昭和歯学会雑誌
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3 巻, 2 号
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  • 佐々木 崇寿, 茂木 伸夫, 東 昇平
    1984 年 3 巻 2 号 p. 151-162
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    ネコおよびラット歯胚の形成期エナメル芽細胞における基質吸収機構を, 超薄切片法, ブリーズ・フラクチャー・レプリカ法, 酸性ホスファターゼの酵素細胞化学ならびにホースラディッシュ・ペルオキシデースを用いた取り込み実験によって検索した.ネコおよびラットのトームス突起表面は, エナメル小柱および小柱間質の形成に直接関与する形成面と, 小柱鞘の形成に関与する滑走面に分けられ, 形成面には, 被覆小胞の形成に関連したcoated pitsや小管状構造, そして形質膜の深い陥入がみられた.これらの構造物は, レプリカ像から, いずれもエナメル芽細胞のendocytosisに関連したものと考えられた.静注したペルオキシデースは, エナメル芽細胞層を通過してエナメル質形成表面に拡散した後, これらの被覆小胞を介して細胞内に取り込まれ, さらに核上部からトームス突起にかけて分布する多くの貧食空胞へと輸送された.酸性ボスファターゼ活性は, ゴルジ装置や高密度小体, 多胞体のほか, これらの貧食空胞, 一部の分泌顆粒に認められた.また同酵素活性は, トームス突起表面の形質膜と, 小柱鞘に沿ったエナメル基質中にも見出された.これらの実験結果から, 形成期エナメル芽細胞は, 細胞外の有機性基質の改造とその再吸収ならびに細胞内消化に深く関与していることが形態学的に示唆された.
  • I. 形態観察
    富永 弘, 王 郁輝, 東 昇平
    1984 年 3 巻 2 号 p. 163-171
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    ラット象牙芽細胞の象牙芽細胞突起内の膜性小器官を, 透過電顕で観察した.突起中には, 分泌穎粒, 大型被覆小胞 (LCV), 小管状構造 (TS), 多胞体, dense body, SER様の構造, Iysosome等が存在したが, 最も目立ったものはLCVとcoated pitであった.多様な形態を示すTSは, 時に多胞体との密接な関係を示唆する像を呈し, 一部のものにはbristle coatが認められた.dense bodyと多胞体は形態的に連続し, 両者を明確に区別することは困難であった.突起中にはlysosome wrappping mechanism (LWM) 1) が見られ, wrapping内にはTSや被覆小胞も観察された.各小器官は突起の周辺部 (細胞膜の近く) に存在することが多く, 分泌穎粒以外のものは, 多少とも外の物質の取り込み・消化機構に関連するものと思われた.
  • 加藤 裕正, 橋本 宏二, 和久本 貞雄, 鈴木 正子, 宮治 俊幸
    1984 年 3 巻 2 号 p. 172-184
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    コンポジットレジンは前歯のみならず, 臼歯の1級, 2級修復にも応用されるようになり, 最近では臼歯用コンポジットレジンがあいついで開発, 市販されるようになってきた.そこで今回, 赤外線吸収スペクトル分析法を用いて, これら臼歯用コンポジットレジンと付属のボンディング材の組成分析を行い, ほぼ満足できる結果を得ることができた.また, 重合硬化によるIRスペクトルの変化を検討したところ, この変化はレジンの重合度を相対的に知るうえで重要な指標となることが示唆された.
  • Hisashi YAMAKURA, Yasuko NAIKI, Katsujiro YAMAZAKI, Joh MASHIKO, Motoy ...
    1984 年 3 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    For the micro-morphological study of diseased root surface in situ, the use of an accurate and reproductive replica technique is essential if object under study cannot be observed directly. Before taking the impression, the surface was irrigated with saline solution, dried with air jet. Primary replica is taken by application of silicone rubber impression material into periodontal pocket. Epoxy resin is poured into hardened impression material to obtain secondary replica, and this secondary replica plated with platinum was used for the observation with scanning electron microscope (S.E.M.). The replica surface reproduced accurately the tooth except in the areas near the bottom of pocket, where the close proximity of epithelium and cementum hindered the insertion of impression material making observation impossible. This technique offers possibilities of the micro-morphological study of diseased root surface in situ.
  • 中廣 哲也, 豊田 芳行, 斉藤 馨, 高相 利次, 小渋 宏彦, 竹内 敏郎, 山縣 健佑
    1984 年 3 巻 2 号 p. 192-201
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    3名の無歯顎者について, 全部床の実験義歯で咬合高径を2mm間隔で段階的に変化させた場合の咀嚼リズムを筋電図により計測した結果, 咬合高径の変化に伴って周期, 放電持続時間, 間隔の長さが変化し, 一定範囲の咬合高径を越えるとリズムの規則性が有意に乱れる傾向が認められた.
  • 接着性オペークレジンの応用と臨床観察
    茂木 知治, 五十嵐 順正, 河江 信, 万代 倫嗣, 星野 素子, 鈴木 潔, 片山 繁樹, 原田 雅弘, 芝 〓彦
    1984 年 3 巻 2 号 p. 202-209
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    Konuskroneの外冠に前装を施す場合, 従来, 器械的維持装置に依存した硬質レジン前装が行われてきた.このため, 外冠という特殊な被圧状態下にある前装部はレジンの剥離や破折が生じやすいことが予後観察で明らかとなった.審美性や耐磨耗性にすぐれた外冠の前装方法として第1報に報告した非貴金属焼付ポーセレン前装においても陶材の破折等が生じ, 実用面ではまだ若干の問題があることがわかった.そこで今回は, これらの改善を目的として, 4-META系接着性オペークレジンを使用して「接着」による外冠の前装方法について種々の検討を行ったところ, 良好な実験結果を得ることができた.本稿ではその結果を中心に記述し, 臨床結果をもあわせて報告する.
  • 小山 弘治, 小沢 俊, 泉 邦彦, 堺 拓之, 松本 頼之, 若月 英三
    1984 年 3 巻 2 号 p. 210-220
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    下顎切歯は左右側の鑑別が困難な歯といわれている.そこで今回は, 下顎側切歯の歯根の形態と歯頸線蛮曲の高さとの関係について, 下顎中切歯の場合と同様の方法を用いて検討した.その結果, モアレ縞による隣接面の根面形態は縦隆線, 平坦, 凹状, 縦溝の4型に分類できた.そして・これらの形態が互いに隣接面で異なった形態を有するものの組合せは, 縦隆線-縦溝, 縦隆線-凹, 縦隆線平坦, 平坦-縦溝等の組合せで, 約95%であり, 隣接面の歯頸線蛮曲の高さは, 平均・高いほうが2・38mm, 低いほうが1.79mmである.そして, 隣接面の歯頸線湾曲の高さの差のみられるものは98%である.さらに, これらの関係を個体別にみると, 隣接面の根面形態が縦隆線系 (縦隆線平坦, 浅溝等) のもので歯頸線蛮曲が高く, その反対側の隣接面の根面形態が縦溝系 (弱い縦隆線, 深溝等) のものて歯頸線蛮曲が低いものの組合せは, 約80%であり, 大部分をしめ, 下顎中切歯と同様に隣接面の根面形態の形の差と歯頸線蛮曲の高さの差によって左右側を鑑別することができる歯の一つでもある
  • 黒岩 美枝, 中島 史和, 小高 鉄男
    1984 年 3 巻 2 号 p. 221-226
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    エナメル質最表層に分布する無柱エナメルは, 耐酸性を示すといわれる.しかし, 無柱エナメルが高頻度に出現する乳歯の唇 (頬) 面エナメル質を, 過塩素酸でエッチングすると, 有柱と無柱の部分はつねに混在して観察された.すなわち乳歯の無柱エナメルは, 表面からの深さが一定していないと考えられた.そのため, 無柱エナメルの耐酸性を確かめることはできなかった.フッ素塗布は, う蝕抵抗性があるとされ, おもに乳歯への臨床的処置が施されている.フッ素濃度分析の前処理として行った歯ブラシ, 研磨, 次亜塩素酸ナトリウムによる歯面の清掃法の相違は, エナメル質表面にある有機性蒲膜 (plaque, surface cuticle) のさまざまな残存状態を示した.これは, エッチング効果を弱め, 溶出するCa量を変えると考えられた.一方, フッ素塗布歯では, フッ素はエナメル質表面の有機質中には存在するが, 自斑や褐色斑面の場合と異なり, エナメル質結晶内にとり囲まれている可能性は低いと考えられた.以上のことから, 構造からくる無柱エナメルの耐酸性と, おもに有機質と結びつくと予想されるフッ素の塗布による耐酸性の効果は, 異なる課題として検索する必要がある.
  • V : 連続的摂取によるラット臼歯の舌側エナメル質の変化
    小高 鉄男, 石田 五十雄, 東 昇平
    1984 年 3 巻 2 号 p. 227-233
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    市販されている乳酸菌飲料水 (カルピス, ヤクルト) をSD糸ラットに生後5週から連続的に摂取させた.比較観察を容易にするため, 一同腹子 (〓6匹) を3分し, それぞれに2匹ずつ飲料水としてカルピス (20%溶液, pH 3.4) とヤクルト (25%溶液, pH 3.7), 対照には水道水 (pH 7.1) を与えた.固型飼料には通常の飼育用 (オリエンタル酵母社製) を使用した.12週間, 一部は9週間飼育, 屠殺後, 下顎臼歯の舌側面について微小硬度計による硬度測定, 走査電子顕微鏡による観察, およびX線マイクロアナライザでカルシウムとリンの線分析を行った.前回5) 報告した下顎臼歯の咬合面の酸蝕作用と同様に, 乳酸菌飲料水に直接触れると考えられる舌側エナメル質は, 形態的に明瞭な酸蝕作用が観察された.さらに, 硬度は有意に低い値を示した。しかし, これまでに報告1-4) したエナメル質の表層下に脱灰層は認められず, 舌側エナメル質は, 表面から少しずつ侵蝕作用を受けていることが示された.すなわち, 口腔内で酸蝕作用を受けているエナメル質表面は, 食餌時の固型飼料と咬合作用によって, 常時少しずつ削りとられている.その結果, 最表層の高石灰化帯と表層下の脱灰層は形成されないと考えられる.咬磨耗は咬合面ほど明瞭ではないが, カルピスを摂取したラットでは著しいエナメル質の減少を示す個体も観察された.
  • VI : 乳歯エナメル質の変化
    小高 鉄男, 石田 五十雄, 東 昇平
    1984 年 3 巻 2 号 p. 234-240
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    固定した抜去乳歯を歯ブラシで清掃後, 乳酸菌飲料水 (カルピスとヤクルト) に浸漬し, 唇面エナメル質の経時的変化をVickers微小硬度計, microradiogram, X線マイクロアナライザ, 走査電子顕微鏡を用いて検索した.乳歯エナメル質の硬度は, 固定した無処理の永久歯1) と比べ, すみやかに硬度は低下し, 無固定の永久歯の硬度低下1) と類似した.このことから, 硬度低下の速度を決めるのは, おもに有機性の付着物 (plaqueなど) の有無7) によるのではないかと考えられた.浸漬が長時間になると, 乳歯エナメル質の最表層には高石灰化帯が, そして, 表層下には脱灰層が出現した.この結果は今までの浸漬実験1-3) と同様であった.一方, 浸漬短時間でエナメル質表面は脱灰と再石灰化作用のため, 表面の結晶は大型化し, 球~桿状形を示した.これはラットによる動物実験5), あるいは永久歯の浸漬実験3) と同様の結果であった, 以上の事柄から, 浸漬実験では, 短時間の浸漬が口腔内での変化に近い状況を示すと考えられる.
  • 下顎エナメル上皮腫2例に対する治療経験
    長谷川 昌宏, 大野 康亮, 大澤 毅晃, 道 健一, 山口 朗
    1984 年 3 巻 2 号 p. 241-249
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    エナメル上皮腫は歯原性腫瘍のなかで最も頻度が高く, その治療にあたっては一般に顎切除術が適用されていたが, 症例によっては開窓療法が有効なことがあるとされている.今回われわれは, 広範な下顎エナメル上皮腫の2症例に対して開窓療法を応用し, 良好な結果が得られたので報告する.症例1は59歳女性で下顎の両側にわたる本腫瘍に対して, 開窓療法を施行し, 約10年目の現在とくに障害を残さず腫瘍の縮小と顔貌の改善が得られている.症例2は15歳女性で, 右下顎骨体から下顎枝部にわたる本腫瘍に対し, 開窓療法により腫瘍の縮小をはかり, 2年後に下顎骨下縁を保存し口内法で残存腫瘍を完全に切除し, 顎切除7年目の現在, 再発の徴候は見られず経過順調である.以上の2症例の経験を踏まえてエナメル上皮腫の開窓療法に関する文献的考察を行った.
  • 1984 年 3 巻 2 号 p. 250-259
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
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