Drug Delivery System
Online ISSN : 1881-2732
Print ISSN : 0913-5006
ISSN-L : 0913-5006
22 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集 “日本のトランスレーショナルリサーチをどう進めるか” 編集:前田 浩
  • 小松 弘和, 上田 龍三
    2007 年 22 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/24
    ジャーナル フリー
    がん領域での分子生物学的解明の急速な進歩により新しい治療標的の同定が可能となってきた.基礎研究の成果を臨床に還元させるトランスレーショナルリサーチ(translational research, TR)の推進が創薬を迅速に,かつ効率的に成功させるために必須である.しかし,多くの財政的,法律的,倫理的,組織的な問題点が山積している.現時点では未熟なわが国のTRを推進していくには,萌芽してきたこのTRに対する気運を国策として継続して議論し支援していくことが求められる.
  • 治田 俊志
    2007 年 22 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/24
    ジャーナル フリー
    トランスレーショナルリサーチ(TR)は,基礎研究の成果を臨床で実証していく“bench-to-bedside”アプローチを基本とする.TRは,医薬品開発における研究開発期間と研究開発費の効率化,研究開発組織の変革,バイオベンチャーの育成などを促し,さらに,これらが相乗的に国内の医薬品開発プロセスを変革し,国内製薬企業の国際競争力を立て直す推進力になる.
  • 辻 彰
    2007 年 22 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/24
    ジャーナル フリー
    候補薬を経口投与後の消化管吸収性と動物とヒトにおけるバイオアベイラビリティー(BA)の関係の理解は,医薬品の発見・開発にとってきわめて重要である.ヒトとサルとの間の類似性にかかわらず,多くの薬物において両者におけるBAに大きな相違が認められている.低分子医薬品にあっては実験動物とヒトとの間の動態・薬効・毒性特性において乗り越えることのできない種差がある.創薬候補薬投与後のBA,組織移行,代謝・排泄など,代謝酵素やトランスポーターの機能によって制御されているヒト体内動態を予測するためにヒト組織,ヒト由来細胞,ヒト肝臓,または小腸ミクロゾームやヒト遺伝子発現系を用いたin vitroモデルや,生理学的薬物速度論を用いたin silicoモデルのようなヒト動態評価システムが医薬品開発研究に積極的に取り入れられるようになったが,予測性は必ずしもよくない.
     したがって,疾病治療上ヒトで有用な候補物質を適切に選択し,効率的に医薬品開発を進めるためには,マイクロドース試験を実施し,ヒトでの動態を医薬品開発の早い段階で明らかにすることがきわめて重要である.
  • 動物のデータはヒトにどこまで迫れるか
    今井 輝子
    2007 年 22 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/24
    ジャーナル フリー
    医薬品の開発においては,ヒト臨床試験に先立ち,動物実験で安全性・有効性が確認される.しかしながら,ヒトと実験動物の体内動態には相違があり,動物実験の結果をヒトに反映できないことがある.その原因の一つとして,主な消失過程である代謝の経路および速度がヒトと異なることがあげられる.本稿では薬物代謝の動物種差について説明し,ヒトにおける体内動態を予測するための試みを紹介する.
  • 黒川 幸典, 福田 治彦
    2007 年 22 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/24
    ジャーナル フリー
    アメリカの国立がん研究所(NCI)に属するがん治療・診断部門(DCTD)の1部署である創薬プログラム(DTP)は,新規抗がん剤の創薬のための研究を幅広く支援しており,なかでもRAIDという特別助成プログラムを設けて,トランスレーショナルリサーチ(TR)の促進を図っている.RAIDに承認された研究に対しては,NCIのスタッフが直接研究者とコンタクトをとり,多くの業務を代行してくれる.このように,RAIDは豊富な経験を持ったNCIスタッフのリソースを有効活用することで,TRを促進させるという仕組みである.
  • DDS製剤の承認へ向けて
    松村 保広
    2007 年 22 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/24
    ジャーナル フリー
    トランスレーショナルリサーチ(TR)の目的は,基礎研究で得られた知見を臨床研究に組み込むこと,あるいはその反対で,臨床での知見を基礎研究に反映させることである.究極的には新しい治療方法を出来るだけ早く,出来るだけ正確に臨床応用させるための学問ということが出来る.本稿では,種々の抗がん剤内包ミセルを例としてDDS製剤に関するTRを紹介するとともに,DDS製剤の承認申請へ向けた問題点についても言及する.
  • 齋藤 宏暢, 藤枝 徹, 長沼 英夫
    2007 年 22 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/24
    ジャーナル フリー
    新規医薬品の開発が全世界的に停滞している現状を鑑みると,適切な候補化合物をいかに効率よく創製し,臨床stageでの中止リスクを軽減しつつ迅速に開発を進めるためにはどのような検証が必要なのか,長年にわたり拠り所としてきた半ば定型的な臨床開発プログラムについて真剣に見直す時期にきている.たとえば,海外の規制当局で許容しているマイクロドージングのような探索的な臨床試験は,創薬の初期段階で薬物動態特性を見極めるための有用なツールである.
     また,これまで国内の臨床試験だけでは安全性と有効性を検証するうえで例数的に不充分な場合が多かったが,国際共同治験への参加は海外データを相互に利用することを可能とし,医薬品としての特性を系統的に評価するうえできわめて重要であり,日本でもグローバル基準の臨床試験が出来るインフラの早急な整備が必要である.この際,症例がとりやすい欧米ばかりでなく,アジア各国の実施動向を睨みながら日本にあった参画条件を模索すべきである.
     さらに,承認申請までの限られた評価に過度な時間と経費をかけるのではなく,ICH-E2Eガイドラインを考慮した製造販売後の調査や,臨床試験を通して幅広い患者に適用したときの安全性と有効性を,計画的に追加検証する施策が重要である.
feedback
Top