乾癬における皮膚マイクロバイオームについて,これまでに知られていることを細菌叢(バクテリオーム),真菌叢(マイコバイオーム),ウイルス叢(ウィローム)に分けて概説する.乾癬はケブネル現象を呈する代表的皮膚疾患であることからも分かるように,皮膚表面の機微な刺激が病態形成を促すため,皮膚マイクロバイオームのダイナミクスが疾患に作用する可能性がある.また近年使用される乾癬の生物学的製剤が,皮膚マイクロバイオームに与える影響についても徐々に理解が進んでいる.
皮膚表層にはタンパク質と脂質が豊富に存在するためこれを栄養源とする微生物がマイクロバイオームとして存在する.このうち,真菌マイクロバイオームの大部分はマラセチア(Malassezia)で構成される.本菌はリパーゼとアスパラギン酸プロテアーゼ(Sap)を分泌することで皮膚表層に存在する成分を加水分解して自身の栄養を獲得するが,「悪」の作用として分解産物であるオレイン酸の蓄積により炎症が惹起される.一方で黄色ブドウ球菌のバイオフィルムをSapが分解するなど宿主にとって「善」に働くこともある.本稿ではマラセチアが分泌するリパーゼとSapが宿主に与える影響について述べた.
皮膚における病原細菌として最も有名な黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureusは,ヒトの正常細菌叢の一部としても検出される.その病原性に関わる遺伝子は薬剤耐性遺伝子を始め様々なものがあるが,菌が自身の生息密度を感知するために使用するクオラムセンシング遺伝子領域は菌の病原性発揮に重要な役割を果たしている.皮膚の病原性共生生物(Pathobionts)がどのように疾患を引き起こすのかそのメカニズムとアトピー性皮膚炎における病原性を概説する.
アトピー性皮膚炎は,多様な疾患病態を包含する疾患概念である.近年,データ駆動型アプローチによりアトピー性皮膚炎を病態ごとに層別化し,層別化された集団ごとに最適な医療の提供を目指す精密医療の実現が切望されている.分子情報を中心に,患者から計測される指標(バイオマーカー)を活用した,アトピー性皮膚炎における精密医療の可能性と課題を論じる.
過去17年間に当科で経験したサルコイドーシスの特異疹111例中,びまん浸潤型は6例(5.4%)に認められた.男性1例,女性5例であり,平均年齢は49歳であった.6症例のうち,頬および耳介に皮疹を認めた症例は3例ずつ,鼻および手指に皮疹を認めた症例は1例ずつあった(複数の部位に発現した症例を含む).5例で,他のタイプの特異疹もみられた.肺病変は全例で認められた.あわせてびまん浸潤型の国内報告例を集計した結果,(1)中年女性に多い,(2)顔面,手指の順に多い,(3)皮膚病変の合併は結節型が多い,(4)他臓器病変は肺が最も多い,(5)抗核抗体陽性を呈する症例が多い,(6)軟骨破壊にまで至る症例は極めて少ない,といった特徴がみられた.
アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis;AD)が就労や就学に与える影響について,患者や家族に質問票調査を行った.重症患者は仕事のために通院が制限され適切な治療が受けられず,その結果症状が悪化して仕事の効率が低下する可能性が考えられた.スムーズな就労を進めるためには,労使ともに治療に関する就業規則を周知すること,必要に応じて医師診断書を活用することが重要であり,労働者の治療と職業生活の両立支援に取り組む企業に対する支援や医療機関等における支援対策が必要である.
49歳,女性.示指の爪甲に均一で境界鮮明な黒色線条(melanonychia)を認め,指尖部では爪甲下に鉛筆の芯が挟まったかのような構造がみられた.病理組織学的には爪母においてbasal componentに加えprekeratogenous zone,keratogenous zone共に増生して肥厚した爪甲を形成しており,メラニンが多数混在し,onychocytic matricomaと診断した.自験例の様に特徴的な臨床像の場合は,臨床所見だけでも診断し適切に対応ができる可能性がある.臨床像と疾患概念について紹介する.