日本皮膚科学会雑誌
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108 巻, 5 号
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  • 田上 八朗
    1998 年 108 巻 5 号 p. 713-
    発行日: 1998年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    私たちの皮膚は表面は,20ミクロンにも充たない薄い生体由来の膜である角層にくまなく包まれている.これがあるため,乾燥した大気中でも,生体の生命活動に必要な水を失うこともなく,また,外からの微生物を含め生体に傷害を与える物質の侵入が防がれる.角層は表皮のケラチノサイト由来の角層細胞が大体14,5層緊密に積み重なり,その間を細胞間脂質が埋めるというbricks-and-mortar modelとたとえられる煉瓦建造物のような構造をなす.細胞間脂質の主体はケラチノサイトの層板顆粒から放出されたセラミド,コレステロール,脂肪酸からなり,水と脂質のラメラ構造をなし,これがバリア機能を司る.また,角層の水溶性アミノ酸など天然保湿因子とともに,角層の水分を保ち皮膚の表面に滑らかさ,柔らかさを保つ働きをする.一般に皮膚炎などの表皮を中心とする病的状態では角層にも異常がおき,バリア機能,水分保持機能が低下し,鱗屑や亀裂ができる.しかし,老人性乾皮症のようにバリア機能は保たれ水分保持機能のみ低下した状態や,新鮮な瘢痕やケロイドなどはレチノイドの影響下の角層と似て,水分保持機能はむしろ良く,バリア機能は低下しているなど,病変による違いも認められる.また,閉鎖密封やステロイド,レチノイド,ビタミンD3,アルファ・ヒドロキシ酸処置で,それぞれに特有な角層の変化がおきる.これら角層の微妙な違いは従来の臨床観察や組織的な検索のレベルでは,まず捉えることは不可能であり,近年発展した生体計測工学の機器を用いた計測により,はじめて,定量的に調べることができる.
  • 西嶋 攝子, 笠原 美香, 近藤 雅子, 津田 信幸
    1998 年 108 巻 5 号 p. 729-
    発行日: 1998年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    平成9年の早春から初夏にかけて風疹の大流行を経験した.本年2月から8月の期間に皮膚科を受診した風疹患者は32名であり,男女比は5:3で男性が多かった.10歳代が8名,20歳代が10名,30歳代が8名,40歳代が4名であり,2歳が1名,56歳が1名であった.臨床的には特徴的な発疹以外に,半数以上に37.5℃以上の発熱と眼瞼結膜の充血を認め,発熱は10名が38℃以上の高熱であった.臨床検査では異型リンパ球の出現と白血球数減少を高頻度に認めた.4月には10人を超える職員にも風疹の発生みたため,既往歴およびワクチン接種歴のない職員のうち希望者全員の抗体価を測定した.測定を実施した職員は360人であり,全職員541人の66.5%にあたる.このうち風疹抗体価(HI)が8倍以下の者は16人であり,その中の11人が看護婦であった.抗体価が8倍と8倍以下であった者のうち希望者全員にワクチン接種を施行した.風疹の定期的ワクチン接種は本邦では1995年から開始されているが,現時点ではかなりの抗体未保有者が存在していると推測できる.医療施設内での風疹の流行を防ぐためには,入職時に抗体価の測定を実施し,抗体未保有者にはワクチン接種を義務づけることを考慮すべきと今回の経験より考えた.
  • 奥田 長三郎, 伊藤 雅章
    1998 年 108 巻 5 号 p. 733-
    発行日: 1998年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    イトラコナゾールによる爪白癬のパルス療法において,より有効な投与法を検討するため,当科を受診した爪白癬患者38例を無作為に2群に分けた.Ⅰ群:16例,100mg/日を1週間継続して1週間休薬することを反復.Ⅱ群:22例,200mg/日を1週間継続して3週間休薬することを反復.24週後の効果判定では,Ⅰ群は評価対象症例8例中,著効4,有効2,無効2で,著効50%,有効以上75%.Ⅱ群は評価対象症例10例中,著効7,有効3で、著効70%,有効以上100%.副作用および臨床検査値異常は評価対象症例中にはみられなかった.24週間の総投与量は,両群とも100mg/日を連日投与した場合の1/2であるが,24週時点での臨床効果は,両群とも連日投与の場合と同等かそれ以上であり,Ⅰ群に比して,Ⅱ群の方が,有効率のみならず著効率も上回っていた.ただし,無効例を除き,完治するまでパルス療法を継続した結果,最初の混濁比が同じと仮定した場合の治癒に要する期間は両群ともほぼ同じであり,また,混濁比の改善速度は両群とも24週以降はそれ以前に比して急激に低下していた.現時点では,Ⅱ群の投与法が爪白癬には最適と考えられた.
  • 三谷 直子, 佐々木 哲雄, 早川 広樹, 山口 聡, 高木 信嘉, 石井 當男, 中嶋 弘
    1998 年 108 巻 5 号 p. 739-
    発行日: 1998年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    40歳時発症し,51歳時に当科で肺,食道病変を伴うBarnett3型の全身性強皮症(SSc)と診断された女性が,54歳時に急性腎不全,肺胞出血をきたし入院となった.入院時perinuclear anti-neutrophil cytoplasmic antibody(P-ANCA)は高値であったが,腎生検では明らかな血管炎の組織像は認められなかった.ステロイドパルス療法で腎不全症状および肺胞出血は改善し,それに伴いP-ANCAも陰性化したが,中心静脈カテーテル感染からの敗血症により死亡した.同様症例の報告は未だ少なく,今後P-ANCA陽性SScの臨床的特徴を明らかにしていく上で貴重な症例と思われる.
  • 関東 裕美, 栗川 幸子, 小関 光美, 伊藤 正俊, 天野 英夫, 高田 雅史, 荒井 一歩
    1998 年 108 巻 5 号 p. 747-
    発行日: 1998年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    肉眼的血尿,打撲後の出血性ショックで他科に入院中両手背の環状紅斑に気づいた.組織学的検索でAnnular elastolytic giant cell granuloma(AEGCG)と診断した.生検後抜糸部の易出血性にもとづき,諸検査より後天性凝固第XIII因子欠乏症と確定診断した.XIII因子製剤の補充療法でXIII因子活性値は一時的に上昇した.しかし患者のXIII因子抗体(凝固因子インヒビター)が証明され治療中止に伴い活性値は低下した.皮膚病変の治療にTranilastの内服は無効であった.出血傾向の治療にXIII因子と副腎皮質ステロイドホルモンの全身投与を施行し,皮疹は消退した.創傷治癒過程では血中のXIII因子の増減がありXIII因子の局所的増量が弾性線維に抗原性を与え,肉芽腫性病変,AEGCGの発症に関与したと考えた.
  • 前田 成美, 宮崎 美智代, 池田 忠世, 安藤 佳洋
    1998 年 108 巻 5 号 p. 755-
    発行日: 1998年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    好酸球性肺炎を合併し,ポビドンヨードが誘因と考えられたEosinophilic Cellulitis (EC)の63歳男性例を報告した.両側下腿のそう痒性病変にポビドンヨードの外用を約3週間続けていたところ,大小の緊満性水疱を伴う,蜂窩織炎様皮疹を生じた.末梢血好酸球数と血清IgE値は上昇しており,抗核抗体が陽性であった.病理組織学的には,真皮全層と皮下脂肪織にflame figure像を伴う著明な好酸球浸潤を認めた.ポビドンヨードによる貼布試験部位が初期あるいは軽度のECに相当する組織像を呈したことから,ポビドンヨードに対する過敏反応が発症の誘因と考えられた.また,自験例は経過中に好酸球性肺炎を合併した.ポビドンヨードが発症に関与したと思われる症例の報告は自験例が初めてであり,なおかつHypereosinophilic Syndromeとの異同を考えるうえでも興味深い症例と考えられた.
  • 1998 年 108 巻 5 号 p. 763-
    発行日: 1998年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
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