術後紅皮症の本態は輸血後GVHDである.皮膚症状は発熱と共に本症の初発症状であるが,これには臨床的に疾患特異的な所見が無く薬疹との鑑別も含めその診断にしばしば苦慮させられる.今回著者らは輸血後の患者に生じた発疹が輸血後GVHDの皮疹である可能性の有無を早期に鑑別診断するための免疫組織学的迅速診断法を確立する目的で,薬疹を含む多型惨出性紅斑(EEM)型発疹,Maculopapular erythema(MPE),並びに固定薬疹,Toxic Epidermal Necrolysis(TEN),扁平苔癬(LP),輸血後GVHDについて病理組織学的及び免疫組織学的に検討し,次のような結論を得た.1)EEM型発疹およびMPEでは臨床的所見と病理組織学的所見とが必ずしも相関しない.2)EEM型発疹,MPE並びにGVH型組織反応を呈する疾患では病理組織学的所見と免疫組織学的所見との間に一定の相関関係が認められる.3)表皮内Langerhans細胞の有無の検討にはOKT-6が有用である.4)表皮内にfocalにHLA-DR陽性角化細胞(DR+KC)(+)の所見がみられる場合でも病変部で明らかに表皮内OKT-6陽性樹枝状細胞(d-0KT6+EC)(+)ならば,GVH型組織反応を呈する疾患である輸血後GVHD,表皮型EEM,TEN型薬疹はほぼ否定的である.5)びまん性にDR+KC(+)で,表皮内で明らかにd-0KT6十EC(-)の場合にはGVH型組織反応を呈する疾患である可能性が高い.その際には肝機能障害,汎血球減少症といった臨床検査所見の経過に注意し,HLAのハプロタイプ検索や骨髄生検といった輸血後GVHDを考慮した検索と対応が必要である.6)本診断法においては表皮型EEM・固定薬疹・TEN・輸血後GVHDなどのGVH型組織反応を呈する各疾患相互を鑑別することはできない.7)表皮内にびまん性にDR+KC(+)の所見が認められる場合でも明らかにd-OKT6+EC(+)ならば、LPないしLP型薬疹の可能性が高い.
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