Drug Delivery System
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24 巻, 5 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集 “微粒子製剤による薬物経肺デリバリー” 編集 : 岡本浩一
  • 山下 親正
    2009 年 24 巻 5 号 p. 468-476
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
    蛋白質やペプチドなどの高分子医薬品に適した新規の粉末吸入システムを構築するために,予め製造工程で経肺投与に適した微粒子を設計するという従来の基本的な製剤設計の既成概念を脱却し,発想の転換を図った.すなわち,不安定な蛋白質やペプチドなどの高分子医薬に適した製造方法である凍結乾燥法と,空気力学的に大変有利な多孔性を有する凍結乾燥ケーキに着目し,凍結乾燥ケーキが吸入時にはじめて微粒子化するという新しい概念の粉末吸入システムOtsuka dry powder inhalation(ODPI)システムを開発した.
    このODPIシステムは,吸気と同調して空気がデバイス内に導入され,その空気衝撃により,凍結乾燥ケーキが瞬時に経肺投与に適した微粒子になるメカニズムを採用している.このシステムは,製剤としては,微粒子の集合体ではない蜘蛛の巣のように形成されたユニークな多孔性の網目構造を有する凍結乾燥ケーキと,空気の通路と微粒子の排出経路が備わっていれば成立するシンプルな構造の吸入デバイスを使用することを特長とする.
  • 川上 亘作, 張 紹玲
    2009 年 24 巻 5 号 p. 477-483
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
    近年の吸入剤研究にはさまざまなナノテクノロジーが利用されており,特にナノ粒子を利用した経肺投与は,薬物の沈着効率やその持続性において,効果を発揮すると期待されている.
    本稿では,筆者らのナノ加工による粒子の表面物性制御に関する研究を中心として,最近のナノテクノロジーを利用した吸入用粒子設計について解説する.また,新しいナノ粒子調製法であるエレクトロスプレー法を利用した粒子設計についても触れる.本手法は常温・常圧下で操作できるマイルドなナノ粒子調製法として期待される.
  • 尾関 哲也
    2009 年 24 巻 5 号 p. 484-491
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
    新しいDDSでは,ナノ粒子の応用が期待されているが,ナノスケールの粒子の表面エネルギーは著しく大きく,ナノ粒子のまま分散した状態で固体として存在することは困難であり,また,一度凝集すると再分散せず,ナノ粒子としての機能は失われる.一方,経肺投与において気管支や肺胞に送達させるには空気力学径で0.4~5.8 μmの範囲に粒子設計する必要がある.筆者らは,二つの液体流路と二つの気体流路を有する4流体ノズルを装着したスプレードライヤーを用いて,ナノサイズの薬物粒子を内部に分散するマイクロサイズのマンニトール粒子をワンステップで容易に得るナノ粒子化技術を開発し,この粒子を経肺投与することで,難溶解性薬物の吸収性を著しく向上させることに成功した.また,結核治療用経肺投与製剤の開発を試み,肺への送達性,肺における滞留性,肺胞マクロファージによる取り込みなどを検討した.
  • 綿野 哲
    2009 年 24 巻 5 号 p. 492-498
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
    筆者らは,微粒子の生成と造粒(凝集)を単一のプロセスで同時に行うことが可能な,超臨界凍結造粒法(FG-SCF)を開発した.本法は,超臨界二酸化炭素が大気に開放される過程でJoule-Thomson効果(断熱膨張)によって生じる急激な温度降下を利用した新しい造粒方法であり,ポーラスな微粒子の凝集体を形成することができる.
    本稿では,超臨界二酸化炭素を用いた薬物微粒子の設計法と,粉末吸入製剤への適用について概説する.
  • 奥田 知将, 古館 壮義, 岡本 浩一
    2009 年 24 巻 5 号 p. 499-506
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
    近年の微細化技術の進歩により,μ~nmサイズの剤形制御に基づいた機能性医薬品の開発に注目が集まっている.粉末吸入製剤開発においては,製剤の空気力学的粒子径を1~5 μmの範囲に制御することですぐれた肺内到達性が獲得できる一方,微細化による粒子間の付着凝集が問題となる.これらの問題を克服する手段として,低密度な中空多孔性微粒子の開発が進められている.
    本稿では,筆者らが検討しているウニ状微粒子の成果を中心として,中空多孔性微粒子の粉末吸入製剤への応用例を紹介していく.
  • 呼吸器感染症を中心に
    柳原 克紀, 掛屋 弘, 河野 茂
    2009 年 24 巻 5 号 p. 507-513
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
    気管支喘息に対して吸入療法が以前から行われており,その有効性は確立している.耐性菌の増加と新規抗菌薬開発の遅滞により,新しい治療戦略が求められている.代表的なものとして,抗微生物薬の吸入療法があり,薬物を肺局所に到達できることから臨床効果が報告されるとともに基礎研究も進められている.
    本稿では,(1) 緑膿菌慢性気道感染症に対するアミノ配糖体の吸入療法とその最近の進歩,(2) 侵襲性肺アスペルギルス症に対するアムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)の吸入療法について概説する.
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