成長期にある骨格性上顎前突を認める二卵性双生児に対し, 機能的矯正装置を使用し, その治療効果を比較・検討した.双生児の妹は, 初診時年齢8歳11か月で, 機能的矯正装置を, 11歳0か月から8か月間使用した.姉は初診時年齢9歳0か月で, 機能的矯正装置を, 11歳9か月から6か月間使用した.その結果, 姉妹ともに機能的矯正装置により∠SNAが減少し, 上顎骨では, わずかな前方成長の抑制傾向がみられた.また装置使用期間の年間成長速度を, 楠元らの標準成長速度と比較すると, 成長速度の低下が認められたが, その変化はわずかであった.姉妹ともに下顎骨では, ∠SNBは増加し, 前方成長がみられるとともに, 下顎骨の大きさも増大していた.特に下顎枝高 (CDGO) と下顎骨全体長 (GN-CD) の長さに, 著明な増大が認められた.その増加量を姉妹で比較すると, それぞれ経過観察中である姉妹の自然成長量より, 大きいものであった.また姉妹の装置使用期間の年間成長速度を, 楠元らの標準成長速度と比較すると, 下顎枝高 (CD-GO) と下顎骨全体長 (GN-CD) においては, 2倍以上の著明な成長速度の増加を示していた.以上のことより機能的矯正装置は, 下顎骨の成長を, 自然成長量を超えて, 前方方向へ促すとともに, その大きさ自体をも増大させる効果を有することが示唆された.特に本症例におけるその効果は, 下顎枝高を中心とした垂直的な高さにおいてより顕著であったと推察された.
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