痒みは「引っかきたいという衝動を催す不快な感覚」と定義され,痒みの持続が6週間未満の急性痒みと,6週間以上の慢性痒みに分類される.加えて,痒みを起こす物質(起痒物質)とその対応する神経の関係から,ヒスタミン依存性の痒みとヒスタミン非依存性痒みに分類することもある.慢性痒みでは通常の痒みを過大に痒みとして認識してしまうハイパーネーシスと,通常では痒みを生じない刺激でも痒みを感じてしまうアロネーシスという痒み過敏の状態を伴うことが多く,これには神経過敏が関与している.免疫担当細胞は免疫状態の変容や起痒物質の放出といった機能により痒みと密接に関わる.マクロファージは疾患によってはIL-31の主要な産生源となり,痒みを生じさせることが報告されている.
アトピー性皮膚炎(AD)では,アルコール摂取や睡眠時に痒み/搔破が増悪するが,そのメカニズムは不明である.我々は,ADモデルマウスを用いた研究から,エタノールやバルビツール酸系薬投与により起こる搔痒行動増悪機序の一端を解明した.また,生体内物質アロプレグナノロンが上記薬物と同様に搔痒行動を増加させることを見出した.本知見は,ADにおけるアルコールや睡眠による痒み増悪機序解明の一助になると思われる.
Chronic pruritus of unknown origin(CPUO)とは,慢性的に瘙痒を有するが,その病因が不明のものと定義される.そのため,本邦における皮膚瘙痒症とCPUOは厳密には同義ではない.CPUOの明らかな病因は不明であるが,2型免疫偏移の関与が示唆されている.また,現時点で病因が不明なため有効な治療手段は確立されていない.本稿ではCPUOの特徴について概説する.
当院でアプレミラスト(Apremilast:APR)内服治療を開始した乾癬患者79例の治療効果と治療抵抗因子につき検討した.投与16週時点のPASI75達成率は32.8%であった.また皮疹型による検討では,局面型群において,BMI25以上の肥満患者の割合と副作用出現率が小局面型群よりも有意に多くみられたが,PASI改善率に差は認めなかった.APRは皮疹型や副作用出現率によらず有効である.
27歳,女性.アトピー性皮膚炎の既往があり20歳頃から運動時に蕁麻疹が出現するようになった.バスケットボール30分後に悪心,嘔吐,血圧低下を生じ失神した.発作は食事との関連はない.運動を続けたいという希望があり,温熱負荷試験と運動負荷試験を行い,悪心症状出現前後の血清ヒスタミンとトリプターゼを測定した.病歴および検査結果に基づき,コリン性蕁麻疹を除外し,約80 kJ以上の運動負荷により誘発される運動誘発アナフィラキシーと診断した.安静下の温熱負荷試験とエルゴメーターによる運動負荷試験が診断と発作を起こさない運動量の推定に有効であった.
52歳,男性.発熱と頭頸部・四肢の膿疱を伴う有痛性紅色結節のため,当科入院.Sweet症候群の診断でステロイド内服を開始.膿疱は改善傾向を示すも高熱が持続,全身状態は悪化し入院3日目より体幹部に多形紅斑が出現し,ステロイドパルス療法後も症状遷延した.入院後から開始したランソプラゾールを中止し,血漿交換と免疫グロブリン大量療法を施行.以後全身状態・皮疹ともに改善した.ランソプラゾールは後日DLST陽性と判明した.Sweet症候群に重症の多形紅斑型薬疹を合併した可能性を考えた.
生後6カ月,第1子男児.出生発達に異常なく,生下時より完全母乳栄養で哺育されていた.生後4カ月頃から難治性の皮疹があり,当科受診した.開口部を中心としたびらんを伴う紅斑があり,血清亜鉛値は17 μg/dLと低下していた.母乳中の亜鉛値も15 μg/dLと著明な低下があり,母の遺伝子検査でSLC30A2遺伝子にc.259 G>A(p.G87R)のミスセンス変異があり,TNZDと診断した.患児は亜鉛補充し,1週間で皮疹はほぼ消失した.現在離乳しているが皮疹の再燃はない.