Drug Delivery System
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25 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集 “がんの標的療法:基礎と実地臨床” 編集 : 羽渕友則
  • 金田 安史
    2010 年 25 巻 2 号 p. 94-102
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    がんは1980年代以降,わが国の死亡率のトップを占めている.その原因は,いうまでもなく高頻度で起こるがんの転移や治療後に再発するがんの制御の難しさにある.がんの再発や転移をいかに治療するかががん治療の大きな課題であるが,基本的には,できる限りがん組織に選択的に治療分子を送達させてがんの縮小を図る一方,残存したがん細胞を宿主免疫を利用して排除するようながん標的治療が望まれる.期待されてきた遺伝子治療もまだ大きな成果をあげていないが,その試みを紹介しながらがん標的治療の現状と将来像について考察する.
  • 野口 正典
    2010 年 25 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    近年,がんワクチン領域は急速な進展がみられており,臨床効果と免疫反応性の相関を認めた報告が続々となされている.最近のがんワクチン療法の現況では,子宮頸がん予防ワクチンの承認が最も注目される.またOncophage(熱ショック蛋白-ペプチド複合体)が2008年ロシアで一部の腎臓がんに対して承認された.しかしながら,現時点において日本,米国において承認されたがんワクチン療法はいまだ存在しない.ペプチドや樹状細胞を用いた臨床試験結果は,ペプチド特異的な免疫マーカーにそった臨床効果を示すようになってきている.
    患者個々に応じたペプチド選択や抗がん剤との併用,ならびに生存率をエンドポイントとした臨床試験が今後のがんワクチン療法開発のキーポイントになると考えられる.泌尿器がんにおいても種々のがんワクチン臨床試験が実施されており,手術,放射線治療,抗がん剤治療につぐ第4の治療として期待されている.
  • 米田 俊之
    2010 年 25 巻 2 号 p. 110-119
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    骨はその基質中に豊富に増殖因子を蓄えており,骨リモデリングにより常時その増殖因子を骨髄中に放出しているため,骨髄はきわめて肥沃な環境となっている.血流を通じて原発巣から骨に侵入したがん細胞は,このような骨の肥沃な環境を利用して自身の増殖,生存を図り,さらに自身がさまざまなサイトカインを産生することにより骨環境を自身の増大に都合がよいように変えようとする.このようながん細胞と骨との悪循環を断ち切る薬剤の開発が骨をターゲットとする選択的がん治療に結びつく.
  • 西尾 正道
    2010 年 25 巻 2 号 p. 120-125
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    有痛性の多発性骨転移に対して放射性医薬品である塩化ストロンチウム(89Sr)は高い除痛効果が報告されている.
    89Srは体内でCa代謝と類似した動態を示し,Ca代謝が亢進した骨転移部位に選択的に集積する.物理学的半減期は50.5日で,純β線放出核種で,β線の最大エネルギーは1.49 MeV(100%)であり,組織中の飛程は平均2.4 mm(最大8 mm)であるため,放射線はほとんど自己吸収され周囲の人への影響は少ない.
    現在までの89Sr治療の概略と今後の課題について報告する.
  • 福島 伯泰, 木村 晋也
    2010 年 25 巻 2 号 p. 126-133
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    分子生物学および遺伝子工学の発達によって,腫瘍化を促進する遺伝子や腫瘍増殖を促進する蛋白質を特異的な標的とする分子標的治療薬が開発された.従来の抗腫瘍剤は正常細胞も傷害するが,分子標的薬は基本的には正常細胞は傷つけることなく腫瘍細胞のみを傷害するため,がん治療を大幅に改善することが期待される.
    実際,ABL特異的阻害剤メシル酸イマチニブは慢性骨髄性白血病患者の予後を大きく改善し,臨床応用後わずか数年で第一選択薬となった.その他にも血液がんにおいて,多くの有効な分子標的薬が開発され,臨床に用いられるようになっている.このように分子標的薬は希望に満ち溢れているが,海外での開発後日本に導入されるまでの時間の長さ,いわゆる耐性,drug lag や増大傾向にある開発費を反映した高価格などの多くの問題点が残っている.
  • 腎がんの経験から
    土谷 順彦, 羽渕 友則
    2010 年 25 巻 2 号 p. 134-142
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    進行性腎細胞がんに対する治療は,免疫療法から分子標的薬へと大きな転換期を迎えている.腎細胞がんにおける分子標的薬の作用機序は,主として血管新生の阻害であり,チロシンキナーゼ阻害薬,mTOR阻害薬,抗VEGF抗体が使用されている.分子標的薬は強力な抗腫瘍効果を示す一方,薬剤ごとに異なる副作用のスペクトルを有し,ときに予期せぬ重篤な副作用を引き起こす.これらの薬剤の効果を最大限に引き出すには,多職種にわたるチーム医療がこれまで以上に重要になってくる.
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