乳児血管腫(いちご状血管腫)に高い治療効果を示すプロプラノロールシロップが2016年に発売となった.従来「いずれ消えるから様子を見て良い」「大きくなったら治療を検討」と治療の機会が得られず瘢痕が残る症例が多かったが適切な時期に治療介入を行うことで良好な結果が得られやすくなった.治療経験者の早期判断が結果に大きく影響するため今後はDon't wait and seeを提唱したい.初療した医師の不作為により,患児の未来に醜形を残すようなことがあってはならない.
近年,血管腫,血管奇形の治療手段の選択肢は広がりつつあるが,外科療法が必要とされる状況は依然として少なくない.外科療法には手術療法以外に硬化療法,放射線科医の介入による血管内治療(IVR),これらを組み合わせる方法などがある.本稿では血管腫・血管奇形の各病態において,どのような症例が外科療法の対象となり,どの治療手段を選択し,どういった手順で治療に当たるのかについて解説した.
下肢静脈瘤は,古代エジプトのパピルスに記載があり,また古代ギリシャのレリーフにもその像が確認できることより,古くからよく知られている疾患であるといえる.100年以上前から,現代のストリッピング術と似た抜去切除も行われていた.本稿では下肢静脈瘤の症状及び必要な検査について解説した後,治療について述べる.下肢静脈瘤の治療は,圧迫療法が基本で重要である.弁不全による一次性静脈瘤の場合は外科的治療が考慮される.手術治療は長く抜去切除術(ストリッピング)が行われてきたが,2014年にレーザーや高周波を用いた血管内焼灼術が保険適用になり,以後これにほぼ置き換わった.2019年には血管内塞栓術(グルー治療)も保険適用になり,本邦でも始められている.硬化療法は主にフォーム硬化療法で行われるが,伏在静脈本幹には保険適用がない.
痤瘡の抗菌薬処方と治療継続の実態をレセプトデータベースを用いて調査した.痤瘡初診患者97万人のうち55.1%は初診以降180日以内に痤瘡治療がなく,維持期まで治療継続した患者は8.9%であった.初診日は外用抗菌薬のみの処方割合が最も多く,2012年の41.5%から2019年には35.6%へ有意に減少した.内服抗菌薬の急性期から維持期までの継続処方割合は2012年の22.0%に対し,2019年は12.6%であった.抗菌薬の適正使用と抗菌薬以外の薬剤を用いた維持療法を今後も推進することが必要である.
アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis;AD)の影響や治療について,医師と患者の認識を調べるため,医師209名と患者716名を対象にオンラインアンケート調査を実施した.その結果,患者は医師が考えるほどには日常生活の上で制限を受けていると感じておらず,心理・精神的にも困っていない可能性が示された一方で,医師よりも症状を改善させたい思いが強いことが示された.患者の意図を汲んだAD治療の実現のために,ADに対する医師と患者の認識のギャップを解消する必要性が示唆された.