Drug Delivery System
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23 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集 “バイオ素材による創薬とDDS” 編集 : 岡田弘晃
  • 熊谷 泉, 浅野 竜太郎
    2008 年 23 巻 5 号 p. 518-525
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    ジャーナル フリー
    液性免疫を担う主たる分子である抗体は,高い特異性と親和性ゆえに,分析試薬,診断薬のみならず,医薬としても開発されている.すでにFDAに20品目以上認可されており,100品目以上臨床研究に入っているともされるが,効果が不充分であったり,生産コスト高が問題となっている.そこで,ヒトあるいはヒト型化された抗体断片を用いた,より高機能な組換え抗体の研究が広く進められるようになった.本稿では,特にリンパ球とがん細胞を標的とした二重特異性抗体に焦点を絞り,新規な抗体医薬としてのがん治療への応用と展望を解説した.
  • 本望 修
    2008 年 23 巻 5 号 p. 526-528
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    ジャーナル フリー
    近年,神経再生に有用と思われる幹細胞が,神経系のみならず,その他の組織からも調整が可能となってきた.これらの幹細胞は,増殖や分化する能力が高いばかりでなく,移植後はホスト脳神経組織への親和性が高く,損傷部位へ遊走能し,状況に応じて分化するので,細胞治療の有力な候補となっている.
    自己の骨髄細胞を用いた脳梗塞治療などの場合,利点としては,発症よりある程度時間が経過してからでも治療の可能性がある,ということである.従来の治療のゴールデンタイムがきわめて短いこととくらべると,注目すべきと思われる.現在の研究がさらに発展し,新治療法として成熟することが望まれる.
  • 野地 智法, 清野 宏
    2008 年 23 巻 5 号 p. 529-533
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    ジャーナル フリー
    パイエル板や鼻咽頭関連リンパ組織を代表とする粘膜関連リンパ組織(MALT)には,樹状細胞やT細胞,B細胞などのすべての免疫担当細胞が集結することで,粘膜組織に侵入する病原細菌やウイルスに対する防御免疫システムを構築している.これらのMALTを覆う上皮層(follicle-associated epithelium:FAE)は特殊に分化しており,そこには外来抗原の取り込みを専門に行うM細胞が存在し,粘膜免疫システムにおける抗原門戸細胞として機能している.本稿では,このM細胞を標的としたMALTへの効果的な蛋白質送達技術を解説し,さらにはそれを基盤とした粘膜ワクチン開発に関する最近の展望を紹介する.
  • 宮川 伸, 藤原 将寿, 西山 道久
    2008 年 23 巻 5 号 p. 534-543
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    ジャーナル フリー
    近年,RNAアプタマーが抗体医薬の次世代分子標的薬として注目されている.RNAアプタマーはSELEX法を用いて取得され,短鎖化および安定化ののちに医薬品候補品となる.PEGを付加することで体内動態特性が顕著に改善される.アプタマーはそれ自身が医薬品となりうるが,抗がん剤などを付加することでデリバリー剤としても利用可能である.本稿では,アプタマー医薬の作製方法と特性を概説するとともに,臨床試験中のvWFアプタマーとリボミック社が開発中のMKアプタマーに関して説明する.
  • 金沢 貴憲, 高島 由季, 岡田 弘晃
    2008 年 23 巻 5 号 p. 544-552
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    ジャーナル フリー
    siRNAの創薬には,siRNAの体内消失時間の延長や効果増強させるために,siRNAの化学修飾や長期徐放化が必要である.筆者らは,長期間連続的にsiRNAを放出し,連続して標的mRNAを分解しつづけることで,強い治療効果が期待できるsiRNA封入長期徐放性マイクロスフェア(msp)の検討を行った.このmspは1ヵ月以上にわたり安定にsiRNAを放出し,S-180細胞や担がんマウスにおいて持続的なVEGF産生抑制効果と抗腫瘍効果を示すことを確認することができた.siRNAの化学修飾についても簡単に解説した.
  • 江藤 浩之, 中内 啓光
    2008 年 23 巻 5 号 p. 553-559
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    ジャーナル フリー
    さまざまな出血性疾患や易出血病態において,血小板輸血が唯一の有効な治療法である.しかしながら,血小板は冷蔵保存ができず供給不足状態にある.また,献血者由来血液製剤を介した感染症は近年増加傾向にある.代わって献血者ドナーに頼らない輸血用血液のソースとして,無限に試験管内で増殖可能であるヒト胚性幹細胞(ES細胞)が提唱されている.筆者らはヒトES細胞からの血小板産生培養法を開発した.近年,樹立された誘導性多能性幹(iPS)細胞はES細胞同様の特性を持つため,患者由来iPS細胞からの輸血製剤産生も実現することが期待される.
  • 藤森 実
    2008 年 23 巻 5 号 p. 560-566
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    ジャーナル フリー
    全身転移を有する固形がんの再発患者に有効な治療法は抗がん剤の全身投与である.このため重篤な副作用が常に問題となる.これを解決するためには,がん部にのみ作用する腫瘍選択的治療法の開発が急務である.筆者らは,固形がんの内部が嫌気的環境であることに着目し,ヒトの腸内常在菌で嫌気性菌であるビフィズス菌の一種,Bifidobacterium longum菌を静脈内全身投与すると固形がんの腫瘍内にのみ集積し,正常組織からは速やかに消失することを見いだした.さらに,遺伝子組換えBifidobacterium longum菌により,プロドラッグ5FCを抗がん剤5FUに転換する酵素,サイトシンデアミナーゼを腫瘍選択的に運ぶDDSを開発した.
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