目的:自己免疫性疾患の治療において腎機能の評価は不可欠である.血清クレアチニン(Cr)から算出される推定糸球体ろ過量(eGFRcreat)は筋肉量が減少している患者や,低栄養の患者ではイヌリンクリアランスより高値となることが多く,腎排泄性の薬を投与する時,注意が必要である.血清シスタチンC(Cys)は筋肉量や食事・運動の影響を受けにくいが,薬物,とくに副腎皮質ステロイド(GC)内服の影響については一定の見解は得られていない.eGFRcysに対するGCの影響を検討した.さらに慢性腎臓病のGFR区分においてeGFRcysとeGFRcreatを用いた結果を比較した.
方法:単施設の横断的観察研究.対象はリウマチ科外来を受診した成人患者189人(女75.1%).GC内服の有無で2群(GC有群124人とGC無群65人)に分け比較した.
結果:平均年齢68.3歳(標準偏差13.03).女性75.1%.GC有群のGC内服量はプレドニゾロン換算平均4.6mg/日(SD3.18)であった.eGFRcreatとeGFRcysの相関係数はGC有群0.73,GC無群0.62で,2群の相関係数に有意差はなかった.38.6%でeGFRcreatとeGFRcysによるGFR区分は一致しなかった.不一致の大部分がeGFRcreatよりもeGFRcysによる区分のほうが重症であった.高齢で,血清アルブミンが低値の患者が不一致になる割合が大きかった.
結論:eGFRcysに対するGCの影響は少ないと考えた.eGFRcreatは腎機能を過大評価するリスクがあり,腎排泄性薬剤を投与する場合はeGFRcysも参考にする必要があると考えた.
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