皮膚外用薬には軟膏やクリームに加え,ローション,ゲル,貼付剤,スプレー剤など多くの基剤・剤形があり,疾患や部位などに応じて最適な基剤・剤形を選ぶことが重要である.そのため,選択では,基剤・剤形の特徴を理解することが不可欠である.基剤・剤形以外でも,添加物は副作用に影響するため注意が必要である.皮膚外用薬はアドヒアランスが悪い剤形であり,十分な治療効果を発揮するには,患者に基剤・剤形について情報提供を行い,患者の生活様式や嗜好も考慮して選択すべきである.
外用療法の実際について述べた.外用薬は,我々が使い慣れている軟膏以外にも多岐にわたり,日本薬局方においては剤型毎に詳細な規定がなされている.その選択においては,配合剤および基剤の理解とともに皮疹の状態を把握して使用すべきであることは言うまでもない.近年多彩な基剤が登場しており,これらを使いこなすことで患者の外用アドヒアランス向上が可能となる.本稿では特に初学者向けにその基本を述べる.
日常診療で皮膚病変に外用薬を用いて治療する方法は皮膚科特有の治療法である.軟膏・クリームなど手軽で,きれいな外用薬のみを選択しがちであるが,いわゆる古典的外用薬を併用することにより一層の治療効果を上げ得る.亜鉛華軟膏・亜鉛華単軟膏に代表される泥膏類およびその他の古典的外用薬について,成分・作用機序・使用方法を合わせて記載した.
皮膚適用製剤からの薬物の皮膚移行について,全身作用を目的とした経皮吸収型製剤の開発において培われた基礎理論から,外用剤の有効性に関連する皮膚中濃度と安全性に関係する全身暴露について考える.皮膚に適用された薬物は,分配により皮膚に移行し,さらに全身血流に取り込まれる.薬物の皮膚移行は,薬物の性質だけでなく,組み合わせる基剤によって大きく異なる.皮膚のバリア機能が低下していると,経皮吸収量が増大し,低い血中濃度で副作用を発現する薬物の広範囲への適用は要注意である.
動物用ワクチンのヒトへの誤刺は畜産業従事者の間で起こるが,誤注入された薬剤のヒトへの影響を述べた文献は極めて少ない.我々はオイルアジュバント加鶏用ワクチンを手掌に誤注射後,高度の局所反応を呈した44歳男性例を経験した.高熱を伴う蜂窩織炎様の初期反応が沈静化したのち,進行性に拡大する局所壊死を生じ,組織学的には変性・壊死した組織内の稠密な好中球浸潤と多核巨細胞を混じた肉芽腫形成を認めた.ステロイド全身投与が奏効したが,誤注射された薬剤の除去が不十分または困難な例では試みる価値があると考え報告した.
Pfizer/Modernaコロナワクチン接種後に帯状疱疹を発症した症例の論文報告は海外で散見されるが本邦では未だない.今回我々は症例を8例経験した.平均年齢66.5歳,男女比1:3と女性に多く,37.5%が初回投与から2回目接種までの間に発症.接種後発症までの日数は8.75日だった.また,帯状疱疹患者数も昨年と比し増加傾向であることが判明した.コロナ禍において帯状疱疹の診断にあたり,コロナワクチン接種日を記録し,症状を記載しておくことが今回の後向き調査を可能にすると考え,皮膚科医に向けて速報的な報告を行った.