臨床リウマチ
Online ISSN : 2189-0595
Print ISSN : 0914-8760
ISSN-L : 0914-8760
31 巻, 1 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
誌説
総説
  • 伊藤 聡
    2019 年 31 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/03
    ジャーナル フリー

     近年,第一子を産む女性の年齢が遅れてきている.また治療の進歩により寛解達成が可能となり,関節リウマチ(RA)患者の妊娠・出産の機会が増えている.現在RA患者の治療の中心となる薬剤は,メトトレキサート(MTX)であり第一選択薬として用いられることが多い薬である.しかし,MTXには催奇形性があり,妊娠中に使用するべきではなく妊娠計画の少なくとも1月経周期前に使用を中止する必要がある.スルファサラゾピリジン,アザチオプリン(AZA),シクロスポリン(CyA),タクロリムス(TAC)などが使用される.AZA,CyA,TACは,添付文書では妊娠時の使用は禁忌となっていたが,2018年7月に禁忌が解除となり,使用しやすくなった.RAの活動性が高い場合は,生物学的製剤を使用するが,現在のところ推奨度が高いのは,エタネルセプト(ETN)とセルトリズマブペゴル(CZP)である.承認年度の違いから,過去の使用実績としてはETNが多いものと考えられる.一方で,CZPはFc領域を持たないなどの分子構造特性から,胎盤通過性,乳汁分泌性が非常に少ないことが判明しており,海外では妊娠・出産時の使用の実績も多い.我が国でのエビデンスの構築が必須である.

原著
  • 大村 知史, 福田 亙, 柳田 拓也, 角谷 昌俊, 尾本 篤志, 川人 豊
    2019 年 31 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/03
    ジャーナル フリー

    目的:高齢関節リウマチ(RA)患者における要介護状態の実態を明らかにし,介護必要度に寄与する因子を検討する.対象と方法:当センター通院中の65歳以上のRA患者712名について,日本の介護保険制度における介護認定の状況を調査した.介護認定にて要介護1~5(A),要支援(B)と認定された2つの患者群と認定を受けていなかった患者群(C)に分類し,罹病期間やDisease Activity Score(DAS)28,Japanese Health Assessment Questionnaire(JHAQ),治療内容に関して比較,検討した.結果:介護認定群(A・B群)の患者数は187名で,認定割合は26.3%であった.等級不明であった4名を除くとA,B,C各群の患者数は103,80,525名であった.年齢,性別,投薬内容やDAS28-ESR,JHAQを独立変数として3群間の比較を行ったところ,JHAQが介護度の悪化に最も寄与していた(OR:5.00,95%信頼区間:3.24-7.97).介護認定の有無は,JHAQスコアのカットオフ値を0.75とすることで感度84.2%,特異度79.6%と良好に予測できることが分かった.結論:RA患者は一般人口と比較し介護認定者の割合が高い傾向にあった.JHAQが介護必要度に最大の寄与をしており,そのスコアにより介護必要度が推定できる.関節リウマチの治療や併発症の予防によりJHAQを0.75未満に抑えることが,要介護状態の回避につながると推定される.

  • 平野 裕司, 紀平 大介
    2019 年 31 巻 1 号 p. 24-32
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/03
    ジャーナル フリー

    目的:実臨床における関節リウマチ(RA)におけるトシリズマブ(TCZ)治療を併用メトトレキサート(MTX)とプレドニゾロン(PSL)減量・中止と大関節破壊抑制効果に着目して評価すること.

    対象・方法:当科でTCZを導入したRA65例中,TCZを2年継続した31例(女性23例,男性8例)を研究に使用した.患者背景,疾患活動性推移,併用薬剤の変化,小関節の関節破壊評価としてΔmTSS,大関節の関節破壊評価としてARASHI score(肩関節,肘関節,股関節,膝関節,足関節)を用いて評価した.

    結果:2年継続31例の患者背景は,平均年齢56歳,平均RA罹病期間6.6年,1stバイオ例9例,2ndバイオ例9例,3rd以降例13例だった.平均CDAIは開始時23.3,1年時6.8,2年時5.0.MTX併用率は開始時74.2%,1年時45.2%,2年時29.0%だった.PSL併用率は開始時64.5%,1年時45.2%,2年時22.6%だった.ΔmTSS(/年)は開始時8.1,0-1年間2.7,1- 2年1.1であった.ARASHI Change Score(2年間)の評価(関節[悪化,不変,改善(%)])は肩関節[9.8,86.3,3.9],肘関節[12.5,73.2,14.3],股関節[0.0,94.3,5.7],膝関節[9.6,65.4,25.0],足関節[3.8,90.6,5.7]であった.

    結論:2年間のTCZ治療でMTXは減量・中止例が増加した.MTXを減量しても関節破壊進行は抑制されており9割以上の大関節で関節破壊の悪化はみられなかった.

  • 服部 恭典, 平野 裕司
    2019 年 31 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/03
    ジャーナル フリー

    目的:関節リウマチ(RA)合併骨粗鬆症のビスホスホネート製剤(BP)効果不十分例において,デノスマブ(DMB)もしくはテリパラチド連日投与製剤(dTPTD)に変更し2年間継続した際の治療効果の後ろ向き検討を行った.

    対象・方法:BP効果不十分のため薬剤変更したRA合併骨粗鬆症女性患者54例を,DMB群(n=18)もしくはdTPTD群(n=36)に変更した.両群間の変更前データ,2年後の腰椎(L-)と大腿骨近位部(T-)骨密度(BMD)変化率,P1NPとTRACP-5bの値と変化率を2年間にわたり比較した.

    結果:DMB群とdTPTD群の2年後データ比較は,それぞれL-BMD増加率は6.4%と11.0%(p=0.07),T-BMD増加率は3.9%と3.9%(n. s.),P1NPは28.5μg/Lと76.3μg/L(p<0.001),TRACP-5bは338.5mU/dLと563.9mU/dL(p<0.001),P1NP変化率は36.4%と144.6%(p<0.05),TRACP-5b変化率は13.4%と61.8%(p<0.05)であった.

    結論:RA合併骨粗鬆症治療において,BP効果不十分の際にDMBもしくはdTPTDに変更することは,L-BMDでは有意差を認めないもののdTPTDの方が有効な傾向にあった.T-BMDではDMBとdTPTDで遜色ない効果を得られた.

  • 木村 侑子, 吉田 周造
    2019 年 31 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/03
    ジャーナル フリー

    目的:関節リウマチ(RA)患者に対するサリルマブの短期的治療効果について臨床的評価項目と,関節エコーを用いて評価した.

    対象・方法:サリルマブ治療を導入したRA患者5例を対象とした.サリルマブは,2週間に1回,200㎎の皮下注射を行った.12週までの治療効果を後ろ向きに評価した.治療効果判定は,DAS28-ESRと関節エコーを用いて評価した.関節エコーは,28関節(両PIP関節,MP関節,手関節,肘関節,肩関節,膝関節)で評価し,半定量法(0-3)を用いてGrey scale(GS)とpower Doppler(PD)scoreを評価した.28関節の合計をそれぞれTotal GS score, Total PD scoreとした.

    結果:サリルマブ開始時の患者背景は,平均年齢64.0±17.8歳,全例が女性で,罹病期間は,16.5±14.0年であった.全例,サリルマブ治療前に2剤の生物学的製剤を使用していた.平均のDAS28-ESRは,4.58± 0.65で,Total GS score 16.8±4.7,Total PD scoreは10.6±2.2であった.サリルマブ投与12週後に,平均DAS28-ESRは2.90±0.76と有意に改善し(p= 0.03),Total PD scoreは2.0±1.9(p= 0.0067)で有意に改善を認めた.

    結論:サリルマブ治療は,早期に疾患活動性を低下させる可能性がある.

誌上ワークショップ リウマチ性類縁5疾患の最新知識
  • 折口 智樹, 有馬 和彦, 梅田 雅孝, 川㞍 真也, 古賀 智裕, 岩本 直樹, 一瀬 邦弘, 玉井 慎美, 中村 英樹, 川上 純, 塚 ...
    2019 年 31 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/03
    ジャーナル フリー

    概念:1985年にMcCartyらは,高齢で急性発症の左右対称性の多発(腱鞘)滑膜炎と手足の背側の浮腫を認める,RS3PE症候群という疾患概念を提唱した.

    病因・病態:血清Vascular endothelial growth factor(VEGF)濃度の著明な増加が認められ,関節局所の血流増加に関与しているものと考えられる.

    検査所見:赤血球沈降速度の亢進,CRPの高値を認めるが,リウマトイド因子,抗CCP抗体は陰性である.血清MMP-3濃度が著明に増加する.特に悪性腫瘍を合併した症例の血清MMP-3濃度は高値を示す.手関節の造影MRI検査では,手関節,MCP関節,PIP関節の腱滑膜炎と血流増加を認める.関節超音波検査においても,MRI同様,腱鞘滑膜炎および皮下浮腫の所見が認められる.関節X線画像上変形がないことが,RAとの鑑別に有用である.

    悪性腫瘍の合併:本疾患は胃癌,大腸癌,肺癌,乳癌,前立腺癌などの腺癌の合併が多いことが明らかになっている.

    治療:通常プレドニゾロン10~15mg/日の内服で開始する.初期投与量を投与する.通常,ステロイド薬に対する反応は劇的で1~2週以内に寛解に至る.

  • 中村 正
    2019 年 31 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/03
    ジャーナル フリー

     リウマチ性多発筋痛症(PMR)は高齢者に好発する炎症性リウマチ疾患で,全世界的に地域差や遺伝的相違があり白色人種,特に北欧に多い.肩甲帯,骨盤帯の近位筋群痛やこわばりを主症状とし,筋痛はあるが筋力低下や筋萎縮はなく,肩・股関節痛を伴うことが多い.炎症の主座である滑液包炎の原因は不明であり,診断に結び付くような特異項目はなく炎症指標の増高を認め,血清筋原性酵素値上昇や筋電図・筋生検での異常はなく,抗核抗体,リウマトイド因子,抗シトルリン化ペプチド抗体も通常陰性である.

     大型血管炎に分類され肉芽腫性血管炎である巨細胞性血管炎(GCA)を合併することがあり,PMRとGCAとは共通の,あるいは連続的な病因を持つ関連性の深い病態を有していると推測される.頭痛,浅側頭動脈の怒張,蛇行,発赤,圧痛,特に,顎跛行や上肢跛行は特徴的で,視神経領域への血管炎の影響で視野・視力異常を来たし,失明は不可逆的で治療は急を要する.

     超音波検査やmagnetic resonance imaging,fluoro-deoxy-glucose positoron-emission-tomographyなどの画像検査の進歩で,早期診断,早期治療が可能になり,ステロイド剤が著効することが特徴で,炎症指標の陰性化と症状の軽快を確認しながら比較的早めに通常減量するが,その後はごく少量ずつの漸減が望ましく再燃例では再増量やメトトレキサートなどを追加する.Interleukin-6阻害療法の有効性が報告され,免疫チェックポイント阻害療法に伴うPMR発症が報告されている.

     画像診断の進歩や治療法の工夫でPMRとGCAへの臨床的方策は深まったものの,疫学的解明や病態生理の進展など,新たな課題が挙がってきた.

  • 高橋 裕樹
    2019 年 31 巻 1 号 p. 64-67
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/03
    ジャーナル フリー

     IgG4関連疾患とは血清IgG4高値とIgG4陽性形質細胞の浸潤,線維化による臓器の腫瘤性,結節性,肥厚性病変を呈する全身性慢性疾患である.二大好発病変であるミクリッツ病相当の涙腺・唾液腺病変と自己免疫性膵炎に加え,胆管,腎,後腹膜・大動脈周囲,肺などに時間的多発性をもって病変が出現するため,原因不明の腫瘤性病変をみた場合に常に鑑別に含める必要がある.治療はグルココルチコイド(GC)が第一選択とされるが,初回寛解導入時に使用される中等量以上のGCにより,大腿骨頭壊死を生じること,また減量中止の過程でしばしば再燃を生じ,長期投与を余儀なくされることから,骨粗鬆症や感染症などのGCによる副作用への対応が必要である.

     IgG4関連疾患の病因は不明であるが,病態が明らかになりつつあり,関与する免疫担当細胞や免疫関連分子を標的とした治療の導入も期待される.特にB細胞を標的とした抗CD20抗体や抗CD19抗体の良好な成績が報告されている.

  • 右田 清志, 天目 純平, 藤田 雄也, 松岡 直樹, 中村 正
    2019 年 31 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/03
    ジャーナル フリー

     自己炎症疾患(autoinflammatory disease)は,感染などの微生物の関与がなく,周期熱,関節炎,皮疹などを呈する疾患で,自己抗体,自己反応性T細胞の関与を認めない炎症性疾患である.自己炎症疾患は,生体防御に必要な自然免疫系の異常によって発症すると考えられている.獲得免疫の異常で発症し自己抗体,自己反応性T細胞を認める自己免疫疾患にくらべ対照的であるが,これら2つの疾患は症状も類似している.最も有病率の高い遺伝性自己炎症疾患である家族性地中海熱(Familial Mediterranean fever; FMF)では,周期性発熱に加え,漿膜炎(胸膜炎・腹膜炎),関節炎,様々な皮膚病変を認め,治療介入が遅れるとアミロイドA(AA)アミロイドーシスによる臓器障害を併発することもある.これら稀少難病において医療上の必要性が高いにもかかわらず,治験の困難さ,市場規模が小さいこともあり,治療薬の開発が十分に進まない現状があったが,近年,IL-1をはじめとするサイトカインに対する分子標的治療ですぐれた治療効果が得られることが判ってきた.

  • 新納 宏昭
    2019 年 31 巻 1 号 p. 75-84
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/03
    ジャーナル フリー

     キャッスルマン病(Castleman disease: CD)は,1956年にキャッスルマンらが報告したリンパ節の病理組織像にて特徴づけられる非常に稀な非腫瘍性リンパ増殖性疾患である.CDの臨床症状は無症候性から重篤なものまであり,進行スピードも緩徐から急速なものまであることから,本疾患の病態は極めてヘテロである.病理組織学的には,hyaline vascular(HV)type, plasma cell(PC)type, mixed typeに分類されるが,臨床的にはリンパ節腫脹の限局した単中心性キャッスルマン病(unicentric CD: UCD)と多中心性キャッスルマン病(multicentric CD: MCD)に分類される.UCDの大部分はHV typeで構成され,腫瘤の外科的切除にて根治も期待される.一方,MCDの大部分はPC typeで構成され,著明な全身症状と多臓器病変を伴い,治療にも難渋することが多い.MCDの中で,ウイルス感染などの見られない原因不明のものを特発性MCD(iMCD)と呼ぶが,本邦でも2018年に指定難病の一つとして新たに加わった.

     本稿では,CDの病因・病態,さらにはiMCDを中心にその診断ならびに活動性評価についての最新情報について解説する.iMCDの治療としては,ステロイドや抗癌剤による化学療法が行われてきたが,効果不十分な場合もしばしば見られる.ただ,iMCDでIL-6が病態の中心的役割を果たすことが判明し,IL-6阻害薬がfront-line therapyとして国内外にて使用されるようになり治療が進歩した.また一方で,IL-6阻害薬を含む既存治療へ抵抗性の症例も未だ多く存在する.CDは稀少疾患のため学問的進歩も遅れていたが,近年の国際的共同研究の成果にて,本疾患の病態解明とそれに基づいた新たな治療戦略が提案されつつあり,こういった点についても解説する.

feedback
Top