遺伝子・核酸治療用ベクターの開発を考えるうえでは、細胞内における動態やベクターからの解離性を制御することが重要である。筆者らは、エンドソーム内のpH環境に応じて正に帯電し、さらに細胞質内の還元環境に応じて崩壊する粒子を形成するための脂質様材料として、SS-cleavable and pH-activated lipid-like material(ssPalm)を開発した。本粒子の最大の特徴は、電荷的に中性であるという点にある。本分子の脂溶性足場として各種の脂溶性ビタミン(ビタミンAやビタミンE)を採用し、さらに第三級アミンの分子チューニングを施すことにより、遺伝子や核酸、低分子等さまざまな用途に利用できるナノDDSプラットフォームへと展開できることが明らかとなってきた。本稿では、遺伝子・核酸デリバリーシステムへの応用例を中心として紹介したい。