環境と安全
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8 巻, 1 号
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原著論文
  • 菊池 康紀, 辻 佳子
    2017 年 8 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー

    化学物質は多かれ少なかれ潜在的危険性としてのハザードを有しており、その使用においては常にリスクが存在している。産業プロセスにおいては徹底した安全管理が必要とされる中、大学における化学物質管理は、雇用関係のない学生が使用しており、一定周期でメンバーが入れ替わり、さらに研究室ごとに多様な目的に合わせて化学物質を選択、使用しているなどの理由により、リスクに基づく組織的な管理が困難になっている。本研究では、大学の研究で使用している化学物質に対し、既存のリスク評価手法と実データを用いて定量的な評価を行う。評価手法により可視化される化学物質リスクの情報が研究における意思決定に与える影響を考察することで、化学物質リスク管理における評価の役割を特定する。具体的な化学物質として、汎用的に使用される11種類の溶剤を取り上げ、ハザードに基づくリスクの認知を行った。さらに4種類の溶剤についてはライフサイクルアセスメントとリスクアセスメントにより、環境影響と作業者健康リスクを定量的に評価し、化学物質リスク管理においてこれらの評価手法の有用性を確認した。既存の評価手法による定量化と可視化は、大学におけるリスク管理において、明確な評価指標を与えられる。手法を組み合わせることで、使用状況に依存しない側面も含め、総合的なリスクの分析が可能となる。

  • 濵田 百合子, 冨安 卓滋
    2017 年 8 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー

    水銀含有廃液は廃液処理費の単価が最も高く、環境面、安全面でも取り扱いに注意が必要である。本研究では水銀含有廃液量を適切に減容化し、廃液処理費用を削減するために、大学の研究室内で実施可能な簡便で実用的な水銀含有廃液の減容化システム構築のための条件検討を行なった。 水銀含有廃液に還元剤を添加して通気し、還元気化した水銀を過マンガン酸カリウム溶液に濃縮捕集する方法について、廃液からの水銀気化条件(還元剤の種類、添加量、通気時間および通気流量)と水銀捕集液としての過マンガン酸カリウム溶液の濃度条件を検討した。 酸性過マンガン酸カリウム溶液の検討した濃度範囲0.01-0.1%で水銀の回収率が90%以上となった。本研究では0.1%酸性過マンガン酸カリウム溶液10 mLを水銀捕集液として用いた。 試料溶液中の水銀イオンの還元剤として、水素化ホウ素ナトリウム溶液、塩酸ヒドロキシルアミン溶液、塩化スズ(Ⅱ)溶液を用いた結果、塩化スズ(Ⅱ)溶液が還元剤として有用であることが確認された。 試料溶液500 mLに対し、還元剤添加後のキャリアガスの流速と通気時間について、流速0.4-0.7 L/minで0-60分間の範囲で検討した結果、流速0.4 L/minで30分以上通気することでほぼすべての水銀が気化し、水銀捕集液中に回収されることが確認された。 以上の結果を踏まえ、実際に本学の研究室で発生した水銀含有廃液の減容化システムを構築し、約20 Lの水銀含有廃液を10 mLに減容化できることが確認された。

  • 袋布 昌幹, 室山 峻紀, 高松 さおり, 豊嶋 剛司, 丁子 哲治, 松下 祐也, 藤田 巧
    2017 年 8 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー

    第二リン酸カルシウム二水和物(DCPD)は水溶液中のフッ化物イオンと反応し、安定なフッ素アパタイト(FAp)を生成する。著者らはこの反応を利用することで排水中のフッ素化合物の高効率かつ経済的な処理が可能であることを示したが、DCPDからFApへの転化反応の際にリン酸イオンが溶出することが、特に排水処理へのDCPDの利用の障壁となっている。

    これまでに炭酸カルシウムとして系内にカルシウムイオンを供給することにより、リン酸イオン溶出の抑制に効果があることを示しているが、その理由や最適条件は明らかになっていない。本報では、DCPDとフッ化物イオンとの反応におけるリン酸イオンの溶出抑制に及ぼす炭酸カルシウム塩添加の効果を明らかにするため、DCPDとフッ化物イオンとの反応に伴うリン酸イオン溶出機構、およびカルシウムイオン添加の効果を検討した。結果、DCPDの溶出に伴うリン酸イオンの溶出抑制には、液中のカルシウムイオン濃度を高くすることによってDCPDの溶解を抑制すること、DCPDからFApへの転化に伴うリン酸イオンの溶出抑制は、系内のカルシウムイオンの供給に加えてpHの制御が有効であり、DCPDへの炭酸カルシウムの添加はカルシウムイオンとpH調整の両者に効果を有することを明らかにした。

報告
  • 蒲原 新一, 石橋 康弘, 早瀬 隆司
    2017 年 8 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/10
    [早期公開] 公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー

    地域における生活系廃棄物の分別や継続的な環境保全活動のためには地域住民らの参加と協働の関係やネットワークの形成が必要不可欠であり、地域でのネットワークの形成には「信頼」に基づく関係が重要な役割を果たしているものと考えられる。本研究では、インドネシア共和国で市民の自発的な活動で取り組まれているごみ銀行を対象として、活動のための地域ネットワークを支えている信頼の実態や役割について考察することを目的とした。その結果、環境保全を目的としたゴミ銀行活動を推進するグループに対して、従来の地域に存在する町内会等における諸活動を通して構築されてきている「信頼」がその活動の基盤になっていることがわかった。活動をさらに拡大していくためには、新たなネットワークを広げていくための取り組みが必要となるものと考えられる。

  • 北﨑 結子, 松添 直隆, 石橋 康弘, 小林 淳
    2017 年 8 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/10
    [早期公開] 公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究では、白川流域を対象に窒素の収支解明のために、白川水系の河川水および湧水中の窒素濃度の経月変化を調査した。白川における全窒素の平均値±標準偏差は1.11±0.34 mg L−1n = 205)、アンモニア性窒素は0.079±0.12 mg L−1n = 238)、亜硝酸性窒素は0.0071±0.010 mg L−1n = 236)、硝酸性窒素は0.65±0.31 mg L−1n = 241)であった。全窒素濃度および硝酸性窒素は、降水量が多い6月から7月にかけて低く、8月から翌年5月にかけてやや高い傾向であった。一方、河川水中の全窒素量の経月変化は、降雨の多い6月、7月にピークを示したのち減少に転じ、8月から翌年5月にかけては大きな変化は観察されなかった。流域全体の窒素負荷量(生活雑排水、施肥、降水、窒素固定)は合計で約3,010 t Nと推定され、流達率は約0.66と見積もられた。農地における窒素収支を推定したところ、余剰窒素は66 kg N ha−1 year−1と見積もられ、既報値と類似した値であることが示された。

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