第二リン酸カルシウム二水和物(DCPD)は水溶液中のフッ化物イオンと反応し、安定なフッ素アパタイト(FAp)を生成する。著者らはこの反応を利用することで排水中のフッ素化合物の高効率かつ経済的な処理が可能であることを示したが、DCPDからFApへの転化反応の際にリン酸イオンが溶出することが、特に排水処理へのDCPDの利用の障壁となっている。
これまでに炭酸カルシウムとして系内にカルシウムイオンを供給することにより、リン酸イオン溶出の抑制に効果があることを示しているが、その理由や最適条件は明らかになっていない。本報では、DCPDとフッ化物イオンとの反応におけるリン酸イオンの溶出抑制に及ぼす炭酸カルシウム塩添加の効果を明らかにするため、DCPDとフッ化物イオンとの反応に伴うリン酸イオン溶出機構、およびカルシウムイオン添加の効果を検討した。結果、DCPDの溶出に伴うリン酸イオンの溶出抑制には、液中のカルシウムイオン濃度を高くすることによってDCPDの溶解を抑制すること、DCPDからFApへの転化に伴うリン酸イオンの溶出抑制は、系内のカルシウムイオンの供給に加えてpHの制御が有効であり、DCPDへの炭酸カルシウムの添加はカルシウムイオンとpH調整の両者に効果を有することを明らかにした。
抄録全体を表示