目的:関節リウマチ(RA)患者の遺伝子発現情報を用いたTNF阻害薬(TNFi)効果予測遺伝子探索研究に関して,従来の研究の問題点(対象条件,N数,遺伝子同定方法,臨床背景バイアス)を踏まえた研究デザインを適用し,検討を試みた.
対象及び方法:bDMARDs投与歴がなく,MTX併用でTNFiの投与が決定したRA患者を対象とし,関連研究としては過去最大規模の219例の遺伝子発現情報を取得した.発現差が堅牢な遺伝子を抽出すべく,治療6か月後の6種の活動性指標(DAS28,CDAI,EULAR,ACR,SJC28,CRP)各々について2パターンの効果あり(RES)/ なし(NRES)基準を設定し,計12の2群比較を行った.ベースラインの臨床背景バイアスを調整してなお,4比較以上で共通して有意差が検出される遺伝子を抽出した.
結果:効果予測遺伝子として34遺伝子を同定した.NRESで高発現するクラスタにはI型インターフェロン関連遺伝子群が,RESで高発現するクラスタにはリボソーム遺伝子群が認められた.遺伝子発現情報と臨床情報を組み合わせることで,臨床情報のみよりも高い正確度(64.5~83.6%)でTNFiの効果が判定できた.
結論:血液遺伝子発現情報には,臨床情報とは独立のTNFi効果予測因子が存在し,双方を組み合わせることで予測精度の向上が期待できる.今後前向き試験による検証を進めていく.
抄録全体を表示