乾癬性関節炎の診療ガイドラインを,本邦の実情を考慮し皮膚科医を中心に複数科で策定した.その病態が腱や靭帯の骨付着部の炎症であることや,末梢関節炎のほか体軸関節炎,付着部炎,指趾炎,爪病変,皮膚病変といった領域に多彩な臨床像を呈することを述べ,診療の流れと鑑別疾患を解説した.治療はエビデンスレベルと推奨度を付してCQで解説し,生物学的製剤の位置付けをまとめた.患者QOL向上に役立てられることを期待する.
乾癬性関節炎は,脊椎関節炎の末梢型(peripheral spondyloarthritis)に分類される.その病態は,脊椎関節炎のマウスやラットモデル,あるいはヒトの手術検体などを用いた研究により新しい知見が次々にもたらされている.本稿では,乾癬性関節炎の付着部局所にみられる細胞集団の特性,付着部炎の誘導におけるIL-23,IL-17,IL-36の役割,動物モデルを用いた最近の知見,などについて概説した.
乾癬性関節炎(PsA)は,多彩な関節症状を有する.ここでは,PsAの診断,疾患活動性の評価,治療効果の判定に必要な理学的所見の取り方および,典型的な画像検査(骨レントゲン,関節エコー,CT,MRI)を紹介する.皮膚科医として,すべてを網羅する必要はないが,関節の診察を少し行い,PsAを疑うことができれば,早期診断につながることから,一読していただきたい.
乾癬性関節炎(PsA)に対するメトトレキサート(MTX)の有効性が見直された.IL-23p19阻害薬はIL-23p40阻害薬と比べ,効果が高く,副作用が減少した.IL-17阻害薬は皮膚,関節炎ともに高い有効性を示す.Pan-Jak阻害薬から選択性の高いJAK阻害薬の治験が行われている.TNF阻害薬,IL-17阻害薬,IL-23p19阻害薬,MTXは,程度の差異はあるが,骨破壊に対する抑制効果がある.
道南地区で乾癬等を対象とする生物学的製剤を投与されている患者の8割以上が通院する当院において,患者の居住区域や経済的負担を仔細に集計した.地域格差の是正や医療費負担における公平性の担保など,乾癬治療の均霑化には未だ課題が山積している.情報通信技術を活用して地域医療の拡充を図りつつ,医療の効率化により人材が確保されることに期待しているが,課題の解決のためには,まず都市部在住の皮膚科医が地域医療に関心を持つことが肝要である.
爪母由来の稀な良性線維上皮腫瘍であるonychomatricomaを3例経験した.いずれも爪肥厚を主訴に受診し,爪切りの際の疼痛あり.指爪に数ミリ幅の全長性の爪甲肥厚,過湾曲を認め,ダーモスコピーで爪甲尖部の層状の空洞形成あり.うち2例でMagnetic resonance imaging(MRI)検査を行い,先端が鋸歯状を呈する鶏冠状であった.病理組織学的検査では爪母上皮が乳頭状に腫瘍性増殖し,顆粒層を経ずに角化して肥厚し,変形した爪甲を形成,間質には紡錘形細胞が増殖していた.
77歳男性.新型コロナウィルスワクチン(コミナティ筋注Ⓡ)2回目接種2日後より紅斑が出現し,全身へ拡大した.接種3週間後の初診時,躯幹四肢に環状で6 cm大までの融合傾向のある浮腫状暗紅色斑が散在し,一部標的様を呈した.経過・検査所見より,コミナティ筋注Ⓡ接種後の多形紅斑と診断した.
新型コロナウィルスワクチン接種後の多形紅斑の報告はまだ少なく,今後ワクチンのさらなる普及に伴い,同様の皮疹を呈する例の増加も予想される.陰性対照も含め提出したコミナティ筋注ⓇのDLST結果及び文献的考察を加え報告する.