臨床リウマチ
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32 巻, 2 号
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誌説
総説
  • 田中 栄
    2020 年 32 巻 2 号 p. 86-97
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/11
    ジャーナル フリー

     2019年12月中国の武漢に端を発した新型コロナウイルス感染症パンデミックは世界中に広がり,多くの被害者を出すとともに我々の生活にも大きな影響を与えている.本総説では新型コロナウイルス感染症に関する一般な事項の概説とともに,その治療薬開発の現状やリウマチ医療との関連についても私見を交えながら述べたい.

  • 横田 俊平, 名古 希実, 金田 宜子, 土田 博和, 森 雅亮
    2020 年 32 巻 2 号 p. 98-107
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/11
    ジャーナル フリー

     2019年12月中国武漢市から始まった新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染症(COVID-19)はパンデミックとなり,世界215か国に広がり,多くの感染者,重症者,死亡者を出しつつその勢いを減じる気配はない.臨床的特徴は,発熱,乾性咳嗽,倦怠感を訴える例が多く,また,病態的には無症状から急性呼吸窮迫症候群や多臓器不全まで幅が広い.小児例は罹患数が少なく重症化することが少ないとされるが,一方,こども病院に搬送される例を詳細に検討すると多くの低年齢児が罹患しており,呼吸不全や多臓器不全を呈する例が少なくない.また,アメリカにおいて重篤感染例から逆算したSARS-CoV-2感染例はきわめて多く,早急の対策が求められている.妊娠中の母親がCOVID-19を発症した場合,帝王切開による分娩が勧められ,また,児への垂直感染は稀であることが明らかになった.他方,出生直後から感染が高頻度に起こるため,出生後直ちに母子分離を図り母乳栄養は避けることが推奨されている.小児期の慢性疾患の中でもステロイド薬,免疫抑制薬,生物学的製剤などを使用している小児リウマチ性疾患児は感染症に対して高感受性群と考えられるが,一方で,抗IL-6受容体モノクローナル抗体やhydroxychloroquineなどの抗リウマチ薬がCOVID-19の呼吸窮迫症候群から多臓器不全への移行期におけるcytokine storm interventionに有効であることが報告されている.免疫抑制薬をこのような慢性炎症性疾患の小児に継続投与を維持するかどうかは大きな問題である.最近,欧米においてSARS-CoV-2感染と川崎病発症との関連性が疑われているが,報告も少なく診断の点で問題があり,川崎病ではなく全身性血管炎として推移を見守ればよいと思われる.

  • 松野 博明, 岡田 正人
    2020 年 32 巻 2 号 p. 108-113
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/11
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ患者に対して生物学的製剤による治療が行われるようになっているが,治療においてメトトレキサートを併用している場合も多い.しかし,何がしかの理由でメトトレキサートが併用出来ない症例も少なからず存在する.そこで生物学的製剤の単剤療法の効果と可能性について解説することとした.

原著
  • 長谷川 絵理子, 黒澤 陽一, 小林 大介, 伊藤 聡, 阿部 麻美, 大谷 博, 中園 清, 村澤 章, 石川 肇, 成田 一衛
    2020 年 32 巻 2 号 p. 114-122
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/11
    ジャーナル フリー

    目的:高齢発症関節リウマチ(EORA)は発症時の疾患活動性が高く,内科的合併症も多いことから治療が困難となりやすい.セルトリズマブペゴル(CZP)はC-OPERA試験では発症早期症例に対する有用性が示されたが,比較的若年者(平均年齢49.4歳)での検討であり高齢発症例での検証はなされていない.EORAにおけるCZP早期治療の有用性を検討する.

    対象・方法:65歳以上のEORA患者で抗リウマチ薬開始から3ヶ月以内にCZP投与を開始した14例(男性9例,年齢77.5(71.5-83.0)歳)を対象とした.診療録を後方視的に調査し開始時,開始後4週,12週,24週における臨床項目を評価した.

    結果:CZP開始時の罹病期間は3(2-4)ヶ月,抗リウマチ薬開始からの期間は17.5(13.3-23.0)日だった.MTX併用は3例,PSL使用量は5.0(1.25-5.0)mg/日,併存症として間質性肺炎を2例,糖尿病を6例,慢性腎臓病を5例認めた.CZP治療開始前に比し,治療開始後4週で,DAS28-ESR(5.5(4.9-6.3)vs. 3.4(2.5-4.1),p=0.001),HAQ-DI(1.3(0.7-2.0)vs. 0.1(0-0.7),p=0.001)は有意に低下した.24週以内に2例が二次無効のため他剤に変更となった.

    結論:CZPは高齢者においても発症早期における治療として疾患活動性の改善と生活機能の改善に有用であった.

  • 吉井 一郎
    2020 年 32 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/11
    ジャーナル フリー

    【目的】関節リウマチ(RA)における患者疼痛の上昇と関連する臨床指標を統計学的に検討した.

    【方法】2010年8月以降5年以上継続してtreat to targetに基づき治療を行ったRA患者を対象とした.3カ月に一度臨床指標を測定し,治療開始後1年以内の患者疼痛スコア(PS)が10mm未満となった群(PS-VAS寛解群)を抽出し,初診時,治療開始1年目,2年目以降における両群間の指標を統計学的に比較した.更に,2年目以降のPSが10mm以上となった群(G-PRf),10mm未満のまま維持出来た群(G-PRr)の2群に分け,両群間における1年目と2年目以降の各指標を統計学的に比較した.

    【結果】G-PRfが145例,G-PRrが93例であった.初診時においてG-PRfはG-PRrに比べ,有意に認知症治療率が高く,罹患年数が長く,合併症数が多く,抗CCP抗体価とRF値が高く,変形程度が大きく,日常生活能力が低く,PSが高かった.PS-VAS寛解群となるには初診時合併症数と治療1年目のSimplified Disease Activity Indexが有意の相関を示した.治療開始1年目から治療開始2年目以降へのPS-VASの上昇はPatient’s global Assessment(PGA)の上昇と相関していた.G-PRf群においては1年目から2年目にかけてQOL値が有意に低下した.

    【結論】RA患者の疼痛は合併症数と疾患活動性管理とPGAが大きく影響し,患者の生活の質にも影響を及ぼす.

  • 房間 美恵, 黒江 ゆり子
    2020 年 32 巻 2 号 p. 132-139
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/11
    ジャーナル フリー

     慢性疾患の管理に有用な「病みの軌跡(illness trajectory)」の概念モデルを用い関節リウマチという“病い”を抱えた一人の人のライフストーリーを辿った.患者の視点で共に振り返ることにより患者が抱える課題を理解でき,心理面や生活面を含め必要な支援が詳らかとなった.このアプローチは,患者と医療者の「共同意思決定」の実践に繋がり目標達成に向けた治療(T2T)を進める上で有用であると考えられる.

  • 木下 浩二, 船内 正憲, 松村 到
    2020 年 32 巻 2 号 p. 140-145
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/11
    ジャーナル フリー

     症例は38歳男性.幼少期より気管支喘息と診断されステロイド薬による治療を受けていた.5年前に両側大腿骨頭壊死の既往あり.1年前から多関節痛あり関節リウマチ疑いにて当科受診.当初はリウマチとして抗リウマチ薬による治療を開始し,一時症状の改善を認めたが,その後痛みが再燃したためMRI検査を施行したところ多数の関節に骨壊死を認めたため,喘息治療で使用されていたステロイド薬による多発骨壊死と診断した.その後ステロイド薬を漸減,中止し,骨壊死に対し保存的治療を行った.

  • 深井 理知夫, 岩岡 誠, 若林 昭敬, 糸井 由美子, 横塚 千絵, 高橋 薫代, 白川 祥子, 志村 享子, 片岡 恵美, 高垣 優, ...
    2020 年 32 巻 2 号 p. 146-153
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/11
    ジャーナル フリー

    目的:トシリズマブ(以下TCZ)使用患者のサポートプログラム「ビリーブ」は2016年4月にリニューアルされ関節リウマチ関連情報誌の他に,医師が必要と判断した患者にはパルスオキシメーターが提供されている.今回,我々はパルスオキシメーターの有用性も含めた本プログラムに関するアンケートを行い,その有用性について検討した.

    対象・方法:2016年4月以降,片山整形外科リウマチ科クリニックで「ビリーブ」に参加している患者を対象に同意を得てアンケート調査を行った.

    結果:66名にアンケートを行った.結果は,関節リウマチの知識が増えた87.5%,不安が減った71.2%,感染症への意識が増えた74.2%,動脈血酸素飽和度(SpO2)測定で感染症に対する安心感が増えた57.1%,総合評価大変良い・良い77.0%となった.SpO2異常での対応症例は3例(5%)であった.知識の増加が平均4.17,感染症の意識増加4.10,総合評価3.98(5ポイント評価)と高い平均値を示した.

    結論:本プログラムを通じた定期的な疾患関連・感染症対策情報提供が患者の知識,体調管理意識向上につながっていた.また,SpO2定期測定により感染症の早期スクリーニングに繋がった事例も報告され,TCZ使用患者に「ビリーブ」は有益なサポートプログラムであると考えられた.

  • 田所 麗, 田村 誠朗, 壺井 和幸, 東 直人, 松井 聖, 關口 昌弘, 橋本 尚明, 北野 将康, 佐野 統
    2020 年 32 巻 2 号 p. 154-160
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/11
    ジャーナル フリー

     49歳女性.27歳時に全身性エリテマトーデス(SLE),39歳時にループス腎炎Ⅴ型と診断.2016年5月より労作時呼吸困難と肺動脈平均圧高値を認め,SLEによる肺動脈性肺高血圧症(SLE-PAH)と診断.ステロイドと免疫抑制剤による治療強化を行い早期に肺血管拡張薬を併用した.SLEDAIの低いSLE-PAHでは肺血管拡張薬の早期併用が奏功するとされており,本症例においても有効であった.

  • 高松 尚徳, 佐藤 潤一, 成田 明宏, 谷村 一秀, 小池 隆夫
    2020 年 32 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/11
    ジャーナル フリー

    【目的】RA患者に手指機能訓練を行い手指機能と関節滑膜炎に与える影響について検討した.

    【対象・方法】2018年1月1日から2019年5月31日までに当院にリハビリテーション目的で入院したRA患者17例を対象とした.手指機能訓練は2015年にLambらによって開発されたSARAHを用いた.SARAHは4週間毎日行った.機能評価は,握力,ピンチ力,手の疼痛VAS,Quick DASHを行い,RAの疾患活動性と機能障害の評価は関節超音波,DAS28,HAQを行った.RA患者17名に対し,SARAH介入前後での手指機能及びRAの疾患活動性と機能障害について検討した.

    【結果】対象者の年齢は71歳(54-83),罹患期間は10年(1-60)だった.関節内滑膜血流陽性群8名と関節内滑膜血流陰性群9名について検討した.機能評価では,陽性群において4週後に握力・ピンチ力・VASの統計学的有意な改善を認めたが,陰性群では全ての項目で改善は見られなかった.滑膜血流陽性群の関節内滑膜血流は4週後に統計学的有意な改善を示した.また,関節滑膜血流陰性群も介入後に関節滑膜炎の新たな出現は認めなかった.全ての群でDAS28,HAQは4週後に統計学的有意な改善は見られなかったが介入期間中RA症状には大きな変化は認めなかった.

    【結論】今回の検討は短期間・少数症例での検討ではあったが,手指機能の向上を認めた.よってSARAHを用いたRA患者の手指リハビリテーションは,滑膜炎の悪化を伴うことなく機能強化ができる有効な手指機能訓練であることが示唆された.

  • 青木 昭子, 小林 弘, 岡 寛
    2020 年 32 巻 2 号 p. 169-176
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/11
    ジャーナル フリー

    目的:自己免疫性疾患の治療において腎機能の評価は不可欠である.血清クレアチニン(Cr)から算出される推定糸球体ろ過量(eGFRcreat)は筋肉量が減少している患者や,低栄養の患者ではイヌリンクリアランスより高値となることが多く,腎排泄性の薬を投与する時,注意が必要である.血清シスタチンC(Cys)は筋肉量や食事・運動の影響を受けにくいが,薬物,とくに副腎皮質ステロイド(GC)内服の影響については一定の見解は得られていない.eGFRcysに対するGCの影響を検討した.さらに慢性腎臓病のGFR区分においてeGFRcysとeGFRcreatを用いた結果を比較した.

    方法:単施設の横断的観察研究.対象はリウマチ科外来を受診した成人患者189人(女75.1%).GC内服の有無で2群(GC有群124人とGC無群65人)に分け比較した.

    結果:平均年齢68.3歳(標準偏差13.03).女性75.1%.GC有群のGC内服量はプレドニゾロン換算平均4.6mg/日(SD3.18)であった.eGFRcreatとeGFRcysの相関係数はGC有群0.73,GC無群0.62で,2群の相関係数に有意差はなかった.38.6%でeGFRcreatとeGFRcysによるGFR区分は一致しなかった.不一致の大部分がeGFRcreatよりもeGFRcysによる区分のほうが重症であった.高齢で,血清アルブミンが低値の患者が不一致になる割合が大きかった.

    結論:eGFRcysに対するGCの影響は少ないと考えた.eGFRcreatは腎機能を過大評価するリスクがあり,腎排泄性薬剤を投与する場合はeGFRcysも参考にする必要があると考えた.

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