環境と安全
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1 巻, 2 号
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原著論文
  • 京都大学にある実験機器を対象にした分析研究
    本田 由治, 山口 裕也, 酒井 伸一
    2010 年 1 巻 2 号 p. 2_3-2_14
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
       大学等の教育研究機関では、今だにアスベストを含有した実験機器などを使用している可能性があることから、京都大学にある実験機器について、実態把握と分析手法の確認に向けた初期調査のためサンプルを収集し分析を行った。乾燥機の断熱材など31試料中14試料にクリソタイル、アモサイト、トレモライト等のアスベストが含有されていた。また、偏光顕微鏡による分析過程でクリソタイルと酷似した繊維状粒子が試料中に認められた。この試料はセピオライトという天然鉱物を母材としていること、熱履歴のため光学的性質が変化している可能性があることなど何れも正確な分析の障害となり通常の観察ではアスベスト偽陽性と判定される危険性がある。われわれは、(1)熱処理温度と分散色の関係、(2)複数の浸液を使用した時に発色が変化する程度を偏光顕微鏡を用いて詳細に検討することによってアスベスト・非アスベストの判別を行うための判断材料とした。試料中のクリソタイル様の発色が見られた繊維状粒子は、熱により一部のセピオライトが変化したものと結論付けられた。
  • 山田 悦, 布施 泰朗, 三木 定雄
    2010 年 1 巻 2 号 p. 2_15-2_23
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
       京都工芸繊維大学では2005年から2009年の5年間、公定法である検知管法を用いてベンゼン、クロロホルムなど揮発性有機化合物(VOCs)11物質とフッ化水素を対象に作業者自らが作業環境測定を行った。検知管法による分析結果を他法による結果と比較し、大学における検知管法による作業環境測定と大学でのリスク管理について解析した。
       測定対象物質としては、アセトンとメタノールが測定対象部屋の60-80%で使用されており、最も測定数が多かった。クロロホルム、トルエン、ノルマルヘキサン、酢酸エチル及びジクロロメタンは測定対象部屋の40-50%で使用されており、アセトン、メタノールに次いで測定数が多かった。クロロホルム及び酢酸エチルは、測定した部屋のそれぞれ40-55%、30-70%で検出され、検出割合が高かった。ベンゼンは、ドラフトチャンバーや代替溶媒の使用が進み、使用部屋数は測定対象部屋全体の40%から20%に減少し、ベンゼンは室内ではほとんど検出されなくなった。
       検知管法による作業環境測定は、できるだけ実際に実験している状態で、簡便、迅速かつ正確にVOCs濃度を測定することが可能であり、その測定結果は他法と比較すると同程度かやや高いという傾向があるため、大学でのリスク評価、リスク管理に有効な方法と言える。
  • 川上 貴教
    2010 年 1 巻 2 号 p. 2_25-2_31
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
       2005~2009年度の富山大学五福地区での不要試薬取引について、リレーショナルデータベース型化学薬品管理システムによるデータ収集結果を元に調査を行った。
       5年間で635件の不要試薬公開があり、そのうち30.7%の195件の取引が成立した。それにより¥1,044,814の費用節約効果が得られた。約4割の研究室は不要試薬取引所を利用しており、退官する教員の試薬が大量出品されたり、有機合成化学系の研究室が積極的に引き取る傾向がみられた。なお、85%の取引は部局内ではなく異部局間で行われた。引取りを待つ期間としては約2ヶ月が適当であり、それ以上は廃棄手続をするのが望ましい。使用している研究室の数と、取引成立率には一定の相関がみられた。特に洗浄や中和に使われる有機溶媒や酸アルカリはよく引き取られた。また、未開封であることは有利な条件であった。
  • 袋布 昌幹, 丁子 哲治, 伊永 隆史
    2010 年 1 巻 2 号 p. 2_33-2_39
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
       リン酸水素カルシウム二水和物(DCPD)は水溶液中のフッ化物イオンと反応し、安定なフッ素アパタイト(FAp)を生成する。この反応は歯科領域で行われる虫歯予防の「フッ素塗布」で生じる反応の一つであるが、我々はこの反応を環境中の微量フッ素化合物の固定・不溶化に応用する研究を進めてきた。本論文ではDCPDの反応を用いて、産学で課題となっているフッ素廃水処理、廃石こうボードリサイクルにDCPDを適用する基礎的知見を得ることを目的に種々検討を行った。結果、DCPDを用いた廃水処理においては、カルシウム塩の添加により処理に伴うリン酸イオンの残存を抑制できることを見いだした。この結果を用いて実液を処理した結果、従来の手法よりも少量の薬剤添加で同等の処理効率が得られ、処理に伴って発生するスラッジ量を低減できることを見いだした。一方廃石こうボードリサイクルにおいては、建設汚泥固化材として利用される石こう試料にDCPDを添加することにより、石こうからのフッ素化合物溶出を長期間抑制させることができることを見いだした。
  • 中村 修, 色川 俊也, 進藤 拓, 小川 浩正, 黒澤 一, 大井 秀一
    2010 年 1 巻 2 号 p. 2_41-2_49
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
       平成17年度から平成20年度までの間に東北大学で実施した化学物質の作業環境測定結果、及び測定時の作業状況・室内環境について第2・第3管理区分と評価された実験室の分析を中心に検討し、大学研究室の環境衛生の現状及び問題点について考察した。本学における作業環境測定結果において、第2・第3管理区分になる事例は例年1~2%程度と、ごく僅かであるが、有機溶剤では、キシレン、クロロホルム、ノルマルヘキサンなど揮発性の高い物質で間欠的な瞬時曝露が問題となって第2・第3管理区分なるケースが認められた。しかし、これらの作業の多くは局所排気装置外で行われており、作業場を局所排気装置下に変更することで良好な作業環境へと改善した。特定化学物質では、ホルムアルデヒドを扱う作業場で第2・第3管理区分となるケースが多く認められたが、解剖学実習室や病理標本を取り扱う作業など、排気設備の大規模な改善を要する事例が多かった。また、いくつかの事例では、薬品瓶や廃液タンクの蓋の開放など測定結果に影響を及ぼす実験室内での環境衛生上の問題を併せて指摘された。
       今回の検討では、大学実験室の作業環境の良悪は教員や学生の“作業管理”水準に依存する部分が大きいと考えられたため、教員や学生を対象に環境安全衛生に関する教育を継続的に実施し、研究室ごとの自主的なリスクアセスメントに基づいた環境衛生管理を展開できる様に啓発してゆくことが重要であると思われた。
報告論文
  • ─ 化学物質の総合的管理の促進支援事業─(平成19~21年度助成プロジェクト)の報告
    木下 知己, 戸野倉 賢一, 矢野倉 実
    2010 年 1 巻 2 号 p. 2_51-2_57
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
       本プロジェクトは、化学物質が関わる環境問題、労働災害事故等の抑止に向けて、大学等の教育研究機関の化学物質の総合的安全適正管理の促進を支援するため開始された。大学等の高等教育研究機関にとって、化学物質の総合的管理を率先して実践し、社会の指導的役割を演じ、次世代を担う学生等に対し、化学物質の総合的安全適正管理の重要性を実践に基づいて教育、指導することが緊急を要する重要な社会的責務である。総合的管理の実践支援具体策として、化学物質の管理に関する情報の相互交換、協議のため、化学物質管理担当者連絡会が設立され、活動を開始した。同時に、化学物質総合的管理実施上のこれまでの根本的問題を解決するため、特定非営利活動法人(NPO)教育研究機関化学物質管理ネットワーク(ACSES)が多くの大学等の協力により設立され、化学物質管理に関する情報提供、相談、教育指導に対する各種支援・補助、システム管理に欠かせないにもかかわらずこれまでなかった共同利用化学物質製品データベースの創製、提供運用等の活動を行っている。
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