開業医における乾癬診療の実態は今までほとんど明らかにされていない.そこで,北海道全域の皮膚科単科標榜84医療機関に所属する全医師86人を対象とした意識調査(回答率88.4%76医師)と北海道全域からの任意抽出11施設における症例調査(1993年1年間受診乾癬全症例1,041例)を実施した.1,041例のプロフィールをまとめると,性差は1.6:1(男642例,女399例),年齢分布,皮疹出現部位などは大学病院,総合病院からの報告と比べ大差はない.病型では局面型が86.5%で,急性滴状型が11.3%を占め,特殊型は8例と少ない.受診患者数の季節的変動はみられず,新患総数に対す比率は0.78%であった.全身療法では,レチノイド内服例が109例10.5%と比較的多く,ステロイド内服例は4例0.4%,免疫抑制剤内服は16例1.5%と少なく,メソトレキセート使用例はない.一方抗ヒスタミン剤等の対症療法実施例は354例30.9%で,内服療法を行っていない症例は558例53.7%と過半数を占めた.局所外用療法で「主たる外用剤」として使用されている薬剤はステロイド外用剤が多く,1,041例中894例86.0%に使用されていた.内訳はvery strongが508例,48.8%,strongが224例21.5%でこの両者を合わせて732例70.3%と大半を占めmedium,strongestが低頻度で続く.補完的に使用された「従たる外用剤」もステロイド外用剤が642例と多数を占めるが,その内訳はvery strong,strongの割合が減って,逆にmediumの割合が上昇し,weakに属するものも44例4.2%に使用され,さらに非ステロイド系外用剤の占める割合も増加していた.意識調査でも61人80.1%の医師は強弱の異なるステロイド外用剤を症例によって使い分けていると回答し,またステロイド外用剤の副作用に関して,60人中78.9%の医師が副作用を実際に経験していると答え,ステロイド外用剤の使用に当っては68人89.5%の医師が副作用出現の不安を感じていると回答している.なお今後使用を予定している治療法の調査で,ステロイド外用剤は最上位にランクされている一方,将来の治療法の中での位置づけでは「主要な治療法として残るが使用頻度は減る」と予測する回答が49人64.5%と過半数を越えるなど,効果と副作用の間に揺れる微妙な心理が反映されているように思われた.活性型VD3軟膏は意識調査の分析から,今後ステロイド外用剤との併用ないしは代替え薬剤として強く期待されていることを示す結果が得られた.PUVA療法に関しては,症例および意識調査結果から開業皮膚科医療には現在のところ本格的には取り込まれてはいないことが明らかとなった.次に治療成績は,5段階評価で,医師,患者ともにある程度の満足感が得られる著効21(2.2%),有効325(33.7%)を合わせると346例(35.9%)であった.特にレチノイド内服群109例,PUVA療法実施群35例では著効,有効例の合算値がそれぞれ45.4%,48.6%の高値を示し,レチノイドおよびPUVAのどちらも行っていない群897例における34.1%に比べ明らかに
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