日本皮膚科学会雑誌
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103 巻, 6 号
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  • 高木 順之, 三橋 善比古, 石川 博康, 橋本 功
    1993 年 103 巻 6 号 p. 747-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
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    線維芽細胞が表皮細胞の分化と増殖に与える影響とその機序を,4つの異なる細胞培養法を用いて検索した.すなわち,培養液中に支持台で固定された透過性コラーゲン膜を置き,この上に表皮細胞を培養して,線維芽細胞を膜の裏面または培養皿の底面に同時に培養した時,表皮細胞のみを単独で培養した時,および別の容器に線維芽細胞を培養してこのconditioned medium(CM)を加えた時の,それぞれにおげる表皮細胞のタンパク量とcornifled envelope(CE)値を比較した.その結果,タンパク量を増殖の,CEを分化の指標として,表皮細胞かconfluentになり,その後重層化していく時の増殖と分化をみた場合,線維芽細胞は表皮細胞に対して増殖よりもむしろ分化に強く働いていることが示された.この結果はwound healingにおいて,表皮細胞は創面を被った後速やかにCEを形成して表皮としての機能を発揮することを意味し,生体にとって合目的であると考えられる.また,線維芽細胞のCMを用いても同様の結果が得られたことから,その影響は液性因子を介するものであることが確認された.さらに,CMを用いた時に比べ線維芽細胞そのものを同時に培養した後にCE値が高値であったことは,線維芽細胞と表皮細胞間にinteractionが存在した時にその作用が強く働くことを示すものと考えられた.また,培養上清中のEGF,TGF-αおよびIL-6濃度を測定したところ,表皮細胞と線維芽細胞のinteractionによってIL-6が著増することが明らかになった.
  • 花田 二郎, 堀越 貴志, 江口 弘晃, 高橋 誠
    1993 年 103 巻 6 号 p. 757-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    従来よりアトピー性皮膚炎の臨床的パラメーターとして,末梢血好酸球数,血清IgE値などが挙げられている.今回我々は,血清Eosinophil Cationic Protein(ECP)濃度がアトピー性皮膚炎の重症度を推定する一つのパラメーターとなり得る可能性を検討する目的で,成人型アトピー性皮膚炎患者を対象に血清ECP濃度を測定した.すなわち,アトピー性皮膚炎患者を皮疹の重症度により軽症群と重症群の二群に分け,健常群と軽症群,軽症群と重症群それぞれの血清ECP濃度差の有無を検討した.血清ECP濃度は,健常者で平均4.lμg/l,アトピー性皮膚炎軽症群で平均12.3μg/l,重症群で平均36.3μg/lであった.軽症群の血清ECP濃度は健常群に比べて有意に高値を示した(P<0.001).また重症群も軽症群に比べ有意に高値を示した(p<0.001).つまり重症患者ほど血清ECP濃度が上昇していた.しかし末梢血好酸球数,血清IgE値は重症度に従い増加傾向が認められたが,それぞれ重症群と軽症群の間に有意差は認められなかった.今後,血清ECP濃度はアトピー性皮膚炎の重症度を推定する一つのパラターターとなり得る可能性があると考えた.
  • 宋 寅傑, 飯島 正文, 小倉 美代子, 藤澤 龍一
    1993 年 103 巻 6 号 p. 763-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
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    術後紅皮症の本態は輸血後GVHDである.皮膚症状は発熱と共に本症の初発症状であるが,これには臨床的に疾患特異的な所見が無く薬疹との鑑別も含めその診断にしばしば苦慮させられる.今回著者らは輸血後の患者に生じた発疹が輸血後GVHDの皮疹である可能性の有無を早期に鑑別診断するための免疫組織学的迅速診断法を確立する目的で,薬疹を含む多型惨出性紅斑(EEM)型発疹,Maculopapular erythema(MPE),並びに固定薬疹,Toxic Epidermal Necrolysis(TEN),扁平苔癬(LP),輸血後GVHDについて病理組織学的及び免疫組織学的に検討し,次のような結論を得た.1)EEM型発疹およびMPEでは臨床的所見と病理組織学的所見とが必ずしも相関しない.2)EEM型発疹,MPE並びにGVH型組織反応を呈する疾患では病理組織学的所見と免疫組織学的所見との間に一定の相関関係が認められる.3)表皮内Langerhans細胞の有無の検討にはOKT-6が有用である.4)表皮内にfocalにHLA-DR陽性角化細胞(DR+KC)(+)の所見がみられる場合でも病変部で明らかに表皮内OKT-6陽性樹枝状細胞(d-0KT6+EC)(+)ならば,GVH型組織反応を呈する疾患である輸血後GVHD,表皮型EEM,TEN型薬疹はほぼ否定的である.5)びまん性にDR+KC(+)で,表皮内で明らかにd-0KT6十EC(-)の場合にはGVH型組織反応を呈する疾患である可能性が高い.その際には肝機能障害,汎血球減少症といった臨床検査所見の経過に注意し,HLAのハプロタイプ検索や骨髄生検といった輸血後GVHDを考慮した検索と対応が必要である.6)本診断法においては表皮型EEM・固定薬疹・TEN・輸血後GVHDなどのGVH型組織反応を呈する各疾患相互を鑑別することはできない.7)表皮内にびまん性にDR+KC(+)の所見が認められる場合でも明らかにd-OKT6+EC(+)ならば、LPないしLP型薬疹の可能性が高い.
  • 川島 忠興, 大畑 智, 山本 一哉
    1993 年 103 巻 6 号 p. 773-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
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    角化の異常を伴う皮膚疾患から小児アトピー性皮膚炎(以下小児AD),尋常性魚鱗癬,葉状魚鱗癬及び尋常性乾癬を対象に皮膚の最外層の角質細胞の組織学的並びに組織化学的な検査を行い,各疾患の特徴や角層機能の異常を検討した.1)小児ADでは,不全角化(有核細胞の出現),細胞剥離の異常(多層細胞群の程度)及び角化過程におけるcornified envelope(以下CE)の形成異常(DACM染色のSH基の蛍光の異常)が認められた.2)尋常性魚鱗癬では,不全角化はほとんど認められず,細胞剥離の異常が小児ADと同等に認められ,CEの形成にも異常が認められた.3)葉状魚鱗癬では,不全角化及び細胞剥離の異常が多数認められ,CEの形成の異常も認められた,特異な所見としてDACM染色のSH基の蛍光が角質細胞の核の位置に認められた.4)乾癬では,不全角化を多数認め,細胞剥離の異常も小児ADと同等に認められ,また,CEの形成異常が認められた.葉状魚鱗癬と同様にSH基の核の位置の蛍光も認められた.角層検査法を用いて,これらの角化の異常を伴う皮膚疾患において,不全角化の程度,角層の剥離異常及び角層のバリアー機能との関連が深いCEの形成の程度等が,各皮膚疾患の特徴と関連して表れていることが判明した.
  • 岡本 英理子, 喜多野 征夫
    1993 年 103 巻 6 号 p. 783-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
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    文身部皮膚の培養組織片から遊出した色素含有細胞を観察した.細胞は培養開始2日目頃から文身の培養組織片より遊出しはじめ,色素含有細胞を含む線維芽細胞様細胞の継代後も,培養ディッシュに付着し2ヵ月間培養可能であった.遊出した細胞は分裂像は観察されず,増殖はみられなかったので,線維芽細胞様細胞の増殖に伴って,色素含有細胞は認めることが困難になった.細胞化学的に色素含有細胞は,NaFで阻害される非特異的エステラーゼ陽性,酸性フォスファターゼ陽性,リゾチーム陽性であり組織球と同定した.また,電顕X線解析によって,培養組織球内の色素顆粒は,赤色色素では水銀とモリブデンを,黄色,緑色色素はチタンを含有していることを証明した.この培養所見から,文身組織局所の組織マクロファージは,金属色素を貪食し,世代交代することなく長期間生存し,文身色素を保持していると考えられた.
  • 岩崎 泰政, 森 保, 宮本 義洋, 高橋 博之, 岡野 伸二, 森田 栄伸, 村尾 靖子, 山本 昇壯
    1993 年 103 巻 6 号 p. 789-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    広島大学皮膚科において,最近10年間に経験し治療した悪性黒色腫57例について,臨床的および組織学的に検討し,その臨床統計,治療および予後について述べた.病型分類ではacral lentiginous melanoma が最も多く,その予後は良好であったが,nodular melanomaは原発巣のpT分類および病期とも進行しており,予後も比較的不良であった.病期分類ではstageIIIが最も多く,未治療例の病期別予後に関し,累積法による5年生存率は,stageIで100%,stageIIで83.3%,stageIIIで61.4%,stageIVで0.0%であった.生検方法はincisional biopsyを施行した症例はexcisional biopsyを施行した症例より予後不良の傾向が認められた.手術療法として踵部はmedial plantar flap,女性の外陰部は薄筋皮弁を用いて再建し,また母指に発生した症例は,切断後示指による母指化手術を行った.鼠径部のリンパ節郭清ではradical groin dissectionをおもに用いたか,予防的リンパ節郭清については,原発巣がpT3b以上では必要と思われた.
  • 麻生 和雄
    1993 年 103 巻 6 号 p. 797-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
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    老齢者の皮脂欠乏性湿疹とシェーグレン症候群の併発を老人性乾皮症型シェーグレン症候群と仮称し,最近3年間に経験した36症例(男:女=11:25,平均年齢,72歳)について報告した.老人性乾皮症型シェーグレン症候群では,自覚的な眼,口腔乾燥症状,他覚的乾燥所見(シルマー,ローズベンガルテスト,口唇小唾液腺生検,耳下腺造影所見陽性)と共に,血液異常として血沈上昇(85%),軽度肝機能異常(50%),赤血球数減少(45%)白血球減少(42%),血小板数減少(16%),血清免疫異常として抗核抗体陽性(55%),γ-グロブリン増加,リウマチ因子陽性(20%)を認めた.36症例中自覚的な乾燥症状を欠くが,他覚的乾燥所見の明らかな,所謂subclinicalシェーグレン症候群は11例(30%)であった.
  • 木村 定勝, 森 康記, 松田 真弓, 昆 宰市, 厨 信一郎, 佐熊 勉
    1993 年 103 巻 6 号 p. 805-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    39歳の女性.出生時より全身性白皮症,幼少時より打撲傷等で易出血性を呈し,時折,鼻出血,外傷による止血困難を認めていた.平成3年11月25日,変治唇裂の修正手術目的にて当学形成外科に入院し,その際,日光過敏を伴う全身性の白皮症を指摘され精査目的にて当科紹介となる.精査の結果,出血時間の延長,血小板の二次凝集異常を認めた.胸骨骨髄検査で,HE染色にてマクロファージ系細胞内に黄褐色に染まる顆粒の沈着を認めた.これらの物質はOil red染色にて淡赤色,SSB染色にて黒色,Giemsa染色,Nile Blue染色にて青緑色,Berlin-Blue染色にて陰性を呈しCeroid様物質と同定された.このCeroid様物質は骨髄のマクロファージの他にリンパ球,単球にも認められた.患者毛髪によりhair bulb incubation testで毛包部は黒染し,チロジナーゼは陽性.露光部皮膚の電顕的観察では第IV期メラノソームを認めず,メラノソームのメラニン化不全を認めた.以上より自験例をHermansky-Pudlak症候群チロジナーゼ活性陽性型と診断した.本症候群の本態はいまだに充分に解明されていないが,現在,ライソゾームの機能異常によるとする説が有力である.自験例において限界膜に囲まれたCeroid様物質が骨髄のマクロファージの他に単球およびTリンパ球にも認められたことは,本症候群の本態がライソゾームの機能異常によることを示唆するものと考えた.
  • 1993 年 103 巻 6 号 p. 815-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
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