SD系若齢ラットを+Ca, +D (正常食) 群,-Ca, -D (低カルシウム・ビタミンD欠乏食) 群, -Ca, +D (低カルシウム食) 群の3群に分け, 抜歯創治癒過程における骨組織の動態を骨形態計測法, 硝酸銀塩化シアヌルニ重処理法および顕微X線法を用いて検索した.+Ca, +D群の抜歯創治癒過程は, 従来からの所見と基本的に同様であり, 骨梁の新生, その石灰化と改造を経て治癒の完了をみた.骨形態計測的には新生骨梁の単位骨量 (tVsp) は未抜歯歯槽骨部のそれに対して過形成を示したが, その時期に一致して, 平均破骨細胞数 (MCN) および分画吸収面率 (FrRSR) の急激な増加がみられ, 抜歯後21日目には過形成骨梁の改造現象がピークに達した.それも抜歯後32日目には未抜歯歯槽骨のそれぞれの値と同等に復し, 抜歯創の治癒が完了した.-Ca, -D群では, 骨基質の新生はみられたもののその石灰化はほとんど認められず, 骨形態計測的にも相対類骨量 (ROV), 分画形成面率 (FrFSR) はほとんど100%のまま推移した.これら骨梁の形成は量的にも時間的にも抑制されており, 未抜歯歯槽骨に対するtVspの過形成は認められたがピークを示さず, しかも, NCN, FrRSRは増加傾向を示していないことから, 少なくとも本実験期間中, 過形成した骨梁の改造はほとんど行われなかったことを示唆していた.-Ca, +D群では, 抜歯創新生骨梁の石灰化と破骨細胞の出現がみられた.しかし, 骨形態計測的には+Ca, +D群に比べ骨梁形成が抑制され, 同時に時間的にも遅延を示し, 未抜歯歯槽骨に対するtVspの過形成もみられたもののピークを示すことなく推移した.ROV, FrFSRは抜歯後10日以後減少し始め, 不十分ながらも新生骨梁の石灰化の進行が認められた.しかも新生骨梁のMCN, FrRSRは未抜歯歯槽骨のそれらと同様に次第に増加する傾向を示したが, 本実験期間内では+Ca, +D群のような急激な増加を示さず, 過形成骨梁の改造現象はかなり低調であったことを示唆していた.
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