昭和歯学会雑誌
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19 巻, 4 号
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  • 佐野 恒吉, 江川 薫, 野中 直子, 滝口 励司
    1999 年 19 巻 4 号 p. 343-352
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    硬組織の形成部位のカルシウム (Ca) やリン (P) の含有量を定量分析する方法ではエネルギー分散型X線検出器 (EDX) を用いる方法が分析例の多さ, 試料の扱い, そして分析精度の点で現在のところ最も優れた方法である.しかし, 歯科領域の分析ではCaとP濃度は同時に測定されることが多く, EDXの通常の設定では, 硬組織, 特に歯の象牙質における管間及び管周象牙質などのように, 分析したい部位が必ずしもCaやPのX線発生領域よりも広くない場合が多い.本研究では, このEDXが据付られた走査電子顕微鏡S-2500CX (日立) で, 硬組織上にどの程度まで小さな分析領域を取ることができるかを, 加速電圧の変化に伴う試料中のX線発生領域の変動と試料の分析面を傾斜させることにより分析値の変化を観察した.そして, これらの結果を基に, 走査電子顕微鏡 (SEM) の分析仕様の限界の7kVの加速電圧で, ラットの下顎の切歯断面の象牙質の表面をX線検出器に向かって角度27.5°に傾斜させてX線分析領域を最小にして, CaとPを分析できた.最初は, 象牙質の唇側の管間及び管周象牙質でSEMの加速電圧の違いによる分析値の変化を観察するため, 加速電圧が7と10kVそして15kVでCaとPの含有量の分析を行った.この唇側の結果から加速電圧が7kVで最も正確な濃度が得られたが, 10kVのときの値に対して有意な違いがなかった.次に, 加速電圧7kVの唇側の結果に合わせて舌側とその中間の近心側と遠心側の管間及び管周象牙質も同様に分析した.その結果, 管周象牙質のCa及びP濃度に有意差が見られず, エナメル質に関連する唇側の管周象牙質のCa含有量は舌側管周象牙質より高かった.
  • 佐々木 崇寿, 澤江 佳子, 佐原 貴子, 城戸 衛, 佐々木 康寿, 河崎 昭浩, 大寄 登隆, 磯 良枝
    1999 年 19 巻 4 号 p. 353-360
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    ラット舌背粘膜における有郭乳頭・粘膜固有層の線維・細胞構成を微細構造学的に観察し, 次のような所見を得た.1) 粘膜固有層はI型コラゲンを主体とする交織性の密線維性結合組織であり, コラゲンの線維束間に弾性線維が介在した.弾性線維は, ミクロフィブリルの集塊上にエラスチンが沈着して形成された.ミクロフィブリルはコラゲンの線維束間やコラゲンと弾性線維の結合部位, 細血管周囲に分布していた.2) 細胞成分の中心は線維芽細胞であるが, 細胞は萎縮性で不活性期の線維細胞の像を呈した.また平滑筋細胞が散在し, その周辺には弾性線維やミクロフィブリルが分布しており, これらの線維成分の産生に与るものと考えられた.3) 好酸球と形質細胞, 肥満細胞が分布していたが, 好中球やマクロファージはほとんど観察されなかった.これらの免疫担当細胞は, 有郭乳頭の粘膜固有層内に, 生体の防御機構としての粘膜免疫を形成するものと考えられた.4) 細血管や毛細血管では, 内皮細胞が管腔側に突出することが多く, 管腔内を遊走する顆粒白血球等の遊走細胞を捕捉し, 結合組織中に浸出させるのに適した構造を示していた.5) 多くの神経線維束が分布し, 味蕾の神経上皮下に神経叢を形成したが, それらの終末は味蕾の味細胞に結合する求心性の自由神経終末で, 被覆性神経終末は観察されなかった.以上の観察結果から, ラット舌背粘膜の有郭乳頭は3種類の線維成分から構築される強固な粘膜固有層を有し, ここには味刺激を受容する知覚性神経終末が豊富に分布するほか, 味蕾への化学刺激を初めとする種々の外来刺激に対する粘膜免疫が存在することが示された.
  • 桑田 哉子, 瀬川 和之, 滝口 励司
    1999 年 19 巻 4 号 p. 361-374
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    成人顎関節の円板後部結合組織におけるコラーゲン細線維と弾性線維の立体構築を走査電子顕微鏡によって詳細に観察し, 円板後部結合組織の立体線維構築の機能について検討した.形態異常と位置異常の認められない顎関節円板と円板後部結合組織を材料とし, 光学顕微鏡でコラーゲン線維と弾性線維の分布を観察するために弾性線維染色, 走査電子顕微鏡でコラーゲン細線維の立体構築を観察するためにトリプシン処理あるいはKOH-トリプシン処理, 弾性線維の立体構築を観察するためにKOH-コラゲナーゼ処理を各々行った.顎関節円板の後方肥厚部は部位によって線維構築が異なるが, 後方肥厚部の後下方の部位には, 円板後部結合組織に向かうほぼ前後方向に配列する細線維束が認められた.後方肥厚部の後部から円板後部結合組織の前端にかけては, 細線維束は密な直線状配列から, 疎な蛇行状あるいは螺旋状配列へと変化していた.弾性線維は細線維束と同様に直線状, 蛇行状あるいは螺旋状を呈していたが, 細線維束の配列が疎になるとともに直径が増加する傾向が認められた.円板後部結合組織を便宜上, 上関節腔側から下関節腔側に向かって順次, 第1層から第4層まで区分した.上関節腔側の滑膜層直下, 第1層では, 前後方向に蛇行して配列する薄板状あるいは円柱状の細線維束が関節面に平行な平面上で集合し, 細線維束による層板様構造が形成されていた.弾性線維は細線維束近傍では細線維束と並走し, 細線維束間では不規則に配列していた.円板後部結合組織の第2層では, 内外側方向に配列する板状の細線維束と, 円板後部結合組織中で最も太く, 蛇行状, 板状あるいは網状を呈する弾性線維とによる線維構築が認められた.円板後部結合組織の厚径の中央付近に相当する第3層では, 板状, 直線状, 蛇行状あるいは螺旋状の細線維束が不規則に立体交錯していた.弾性線維は太く, 直線状あるいは蛇行状を呈していた.線維間には脈管や脂肪組織が介在していた.第4層における細線維束は, 前後方向あるいは内外側方向に配列する, あるいは斜走する細線維束によって板状の細線維束が形成されていた.弾性線維は細く直線状を呈しており, 大部分が前後方向に配列していた.円板後部結合組織の線維構築は, 前後および内外側方向の牽引負荷の緩衝や伸縮の許容, 円板後部結合組織の前後的, 上下的および内外側的な位置の制御, 静脈叢における血流の増減や細線維束間の組織液流動による内部の膨縮に対しての適応, あるいは下顎頭の後退時における緩衝帯, として機能する可能性が示唆された.
  • 両側咬合挙上による循環動態の変化
    風間 賢剛, 松谷 貴代, 川和 忠治, 吉野 建二, 山上 芳雄
    1999 年 19 巻 4 号 p. 375-380
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    歯科臨床において咬合異常を伴う咀嚼系機能障害患者の咬合改善は, 顎口腔系の症状に限らず全身的な症状も緩和することが報告されている.しかし, 咬合の変化や咬合の異常と, それらが全身に与える影響との関係はいまだ明らかにされていない.本研究は, 両側の咬合を挙上することにより実験的に咬合異常を引き起こし, テレメトリー自動計測システムを用いて, 正常血圧ラット (WKY) および高血圧自然発症ラット (SHR) における活動量, 心拍数, 収縮期および拡張期血圧を測定し, 両側咬合挙上により引き起こされるストレスがこれらのパラメータに与える影響について検討した.両側咬合挙上装置を装着して咬合異常のストレスを与えると, ストレス負荷初期 (0~6日) にはWKY, SHR共に活動量および心拍数は著しく低下し, 以後咬合挙上装置装着前と比べると, 低い値を維持した.一方, 収縮期および拡張期血圧はWKY, SHR共にストレス負荷初期に上昇した.WKYの収縮期および拡張期血圧は, ストレス負荷中期以後 (6~20日) 減少傾向がみられた.SHRの収縮期および拡張期血圧は, ストレス負荷期間上昇傾向がみられた.各パラメータにおいて, ストレス負荷初期には日内変動が不明瞭になった.両側咬合挙上によるこれらの循環動態の変化に, 交感神経系の亢進が関与していることが示唆された.
  • 野中 直子, 江川 薫, 高野 真, 桑田 哉子, 滝口 励司
    1999 年 19 巻 4 号 p. 381-387
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    頭蓋の眼窩, 鼻腔ならびに副鼻腔の外郭は咀嚼圧の伝達と対抗および咀嚼筋の牽引力に抗する理想的な補強構造である.頭蓋は縦走する犬歯の補強構造, 頬骨の補強構造ならびに翼状突起の補強構造からなる.縦走の犬歯の補強構造と頬骨の補強構造とは眼窩上縁と下縁とで水平位に連絡されている.一方, 縦走の翼状突起の補強構造と頬骨弓とは関節結節の骨部で水平位に連絡されている.補強構造部を連結させている水平位の各部は咀嚼圧を分散, 緩衝させる内外方向の伝達路であると考えられる.本研究では水平位の咀嚼圧の伝達路と考えられる各部の緻密骨の骨層板と骨層板を構築している線維性基質を高分解能の走査電子顕微鏡で観察して咀嚼圧による応力との係りについて考察した.咀嚼圧を分散, 緩衝させると考えられる眼窩上縁と下縁との緻密骨は内外方向に配列された10数層ずつの骨層板からなる外および内基礎層板と屈曲したオステオンからなるハバース層板とで構築されていた.一方, 水平位の関節結節の緻密骨は内外方向に配列された数層の外基礎層板と屈曲しつつ走向しているオステオンからなるハバース層板とで構築されていた.また, 関節結節の緻密骨の内部には骨髄腔があり, 頬骨弓と翼状突起から伝達された咀嚼圧の分散路であるとともに咀嚼圧を中和すると考えられる.3部の水平位の基礎層板とハバース層板を構築している骨層板内の内外に配列された主たる基質線維束は咀嚼圧を伝達し, 主方向の基質線維束と交叉している基質線維束は緻密骨に弾性を付加していると考えられる.
  • Eizo WAKATSUKI, Wen Xia Song, Shintaro KONDO, Koh NAKAJIMA, Kimiko NAI ...
    1999 年 19 巻 4 号 p. 388-393
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    Somatometric measurements were taken on the craniofacial area of Filipino belonging to Sundadonty and of Japanese and Chinese belonging to Sinodonty. Migration of two mongoloid lineages of Sundadonty and Sinodonty were deeply related to the origin of the modern Japanese. The measurements were stature, head length, head breadth, head height, bizygomatic breadth, bigonial breadth, and morphologic facial height according to the method by Martin Seller, and the morphological facial depth by Minobe et al. Craniofacial indices (the cephalic index, cephalic length-height index, cephalic breadth-height index, morphologic face index, zigomatic gonial index and morphologic face depth index were calculated from the measurements.These measurements and indices were compared in relation to the three populations statistically.
    The results were follows : With the exception of head length and morphologic facial depth, the mean values of the measurements were largest in Chinese, followed by Japanese and the smallest in Filipino. Japanese had significantly large head length and morphologic facial depth than the other population (P<0.01). The results of this study supported Hanihara's double structure model on the origin of Japanese.
  • 荒井 滋朗, 前田 由紀子, 相田 忠輝, 薄井 智美, 吉澤 美奈, 入江 太朗, 河野 葉子, 道脇 幸博, 道 健一, 立川 哲彦
    1999 年 19 巻 4 号 p. 394-398
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    含歯性嚢胞は嚢胞腔内に歯冠を含有し, その未萌出歯の歯頚部に付着した嚢胞で, 退縮エナメル上皮と歯冠との間あるいは退縮エナメル上皮の細胞間に液が貯留することによって発生する1).またまれに嚢胞壁内にセメント小塊などの石灰化物が見られることがある.今回我々は, 嚢胞壁内に歯牙様石灰物を認めた含歯性嚢胞の一例を経験したので報告する.
  • 芝 〓彦, 塚崎 弘明, 金石 あずさ, 加瀬 智夏
    1999 年 19 巻 4 号 p. 399-409
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
  • 江川 薫
    1999 年 19 巻 4 号 p. 411-412
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
  • 1999 年 19 巻 4 号 p. 413-425
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
  • 1999 年 19 巻 4 号 p. 426-430
    発行日: 1999/12/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
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