臨床リウマチ
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31 巻, 3 号
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誌説
総説
  • 房間 美恵, 中原 英子, 金子 祐子, 竹内 勤
    2019 年 31 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/11/02
    ジャーナル フリー

     2010年にTreat to Target(T2T)(目標達成に向けた治療)リコメンデーションが提唱され,この概念は日本でも,全国的な普及活動によりリウマチ診療に従事する医療者に浸透してきた.この中のoverarching principles(基本的な考え方)で最初に述べられているのが医師と患者との「shared decision making(共同意思決定)」であるが,患者が自身の病気や治療を理解し,共同意思決定プロセスに参画するためには患者教育が必須である.

     2015年にEULARから,2つの基本的な考え方と8つの推奨事項からなる炎症性関節炎患者に対する患者教育のリコメンデーションが提唱された.基本的な考え方の中では,患者教育は医療者と患者が双方向で行うべきであること,患者自身が病気と付き合いながら生活を自己管理できるように支援すること,そしてこれら実現のために医療者は患者と十分コミュニケーションを取りながら共同意思決定を行うことが必要不可欠であることが示されている.患者教育とT2T実践,共同意思決定は密接に関連しあう.患者教育をすべての炎症性関節炎患者の標準治療の一部として実施できるよう,その課題を評価し,より良い教育支援に向けて多職種協働で取り組むことが重要である.

原著
  • 西山 進, 相田 哲史, 吉永 泰彦, 宮脇 昌二, 浅沼 浩子
    2019 年 31 巻 3 号 p. 188-194
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/11/02
    ジャーナル フリー

     抗dsDNA抗体陽性の関節リウマチ(RA)患者6例を報告する.1例はRAを合併したシェーグレン症候群の経過中に抗dsDNA抗体が陽性となり胸膜炎を伴う全身性エリテマトーデス(SLE)を発症した.残り5例は抗TNF製剤が使用され,RA疾患活動性と抗dsDNA抗体の変動が一致した.5名中2名は胸膜炎を伴うSLEを発症し,いずれもIgG型抗dsDNA抗体を有していた.

  • 近藤 正宏, 村川 洋子, 森山 繭子, 本田 学, 渡辺 洋平, 柿丸 裕之, 吹譯 靖子, 八本 久仁子, 平野 秀美, 智原 久美子, ...
    2019 年 31 巻 3 号 p. 195-203
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/11/02
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(RA)治療は劇的に変化し,早期から適切な治療介入を行うことで,関節破壊はもとより,機能予後,生命予後も著明に改善した.しかしRAを早期に診断することはしばしば困難であり,また抗リウマチ剤の投与にあたっては感染症,合併症に十分注意する必要があり,以前と異なり一般かかりつけ医のみでは治療が困難な疾患になっている.そのためRA専門医を中心とした治療を行う必要があるが,RA患者数に対して専門医数は不足しており,遠方まで専門医を求めて通院している患者,適切な治療を受けることができていない患者は少なくない.そこで,専門医不在地区である島根県浜田市の浜田医療センターでRA専門外来を開設するにあたって,地元かかりつけ医との病診連携での治療を開始することとした.浜田医療センターでの病診連携では,専門医は診断,感染症など全身状態の評価,治療法の選択など専門性の高い部分のみを担当し,その他の副作用チェック,DMARDの用量調節,軽微な感染症への対応などはかかりつけ医が担当する.こうした役割分担を行なった上で,治療開始後すぐに病診連携を開始し並行して診療していくことで,専門医はより多くの患者を診察することができ,かかりつけ医がRAの診療に慣れることで,RAの早期発見にも繋がっていた.また連携で診療している患者の方がむしろ重篤な感染症の発症が少ないなど,RAの病診連携には様々なメリットがあることがわかった.

  • 嶋 良仁, 秋元 環, 池 和範, 西野 誠一, 小林 豊, 藤澤 義範
    2019 年 31 巻 3 号 p. 204-210
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/11/02
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(RA)に対してオートインジェクターを用いた生物学的製剤が複数登場し選択できるようになったが,変形によって患者の手指機能は個々に異なるため,必ずしも既製のオートインジェクターが手の機能が適合するとは限らない.手指変形のために握力が弱く且つ母指変形のためにオートインジェクターが使用できないRA患者に対して,手指の把握と母指内転を必要としない自助具を作製し,自己注射が可能となった.

  • 芝本 真季, 東 直人, 谷 名, 松井 聖, 東 幸太, 槙野 秀彦, 北野 将康, 佐野 統
    2019 年 31 巻 3 号 p. 211-216
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/11/02
    ジャーナル フリー

     68歳,女性.全身性強皮症(SSc)に伴う偽性腸閉塞で入退院を繰り返していた.メトロニダゾールで偽性腸閉塞の症状,X線所見は改善したが,約3ヶ月後,呂律困難や小脳失調症状が出現し,MRI所見などからメトロニダゾール脳症と診断された.SScに伴う偽性腸閉塞に対して抗菌薬による腸内細菌の過剰増殖の制御が有効とされるが,メトロニダゾール使用時は脳症を発症する可能性があることを念頭に置かなければならない.

  • 浦山 雅和, 青沼 宏, 柏倉 剛, 小西 奈津雄, 伊藤 博紀, 小林 志, 櫻場 乾, 谷 貴行, 相澤 俊朗, 岩本 陽輔, 阿部 秀 ...
    2019 年 31 巻 3 号 p. 217-223
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/11/02
    ジャーナル フリー

    目的:秋田整形外科リウマチグループ(Akita Orthopedic Group on Rheumatoid Arthritis: AORA)レジストリーにおける65歳以上の関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)患者に対するトシリズマブ(tocilizumab: TCZ)治療の臨床的有効性と安全性を検討する.

    対象・方法:TCZ投与累積症例177例のうち,2016年7月までに投与を開始した149例を対象とした.65歳以上の高齢者群,65歳未満の若年者群における,投与開始時の患者背景,投与継続率,disease activity score(DAS)28-ESR(4),EULAR改善基準,及び投与脱落症例を後ろ向きに調査した.

    結果:高齢者群は47例(31%),若年者群は102例(69%)であった.投与開始時の患者背景では,高齢者群で,Class分類の3+4の占める割合と,MTXの非併用例が有意に多かった.投与累積継続率は,高齢者群は1年で91%,3年で82%,若年者群は1年で93%,3年で80%で,有意差はなかった.DAS28-ESR(4)は,投与開始時,高齢者群が平均4.55,若年者群が平均4.73であったが,投与後24週時には,それぞれ2.53,2.49で,両群とも有意に低下し,52週時まで維持され,両群間に有意差はなかった.疾患活動性は,52週時に高齢者群で74%,若年者群で72%が低疾患活動性を達成した.EULAR改善基準は,52週時で両群ともに87%において有効であった.投与脱落例は,有害事象は,高齢者群5例,若年者群15例,効果不十分は,高齢者群3例,若年者群9例であった.

    結論:65歳以上のRA患者に対するTCZ治療の,臨床的有効性や安全性は,若年者と同等であり,TCZは高齢RA患者に有用である.

  • 中﨑 聡, 村山 隆司, 笛吹 亘, 加藤 真一
    2019 年 31 巻 3 号 p. 224-232
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/11/02
    ジャーナル フリー

    【目的】関節リウマチ(RA)患者の関節炎に対する低強度筋力増強運動の効果について検討した.

    【対象】圧痛関節と腫脹関節がそれぞれ1個以上あるRA患者で,生物学的製剤,JAK阻害剤および従来型合成抗リウマチ薬の用法用量が3か月間以上,経口副腎皮質ステロイド薬と非ステロイド性抗炎症剤の用法用量が4週間以上一定である者.

    【方法】上記薬剤は変更せず,低強度かつ下肢のみの筋力増強運動プログラムを2ヶ月間実施した.運動種類は6,運動強度は1repitition maximum(RM)の50%以下,8から12回の繰り返し,週3回実施した.

    【結果】全員女性で15名であった.平均年齢が69.9歳,平均罹病期間が204.5カ月,平均疾患活動性は中等度であった.生物学的製剤9名60%,メトトレキサート3名20%,内服ステロイド剤4名27%の使用率であった.有害事象でプログラムを中止した者はいなかった.Disease Activity Score in 28(DAS28)-ESR; 開始時3.86(2か月後3.47),以下同様に,DAS28-CRP; 3.46(3.03),Simplified Disease Activity Index; 15.01(11.45),Clinical Disease Activity Index; 14.21(10.88),圧痛関節数; 11.0(5.8),腫脹関節数; 5.5(3.7)といずれも有意に改善していた.しかし,ESR(mm/hr)は19.2から19.0と不変で,CRP(mg/dl)は0.807から0.573と数値上の減少はあったが有意の改善はなかった.

    【結論】低強度の筋力増強運動はRA患者の関節炎に有効であることが示唆された.

  • 水川 薫, 西村 啓佑, 門場 啓一郎, 向山 宙希, 吉田 知宏, 脇 大輔, 村部 浩之, 横田 敏彦
    2019 年 31 巻 3 号 p. 233-238
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/11/02
    ジャーナル フリー

     左優位の両下腿腫脹と抗核抗体陽性で紹介された60歳女性.造影CTで右下腿の深部静脈血栓症が指摘され,抗DNA抗体陽性,抗リン脂質抗体陽性,リンパ球減少,低補体血症から全身性エリテマトーデスおよび抗リン脂質抗体症候群と診断した.下肢のMRIで左ひらめ筋にT2強調像で高信号域を認め,同部位からの生検で壊死性血管炎を証明した.

誌上ワークショップ リウマチ性疾患の患者さんと医療者を繋ぐ看護師の役割〜最高の医療を届けるために〜
  • 黒江 ゆり子
    2019 年 31 巻 3 号 p. 239-245
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/11/02
    ジャーナル フリー

     リウマチ性疾患において人々がつながろうとするとき,病気が慢性性(chronicity)に経過することの特性とその慢性性のなかで毎日の生活を営み続ける‘生活者’としてとらえ,思索することが重要となる.「自分の中にある過去や経験をつきつめ,自分にとってそれがもつ意味を問うことにより思想を形成していく」(天野)のが「生活者」であるとすれば,生活者はそれぞれが個々の‘過去’と‘経験’をもっていることになり,それらは今の考え方や生き方につながり,そこから差異性と独自性が生まれる.そして,この差異性と独自性は,ケアを考えるときに‘その人らしさ’としてこれまで探究してきた貴重なテーマと繋がっていくのである.

     ‘生活者’の概念を出発点として,クロニックイルネスのある生活について考えると,病いと疾患の違い,急性と慢性のそれぞれの特性,およびケアのパラダイムシフトの必要性が見えてくる.さらに,クロニックイルネスとして関節リウマチに伴う‘生きられた体験lived experience’の重要な意味を考えることができる.

誌上ワークショップ 脊椎関節炎の基礎と臨床
  • 田村 直人
    2019 年 31 巻 3 号 p. 246-251
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/11/02
    ジャーナル フリー

     強直性脊椎炎(spondyloarthritis: AS)は,仙腸関節,脊椎など体軸関節炎を主病態とする疾患である.脊椎関節炎(spondyloarthritis: SpA)の代表疾患であり,若年男性に炎症性腰背部痛で発症することが多く,HLA-B27と強い関連性がある.炎症は靭帯の付着部に始まり骨のびらん性病変をきたし,その後に長期の経過で骨新生がみられ,椎体は架橋され強直に至る.炎症性腰背部痛は,通常は緩徐に発症し,安静で疼痛が増強し動かすことで軽快する特徴がある.ASの早期治療介入を可能にするため,体軸性脊椎関節炎という分類名とその基準が提唱された.これにより,改訂ニューヨーク基準におけるX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(non-radiographic axial SpA: nr-axSpA)が分類されるが,nr-axSpAは長期の経過でASに進展しないことも多い.ASの診断は,その臨床的特徴をよく知り,鑑別診断を十分に行い注意深く経過観察することが重要である.

     ASの治療では禁煙などの患者教育とストレッチなどの運動療法が推奨される.非ステロイド性抗炎症薬で効果不十分な場合には抗TNF抗体製剤インフリキシマブもしくはアダリムマブが用いられ,高い臨床的有効性を示す.二次無効の場合は他方への切り替えを行う.TNF阻害薬の長期間の投与や早期からの使用は長期的な骨病変進行を抑制する可能性が示唆されている.一次無効ではIL-17阻害薬セクキヌマブの有効性が示されている.

誌上ワークショップ チーム医療からみたRAの外科的治療
  • 正井 静香
    2019 年 31 巻 3 号 p. 252-258
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/11/02
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(以下RA)による足の変形に伴う巻き爪や胼胝形成は,痛みを伴い,創傷形成のリスクとなる.RA治療薬等による免疫能低下が重なり,感染への留意も必要である.また,RAによる関節の腫脹や痛み,手の変形等は日常生活に影響を及ぼし,患者のセルフケア能力を低下させるという問題もある.このため,RA患者の足部の変形に対するフットケアの重要性が認識されるようになり,当院においても看護師による外来でのフットケア実践を開始した.

     ケアの主な内容は足の観察,足浴,爪切り,胼胝・鶏眼の処置,自宅での手入れの方法や靴の選び方の説明等である.単に足のケアとして行うのではなく,体調の変化や病気への思い,療養方法の調整等の話を聴きながら,患者の療養生活全般に関わるよう心がけている.また胼胝形成は足の変形に伴うもので手術適応となる場合もあり,医師からの勧めを受けて,看護師として患者の意思決定支援に関わることもある.

     このように看護師がRA患者にフットケアを行う意義は大きいと考えるが,看護師ができるケアには限りがあり,リウマチ科担当医のみならず,皮膚科・形成外科医師や義肢装具士など他職種と連携したチーム医療として行うことが重要である.また,このようなケアが多くの患者に実践できるための環境作りが今後必要であると考える.

  • 松山 宜之, 中原 龍一, 那須 義久, 西田 圭一郎
    2019 年 31 巻 3 号 p. 259-265
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/11/02
    ジャーナル フリー

     RA診療における外科的治療として,2006年以降より肩・肘・股・膝関節の人工関節の手術件数は減少傾向にあるなか,手・足の手術件数は増加傾向にあった.術後リハビリテーション医療を行う際には,術前・術後に執刀医と綿密な連携をとることや,病棟看護師との連携の必要性が報告されている.本稿では,当院での作業療法士の立場からみた他職種連携について紹介する.当院での外科的治療におけるリハビリテーション医療は入院から外来と長期間に渡って行われ,計画的に入院中の術前評価から外来での術後3か月・6か月・1年と定期的に評価を行い患者の状況把握に努めている.入院期間中は主治医と手術に対して共通認識がもてるように,整形外科手術カンファレンス・回診,症例報告,超音波検査によって連携をとっている.また,上肢・手の手術でも移動能力に問題があれば,リハ医・理学療法士と,入院中のADLに関しては,病棟看護師と連携している.また,退院後も各術式による時期別の機能回復を意識しながら,術後評価を行い主治医と連携しながらフォローアップしている.多職種間で意思疎通しやすい環境構築を意識しながら診療を行うこが重要である.

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