新しく開発された最大出力3W, パルス間隔10, 20, 30pps, 波長1.064μm, He-Neガイド光付のPulsed Nd : YAG Laser D-300についての臨床応用を目的とした基礎的, 臨床的研究を目的に本実験は行われた.実験材料として, 抜去歯と来院患者の症例を用いた.レーザー照射の適応症として, 歯頸部象牙質知覚過敏症, 歯肉の切開, 止血凝固, 蒸散, 盲嚢掻爬, 軟化象牙質の除去, 窩洞形成, エナメル質と象牙質のエッチング, 色素沈着の除去, 根管充填, 根尖孔の閉鎖, 根尖部歯周組織と根管内の消毒, 殺菌, 鎮痛, 消炎などを選び検討した.レーザー照射法に関しては従来より当教室で行っている判定基準や誘発痛の評価法, 術式に従って行った.また, 痛み知覚閾値よりも少し下げた条件で処置を行った.レーザー光線の熱エネルギーの効率化を考えて墨を塗布して行った症例も実験に加えた.その結果, 歯頸部象牙質知覚過敏症症例中46症例 (92%) において有効であった.また, 従来の方法に比較して再発症例も少なく4例 (8%) であった。エナメル質のエッチングは墨汁塗布や酸処理歯では有効であった.歯肉の蒸散, 止血は特に著しい効果を示し, 歯周炎の盲嚢掻爬に有効であることも判明したが, 窩洞形成, 根尖部閉鎖, 根尖部歯周組織の鎮痛, 消炎, 消毒, 殺菌などに関してはさらに今後検討を加える必要があることもわかった.
抄録全体を表示