Drug Delivery System
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22 巻, 5 号
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特集 “がんの動注・局所治療” 編集 : 山口俊晴
  • 血管作動薬を用いた人為的制がん剤デリバリー増強とその有用性
    永光 彰典, 犬塚 貴雄, Khaled Greish, 前田 浩
    2007 年 22 巻 5 号 p. 510-521
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    ジャーナル フリー
    スマンクス/リピオドール動注療法は,ミサイル機能と徐放性を有する高分子制がん剤のDDS療法である.本療法は,1回のみの動注では奏効率において,相当な有効性があるものの数回の投与がなければ画期的なものでない.これまでの本法の臨床開発において,不充分・不完全な治療法が一般には広く行われているのが事実であるが,ここに筆者らのこれまでのスマンクスの20年以上にわたる経験に基づき,より完全となった投与法を記す.
    すなわち,SX/LP注入に際しては,アンジオテンシンIIを用い血圧を上昇させ,その高血圧下にSX/LPの腫瘍部への流入量が増加する反面,正常肝組織へのデリバリー量は減じることができ,肝障害も減少すると考えられる.本法は,これまでの肝細胞がんの好成績に加えて,胆管細胞がん,転移性肝がん,腎がん,肺がん(NO放出剤ISDN使用)に対して施行し,いずれも著しく有効であった.副作用は大いに減少し,より安全で効果的な治療が,より多くのがん腫に対し行われるようになったといえる.
  • 辻本 洋行, 萩原 明於
    2007 年 22 巻 5 号 p. 522-529
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    ジャーナル フリー
    腹腔内に投与された水溶性抗がん剤のほとんどは速やかに循環血液中に吸収される.そのため少量の水に溶解した抗がん剤溶液の腹腔内投与では,有効な腹腔内抗がん剤濃度の維持を得ることが出来ない.この問題を解決するため,さまざまなdrug delivery system(DDS)を用いた腹腔内がん化学療法が考案・開発されてきた.また,近年ようやく腹膜転移の成立機構や腹腔内からの薬物吸収動態などの解明が行われるようになってきた.本稿においては,それらに基づくDDSを用いた腹腔内がん化学療法について,最近のtopicsを交えながら概説する.
  • 河合 弘二
    2007 年 22 巻 5 号 p. 530-536
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    ジャーナル フリー
    抗がん剤を用いた膀注化学療法と膀注免疫療法はともに表在性膀胱がんの治療体系に組み入れられた標準治療であり,特にBCG(bacillus Calmette-Guerin)菌を用いたBCG膀注療法は現状では最もよく行われ,かつ臨床的有用性の確立したがん免疫療法である.膀注療法の最も一般的な適応は表在性膀胱がんに対する経尿道的切除術後の再発予防である.また,膀注療法は上皮内がんに対する治療としてもその有効性が認識されている.また,これらの膀注療法の最終的な目標は表在性膀胱がんから浸潤性膀胱がんへの進展を予防することにある.
    TUR後早期の単回の抗がん剤膀注による膀注化学療法は,低あるいは中間リスク症例に適応され,その有効性が証明されているが,維持療法に関しては評価は一定していない.BCG膀注療法は一般的に膀注化学療法よりも有効であるが,有害事象も多いとされている.しかし,複数のメタアナリシスによる解析ではBCG膀注療法が有意に浸潤性膀胱がんへ進展するリスクを低減しうることが示されている.本稿では,最近のメタアナリシスによる知見も含めて膀胱がんに対する膀注療法の現状について概説したい.
  • 松枝 清, 行澤 斉悟, 植野 映子, 藤原 義将, 五味 直哉, 高野 浩一
    2007 年 22 巻 5 号 p. 537-543
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    ジャーナル フリー
    肝動注化学療法は,一般的に肝切除や局所療法が適応にならない高度進行肝細胞がんにおいて選択される.Drug deliveryに関する工夫や,さまざまな抗がん剤を用いたレジメンが検討されているものの,標準的レジメンは確立されておらず,生命予後の改善に寄与するという推奨レベルの高い化学的根拠は得られていない.ただし,近年になって報告されているインターフェロン併用レジメンによる良好な奏効率は,今後の方向性を示すものと考えられる.なお動注化学療法は,その薬理学的背景を理解したうえで,適切な技術をもとに行われる必要があることはいうまでもない.
  • 浅原 新吾, 猪狩 功遺
    2007 年 22 巻 5 号 p. 544-550
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    ジャーナル フリー
    Degradable starch microspheres(DSM)は,肝動脈から投与した場合,約1時間血流を停滞させる.この間,DSMと一緒に投与された薬剤の腫瘍への集積は,たんなる動注の場合よりも増大し,さらに周囲正常肝組織への集積の数倍になる.これらの特性から,転移性肝がんに対して有効性が確認され,現在DSMは転移性肝がん治療に保険適応となっている.筆者らの検討では肝細胞がん,特に血管浸潤などを伴う進行肝細胞がんに対しても有効であることがわかった.塞栓効果が一過性であることから,治療後の肝機能障害は軽度であり,肝機能障害の強い肝悪性腫瘍の治療に,これまでの動脈化学塞栓療法より安心して施行することが出来る.
  • キトサンおよびシスプラチン
    杉立 彰夫, 高森 吉守, 若林 剛
    2007 年 22 巻 5 号 p. 551-557
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    ジャーナル フリー
    水溶性抗がん剤に標的指向性と徐放性を付与する目的で,生分解性ポリマーを担体として剤形変更を試みている.
    今回は,脱アセチル化キチン(DAC)を担体としてシスプラチン(CDDP),フルオロウラシル(5-FU)の各水溶液をそれぞれ担持させて,新剤形,DAC/CDDP,DAC/5-FUを試作した.標的指向性はヒト大腸粘膜との間に生じる接着力をex vivoで測定して評価,薬物放出動態はin vitroで検討した.新剤形はいずれも粘弾性を持つ半流動体に仕上げた.DAC/CDDPの接着力はDAC/5-FUのそれより高値を示した.CDDPの放出動態は徐放性を示唆したが,DACの調製方法により放出速度に相異がみられた.5-FUを配合した剤形は初期放出が著しく,当初期待していた徐放性を示さなかった.
    今般デザインしたDAC/CDDPは,局所停留能とCDDP徐放性を備えた剤形であることが示唆された.
  • 城 潤一郎, 三島 史人, 武田 真一, 山本 雅哉, 村垣 善浩, 伊関 洋, 佐保 典英, 窪田 純, 佐々木 明, 西嶋 茂宏, 田畑 ...
    2007 年 22 巻 5 号 p. 558-568
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/13
    ジャーナル フリー
    次世代DDS型治療システムとは,従来のDDS治療効果をさらに向上させるために,外部エネルギーをDDS技術と融合させる新しい技術・方法論である.この新治療システムによって,体内の深部にある病気を治療できるであろう.本稿では,磁場とDDSとを組み合わせた,磁気誘導DDSによる次世代治療システムを実現させるために必要となる技術要素を概説するとともに,その治療ポテンシャルについて述べる.
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