日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
110 巻, 14 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 吉村 浩太郎
    2000 年 110 巻 14 号 p. 2185-
    発行日: 2000年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    ケミカルピーリングは皮膚を表面から化学的に融解し,その後の創傷治療やそれに伴う炎症反応によって皮膚の再生を促す治療であり,主に皮膚の美容的改善を目的としたskin resurfacingの一手法である.歴史は古く,さまざまな薬剤を用いた治療手技が,前療法,後療法とともに臨床的には洗練されてきたが,作用メカニズムに対する基礎的研究は遅れており,未解明のことが多い.ケミカルピーリングにより臨床的には尋常性痤瘡や色素沈着などでは他の治療法では得られない大きな治療効果が得られており,さらなる治療法の改良や適応疾患の拡大が期待される分野である.一方,東洋人特有の炎症後色素沈着,遷延する紅斑や創傷治癒の問題など解決すべき問題点も残されている.
  • 小尾 麗子, 河 陽子, 久志本 常人, 窪田 泰夫, 溝口 昌子
    2000 年 110 巻 14 号 p. 2191-
    発行日: 2000年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    Stem cell factor(SCF)は,KIT受容体に結合することにより,メラノサイトの増殖,分化,メラニン産生を刺激する.ヒト毛乳頭細胞(dermal papilla cells,DPC)はSCFを合成,分泌する能力を持ち,SCFを介して毛母のメラノサイトの増殖やメラニン合成を調節している可能性が考えられている.我々はヒト正常毛包より得られたDPCを培養し,それを各種サイトカインで刺激して培養上清中のSCFの変化を調べた.DPCによるSCF分泌はbasic fibroblast growth factor(bFGF)で刺激され,transforming growth factor-β(TGF-β)で著明に抑制された.TGF-αとinterleukin-1はSCF分泌に影響を与えなかった.免疫組織化学染色により,DPCにおけるSCF,bFGF,TGF-βの発現が,in vivo,in vitroともに確認された.以上の結果から,これらのサイトカインがautocrine,paracrine的に,毛乳頭におけるDPCの増殖やDPCによるSCF産生に加え,毛母におけるメラノサイトの増殖やメラニン合成をコントロールしている可能性が考えられた.
  • 大貫 雅子, 為政 大幾, 伊藤 健人, 桑元 香津恵, 原田 暁, 堀尾 武
    2000 年 110 巻 14 号 p. 2199-
    発行日: 2000年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    1991年から1997年の7年前に当科で経験した外毛根鞘癌15例について,臨床的,病理組織学的に検討した.本腫瘍は,基底細胞癌や有棘細胞癌よりも高齢者の露光部位に好発する.半数以上(8例)がケラトアカントーマ様,その他はドーム状の肉芽腫様あるいは疣贅様の外観を呈した.組織学的には10例がMalignant proliferating trichilemmal tumor,3例がMalignant trichilemmoma,2例がその混合型の所見を示した.全例とも外科的に切除し,一部の症例では放射線照射および化学療法を追加した.1例は肺転移で死亡した.外毛根鞘癌で深部への浸潤・増殖傾向が強く認められるものでは転移の可能性も高いため,十分な転移の検索と切除後の定期的な経過観察が必要と考えられた.高齢者の,特に顔面に急速に増大するケラトアカントーマ様腫瘤を認めた場合には,本症を考慮すべきである.外毛根鞘由来の悪性腫瘍の分類および定義についてはいまだ明確ではなく,今後の症例の集積と検討が期待される.
  • 冨高 晶子, 松永 佳世子, 入野 洋子, 鈴木 加余子, 田中 俊宏, 駒井 礼子, 橋本 隆
    2000 年 110 巻 14 号 p. 2207-
    発行日: 2000年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    症例は78歳,女性.1986年,左下腿に水疱が出現し,徐々に全身に拡大したため近医を受診,臨床症状,組織学的所見および蛍光抗体直接法より水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid:BP)と診断されステロイド剤内服による治療を受けた.一時軽快したが,その後再び水疱新生が急増したため,1996年5月当科を受診.当科でも当初はBPと考え,ステロイド剤,シクロスポリン,ニコチン酸アミド,ミノサイクリンなどで加療したが水疱新生は続いた.1996年10月よりコルヒチン0.5mg/日を追加投与したところ皮疹はやや軽快し,1.5mg/日に増量したところ,水疱新生を認めなくなった.また,水疱治癒後に生じていた肥厚性瘢痕も平坦化した.その後,蛍光抗体間接法および免疫プロット法を施行した結果,自験例を後天性表皮水疱症(epidermolysis bullosa acquisita:EBA)と確定診断した.EBAは治療に難渋する症例が多いが,自験例においてコルヒチンが著効したことから,EBAの治療に試みる価値のある薬剤と考え報告した.さらに,本例のEBA抗原のエピトープの部位を免疫プロット法により解析したところ,Ⅶ型コラーゲンの290kD蛋白には反応せず,非コラーゲン領域(以下NC)1領域およびNC2領域の両方に反応した.
  • 新倉 冬子, 河内 繋雄, 松本 和彦, 櫻井 晃洋, 斎田 俊明
    2000 年 110 巻 14 号 p. 2217-
    発行日: 2000年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    体幹に多発性の結合組織母斑が認められた多発性内分泌腺腫症1型(multiple endocrine neoplasia type1:以下MEN1と略す)の父娘例を報告した.娘症例では鼻背部に単発性のangiofibromaも認められた.最近,MEN1患者には高率にangiofibromaやcollagenoma,cafe au lait斑,脱色素斑などの皮膚症状が認められることが報告されており,MEN1の母斑症的側面が明らかにされつつある.自験例は,結合組織母斑を皮膚症状として伴ったMEN1の本邦における最初の報告例である.MEN1とそれに伴う皮膚症状について概説し,これらの皮疹と結節性硬化症で認められる皮疹やfamilial cutaneous collagenoma,fibrous papule of the faceなどとの鑑別点について述べた.
  • 平松 正浩, 加藤 一郎, 向井 秀樹, 加藤 博司
    2000 年 110 巻 14 号 p. 2225-
    発行日: 2000年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    高IgE症候群の3ヵ月.女児例を報告した.本症に特有の症状は,生後1ヵ月より膿痂疹性湿疹,生後2ヵ月より黄色ブドウ球菌(黄色ブ菌)性冷膿瘍を操り返し,3歳時には粗野な顔貌を呈した.血清IgEは16.070IU/mlであり,カンジダ,猫上皮および卵白特異IgEで抗体が高値であった.とくに,黄色ブ菌の外毒素であるStaphylococcal enterotoxinAとB(SEA,SEB)に対する特異IgE抗体は,SEA5,000IU/mlおよびSEB9,450IU/mlと極めて高値を呈した.当科においてアトピー性皮膚炎(AD)患者を対象に測定したSEA抗体の平均値は9.28±32.19IU/ml(0.00~240IU/ml),SEB抗体の平均値は16.79±63.02IU/ml(0.2~482IU/ml)であった(未発表データ).黄色ブ菌外毒素特異IgE抗体の異常高値は本症の特徴であり,これら細菌性外毒素が,本症の易感染性および慢性の湿疹様病変において一因を成している可能性が考えられた.
  • 涌井 玲子, 浅井 寿子, 安江 敬
    2000 年 110 巻 14 号 p. 2231-
    発行日: 2000年
    公開日: 2014/08/19
    ジャーナル 認証あり
    77歳男性.約20年前より両手背に角化性病変が多発し,1ヵ月前よりその1つ腫脹,びらん化したため当科を受診した.初診時,両手背には大豆大までの角化性小腫瘤が多発し,右手背では直径2cm大のびらんを伴った腫瘤を形成していた.組織学的には腫瘤は有棘細胞癌で,多発する小腫瘤においては表皮下層を中心とした異型角化細胞の増殖像を認めた.患者は長年仕事で両手背に切削油の曝露を受けていたため,切削油の成分分析を行ったところ,発癌性物質の一つである3,4―ベンゾビレンを検出した.有棘細胞癌は全摘にて再発はなく,多発する角化性病変も2回に分けて切除した.
feedback
Top