昭和歯学会雑誌
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10 巻, 1 号
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  • 渡辺 千秋
    1990 年 10 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    乳歯と永久歯の交換期における乳歯歯根の吸収組織中のセメント芽細胞および単核マクロファージを, 微細構造学的ならびに細胞化学的に検討した.セメント芽細胞は吸収象牙質表面に分布し, 破歯細胞に隣接して数多く観察された.セメント芽細胞は, よく発達したゴルジ装置, ミトコンドリア, ライソゾーム, 豊富な粗面小胞体等を含み, 骨芽細胞によく類似した細胞像を呈した.吸収象牙質上のセメント芽細胞には, コラーゲン線維の形成像が認められるとともに, 一部にはコラーゲン線維の貧食像が観察された.ACPase活性は, セメント芽細胞のライソゾームに検出され, またALPaseはその形質膜に沿って検出された.非脱灰切片をEDTA脱灰しPTA染色を施すと, 正常象牙質が非染性であるのに対し, 破歯細胞下の吸収象牙質層は強度の染色性を示した.またセメント芽細胞によって被覆されている象牙質では, PTA可染性の吸収象牙質上に, PTA非染性の層が出現した.さらに, 走査電顕観察では, 吸収象牙質上に細胞性セメント質の形成が確認された.単核のマクロファージは, 象牙質表面にしばしば出現したが, 吸収窩は形成しなかった.マクロファージは, 象牙質表面に接する部分にクリア・ゾーンを形成することがあり, 同部位で石灰化象牙質の小塊の貧食像が観察された.ACPase活性は, マクロファージのゴルジ装置とライソゾームに検出されたが, 細胞外への酵素の放出像は認められなかった.以上の結果より, 乳歯の石灰化象牙質の吸収には, 破歯細胞のほかに, マクロファージならびにセメント芽細胞が関与し, 特に破歯細胞に隣接するセメント芽細胞は, 骨芽細胞に類似した細胞構造を呈し, 吸収象牙質表層の改造機転に関わるものと考えられた.
  • 小野寺 篤, 高原 克彦, 松本 光吉
    1990 年 10 巻 1 号 p. 14-17
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    培養骨細胞を用いて細胞増殖および骨細胞の一指標である細胞内アルカリフォスファターゼ活性に対するHe-Neレーザーの作用を検討した.He-Neレーザー装置は, ワールドワイドレーザー社製Soft Laser 632, 波長632.8nm, 6mWを使用した.培養骨細胞の採取は, ウィスター系ラットのカルバリアから酵素消化法により採取した.培養液はフェノールレッド不含10%牛胎児血清含有MEMを用い, 培養液の交換は播種後14, 72時間後に行った.DNA合成実験は, 培養後24時間後, すなわち培養一日目よりレーザーを照射した.培養一日目にレーザーを照射した群, 培養一日目, 二日目にレーザーを照射した群, 培養二日目にレーザーを照射した群いずれの場合もレーザーは1, 3, 10分間照射した.ALP活性測定は, 培養後24時間後, すなわち培養一日目よりレーザーを1, 3, 10分間ずつ四日目まで照射した.DNA合成は, いずれの群についても対照群と比較して統計学的有意差はなかった.ALPase活性も統計学的有意差はなかった.以上のことから本実験条件下ではHe-Neレーザーは細胞増殖には影響を与えないことが判明した.
  • 二階堂 毅彦
    1990 年 10 巻 1 号 p. 18-30
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    カルシウム, ビタミンDなどの栄養要因の欠乏が, 顎骨および歯にどのような形態学的変化をもたらすかをアカゲザルを用いて検索した.実験動物を正常食で飼育した対照群 (I群), 低蛋白・低カルシウム食を与えた低栄養食群 (II群), ビタミンD欠乏食で飼育したビタミンD欠乏食群 (III群), およびII群の飼料からビタミンD3を欠乏させた低栄養・ビタミンD欠乏食群 (IV群) の4群に分け, 各々の飼料で5-9年間飼育した.マクロX線写真による観察では, II, III群の下顎骨にI群と比べ著明な変化はみられなかったが, IV群では歯槽骨骨梁の減少, 歯槽硬線の不連続化と菲薄化, 下歯槽管の不明瞭化, 底部皮質骨幅の減少などの所見が認められた.顕微X線 (CMR) による観察では, IV群の下顎骨の石灰化不全と石灰化骨量の減少が著明であり, またセメント質にも石灰化不全がみられた.吉木法により作製したパラフィン切片による検索でも, II, III群の顎骨および歯では著変がなかったが, IV群では類骨や類セメント質の増加が明らかであった.また, パラフィン切片による検索から, マクロX線写真で観察されたIV群の歯槽硬線と下歯槽管の変化像は, 固有歯槽骨および下歯槽管壁における類骨の増加と密接に関連していることが明らかとなった.本実験により骨軟化症では長管骨以外に顎骨さらには歯にも種々の形態学的変化が起こっていることが明らかとなり, 骨軟化症の病態像として顎骨や歯の変化も重要であることが示唆された.
  • 義歯床の形熊
    小松 世幸, 万代 倫嗣, 御郷 信也, 山下 由香里, 酒井 敏博, 池田 増夫, 田村 文誉, 荻野 味加, 金 鮮妃, 芝 〓彦, 若 ...
    1990 年 10 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    3次元解析装置, 画像解析装置, クエット型回転粘度計および維持力測定装置を使用して, 1歯あるいは2歯の残存歯を持つ2人の被験者において通法にしたがって義歯を製作した.そして義歯床の形態を変化させた場合の維持力を測定し, 義歯床の形態が維持力に及ぼす影響について研究を行った.その結果, 義歯床の削除にともない維持力は減少した.また, 義歯床の維持力にはポストダムおよび後縁部が大きな役割を果たしており, 特にポストダムの影響は大きかった.さらに, 少数歯残存の症例においては両側の均衡咬合が重要であることが示唆された.
  • 松本 光吉, 張簡 俊貴, 日比 秀子, 福山 一晴, 中村 幸生, 白須賀 哲也
    1990 年 10 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    新しく開発された最大出力3W, パルス間隔10, 20, 30pps, 波長1.064μm, He-Neガイド光付のPulsed Nd : YAG Laser D-300についての臨床応用を目的とした基礎的, 臨床的研究を目的に本実験は行われた.実験材料として, 抜去歯と来院患者の症例を用いた.レーザー照射の適応症として, 歯頸部象牙質知覚過敏症, 歯肉の切開, 止血凝固, 蒸散, 盲嚢掻爬, 軟化象牙質の除去, 窩洞形成, エナメル質と象牙質のエッチング, 色素沈着の除去, 根管充填, 根尖孔の閉鎖, 根尖部歯周組織と根管内の消毒, 殺菌, 鎮痛, 消炎などを選び検討した.レーザー照射法に関しては従来より当教室で行っている判定基準や誘発痛の評価法, 術式に従って行った.また, 痛み知覚閾値よりも少し下げた条件で処置を行った.レーザー光線の熱エネルギーの効率化を考えて墨を塗布して行った症例も実験に加えた.その結果, 歯頸部象牙質知覚過敏症症例中46症例 (92%) において有効であった.また, 従来の方法に比較して再発症例も少なく4例 (8%) であった。エナメル質のエッチングは墨汁塗布や酸処理歯では有効であった.歯肉の蒸散, 止血は特に著しい効果を示し, 歯周炎の盲嚢掻爬に有効であることも判明したが, 窩洞形成, 根尖部閉鎖, 根尖部歯周組織の鎮痛, 消炎, 消毒, 殺菌などに関してはさらに今後検討を加える必要があることもわかった.
  • 大野 二朗, 若月 英三, 伊藤 浩昭, 美濃部 浩久, 浜田 立太, 吉田 佳子
    1990 年 10 巻 1 号 p. 46-54
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    頭顔面形態は, 人種や生活環境によりさまざまな特徴を示すことが従来より言われている.前回著者らはフィリピン男性の頭顔面形態について報告し, その結果台湾原住民に類似した形態であることを報告した.今回さらに女性の計測を行う機会に恵まれ, 統計学的処理を行ったので, その結果を報告する.対象は, マニラ市内および近郊在住のフィリピン成人女性であり, 頭顔面形態の計測はマルチンの計測法に準じて行った.計測項目は, 最大頭長, 最大頭幅, 頭耳高, 頬骨弓幅, 下顎角幅, 形態顔面高のほか, 著者らが考案した顔面厚を加えた7項目である.計測の結果, すべての計測項目で男性に比較して有意に小さい値を示し, さらに下顎角幅の発育が特徴的であった.日本人および周辺地域の国と比較すると, 男性同様台湾原住民に類似している傾向が窺われた.
  • 成澤 英明
    1990 年 10 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    顕微ラマン分光法は, Lille大学のDelhayeらによって1975年に報告されたマイクロアナリシスの-手法である.この方法は他の分析法と異なる際だった長所を持っており, 歯科分野にも極めて有用な分析手段と思われる.しかしながら, 独特の問題点も知られている.本研究では, 昭和大学歯学部に新規に導入されたレーザーラマン分光光度計を用い, 接着性レジンの作用機序の化学的な解明を試みる前段階として, 市販のdentin bonding agent と, ヒトエナメル質およびハイドロキシアパタイトのラマンスペクトルを計測した.この結果, 目的のスペクトルを得ることができたが, 接着性レジンの接着機構について最終的な結論を得るためには, さらに基礎的な改良が必要であると思われた.
  • Masumi IBUSUKI
    1990 年 10 巻 1 号 p. 62-65
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    As a preliminary experiment on the measurement of translucent properties of natural and artificial teeth, the individual discrimination threshold for luminous transmittance difference was checked according to the principle of haze comparison by the paired difference test. A total of 20 males and females who were 18-30 years old participated in this study as experimental subjects and the following results were obtained : (1) the average for the actual least perceptible haze difference was 0.76%, (2) the larger haze differences were more easily distinguished, but it was not always the case.
  • 坂巻 秀明, 木村 義孝, 中村 維大, 真鍋 真人, 南雲 正男, 河野 葉子, 立川 哲彦
    1990 年 10 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    石灰化歯原性嚢胞は, 1962年Gorlinらにより初めて報告された病変で, 発育中の歯牙または未崩出歯の歯冠の上皮から発生し, 組織学的には, その上皮内にghost cellや石灰化物が存在するまれな疾患である.本邦では, 1967年枝らの報告以来100例以上の報告例があり, 発生由来についても種々の検討がなされているが, 本態はいまだ不明な点が多い.併発腫瘍や埋伏歯を伴った症例も多く, 併発腫瘍では歯牙腫が若年者に好発している.また, 埋伏歯を伴った症例もあるが, 埋伏歯と嚢胞との関係も解明されていない.今回, われわれは19歳女性の右側下顎小臼歯に歯牙腫を伴った石灰化歯原性嚢胞の一例を経験した.臨床的には, 歯牙腫を伴った含歯性嚢胞と診断した.外科的に摘出し, 手術後2年経過した現在再発傾向もみられず, 経過良好である.本症例の概要と, 本邦で報告された105例について若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 芝 〓彦, 松山 忠司, 池田 増夫, 小柳 一哉
    1990 年 10 巻 1 号 p. 71-73
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
  • 1990 年 10 巻 1 号 p. 75-86
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
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