環境と安全
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5 巻 , 3 号
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特集 - 大学等における実験室安全管理 -
総説
論説
  • 本間 誠, 三上 恭訓, 吉岡 敏明, 斉藤 宏秋, 久保 百司, 源栄 正人
    2014 年 5 巻 3 号 p. 131-141
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    東日本大震災によって東北大学工学研究科において甚大な室内被害が発生した。工学研究科等安全衛生委員会では、各研究室で管理する物品の地震対策を円滑に実施するために室内物品地震対策ガイドラインを作成した。本稿は作成したガイドラインの策定内容とその検討過程を示したものである。目的は、第一に人的被害の発生の防止とし、第二に備品・物品の被害の低減とした。地震時における物品の挙動を検討することの重要性を示し、段階的に実施する具体的な地震対策方法を明示した。地震対策方法は、はじめに室内の整理整頓と管理物品の少量化を行い、負傷や避難障害が発生し難い研究室のレイアウトを行ってから、物品の転倒・移動防止対策を行う。転倒・移動防止対策では、大地震にも耐えるために強度計算に基づいた検討として、地震対策の目標とする設計震度を設定し、基本的なアンカー強度の算出方法を示した。そして、震災の経験を踏まえ、研究室で共通する本棚や物品棚、高圧ガスボンベの具体的な固定方法を示し、実験台上の実験機器やドラフトチャンバー等の対策方法を示した。本ガイドラインは大学研究室の主な物品の具体的な地震対策方法を示し、地震対策を推進する有益な資料になると考えられる。また、地震対策における強度的な検討方法も明示したことで、制約が多いために対策が難しい実験機器類においても検討の基礎資料として活用ができると考えられる。
  • 山本 仁
    2014 年 5 巻 3 号 p. 143-147
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    大学などの実験室では工場などとは異なり、多数の研究者が空間を共有しながら、それぞれに独立した作業を行っている。そのため、実験中の事故は、自らの作業に起因するものだけではなく、同室内の他の実験者が起こした事故に巻き込まれるケースが多々ある。このような環境下において実験者の安全と健康を守るためには、個々の実験作業だけではなく、実験室空間全体について、人・機器・作業などの配置を最適化するラボデザインが重要となる。 ラボデザインは、実験室で行われる作業内容が変わる毎に変更すべきであるが、実際には、実験台や局所排気装置などは容易に動かせず、自由に配置換えを行うことはほぼ不可能である。また、ラボデザイン上重要なポイントが、実験室内の気流である。有害蒸気の発生源と室内気流を理解することで、実験者の無用な有害物質へのばく露を防ぐことができる。一方日本では、震災対策も重要となる。地震から研究を護るためには、建物だけでなく、実験室内の耐震性を上げる必要がある。そのためには設備や機器の確実な固定が必要であるが、固定はフレキシビリティを低下させることになる。 我々のグループは、安全で快適な実験室を構築するために、実験室内に6面体構造のフレーム構造を構築するフレームシステムを開発した。このフレームシステムは、フレキシビリティ、気流、耐震という3要素の同時向上が可能であり、安全で快適な実験室実現のための回答の一つとなりうると考えられる。
  • 春原 伸次
    2014 年 5 巻 3 号 p. 149-157
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    研究・実験施設に設備される実験作業用の排気フードであるヒュームフード(ドラフトチャンバー)が求められる機能を果たすためには、相応の排気風量を必要とする。その排気風量は部屋の容量と比較して大きな割合を占めるため、運転エネルギーのみならず室内の空調された空気を排出することから、大きなエネルギーコストが必要とされる。そのため、これまで安全性を確保しながら排気風量を削減する様々な手法が取られてきているが、選定するユーザー側に立ってみれば解りづらいことが多く、トラブルに発展するケースもある。 ユーザー側に対しては、近年主流となっているヒュームフードの排気風量削減の手法について、最低限の知識と計画上の注意点が理解できる情報が必要である。供給者側には、仕様の明確化や表示方法の統一化など、ユーザーが理解しやすい工夫や取り組みが求められる。適切な実験設備の構築を実現するためには、双方が協力して知恵を出し合うことが重要である。
  • 百瀬 英毅
    2014 年 5 巻 3 号 p. 159-167
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    日本で高圧ガスを使用する際には高圧ガス保安法の規制を受けるが、これは大学の教育研究活動でも同じである。この法律は大正時代に制定されてから骨格部分の構造が変わっておらず、主に産業ガス分野の事例を中心に法令等の改正等が繰り返されてきた。事故を教訓とした改正も行われており、高圧ガスの製造販売業などの安全に対しては極めて効果を発揮している。しかし、当初は取締法であったために、法律が想定していないことは基本的に禁止とするため、最先端の教育研究や技術開発では不合理な影響を与える。このため、教育研究を進めるに当たっては、教育研究に携わる者が自ら考えて安全対策を行い、設備や器具について正しく理解して適切に使用していく必要がある。それと同時に、欧米諸国と同水準の教育研究環境を実現するためには、高圧ガス保安法令等の適切な合理化も必須である。
  • 大久保 靖司, 黒田 玲子, 山本 健也
    2014 年 5 巻 3 号 p. 169-175
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    巡視は安全衛生管理の基礎となる活動である。大学における巡視はその特殊性のため、これまで注目されてこなかったが、大学の安全衛生管理が進むにつれてその意義は高まってきた。巡視の目的は、潜在的なリスクを抽出し対策を講じ、事故災害を防止することであり、そのために「方針や法令の遵守状況の確認」、「コミュニケーションや意識の高揚」、「安全水準の評価と水平展開」が求められる。巡視を行うための体制として、指摘事項が管理者に報告されていることや指摘への対応が適切に行われているかを確認できるシステムが求められる。また、巡視の担当者に求められる素養は広範に及ぶことから、計画的に巡視の担当者を育成することも必要である。巡視の実際においては、大学や研究室の状況に合わせて段階的に巡視の内容を変えていくことが望ましく、また、巡視の指摘方法も工夫が必要となる。今後の課題として、巡視方法の標準化や巡視の効果評価などがあり、また、チェックリストや好事例のデータベース化などのツールの開発や情報共有のシステムの構築が挙げられる。
  • 小松原 明哲
    2014 年 5 巻 3 号 p. 177-182
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    大学における安全問題は往々にして理系の実験研究に矮小化され、かつテクニックの議論になりがちである。しかし、教育、研究、社会貢献という大学の使命を考えれば、安全は大学の存立基盤であり、学科、学部、施設を超えて求められることがらである。しかしながら構成員の大多数を占める学生は毎年入れ替わり、また教職員は多忙であり、大学の安全推進は容易ではない。その中で安全文化を確立していくには、学生に対しては安全教育、大学の経営管理側からは安全マネジメントというボトムアップとトップダウンの両面からのアプローチが必要だろう。そこで本稿では、大学における安全の考え方、及び、計画的な安全推進の手段としてのSMS(safety management system:安全マネジメントシステム)、そして学生に対する安全教育について検討する。また、学術の発展のために安全があるという前向きなメッセージの重要性を指摘する。
一般
原著論文
  • 大田 政史, 工藤 慶太, 大曲 遼, 福岡 大造, 今國 宏則, 黒藏 俊英, 中道 隆広, 船越 邦夫, 甲斐 穂高, 石橋 康弘
    2014 年 5 巻 3 号 p. 183-190
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    近年、セメントの材料としてごみ焼却灰の再利用が注目されているが、この焼却灰には重金属類やダイオキシン類、塩化物が含まれていることから、環境中への溶出が懸念されている。この重金属の溶出抑制にはセメントの水和反応が有効とされている。 本研究では、鉛などの低沸点重金属を含む焼却飛灰(フライアッシュ、以下「FA」)を主原料とし水和反応させた組成の異なるセメント固化物7つ及びFAの計8つを検体として鉛溶出試験を行い、リサイクル資材としての適正の評価ならびに鉛溶出の要因の調査を行った。 試験は環境庁告示46号試験及びアベイラビリティ試験を実施し、46号試験ではFAでのみ土壌環境基準以上の鉛が溶出し、他の7検体については、ほぼ基準値以下の溶出であることを確認した。これにより鉛の溶出に関して、固化物のリサイクル資材としての適性が確認され、本試料における鉛の溶出を抑制する方法としてセメントの水和反応の有効性が示された。また、セメント固化物中での鉛の存在形態の違いによる溶出への影響を調べる為に硝酸鉛及び塩化鉛をそれぞれ1%添加した試料を用いて粉末X線回折による解析を行い、硝酸鉛や塩化鉛の一部が硫化鉛など溶出しにくいものに変化していることを確認した。更に同試料についても溶出試験を行い、鉛の形態の違いによって溶出量に差が生じることを確認した。以上の結果より、鉛の存在形態が溶出抑制における重要な要因であると結論づけた。
  • 山田 悦, 清水 光, 布施 泰朗
    2014 年 5 巻 3 号 p. 191-198
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2014/10/10
    ジャーナル フリー
    フッ化物イオンとホウフッ化物イオンの混合溶液の分析は、フッ化物イオン電極を用いたグランプロット標準添加法により、ホウフッ化物イオンの分解に用いるアルミニウムイオンの妨害を受けずにフッ化物イオンを定量することができ、その値からホウフッ化物イオンの分解率を求めることができた。難分解性であるホウフッ化物イオンは、常温においてアルカリ性や中性条件下ではほとんど分解せず、pH 3という酸性条件下でも2カ月後に20 %残存していたが、pH 3~4でアルミニウムイオンを添加すると約48時間で定量的に分解できることがわかった。アルミニウムイオンを添加するとフッ化アルミニウムを生成するためホウフッ化物イオンの分解が促進されると考えられる。 ホウフッ化物分解後のフッ化物イオンの処理は、カルシウム添加法とフッ素吸着樹脂を用いるカラム吸着法を組み合わせた二段階処理法を用いると、洗煙廃水のような複雑組成中のフッ化物イオンでも排水基準の 8 ppmをクリアして処理することができる。
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