本研究では、自治体が所有する設備で、迅速に、行政指導に必要な精度を備えた大気中アスベスト濃度測定方法を確立することを目的とした。
アスベストモニタリングマニュアルに記載されている測定方法8種の自治体での測定機整備状況、解体現場への可搬性、測定条件、分析精度、測定機購入価格、分析上の利点と課題について分析実験結果と文献調査のデータを用い比較した。その結果、分析精度を維持しつつ位相差顕微鏡法の簡便化を検討することが最も有効と判断した。
位相差顕微鏡法の捕集時間と計数視野数を変えた場合の測定所要時間と分析精度(検出下限値、測定誤差範囲)を検討した。特に迅速性が求められる場合の条件とされている捕集30分と計数100視野での測定所要時間は2.2~4.7時間、検出下限値0.4本/L、測定誤差範囲1.6本/Lと算出された。条件検討の結果、捕集2時間と計数50視野のとき測定所要時間2.8~4.1時間、捕集1時間と計数100視野のとき測定所有時間2.7~5.2時間で、どちらも検出下限値0.2本/L、測定誤差範囲1本/Lであった。
上記の測定条件は、特に迅速性が求められる場合の測定条件と比較して、測定時間はほぼ同じ、分析精度はより高かった。アスベスト含有建築物解体改修時の立入検査において、迅速性が求められる場合に使用可能であると考える。
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