臨床リウマチ
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29 巻, 2 号
臨床リウマチ
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誌説
総説
  • 大谷 恒史, 渡辺 俊雄, 藤原 靖弘
    2017 年 29 巻 2 号 p. 77-84
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/09/06
    ジャーナル フリー

       非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は骨関節炎や関節リウマチに対して汎用される薬剤であるが,有害事象として胃・十二指腸潰瘍などの上部消化管傷害の頻度が高い.さらに近年カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡の出現によって,NSAIDsが胃・十二指腸だけでなく小腸傷害を高頻度に惹起することがわかってきた.NSAID起因性小腸傷害の予防策として選択的COX-2阻害剤の使用が挙げられるが,短期の使用では抑制効果を有するものの長期使用では抑制効果が消失する.また疾患修飾性抗リウマチ薬などの抗リウマチ薬はNSAIDsと併用することによって,小腸傷害の発生頻度が高くなると考えられている.一方で抗TNF-α抗体療法を施行されている関節リウマチ患者においては,NSAID起因性傷害が軽微であることが判明している.さらに臨床上重要な点として,胃酸非依存的傷害であるNSAID起因性小腸傷害に対してプロトンポンプ阻害剤は無効であるばかりか,傷害を増悪させる可能性が示唆されている.NSAID起因性小腸傷害に対して有効性が期待される薬剤としては粘膜防御因子製剤やプロスタグランジン製剤があるが,さらに我々は抗TNF-α抗体療法,プロバイオティクスやコルヒチンが新たな治療薬の候補となりうると考えている.今後これらの新たな知見を踏まえたNSAID起因性消化管傷害に対する治療戦略の確立が必要である.

原著
  • 伊藤 聡, 阿部 麻美, 大谷 博, 石川 肇, 村澤 章, 中園 清, 小林 大介, 高井 千夏, 野村 優美, 成田 一衛, 今井 教雄
    2017 年 29 巻 2 号 p. 85-97
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/09/06
    ジャーナル フリー

       メトトレキサート(MTX)と生物学的製剤(bDMARD)の使用により,関節リウマチ(RA)の治療は格段の進歩をとげたが,リウマチ専門医の数は限られており,各県のリウマチ専門病院の数も少ない.当センターの位置する新潟県は,冬季の悪天候があり,山形県や福島県など,近隣の県から通院している患者や佐渡島から通院している患者は,緊急時に当センターを受診できないという状況にあるため,bDMARD使用患者はあらかじめ地域の総合病院に紹介をし,緊急時の対応をお願いしている.bDMARDの自己注射の不可能な患者,骨粗鬆症治療薬などの,週に一回,あるいは月に一回の皮下注や静注製剤は医療連携で投与を行っている.また,当センターでは,隣接する総合病院の県立新発田病院からの大腿骨近位部骨折患者を中心とした整形外科疾患患者や脳血管障害患者を,回復期リハビリ病棟に受け入れ,リハビリテーションを行っているが,大腿骨近位部骨折患者では,再骨折予防についてかかりつけ医との医療連携を行っている.2015年からは当院で退院処方としてビスホスホネート製剤を処方し,かかりつけ医に継続を依頼している.また,骨折後のフォローアップ,骨粗鬆症治療薬の処方状況の確認などは,県立新発田病院に新たに開設された骨粗鬆症特殊外来で行うシステムを構築した.

  • 井上 拓也, 藤井 渉, 祖父江 秀晃, 藤岡 数記, 妹尾 高宏, 河野 正孝, 川人 豊, 村上 憲, 森下 英理子
    2017 年 29 巻 2 号 p. 98-106
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/09/06
    ジャーナル フリー

       症例は49歳の女性,約2週間の膝関節痛による体動困難のため前医に入院し,抗CCP抗体陽性の多発関節炎であり関節リウマチと診断され当院へ転院した.当初,関節炎の乏しい膝や側胸部などにも著明な疼痛があり,精査の結果,下肢静脈血栓症・肺梗塞を認めた.活性・抗原量の低下と遺伝子診断によりプロテインC欠損症と診断した.両疾患の合併例の報告はなく,病態における相互の関連性も含め文献的考察を加え報告する.

  • 三浦 貴徳, 本間 玲子, 飯田 高久
    2017 年 29 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/09/06
    ジャーナル フリー

       炎症性腹部大動脈瘤は大動脈壁の肥厚,大動脈瘤周囲および後腹膜の線維化,周辺組織との癒着を特徴とした大動脈瘤である.近年,特発性後腹膜線維症と炎症性大動脈瘤は慢性動脈周囲炎という疾患概念に包含されるとする説が示されている.今回,関節リウマチ治療中に発症した炎症性腹部大動脈瘤症例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する.

  • Wibowo Tansri, 河本 恵介, 山口 勇太, 石田 裕, 吉峰 由子, 真鍋 侑資, 原 侑紀, 矢賀 元, 中原 英子, 比嘉 ...
    2017 年 29 巻 2 号 p. 114-120
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/09/06
    ジャーナル フリー

       症例は75歳男性.血球減少・腎機能悪化・発熱・炎症反応高値に加え,抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性,抗二本鎖DNA(抗dsDNA)抗体陽性より膠原病が疑われたが心エコーにて僧帽弁に疣腫形成を認めたため,血液培養陰性であったが感染性心内膜炎(IE)として抗生剤を開始した.抗生剤に対する反応が十分ではなかったが,Bartonella属抗体の有意な上昇を認めたことが適切な抗生剤の選択につながった1例を経験したので報告する.

  • 阪下 暁, 尾本 篤志, 大村 知史, 角谷 昌俊, 大下 彰史, 木村 雅喜, 浦田 洋二, 福田 亙
    2017 年 29 巻 2 号 p. 121-127
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/09/06
    ジャーナル フリー

       症例は24歳女性.指趾末梢のチアノーゼ,レイノー現象,疼痛を認めて当院を受診した.高度の末梢循環不全とCRP上昇,赤沈亢進,Dダイマー上昇を認めたが自己抗体はすべて陰性であった.足底の皮膚生検で中型血管にフィブリノイド壊死を伴う血管炎を認めた.皮膚以外に臓器障害を認めず皮膚動脈炎(CA)と診断した.プレドニゾロン40㎎/日の投与にて皮膚症状は著明に改善した.末梢循環不全の原因としてCAを考慮する必要がある.

誌上ワークショップ IgG4関連疾患の世界トップレベル
  • 坪井 洋人, 飯塚 麻菜, 高橋 広行, 浅島 弘充, 廣田 智哉, 近藤 裕也, 中井 雄治, 阿部 啓子, 田中 昭彦, 森山 雅文, ...
    2017 年 29 巻 2 号 p. 128-139
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/09/06
    ジャーナル フリー

    目的:IgG4関連疾患(IgG4-RD)とシェーグレン症候群(SS)の遺伝子発現を網羅的に比較し,疾患関連分子を明らかにする.
    方法:IgG4-RD(N=5),SS(N=5),健常人(HC)(N=3)の口唇唾液腺(LSG)を用いてDNAマイクロアレイを行った.遺伝子発現パターンを主成分分析(PCA)で比較し,IgG4-RDとSSのペアワイズの比較から,発現変動遺伝子(DEG)を同定した.IgG4-RDで高発現していたDEGの中から,validation候補遺伝子を抽出し,定量PCR,免疫蛍光法によるタンパクレベルでの発現解析を行った.
    結果:PCAでは,IgG4-RD,SS,HCは互いに異なるクラスターを形成した.IgG4-RDで相対的に高発現していたDEGを1321個,SSで相対的に高発現していたDEGを1320個同定した.定量PCRにおいて,リンパ球のケモタキシス,線維化誘導に関わるCCL18,ミルクに含まれ樹状細胞の成熟を誘導するLTFは,SSと比較してIgG4-RDのLSGで有意に高発現していた.IgG4-RDのLSGでは,SS・HCと比較して,CCL18のタンパクレベルでの高発現を認め,発現細胞はマクロファージ,樹状細胞,B細胞,形質細胞であった.
    結論:IgG4-RDとSSの遺伝子発現パターンは異なり,IgG4-RDの疾患関連分子としてCCL18,LTFを見出した.

  • 正木 康史, 藤本 信乃, 河南(岩男) 悠, 坂井 知之, 河南 崇典, 藤田 義正, 川端 浩, 福島 俊洋
    2017 年 29 巻 2 号 p. 140-146
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/09/06
    ジャーナル フリー

    目的:IgG4関連疾患にはステロイドが有効だがエビデンスが無かったため,多施設共同前方視的治療研究にて検証した.
    方法:12施設より症例登録を受け,初発IgG4関連疾患包括診断基準確診例を対象とした.中等量ステロイドprednisolone 0.6mg/kg/日を初期投与量とし,2週間毎に10%漸減,その後は各主治医判断で症状や臨床データの推移から維持量を決定した.1年後の完全寛解率を主要評価項目とし,副次評価項目としてはステロイド維持量,再発再燃率,有害事象を観察した.
    結果:5年間で57例の登録予定であったが,4年間で61例の登録あり終了.臨床病理中央診断の結果,確診群は44例,準確診1例,疑診13例,否定3例であった.3例の脱落例を認めた.確診群では完全寛解29例(65.9%),全奏功率93.2%で,脱落以外の全例にステロイドが奏功した.維持投与量中央値は7mg/dayで,維持投与量中に6例(14.6%)の再増悪を認めステロイド再増量又はその他の薬剤の追加投与を要した.主な有害事象は耐糖能異常(41%)であった.
    結論:IgG4関連疾患の診断が確実であれば,初期のステロイドは有効である.ステロイド治療抵抗例に対する二次治療として,欧米ではrituximabが汎用されているが,ステロイド治療抵抗例には誤診例が多いため,画像検査や病理再生検など再評価が必要である.

  • 山本 元久, 高橋 裕樹
    2017 年 29 巻 2 号 p. 147-154
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/09/06
    ジャーナル フリー

    はじめに:IgG4関連疾患の概念が形成されてからまだ数年しか経過しておらず,日常診療においても不明な点が多い.私たちは,IgG4関連疾患症例登録システム(Sapporo Medical University and related institutes database for investigation and best treatments against IgG4-related disease: SMART)を構築し,そこから得られたデータを解析することで,その臨床像を明らかにすることを目的としている.本稿では, IgG4関連涙腺・唾液腺炎の臨床像,日常診療の実際,治療における問題点と新しい可能性について概説したい.
    臨床像:IgG4関連涙腺・唾液腺炎患者の性差はほぼ同一で,60歳以上に好発する.約6割の患者において涙腺・唾液腺炎以外に臓器病変があり,自己免疫性膵炎が最も多い.診断時に悪性腫瘍が見つかるケースがある.ステロイド薬により容易に寛解導入できるが,ほとんどの患者では維持療法が必要である.ステロイド薬の漸減とともに再燃もしやすい.再燃を繰り返す患者では,生物学的製剤が有用な場合がある.
    結論:IgG4関連涙腺・唾液腺炎の診断には,他臓器病変と悪性腫瘍の合併を念頭に全身検索が重要である.また組織診断を実施し,悪性リンパ腫をはじめとした鑑別診断を行う必要がある.ステロイド依存例,再燃を繰り返す患者に生物学的製剤を含めた免疫抑制剤が有用である可能性が高いが,治療アルゴリズムにどのように位置づけるか,今後の課題である.

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