昭和歯学会雑誌
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8 巻 , 1 号
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  • 宮治 俊幸
    1988 年 8 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1988/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
  • Takahisa SASAKI, Chiaki WATANABE, Hiroshi SUZUKI, Shohei HIGASHI
    1988 年 8 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 1988/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    The enamel organ in the zone of transition between enamel secretion and maturation of 2-3-month-old kittens was examined by means of conventional electron microscopy. We subdivided the transition zone into the early and late transition regions. The ameloblasts in the early transition region were 30-45 μm in height and appeared as protein synthesizing cells with a well-developed rER-Golgi apparatus system and many secretion granules. They also contained various lysosomes such as dense bodies, multivesicular bodies, autophagosomes, and cytosomes containing granular materials. The distal cytoplasm of cell body was characterized by the presence of coated pits and vesicles and many secretion granules. Each ameloblast was connected firmly with adjacent ones by proximal and distal junctional complexes consisting of tight and gap junctions and desmosomes. These ameloblasts in the early transition region seemed to be still engaged in the rodless enamel formation. Moving towards the maturation zone, in the late transition region, shortening of ameloblasts became prominent and oval nuclei moved slightly towards the central part of cell bodies. Though the interameloblast spaces became wider than in the early transition region, the ameloblasts in the late transition region were still connected to each other by two sets of junctional complexes at the proximal and distal ends. In the supranuclear cytoplasm, the ameloblasts presented more pronounced vacuolar structures, some of which appeared to fuse to secretion granules and autophagosomes. The Golgi apparatus seemed to decrease its activity to produce secretion granules. The cytosomes containing cytoplasmic organelles were seldom observed in these transition ameloblasts. Throughout the zone of transition, the outer layer of enamel organ consisted of typical papillary layer cells having numerous mitochondria and long microvilli. From these results, we suggest a classification of the zone of transition between enamel secretion and maturation in the kitten enamel organ : the early transition region, the region of rodless enamel secretion; and the late transition region, the region of cell reorganization and termination of enamel matrix secretion.
  • 鈴木 暎, 宮崎 隆, 宮治 俊幸
    1988 年 8 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 1988/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    歯科用卑金属系合金を効率よく研削, 研磨することを目的に炭化チタンを主材として立方晶窒化ホウ素を配合し, 導電性を砥石自体に与えた複合研削が非常に実用的であると報告されている.この場合, 砥石はビトリファイド系 (無機材料の溶化の過程を経る) のため高温で粉末焼成が必要で, 設備, 焼成温度が高いこと, 弾性が乏しいなどの欠点があった.他に砥石の成形法としてレジノイド系があり, 結合剤として熱硬化性樹脂が用いられ, 焼成温度が低く, 形状の付与も簡単であった.しかしほとんどの熱硬化性樹脂は高い電気絶縁体であり, 導電性レジノイド砥石の開発について, 結合剤である熱硬化性樹脂に航空機用耐熱材料から開発されたポリイミド樹脂の特性に注目し, 導電性フィラーとして金属ホウ化物を用いた.とくにTiB2とZrB2が電気伝導度, 熱伝導度および硬度など他の金属炭化物や金属ホウ化物より優れていた.これらの特性を総合的に組み合わせて導電性レジノイド砥石の可能性について実験検討を行い, 興味ある知見が得られた.1) 砥石の導電性の測定は, 砥粒の接触状態に関係する電気抵抗による接触抵抗値を求めた.結合剤を5, 10, 20, 30wt%の割合で添加して砥石を作製した.結合剤が5wt%では砥石として実際の使用に際し, 結合度が弱く手で強くこすると砥粒が脱落した.また30wt%の添加では明らかに接触抵抗値の増大が認められ導電性砥石としての期待が少なかった.2) 圧縮成形による砥石の作製法は, 予備成形が加圧速度0.1mm/minで所定の圧が100MPa, 予備加熱がマイクロ波加熱 (電子レンジ) 10-15s, 成形加熱が260℃で時間を60s/mm厚さ, 100MPaで圧縮, 重合法が乾熱で260℃, 24時間であった.3) 砥石の組成は, TiB280, ZrB210, TiC5, CBN (立方晶窒化ホウ素) 5wt%であった.
  • 河野 葉子
    1988 年 8 巻 1 号 p. 30-46
    発行日: 1988/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    Diffusionringとミリポアフィルターを用いて, ラット舌粘膜上皮細胞と線維芽細胞の混合培養を行い, 上皮細胞の増殖や分化についての形態を観察するとともに, 上皮単独培養の形態変化と比較検討した.またフィルターのporesizeの違いによる上皮の形態変化についての観察も行った.細胞のdoubling time は単独培養では約30時間であったが, pore size 0.22μmのフィルターを使用した混合培養では約24時間で, 混合培養のほうが増殖率が高かった.しかしながら, pore size 0.8μmのフィルターを使用した場合では24時間後にいったん細胞増殖の抑制がみられた.しかし, 72時間後には急速な細胞の増殖が認められ, 後期には単独培養の増殖率を上回る結果を示した.また細胞増殖に関与しているcoated pits も混合培養のほうが数が著明に増加した.上皮細胞の分化の指標とされている角化細胞の出現, トノフィラメント, デスモゾームおよびヘミデスモゾームの形成についてみると, 角化細胞の形成は単独培養, 混合培養ともにみられたが, その発現程度は混合培養のほうに多く認められた.トノフィラメントは混合培養において, 基底層, 中間層, 表層の各層に形成され, 集束を強く認めた.デスモゾームの出現およびその構造は単独培養混合培養いずれにおいても大差を認めなかったが, 混合培養のほうがトノフィラメントとの裏打ちを強く認めた.ヘミデスモゾームは単独培養に比べ, 混合培養のほうが構造的によりinvivoに似た所見を呈し, なおかつトノフィラメントによる裏打ちを強く認めた.しかしながら, いずれの培養の場合も基底膜の形成は認められなかった.以上のごとくフィルターを介した混合培養により, 上皮と間葉系細胞の間接的な相互作用によって細胞の増殖と分化が促されたことを形態的に明らかにすることができた.
  • 山縣 健佑, 積田 正和, 谷口 秀和, 小川 恭男
    1988 年 8 巻 1 号 p. 47-56
    発行日: 1988/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    粉末法パラトグラフィーを応用して, 歯の舌側面および咬合面を含む口蓋部への発音時の舌の接触範囲を観察する方法を開発した.研究方法 : 上顎模型の歯列と口蓋部にビニールシートを圧接成型して記録板を作製し, アルジネート粉末を塗布し, 口腔内に装着して発音させた.被験者は, 有歯顎者10名 (男9名, 女1名) で, パラトグラムの採得と発音誤聴率検査を行った.被験音は, 「サ, シ, ヒ, カ, キ, タ, ナ, ラ, ヤ」である.発音誤聴率検査は, この9語音が, それぞれ10回ずつ出現するようにして3語音ずつ組み合わせた検査語表によって行った.発音誤聴率検査の結果 : 記録板装着時には記録板なしよりも異常度はやや増加するが, 大部分は「ヒ」「キ」についての誤聴である.被験者1名で, 「キ」の誤聴率が30%であったほかは, 4%以下の誤聴で, 異常の程度は小さい.パラトグラムの計測結果 : 歯列に対する舌の接触部位は被験音によって異なり, 口蓋部への舌の接触範囲が標準的な場合には, 歯列との接触範囲も限られた部位で一定のパターンとなる.その範囲は, 臼歯では舌側咬頭頂をややこえる部分まで, 前歯部では基底結節から歯冠のほぼ中央まで接するのが典型的なパターンである.ただし, パラトグラムが非典型的形態と思われる被験者でも, 発音誤聴率検査では誤聴が認められない場合も多い.
  • 山下 義久, 佐々木 崇寿, 田所 克己, 大野 茂, 滝口 励司
    1988 年 8 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 1988/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    ラット切歯の象牙質形成過程における, 前象牙芽細胞と形成期象牙芽細胞のCa2+-ATPase活性を, 電顕細胞化学的に検索した.前象牙芽細胞での活性はミトコンドリア内膜とゴルジ層板に顕著で, 細胞体遠心端の細胞膜にも認められた.形成期象牙芽細胞での活性は結合複合体付近の細胞膜のほか, 細胞体側面の細胞膜にも認められた.象牙前質に存在する細胞質突起と基質小胞の限界膜の外面に活性が認められ, 周囲の基質にも反応産物が散在していた.反応産物はEDXによりリン酸鉛と考えられる.前象牙芽細胞では基質の形成に先立ち・ミトコンドリア内部へのCa2+の蓄積を行っていると考えられ, また形成期象牙芽細胞では, 生理的に細胞内Ca2+を象牙質基質や細胞間隙に向けて放出し, 象牙質の石灰化過程を調節している可能性が示唆された.
  • 金子 春樹
    1988 年 8 巻 1 号 p. 62-76
    発行日: 1988/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    Wistar系ラット (4-5週齢) の下顎切歯を材料として, 成熟期象牙芽細胞層に存在する毛細血管網の立体構築と, その内皮細胞の微細構造ならびに物質通過性を, 樹脂注入血管鋳型法, 凍結割断レプリカ法, horseradish peroxidase (HRP) および microperoxidase (MP) を用いたトレーサー実験によって検索した.樹脂注入血管鋳型法では, 歯髄最表層に分布する終末毛細血管が, 血管相互の吻合や蛇行の多い, 平面的な網工を形成することがわかった.超薄切片の透過電顕所見では, これらの毛細血管は有窓型で, しかも有窓領域が内皮細胞の象牙質側に限局していた.凍結割断レプリカ法で毛細血管内皮細胞を観察すると, 形質膜に存在する窓の開口部と滑面小胞の開口部が, ともに同一領域内では混在せずおのおの固有の領域を形質膜上に形成することが理解された.また象牙芽細胞層下の毛細血管は, 象牙芽細胞層内の毛細血管よりも形質膜に多数の窓を有することがわかった.可溶性トレーサー物質としてHRPを用いた実験では, HRP-DAB反応は毛細血管の管腔内外に瀕漫性に分布し, とくに窓の部分では, 隔膜上にも反応物質が認められた.また, 内皮細胞内の細胞質内に分布する, 多くの被覆小胞や被覆陥凹, さらには内皮細胞の細胞間結合部位の一部にHRP-DAB反応がみられたが, これは凍結割断レプリカ法で, 内皮細胞の細胞間結合部位にmaculaoccludensを観察した結果とよく一致していた.MP投与実験でも, HRP投与の場合と, 基本的には同様の結果が得られた.以上の実験結果から, 成熟期象牙芽細胞層に分布する終末毛細血管は, 象牙前質付近に深く侵入して複雑な網工を形成すること, また, その内皮細胞の物質通過性が, おもに窓を経る単純拡散と細胞質内に存在する小胞による輸送に依存することが示唆された。このように象牙芽細胞層に分布する終末毛細血管は, 象牙芽細胞による象牙質基質の合成, 分泌ならびにその石灰化調節機構iの支持のための物質輸送機能によく適した, 形態的および機能的特徴を有することが理解された.
  • 中里 淳一, 下村 博, 東光 照夫, 久光 久, 和久本 貞雄
    1988 年 8 巻 1 号 p. 77-84
    発行日: 1988/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    臼歯用コンポジットレジンの臨床的有用性を総合的に評価するために, 5種類の臼歯用コンポジットレジソ (2paste type として, Bellfee1 (BF), Clearil Posterior (CP), Microrest AP (MAP), light cure type として, Fulfil (FF), Heliomolar (HM)) を22症例に充填し, 研磨直後, 3か月, 6か月, 1年, 2年後の臨床経過観察を行った.各リコール時には視診により咬耗・破折・変色・褐線の有無, 触診により階段・2次爾蝕の有無を診査するとともに, 口腔内写真をi撮影した.さらに付加重合型シリコーン印象材で印象採得を行いエポキシ樹脂でレプリカ模型を作製し, SEMにて詳細な観察を行った.なお, 窩縁形態はすべてラウンドベベルとした.その結果, 1) 咬耗はCP, MAPに多く観察された.2) 辺縁破折はCP, HMにとくに多くみられ, 全症例の約半数に観察された.3) 明らかな変色はCPの1症例に観察された.4) 褐線はCPとMAPの各2例にのみ観察された.5) 階段はすべてのレジンで約半数の症例に観察された.6) 2次騙蝕はBFの1症例のみに観察された.7) SEM観察を行った結果, 辺縁部破折の様相はアマルガムのそれにきわめて類似した像が観察された.8) 臨床的評価と理工学的物性との間には, 必ずしも相関はみられなかった.9) 臼歯部用コンポジットレジンには, 臨床的にまだ多くの問題があり, 今後さらに材料面で改良を加えるとともに, 術式においても検討をする必要があると思われる.
  • Keiko KANEMOTO, Makoto YOSHIYA, Masao NAGUMO
    1988 年 8 巻 1 号 p. 85-91
    発行日: 1988/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    It is supposed that cell-mediated immune response is an important factor in the pathogenesis of lichen planus (LP), and Langerhans cell (LC) is regarded to play a key role in initiating immune response. In this study, oral LP and leukoplakia were studied by the immunoperoxidase method using anti-S100 protein and monoclonal antibodies to estimate LC and T cell subsets. The number of LCs was found to be more numerous in LP compared with leukoplakia. In LP, OKT11 and OKT4 positive cells were predominant in subepithelial infiltrate, and fewer cells were stained with OKT8 monoclonal antibody. These results suggest an intimate relationship between LC and OKT4 positive cells in the pathogenesis of LP.
  • 浜岡 正憲, 杉野 真也, 石田 和弘, 割田 研司, 川和 忠治
    1988 年 8 巻 1 号 p. 92-98
    発行日: 1988/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    現在, 国内で市販されている付加型シリコーン印象材, 5製品14種類の理工学的性質を, ADA規格No.19を用いて比較検討した。その結果, 今回検討した付加型シリコーン印象材は, いずれも従来の縮合型シリコーン印象材と比較して, 永久歪および経時的寸法変化は小さく, 細部再現性および石膏適合性も同程度であり, 優れた理工学的性質を有していることが確認された.しかしながら, 圧縮歪が小さいため印象材として硬い性質があると考えられる.また, 本実験に使用した国産3製品のパテ・タイプに限れば, 付加型シリコーン印象材本来の優れた理工学的性質を得るためには, メーカーが指示している口腔内撤去時間よりも, 約2-4分長く口腔内に保持する必要があると思われる。
  • 堀内 茂貴, 堀内 伸一, 新谷 明幸, 古屋 良一, 松井 洋一郎, 川和 忠治
    1988 年 8 巻 1 号 p. 99-104
    発行日: 1988/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    従来より歯周組織の健康状態はおもにピンセットなどを用いた歯牙の動揺度・レントゲンによる歯槽骨の吸収量・歯周組織の炎症の有無および程度・ポケットの深さなどによって判定されているが, これらの判定は客観性に乏しいと考えられる.近年, 客観的な判定方法も報告されてはいるが装置, 測定方法等の問題により実用には至っていないのが現状である.本研究は歯周組織の客観的な判定法としてその振動感覚の応用を試みたものである.すなわち, 上下顎の前歯にオージオメータと加振器を応用して種々の周波数の振動を加え, 各周波数における振動感覚の損失する振動の強さ (振動感覚損失値) が最小となる周波数 (ピーク周波数) を測定した.その結果, 1) 正常な歯周組織を有する歯牙のピーク周波数は3, 2, 1, 3, 1, 2の順に低下した.2) ピーク周波数は動揺度の増加により有意に低下した.3) ピーク周波数は歯槽骨吸収度およびポケットの深さと強い負の相関がみられた.4) ピーク周波数を測定することにより歯周組織の状態を客観的に判定しうる可能性が示唆された.
  • 八川 昌人, 五十嵐 順正, 芝 〓彦
    1988 年 8 巻 1 号 p. 105-113
    発行日: 1988/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    われわれは5種類の異なった維持装置を用い, 部分床義歯の離脱時に支台歯に加わる負荷について被験者と模型上で測定を行い, 第75回日本補綴歯科学会学術大会において報告した (昭歯誌7 : 104).本稿ではコーヌスクローネ, 鋳造2腕鉤, アタッチメント (ミニダルポ) の3種の維持装置を用い被験者の同一口腔内でそれぞれ一定期間, 通算12か月間装着させ, 各維持装置が維持歯に与える経時的な影響を非接触微小変位センサーを用い各期間ごとに一定荷重量を加えたときの歯の動揺量および, 動揺波形として測定した.測定は計11回行い, 維持歯が受ける負荷の動態を検討し次の知見を得た.1) 各維持装置とも義歯非装着時に比べると歯にそれぞれ負荷を与えていた.2) クラスプは他の維持装置よりも支台歯の浮上方向の動揺を増大させる傾向を示し, さらにアンダーカヅトの付与の仕方により頬舌側の一方向に強い負荷を与えた.3) アタヅチメント (ミニダルポ) は他の維持装置に比べ, 維持力の低下が大きく, これが強い間は維持歯に対し頬舌的に大きな動揺幅を与えた.維持歯に対し浮上方向の動揺には差違が認められなかった.4) コーヌスクローネは他の2種の維持装置と比較して維持歯の頬舌的動揺幅の増加量は小さく, 浮上方向の動揺増加量も小さかった.
  • 加藤 博重, 槇 宏太郎, 滝沢 良之, 清水畑 明, 小林 廣之, 柴崎 好伸, 福原 達郎, 角田 佐武郎, 木村 義孝, 南雲 正男, ...
    1988 年 8 巻 1 号 p. 114-123
    発行日: 1988/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    顎変形症患者は高度な機能的, 形態的, 審美的障害を呈するのが常で, その診断には広範な知識と十分な経験が不可欠とされるため, 従来各専門分野の協力のもとにチームが組織され, 一連の系統だった治療がなされるよう努力されてきた.昭和大学歯科病院においても, 顎顔面に形態異常がある患者を対象に, 矯正科, 口腔外科, 補綴科の3科によるM.F.C. (MaxilloFacia1-Conference) によって, 診断, 治療方針の細部にわたる検討を行っている.今回, 成人女子で下顎の著しい左方偏位を伴う顔面の非対称, 下顎骨の過成長による反対咬合, 前顔面高の増大, オトガイの尖形, 巨舌症さらに多数の高度ウ蝕など, 改善すべき問題点の多い困難な症例に対し, 矯正科, 口腔外科, 補綴科, 3科によるチーム・アプローチを行った.治療は, 下顎の側方偏位改善のための回転量と後方への移動量が大きいことから, 被蓋の改善を最優先に考え, まず, 口腔外科にて下顎枝矢状分割法による下顎後退手術を行った.術後, 顎間固定を70日間行ったのち, ただちに, 上下顎フル・ブラケット法にて術後矯正に移行した.同時期に舌短縮術を施行し, 下顎の後戻りに対する舌の影響を最小限に止めるよう試みた.その後, 上下顎の矯正治療に1年10か月を要したが, その間オトガイ形成術を行い下顔面部の審美性の改善をはかった.矯正治療終了後, 保定装置として上下顎にホーレー・タイプのリテイナーを装着し, 随時補綴科にて欠損部の回復と咬合の微細な調整を行った.現在, 矯正治療後約1年経過しているが, 顎関係および歯列弓は良好で咬合状態も安定している.咀囎, 発音ならびに, 顔貌の改善についても患者は満足し, 心理面においても良好な変化が認められた.以上, 成人顎変形症患者に, 一貫した治療方針のもとで多くの治療, 術式を施行し, 良好な治療成績が得られたので, チーム・アプローチによる治療結果の一例として報告する.
  • 1988 年 8 巻 1 号 p. 124-138
    発行日: 1988/03/31
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
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