無効例)はMTX増量にても効果が回復せずADA投与を中止した.17例において有害事象は1例も認めず,増量前に発現していた注射時反応2例は増量後に改善していた.二次無効13例において11例(84.6%)で効果の回復を認めた.
    結論:ADA効果不十分あるいは二次無効時のMTX増量は有用性が高いと考えられた.
  • 武井 望, 清水 悠以, 中川 育磨, 小谷 俊雄, 竹田 剛
    2013 年25 巻2 号 p. 119-124
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
       症例は72歳女性.1999年に関節リウマチを発症し高疾患活動性が持続した.2010年2月に全身倦怠感,微熱,多関節痛で入院した.ステロイドを増量したが,感染症を繰り返し,低蛋白血症が進行し,日常生活動作が困難となり臀部に褥創をきたした.計4回のトシリズマブの投与で全身状態は改善し,それに伴い褥創も改善した.疾患活動性により全身状態が悪化した症例ではトシリズマブの投与で有効性が得られると考えられた.
  • 神田 真聡, 近藤 真, 櫻庭 幹, 本村 文宏, 柳内 充, 深澤 雄一郎, 向井 正也
    2013 年25 巻2 号 p. 125-129
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
       アバタセプトは感染症の比較的少ない生物学的製剤とされるが,長期の安全性は不明である.我々はメトトレキサートとアバタセプトを6年間投与し,低疾患活動性を維持していた関節リウマチ患者で,Streptococcus intermedius による有瘻性膿胸を経験した.アバタセプト投与中に発症した膿胸の報告はなかった.生物学的製剤の長期使用で重症感染症のリスクが増大するといわれ,アバタセプト長期使用例で類似症例が発生すると予想され報告する.
  • 向坂 誠一郎, 岡元 昌樹, 中村 雅之, 吉田 つかさ, 井手元 晶子, 井田 弘明, 海江田 信二郎, 川山 智隆, 一木 昌郎, 星野 ...
    2013 年25 巻2 号 p. 130-134
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
       症例は66歳の男性.200X年10月気管支喘息で,高用量吸入ステロイド/長時間作用型β₂刺激薬の配合薬,ロイコトリエン受容体拮抗薬,テオフィリン薬および経口プレドニゾロン(PSL)(5mg/日の連日投与)併用療法が行われていた.200X+3年2月コントロール不良に伴う治療ステップの増強および血清ミエロペルオキシダーゼ抗好中球細胞質抗体(145IU/ml)高値が認められ,潜在性Churg-Strauss syndrome(CSS)を考慮し,PSL 50mg/日(0.75mg/kg/日)に増量した.200X+4年4月PSLを5mg/日まで減量した際に,多発単神経炎および筋炎などの血管炎を疑わせる症状が出現したため,CSSの診断基準を満たし,確定診断が得られた.血管炎症状の出現に先行してMPO-ANCA高値が認められた点で,貴重な症例と考えられた.
臨床リウマチ医のための基礎講座
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