固定した抜去乳歯を歯ブラシで清掃後, 乳酸菌飲料水 (カルピスとヤクルト) に浸漬し, 唇面エナメル質の経時的変化をVickers微小硬度計, microradiogram, X線マイクロアナライザ, 走査電子顕微鏡を用いて検索した.乳歯エナメル質の硬度は, 固定した無処理の永久歯
1) と比べ, すみやかに硬度は低下し, 無固定の永久歯の硬度低下
1) と類似した.このことから, 硬度低下の速度を決めるのは, おもに有機性の付着物 (plaqueなど) の有無
7) によるのではないかと考えられた.浸漬が長時間になると, 乳歯エナメル質の最表層には高石灰化帯が, そして, 表層下には脱灰層が出現した.この結果は今までの浸漬実験
1-3) と同様であった.一方, 浸漬短時間でエナメル質表面は脱灰と再石灰化作用のため, 表面の結晶は大型化し, 球~桿状形を示した.これはラットによる動物実験5), あるいは永久歯の浸漬実験
3) と同様の結果であった, 以上の事柄から, 浸漬実験では, 短時間の浸漬が口腔内での変化に近い状況を示すと考えられる.
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