日本皮膚科学会雑誌
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109 巻, 13 号
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  • 1999 年 109 巻 13 号 p. 2091-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
  • 秋山 尚範, 多田 讓治, 荒田 次郎
    1999 年 109 巻 13 号 p. 2095-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus),コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative staphylococci;CNS),A群化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)それぞれに付着特性で差異が見られる.S.aureusは親水性が高いが,CNS,S.pyogenesは疎水性が高い.血漿の存在はS.aureus,S.pyogenesの付着を高めるが,CNSの付着はむしろ減少させる.血清IgAの存在はS.aureusの付着を高めるが,S.pyogenesの付着は減少させる.これらの付着特性によりアトピー性皮膚炎(AD)でS.pyogenes感染症が好発する理由が説明できる.すなわち,ADの乾燥部ではS.aureusの定着が少なくsecretory IgAが減少しているためS.pyogenesの付着が容易に起こると考えられる.一方,S.aureusの付着には皮膚炎の存在など血漿成分の漏出が重要である.本邦では成人のAD,特に顔面の重症型患者が増加している.それに伴いMRSAが定着したAD症例数の増加が目立ってきている.AD患者への抗菌薬療法はMRSAへの菌交代を防ぐため注意深い投与デザインが必要である.AD患者ではS.aureusの産生するスーパー抗原に対する特異的IgE抗体が増加しており,これらの毒素がマスト細胞を活性化することによりAD皮疹を増悪させる可能性が考えられている.近年,環境アレルゲンとスーパー抗原が協力して免疫系に影響を与える可能性が指摘されている.稀な疾患ではあるが見逃してはならないものとしてneonatal TSS-like exanthematous diseaseがある.発熱,発疹,血小板減少を示す新生児疾患で,MRSAのcolonizationより産生されたtoxic shock syndrome toxin-1(TSST-1)により発症する.皮膚科領域で検出されるS.aureusもバイオフィルムを形成する.S.aureusのバイオフィルムが作られるにはフィブリンが形成されることが必須である.そのためS.aureusによるバイオフィルムを抑制するにはフィブリン形成を抑制することが重要である.金属酸化物(ceramic powder slurry)(1~5%ZnO,0.12%CaO,0.25%MgO),高浸透圧(70%sucrose,50%glucose),低pH(pH5.0以下)(0.25%acetic acid),UVAによる皮膚表面の高温(50℃,1時間)などでS.aureusによるフィブリン形成が抑制される.
  • 奥田 峰広, 吉池 高志, 小川 秀興
    1999 年 109 巻 13 号 p. 2103-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
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    角層バリアは皮膚の持つ重要な機能の一つであり,徹生物の生体への侵入や諸々の物理・化学的侵襲からの防御の上で重要な働きをしている.特に近年では,アトピー性皮膚炎における角層バリア機能の破綻が臨床病態発現上重要な関連を持つであろうことが注目されている.この角層のバリア機能を測定する方法としては従来より経皮水分蒸散量の測定,ステロイドによる皮膚蒼白性の測定,単離皮膚シートによる経皮吸収量の測定など様々な手法が利用されている.今回我々は,物質の角層内への浸透を,より簡便に測定する方法としてリボフラビンを用いた評価法を開発した.その方法を用いて種々検討をした結果,角層のバリア機能の障害の程度に応じてリボフラビンの浸透量が増加することが示された.本法は,その適用と評価法がきわめて簡便であることから今後,各種状況下における角層のバリア機能の測定のために応用されうる有用な方法と思われる.
  • 安齋 眞一, 近藤 慈夫
    1999 年 109 巻 13 号 p. 2111-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    皮膚原発眼瞼外脂腺癌15例について臨床病理学的検討を行った.12例は女性,初診時年齢は,平均80.1歳であった.発生部位は顔面が10例と最も多く,頭部3例・躯幹が2例であった.2年以上経過を観察し得た12例中6例(50%)で遠隔転移がみられ,そのうち4例は腫瘍死した.病理組織学的には,脂腺分化を伴う上皮性悪性腫瘍の像であるが,pagetoid spreadが5例で,bowenoid changeが3例で観察され,壊死性変化も9例で観察された.腫瘍細胞の形態は10例で見られたsquamoid typeと5例で見られたbasaloid typeに大別され,脂腺分化細胞の分布も10例で見られた散在性の型と5例で観察された塊状の型があった.これらのsubtypeのうち,basaloid typeが有意にsquamoid typeよりも転移の確率が高かった.発生部位が多くの場合露光部であること,病理組織学的に真皮上層で日光性変化が見られる例が多いこと,時に日光性角化症と鑑別できない病変を伴う例があったことなどから,眼瞼外脂腺癌の発症には,日光への暴露が関係していると考えられた.
  • 山﨑 直也, 山本 明史, 和田 隆, 石川 雅士
    1999 年 109 巻 13 号 p. 2123-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
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    StageⅣ悪性黒色腫13例に対して,dacarbazine(DTIC),ACNU,cisplatin(CDDP),tamoxifen(TAM)を併用した化学療法を行い,その臨床効果について検討した.13例中6例は,第1日にcisplatin85mg/m2点滴静注,第2日にACNU60mg/m2・静注,第2日から第5日までDTIC160mg/m2を4日間,総量640mg/m2)静江または点滴静注し,tamoxifen20mg/日を第1日から連日内服する方法(cisplatin1回法)で,残りの7例は第1日から第3日までcisplatin25mg/m2を3日間,総量75mg/m2及びDTIC220mg/m2を3日間,総量660mg/m2点滴静注,第1日にACNU60mg/・を静江し, tamoxifen20mg/日を第1日から連日内服する方法(cisplatin3分割法)で治療を行った.13例中1例にcomplete response(CR),6例にpartial response(PR)が得られ,奏効率は54%(CR率8%)であった.投与法別には,cisplatin1回法において6例中3例にPRが得られ,奏効率50%,cisplatin3分割法において7例中1例にCR,3例にPRが得られ,奏効率57%といずれの方法においても奏効率が50%以上という良好な成績であった.転移部別には,肺とリンパ節に高い効果が認められたが,従来,治療に抵抗性であった肝転移に対してもCRが得られた.薬物有害反応(副作用)は,悪心・嘔吐,骨髄抑制が高頻度に認められ,特に骨髄抑制については高度に白血球,血色素,血小板が減少する症例があり,注意深い経過観察が必要であった.本療法は,StageⅣ悪性黒色腫に対して高い奏効率を示し,現在,最も有効な化学療法と考えられる.
  • 谷口 裕子, 横関 博雄, 片山 一朗, 西岡 清
    1999 年 109 巻 13 号 p. 2129-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    1991年から1993年の3年間に当科に入院したアトピー性皮膚炎(AD)患者69例の皮膚感染病巣,鼻腔,咽頭の細菌培養について検討した.皮膚感染病巣についてはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)が69例中68例(98.6%),A群溶連菌が10例(14.5%),メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が11例(15.9%)より分離された.3年間でA群溶連菌,MRSAは増加傾向がみられた.A群溶連菌の薬剤感受性はアミカシン耐性が12株(100%),ミノサイクリン耐性が12株中8株(66.7%)であった.またオフロキサシンは感受性試験では良好でも臨床的に有効でない症例がみられた.A群溶連菌は咽頭,MSSA,MRSAは鼻腔・咽頭から検出される例が多く,それぞれ咽頭・扁桃炎や皮膚に波及して感染症を生じることによりADの増悪因子になりうると考えられた.A群溶速菌による膿痂疹で,臨床的にカポジ水痘様発疹症(KVE)に類似している症例が多くみられたため,ツァンクテスト,単純ヘルペスウイルス(HSV)蛍光抗体法と同時に溶連菌感染を念頭において細菌培養や迅速診断検査を行うことが必要と思われた.
  • 加藤 卓朗, 谷口 裕子, 西岡 清
    1999 年 109 巻 13 号 p. 2137-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    足白癬患者一家庭における皮膚糸状菌の付着状況について,家庭内の除菌法を含めて検討した.対象家庭はTrichophyton mentagrophytesによる未治療の26歳男の足白癬患者が1人で住んでいるマンションで,白癬罹患がない健康な41歳男性を被験者とした.培養方法はFoot-press培養法(FP法)で,培地は5-fluoro-cytosiseなどを添加したサブロー・ブドウ糖寒天培地を用いた.実験方法は対象家庭の台所の床,寝室のたたみ,寝室にひいてあるこたつの敷き布団,浴室の洗い場のタイルの床,足拭きマット,トイレのスリッパを被験者が両足でそれぞれ50回踏んだ後にFP法を行った.また除菌法の検討では,前述の床,たたみ,布団,タイルの約30×50cmの範囲を処置を行った後に被験者が右足で20回踏んでFP法を行った.処置法は電気掃除機を掛ける,濡れたタオルで拭く,ほうきで掃く,水を流すである.また近接の無処置の所を対照とした,その結果,前者および後者の無処置の所すべてから患者と同じT.mentagrophytesを分離し,患者家庭を裸足で歩行すると,患者が散布した皮膚糸状菌が足底に付着することが証明された.また除菌法の検討では,床の掃除機,タオル,ほうき,たたみのタオル,布団の掃除機で処置した所の集落数は無処置の対照より少なく,効果がみられた.しかし,たたみの掃除機とほうき,タイルの水で処置した所の集落数は対照と大きな差はなく,効果は少なかった.以上から家庭内の皮膚糸状菌の除菌法として,掃除機を掛ける,濡れたタオルで拭く,ほうきで掃くことはある程度有効であること,および同じ除菌方法でも対象環境により有効性に差があることが分かった.
  • 矢澤 徳仁, 轟 葉子, 河野 志穂美, 佐藤 佐由里, 守屋 修二, 江藤 隆史
    1999 年 109 巻 13 号 p. 2141-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    61歳,男.約1週間前より両下腿に紫斑が出現,徐々に大腿,前腕にもみられた.さらに膝関節痛,胸肋鎖関節痛,下痢も伴うようになった.初診時には両大腿から下腿,足背,前腕にかけて粟粒大から小豆大までの浸潤をふれる紫斑が多発.次第に下腿伸側は血疱,膿疱形成が著明となった.皮疹の増悪に平行し,右前胸部の発赤,腫張がみられた.血液検査では白血球数,血沈が著明に上昇,また尿蛋白は初診時では軽度であったが,皮疹の増悪とともに増加.大腸内視鏡では大腸粘膜に紫斑,不整形の潰瘍形成を認めた.皮膚の病理組織では真皮上層の血管壁は肥厚し,一部では閉塞,その周囲には好中球,リンパ球を中心とした細胞浸潤があり,白血球の核破片もみられ,いわゆるleu-kocytoclastic vasculitisと考えられた.腎臓の病理では巣状分節性の糸球体変化がみられた.自験例ではacute generalized pustular bacteridとの鑑別に苦慮するが,病初期には組織学的に真皮上層の小血管にleu-kocytoclastic vasculitisの認め,IgAの沈着のある腎炎の存在,腹痛がみられ内祝鏡にて直腸に紫斑がみられたこと,さらに膝関節痛を伴なっていたことからアナフィラクトイド紫斑と捉えた.また右前胸部の病変はCTにて右胸肋鎖関節部の骨肥厚,硬化像がみられ,骨シンチグラムで同部には異常集積が認められたことから胸肋鎖骨間骨化症と診断した.アナフィラクトイド紫斑と胸肋鎖骨間骨化症の合併は稀であり,さらに右前胸部の腫脹と皮疹の増悪が相関しており興味深い症例と考えられた.
  • 三浦 優子, 山崎 正視, 坪井 良治, 小川 秀興
    1999 年 109 巻 13 号 p. 2149-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
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    新しい光線治療器である直線偏光近赤外線治療器(スーパーライザーTM)を,刈毛した21日齢のラットの肩甲骨間部皮膚に1日1回連日45日間照射し,毛成長への影響を非照射群と比較した.その結果,照射群のみに第2毛周期の休止期において発毛が認められた.さらに照射部位の皮膚から採取したtotal RNAを用いてRT-PCRを実施したところ,発毛因子のひとつであるhepatocyte growth factor(HGF)とその活性化に関連したセリン系プロテアーゼであるHGF activatorのmRNA発現量が照射群でわずかではあるが増加していた.以上のラットを用いた実験から直線偏光近赤外線照射は毛成長を促進させることが明らかにされた.
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