製剤化工程作業における遺伝子の安定性を評価したところ, 遺伝子単独では比較的安定であるものの, リピドフィルム法による遺伝子封入カチオニックリポソーム調製時には, 乳化·サイジング工程において著しい遺伝子の分解, ロス, 構造変化などが認められた. 一方, 凍結乾燥空リポソーム(FDEL)法ではこのようなことはなく, 遺伝子発現活性も良好であり, 本法は非常に有用な調製方法であることが確認された. また, 従来の遺伝子導入用試薬が使用時に無血清培地に置き換えねばならない理由は, 血清添加培地中で遺伝子が分解するためではなく, リポソーム構造そのものが細胞と反応できない形態に破壊されるためであることがわかった. 筆者らはFDEL法を利用することにより, 血清存在下でも高い遺伝子発現活性を有する新規のカチオニックリポソーム処方を300処方以上のなかから見いだすことが出来た. 本稿ではさらに, カチオニックリポソームを静脈内投与したときの体内分布の問題点とその解決策についても簡単に触れる.
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