日本皮膚科学会雑誌
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100 巻, 5 号
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  • 田中 和子
    1990 年 100 巻 5 号 p. 561-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
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    DACM-HMM染色を用いて正常表皮および角化異常を特徴とする尋常性乾癬(以下,乾癬)表皮のアクチンフィラメント(F-アクチン)の分布を検討した.正常表皮のliving cell layerでは細胞周縁に強い蛍光が認められた.顆粒層では蛍光の幅が細くなり,角層に至るとその蛍光は失われた.乾癬では細胞周縁の蛍光は有棘層下層から中層では正常表皮に比べて,蛍光の幅が均一でないものが多く認められた.顕著な不全角化を呈す部位においては,有棘層最上層での細胞周縁の蛍光は減弱した.また,一部角層下にびまん性の減弱した蛍光を呈する部位も観察された.正常表皮および乾癬表皮のF-アクチンの観察より,有棘層から顆粒層そして角層へと細胞が移行するにしたがい,F-アクチンの分布は変化すると考えた.乾癬表皮の有棘層下層から中層での蛍光の変化の一つの説明として,細胞周縁でのF-アクチンの増加を考えた.また,既に,正常表皮および乾癬表皮においてF-アクチンの形成阻害因子であるDNaseⅠの局在の検討がなされている事から,今回のF-アクチンの分布とDNaseⅠの局在とを比較し,検討を試みた.
  • 馬場 直子
    1990 年 100 巻 5 号 p. 567-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    皮膚T細胞リンパ腫,成人T細胞白血病・リンパ腫,扁平上皮癌などの腫瘍性増殖性疾患と,尋常性乾癬,慢性湿疹などの良性疾患で反応性細胞浸潤が多く見られる組織において,増殖関連蛋白であるDAKO-PC(proliferating cell,Ki-67),DNA polymerase-a,transferrin receptor(OKT9,CD71)の発現を,免疫組織化学的に比較検討した.増殖関連蛋白は3種とも,リンパ球増殖性疾患(皮膚T細胞リンパ腫,成人T細胞白血病・リンパ腫)において,良性疾患の反応性浸潤細胞に比べて発現率が高く,また組織学的悪性度が増すにつれて発現率がより高くなる傾向が見られた.
  • 吉村 浩二, 江川 清文, 小野 友道
    1990 年 100 巻 5 号 p. 575-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    著者らは,BCCの増殖様式をより明確にする目的で,チミジンのアナログであるBrdU(bromodeoxyuridine)とそのモノクローナル抗体を用いて検索的実験を行った.充実型BCC6例について,1)裂隙(-)の21個の胞巣,2)裂隙(+)の6個の胞巣,表在型BCC2例について,3)裂隙(-)の5個の胞巣について,それぞれ最外層細胞,内側細胞に2分してそれらの標識率(Labeling Index L.I.)を算出し検討を加えた.症例ごとにまとめて,最外層細胞群,内側細胞群のL.I.の平均値±標準値差(M±S.D.)を求め,これを比較した,1)と3)の裂隙(-)の症例では,全て最外層細胞群のL.I.のM±S.D.が高かったが,2)の裂隙(+)の症例では,逆であった.以上をまとめると,BCCの増殖においては,最外層細胞が主としてその役割を担うが,裂隙を生じた胞巣においては,同部のその役割は,消失ないし少ないものと推察される.
  • 宮元 千寿, Chin-Huai Keong, 佐藤 吉昭
    1990 年 100 巻 5 号 p. 581-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    東芝蛍光ランプFL20SE(以下SE)およびFL20BLB(以下BLB)を光源として,Papulovesicular light eruption(PVLE)8例につき作用波長の検討を行った.SEによる2MED同一部位3日連続反復照射で丘疹誘発は50.0%,瘙痒誘発は100%であり,3~5MED1回照射による丘疹誘発は12.5%,瘙痒誘発は75.0%であった.SEによって皮疹を誘発しえた4例は,全例フィルターのないBLB20分(東芝Radiometer,Model UVR-305/365で測定したUVAの照射量は6J/cm2)同一部位2日連続反復照射によっても同様の皮疹を誘発しえた.しかしシャープ・カット・フィルターUV-35を併用したBLB50分(同Radiometerで測定したUVAの照射量は6J/cm2)同一部位2日連続反復照射では,いずれも誘発しえなかった.従って,PLEのsubsetの一つであるPVLEの作用波長は主としてUVBにあるが,320~340nmのいわゆる‘border spectrum’についての検討も重要であると考えられた.
  • 川部 美智子, 松本 義也, 安江 隆, 鳥山 高伸, 近藤 雅雄
    1990 年 100 巻 5 号 p. 589-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    血液透析患者に発症した晩発性皮膚ポルフィリン症(porphyria cutanea tarda,PCT)の1例を報告した.症例は58歳の男性で,30年間の飲酒歴とアルコール性肝障害,糖尿病の既往がある.糖尿病性腎不全のため血液透析を施行され,その6ヵ月後より,顔面,手背に小水疱が生じた.High performance liquid chromatography(HPLC)による尿,糞便,および血漿中のポルフィリン分析では,uroporphyrin,heptacarboxylate porphyrin,hexacarboxylate porphyrinが著明に増量し,定型的なPCTパターンが示された.血液透析は血漿ポルフィリン値を低下させなかった.血清鉄は正常であったが,血清フェリチンの高値,皮膚への鉄沈着の所見があり,肝における鉄過剰の存在が疑われた.また,溶媒抽出法による血漿ポルフィリン,フェリチンの増減の間に相関があると考えられた.治療においては,単一濾過血漿交換plasmaexchangeが血漿ポルフィリン値および水疱新生の減少に一時的に有用であった.
  • 福井 良昌, 小野 博紀, 梅村 忠弘, 千原 太, 安間 みどり, 宮 一郎
    1990 年 100 巻 5 号 p. 597-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    10ヵ月女児,先天性巨大色素性母斑(giant congenital nevocellular nevus,以下GCNと略す)より発症した悪性黒色腫(malignant melanoma,以下MMと略す)の症例を報告した.腰部臀部から大腿に広がる淡褐色斑上に鶏卵大までの黒色斑が多数存在し,側腹部の黒色斑上に悪性黒色腫が発症した.広範囲切除,リンパ節郭清術を施行したが,全身転移により全経過8ヵ月で死亡した.組織学的に,表皮及び表皮真皮境界部にはほとんど変化を認めず腫瘍の主体は真皮内にあり真皮内母斑細胞よりの悪性化と考えられた.本邦における15歳以下の悪性黒色腫発症例は,自験例を含めて38例集計された.その結果,約1/3はGCNより発症し残りは明らかな前駆病変のない部位より発症すること,組織像は真皮内母斑細胞の悪性化を示すことが多く,通常の組織型としてはNMが多いこと,真皮内母斑より発症したMMは予後が悪いこと,ALMは,成人に比べてきわめて少ないこと,などの特徴があることがわかった.
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