臨床リウマチ
Online ISSN : 2189-0595
Print ISSN : 0914-8760
ISSN-L : 0914-8760
最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集 脊椎関節炎
  • 冨田 哲也
    2024 年 36 巻 4 号 p. 223-226
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     脊椎関節炎(Spondyloarthritis; SpA)は非対称性末梢関節炎,付着部炎,炎症性腰背部痛,関節外症状を共通の臨床症状とする種々の疾患から成る総称である(図1)1).これまで歴史的に疾患概念の変化に伴い表現や含まれる疾患が変化してきており,以前は血清反応陰性脊椎関節症(seronegative spondyloarthropthies; SNSA)と呼ばれていた.2009-2011年にAssessment of Spondyloarthritis international society; ASAS)より体軸性脊椎関節炎(axial SpA; ax SpA)2)及び末梢性脊椎関節炎(peripehral SpA; pSpA)の分類基準(図2)が示され現在に至っている.脊椎関節炎の臨床症状は多彩であり非常にheterogenousな疾患群であり,かつ診断に有用なバイオマーカーもほとんど存在しない状況である.治療薬は近年目覚ましく充実してきており,いかに正確に脊椎関節炎を診断するかが重要である.

  • 門野 夕峰
    2024 年 36 巻 4 号 p. 227-234
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     脊椎関節炎の診断には画像診断が欠かせないが,単純X線画像やMRIの評価をする前に撮影条件の確認が重要である.体軸性脊椎関節炎では仙腸関節の評価が重要であるが,基本となる骨盤正面像では下半分のみに関節面があることを意識する.脊椎では椎間板線維輪に付着部から真っ直ぐに立ち上がる靭帯骨棘が特徴的である.体軸病変が見られるPsAでは付着部からやや離れた部位から膨らんだ靭帯骨棘が見られる.またASやPsAの鑑別診断としては,PAO,DISH,OCIが重要である.

     MRIでは,炎症の存在と構造的変化を確認する.炎症はT1強調像低信号かつ,STIR画像または脂肪抑制T2強調像で高信号に描出される骨髄浮腫の有無で判断する.骨髄浮腫はあくまでも炎症の存在を示唆するのみで,外傷や感染でも見られるので注意する.構造的変化はT1強調像で判断する.

     PsAで見られる末梢関節炎では,付着部からの骨新生が最初の反応として確認できる.進行すると,二次性の滑膜炎によって関節内は骨吸収が起こり,関節外では骨膜が刺激されて骨形成が起こる.

  • 首藤 敏秀
    2024 年 36 巻 4 号 p. 235-243
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     体軸性脊椎関節炎(axial spondyloarthritis; axSpA)には強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis; AS)とX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(non-radiographic axSpA; nr-axSpA)が含まれる.nr-axSpAはASの前段階として提唱された疾患概念であるが,その全てがASに進行するとは限らない.axSpAの主症状は若年発症の慢性の炎症性腰背部痛・殿部痛である.末梢症状としては末梢関節炎(下肢優位,左右非対称)や付着部炎が多い.関節外病変として前部ぶどう膜炎,腸炎,乾癬などがある.CRP陽性やHLA-B27保有,SpAの家族歴,non-steroidal anti-inflammatory drugs(NSAIDs)著効なども診断の参考になる.薬物療法の第一選択はNSAIDs,第二選択はbiological/targeted synthetic disease-modifying antirheumatic drugs(b/tsDMARDs)が主体になるが,それらに不応時は診断や併存症の関与,アドヒアランスを再評価した上で治療変更を検討する.

  • 岸本 暢将
    2024 年 36 巻 4 号 p. 244-250
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     乾癬性関節炎(psoriatic arthritis: PsA)は,関節リウマチ同様にQOLの低下と関連し,診断の遅れは進行性の関節破壊や長期的な身体障害を引き起こす.早期診断には,PsAの主要な臨床的特徴を熟知する必要があり,PsAの患者の85%に見られる皮膚や爪の病変の評価に加えて,末梢および体軸関節症状を考え病歴聴取や身体診察,適切な画像診断に精通していることが必要である.また,治療を行うにあたり,治療薬の進歩にともなうT2T治療戦略,特に患者個々に疾患活動性(体軸関節病変含む)や患者背景(合併症有無)を踏まえ,医師と患者で十分話合って治療指針を決定すべきであり,生物学的製剤を含めた,薬剤特性を踏まえ適切な薬剤を選択できる必要があり2023年にアップデートされたEULAR治療推奨をもとに解説を行う.

  • 谷口 義典
    2024 年 36 巻 4 号 p. 251-258
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     反応性関節炎(reactive arthritis, ReA)は,微生物感染後に起こる無菌性・非化膿性関節炎を意味することから,しばしば漠然と使用されてきた.溶連菌感染後の反応性関節炎,結核に伴う無菌性反応性関節炎(Poncet病),膀胱癌に対するBCG膀胱内注入療法後の反応性関節炎,Lyme病なども,その発症機序からは感染後に発症したReAとも考えられ,ReAの定義が混乱していた時期もあった.このような状況を鑑みて,1999年に開催されたReAに関する国際ワークショップにおいて,ReAはHLA-B27と関連し,脊椎関節炎症候を伴うことを特徴とし,これらの特徴が証明されている泌尿生殖器感染や腸管感染,一部の気道感染などを起こす微生物が関与した関節炎のみに限定する(いわゆるclassic ReA)ことが提唱された.さらに,化膿性関節炎を除き,他の感染後の非化膿性関節炎は感染関連関節炎(infection-related arthritis)と呼称することも提唱された.

     本項ではReAの疫学,病態,診断,治療などについて概説する.

原著
  • 高岡 宏和, 宮村 智裕
    2024 年 36 巻 4 号 p. 259-265
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

     74歳女性,62歳で関節リウマチ(RA)を発症し生物学的製剤導入前にβ-Dグルカンが38.3pg/mL,アスペルギルス抗原0.5と陽性で,CT検査では肺野にすりガラス影を認めず左上顎洞に軟部影を認めた.副鼻腔炎の既往ありアバタセプト(ABT)導入前に抗真菌薬を開始し,ABT点滴導入3ヶ月でRAの活動性は低下した.感染症合併RAではリスクベネフィットを鑑みて治療強化を行うが,高齢者であればさらに安全性への配慮も必要であり,ABTは抗真菌薬と安全に併用できることが示唆された.

  • 夏川 由貴, 水越 真優美, 石川 肇, 伊藤 聡
    2024 年 36 巻 4 号 p. 266-275
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/18
    ジャーナル フリー

    目的:高齢関節リウマチ(RA)患者の認知機能障害と身体機能の関連を明らかにすること.

    対象・方法:対象は当院でフレイル教育入院(3泊4日)が行われ,6か月後,12か月後に臨床評価が可能であった65歳以上のRA患者52名である.入院時に身体機能および認知機能評価,個別の運動指導と栄養指導などの介入が行われ,退院後に握力,歩行速度,骨格筋指数などの再評価を行った.入院時のmini mental state examination(MMSE)27点以下を軽度認知機能障害(mild cognitive impairment; MCI)ありとし,MCI群と非MCI群に分けて比較を行った.2元配置分散分析で握力,歩行速度,骨格筋指数(SMI)などの両群の経時的変化を比較した.

    結果:MCI群(27名)と非MCI群(25名)の入院時の比較ではMCI群の方が握力は弱く,歩行速度が遅く,歩幅は小さく,timed up and go test(TUG)で時間を要した.フレイル入院後12か月間で歩行速度は改善し,MCI群,非MCI群はどちらも有意な身体機能の低下およびRA疾患活動性の悪化は認めなかった.

    結論:高齢RA患者において認知機能障害を認める場合には身体機能低下も進んでいることが多く,認知機能障害がみられる患者に対しては早期から治療介入を行い,認知および身体機能の低下を防ぐことが重要と考える.

feedback
Top