昭和歯学会雑誌
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4 巻, 1-2 号
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  • II.細胞化学的検討
    富永 弘, 王 郁輝, 東 昇平
    1984 年 4 巻 1-2 号 p. 1-8
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    象牙芽細胞による, 細胞外タンパクの吸収, 消化能を明らかにする目的で, 生後4-7日のラット臼歯歯胚を用い, horseradish peroxidase (HRP) 投与実験と, β-glycerophosphate, pyridoxa 1-5'-phosphateを基質とした酸phosphatase活性の検出を電顕的に行った.静注したHRPの反応物質は, 20分後には, 象牙芽細胞 (youngodontoblast) 遠位部の大型被覆小胞, 多胞体, 小管状構造等の膜性小器官の一部に認められた.象牙前質のHRPはcoatedpitに連続し, coatedpitと被覆小胞によるHRPの取込みが示唆されたが, HRPの取込みとbristlecoatの有無についてはとくに関連性がみられなかった.一方, 酸phosphatase活性は, dense body, 小管状構造, 分泌顆粒, また大型被覆小胞等の一部に認められたが, 多胞体には明瞭な反応がみられなかった.これらの所見から, 象牙芽細胞には, 細胞外の有機質を活発に吸収する能力のあることが示されたが, 酸phosphataseの意義については, なお検討を要するものと思われた.
  • 石田 五十雄
    1984 年 4 巻 1-2 号 p. 9-27
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    歯周疾患のために抜去された無縫冠, 縫成冠および鋳造冠を装着した歯牙を用い, 金属冠辺縁の形状とそれに伴う歯石の付着位置と状態を形態学的に検索した.機器は形態観察のために暗視野の落射光顕と走査電子顕微鏡を, カルシウム, リン, 亜鉛元素などの面分析および, 定量分析のためにはエネルギー分散形のX線マイクロアナライザを使用した.金属冠と歯牙の適合度は貴金属を用いた鋳造冠が最もよく, 次いで銀合金などによる鋳造冠, 貴金属を用いた縫成冠, 銀合金などの縫成冠, そして最も適合度の悪い無縫冠の順であった.無縫冠の大部分や縫成冠の一部では, 合着用セメソトが欠落した金属冠空隙内に歯垢の充満が観察された.これは無縫冠などでは歯牙との適合度が悪いので, 合着用セメソトが唾液に洗われて流出したためと考えられた.一方, 貴金属を用いた縫成冠では, 余剰な合着用セメントが金属冠下縁からはみ出ている例がしばしぼ観察され, その表層付近には歯石の形成が認められた.銀合金などによる縫成冠で特徴的にみられる歯石の付着位置は, 金属冠の辺縁や合着用セメソトの表面である.これらの歯石からは合着用セメント由来の亜鉛が検出された.合着用セメント表層付近での歯石の形成は, 唾液に触れていれば比較的短期間で行われることが, 口腔内およびin vitroで明らかにされた.合着用セメントの下部に接し, 歯面にも付着した歯石は無縫冠, 縫成冠装着歯牙に認められた.砂粒状結晶を主とする緻密な構造をもつこれらの歯石は, カルシウムとリソの比がアパタイトに近いこと, 亜鉛が検出されないこと・さらに, 縫成冠では歯石の表面が支台歯形成による切削面と同一平面で続いていることから, 金属冠装着前に形成されていた歯石と考えられた.金属冠下縁から歯面へかけて付着した歯石は・銀合金などの鋳造冠と貴金属を用いた縫成冠に多く認められ, その一部は切削された歯面に付着したり, 金属冠内側へも侵入していた.これらの歯石はその大部分から亜鉛が検出されたこと, 板状結晶 (リソ酸オクタカルシウム) が高頻度に観察されたことから, 歯石形成から抜去されるまでの期間は比較的短かったことが推察された.なお, 貴金属を用いた鋳造冠に付着した歯石の出現比率は最も低い値を示した.以上の所見から, 歯牙との適合度が比較的よい鋳造冠や縫成冠の辺縁に付着する歯石は, 歯垢とともに歯肉炎を悪化させる場合のあることが考えられた.それに対し, 適合度が最もよい貴金属による鋳造冠や, 適合度の悪い縫成冠と無縫冠装着歯牙に生'じた歯周疾患は, 装着後に付着した歯石や歯垢というよりはむしろ, その他の要因が強く働いたと推察された.
  • 江藤 由美子, 水野 芙美子, 山本 綾子, 高橋 光良, 岸 雅彦, 鷹森 健志郎
    1984 年 4 巻 1-2 号 p. 28-34
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    臨床的に健康な歯肉を有する成人の初期歯垢より分離された通性嫌気性のグラム陽性菌について検索を行った.分離株はすべてGemelleに近縁の菌と思われたので, 対照としてGemella haemolysans ATCC 10379およびStreptococcus morbillorum ATCC 27874を用いた.分離株は不規則な塊状配列を示し, 時にpairないしtetradを形成した.長い連鎖はみられなかった.電顕所見では菌体の周囲にflocular materialが存在しているのが認められた.発育環境は嫌気的環境より好気的環境のほうが良好な発育を示した.生物学的性状としては, catalase, oxidaseを産生せず, 20% bile, 2% NaCIでの発育は見られなかった.硝酸塩の還元はなく, H2S, indoleを産生しなかった.glucoseより多量の酸を産生し, 培地のpHを4.6-5.2とした.そのおもな代謝産物は乳酸であり, その1/3-1/4量の酢酸を産生した.DNAのG+C含量は32mol%であった.対照として用いたG.haemolysansは33.5mol%, S.morbillorumは28mol%であった.菌体の脂肪酸組成において, 分離株はG.haemolysansと類似していた.これに対しSmorbillorumは分離株およびGhaemolysansと異なり, ステアリン酸 (18 : 0) の相対含量がこれらの1/2量であった.ゲル内沈降反応を用いた血清学的性状においては, 分離株はG.haemolysansおよびS.morbillorumのどちらとも沈降線を形成しなかった.またG.haemolysansS.morbillorum間においては明らかな沈降線が認められた.これらのことから分離株はgenusGemellaに属すると思われるが, 血清学的には異なっており, 新しいspeciesないしserogroupを考える必要があると思われる.またG.haemolysansS.morbillorumの相同性について, Facklamは両者は同一種であると述べているが, 本実験では生物学的性状, ガス環境による発育の違い, 菌体の脂肪酸組成, DNAのG+C含量などにおいて相違が認められたことから両者を同一であると見なすのは困難であると思われる.
  • 茂手木 義男, 長谷川 紘司, 原 耕二, 小島 健一
    1984 年 4 巻 1-2 号 p. 35-39
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    イヌ2頭を使用し, スケーリングならびに長期間徹底したブラッシングの実施により健康歯肉とした.これを実験開始日とし, つぎに絹糸の歯頸部結紮によりプラークを蓄積させ, 1週間, 1ヵ月, 3ヵ月経過後の炎症性歯肉組織中のT cell, B cell数を蛍光抗体法で計測した.その結果, プラーク蓄積1週間および1ヵ月経過ではT cellが多く見られたのに対し, プラーク蓄積3ヵ月後ではT cell数は減少し, 代わってB cel1が著しい増加を示した.
  • 田代 恒久, 斎藤 健一, 塩田 猛, 手塚 多恵子, 鈴木 規子, 大野 康亮, 吉田 広, 道 健一, 出口 浩一
    1984 年 4 巻 1-2 号 p. 40-47
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    口腔領域化膿性炎の診断と治療において, 病巣からの検出菌の種類とその薬剤感受性を知ることは重要である.今回われわれは, 口腔領域化膿性炎患者86名から分離された208株について菌種および薬剤感受性について検討したので報告する.検出菌はa-StrePtococcusが86症例中73.3%, 以下Peptostreptococcus 45.3%, Peptococcus 30.2%, Fusobacterium 22.1%, Veillonella 8.1%なとの順で, 総検出菌数に占める割合がグラム陽性球菌が62%, 嫌気性菌が51%と高率であった.これらは単独菌の検出例は20.2%と少なく, ほとんどが複数菌検出例であった.また従来口腔領域感染症の主体的な役割をもつとされていたStaPhylococcus aureus, Streptococcus Pyogenesなどの強毒菌は各0.5%と少数であった.薬剤感受性試験結果はFusobacterium, StaPhylococcus aureusを除くほとんどの菌はABPC, AMPCに対して良好な感受性を示したが, CEXではPC系に比べ全般に低い感受性であるという結果であった.
  • 1984 年 4 巻 1-2 号 p. 82-96
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
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