金属アレルギーには皮膚に直接接触して起こす金属接触アレルギー以外に,食品や歯科金属に含まれた微量金属が体内に吸収されて発症する全身型金属アレルギーがある.全身型金属アレルギーの患者はニッケル,コバルト,クロムを多く含むチョコレートや豆などの食品を多く摂取すると増悪し,制限すると軽快する.皮疹型は汗疱状湿疹などが多い.これらの金属は人体にとって必須金属でもあるため,厳格すぎる除去食は避けるべきである.
脂肪酸は3大栄養素の一つである脂質の主要構成要素であり,その構造から大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類される.各種脂肪酸は生体恒常性維持に必須の役割を果たしているが,そのアンバランスな摂取が各種皮膚炎症性疾患,特に乾癬の病態形成に関与している可能性が多方面から示唆されている.脂肪酸,あるいはその代謝物の制御が,乾癬の適切なコントロールにつながる可能性がある.
亜鉛はすべての生物の生存維持に不可欠な必須微量元素であり,継続的な亜鉛欠乏は死に至る.亜鉛は生体内で鉄についで含有量が多く,ヒトは2~3 gの亜鉛を含有する.亜鉛は1,000以上の酵素反応,20,000以上の転写調節因子発現やその機能に関与する.さらにヒト蛋白の約10%が亜鉛と結合しうる.したがって,亜鉛は細胞の発生・分化・増殖といった非常に幅広い生体活動に関与する.皮膚は生体内で3番目に亜鉛含有量の多い臓器であり,約5%の亜鉛を含有する(骨格筋60%,骨30%,肝臓5%).そのため,亜鉛は皮膚の恒常性維持に必須である.本稿では亜鉛欠乏と皮膚疾患の関わりについて概説する.
COVID-19・インフルエンザウイルス感染の流行でマスク着用頻度が増加し,マスクによる皮膚障害を訴える患者が増加した.しかし,マスク自体の素材特性を調べた報告がない.そこでマスク素材の特性を,マイクロスコープ,通気性,摩擦性,遮光性能について測定した.マスクの種類は多種で,不織布マスク構造も複雑で4層・3層・2層で機能も異なっていた.なお,マスク着用による皮膚障害の実態は複雑であったが,全例角層重層剝離度が高く皮膚バリア機能が低下していた.適切なマスク着用指導・日常スキンケア指導が必要と考えた.
過去12年間に当科で経験した好酸球性多発血管炎性肉芽腫症11例を後方視的に解析した.症例は男性7例,女性4例であった.2例を除く全例に喘息がみられ,腎臓(n=4),心臓(n=2),末梢神経(n=9),肺(n=6),消化管(n=3)などの臓器病変が認められた.検査所見では,IgE値の上昇(n=9),末梢血好酸球増多(n=10),抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性(n=4)が認められた.14検体の生検標本中,全てで真皮に顕著な好酸球浸潤を認め.また,白血球破砕性血管炎(n=4),好酸球性血管炎(n=3),肉芽腫性動脈炎(n=3)など多彩な皮膚血管炎の像が観察された.
Eccrine angiomatous hamartoma(以下,EAH)は,エクリン汗腺と血管が複合して増生する原因不明の稀な過誤腫で,臨床的には発汗や疼痛・多毛を伴う硬い結節として主に四肢に発症する.そのダーモスコピー所見については多様な報告があるが,いまだに,疾患特異的な所見は確立されていない.今回,我々が経験した症例では白色小点が目立っていて,これは病理的には開大した汗孔開口部に一致している.この所見は診断的価値があると考えた.
超高齢社会であるわが国において帯状疱疹(HZ)の疾病負荷や医療費の圧迫は大きな課題である.HZワクチンは認可されたが,接種率が低い状況が続いている.本レビューでは,日本人も組み入れられた主要な臨床試験におけるワクチンの有効性及び安全性のデータ,公衆衛生への影響及び費用対効果に対するデータをまとめた.また,HZワクチンの定期接種プログラムが導入され,接種率が向上することによるHZの疾病負荷と医療費の軽減への影響について考察した.HZの疾病負荷が高齢化社会に与える影響や接種率に影響を及ぼす可能性についても検討する.