キャピラロスコピーは毛細血管を詳細に観察可能な強拡大鏡であり,皮膚科領域では一般的に全身性強皮症を含む膠原病における後爪郭の微小血管の評価に用いられている.キャピラロスコピーの拡大能は非常に高く,毛細血管内を赤血球が流れる様子まで確認できる.一般的に,皮膚腫瘍の観察にはダーモスコピーが用いられているが,キャピラロスコピーを用いて皮膚腫瘍の観察を行った.キャピラロスコピーの皮膚腫瘍診断への応用は新しい概念であり,まだ確立されていないが,本稿では代表的な皮膚悪性腫瘍のキャピラロスコピー所見を提示しつつ,キャピラロスコピーの皮膚疾患への診断応用の可能性について述べる.
マイクロニードルは,近年注目されている医療技術である.大きく二つの使用法に分けられて,微小な傷をつけることで線維芽細胞からのコラーゲン産生を促し“しわ取り”をする美容目的と微細な針を用いて薬物を送達する新しいDrug Delivery Systemとしての目的である.溶解型マイクロニードルを用いた日本脳炎ワクチン接種では,皮下注射に比べて効率的な抗体価の上昇が得られた.
遺伝性皮膚疾患の治療戦略として,細胞内で遺伝子からタンパク質が産生されるまでの各段階,すなわち細胞,遺伝子,タンパク質をターゲットとした治療法の開発が模索されている.近年の分子生物学の進歩に伴い,世界の遺伝子治療の薬事承認件数は臨床実装の現実化を反映し,増加の一途をたどっている.すでに海外で行われているレトロウイルスベクターや単純ヘルペスウイルスベクターを用いた最新の遺伝子治療法を含め,表皮水疱症を中心に皮膚科領域における遺伝子治療の現状について概説する.
顔面に中等症の尋常性痤瘡を有する患者に過酸化ベンゾイル5%ゲル(BPO-5%)の短時間接触療法を12週間実施した結果,BPO-5%群の炎症性皮疹数,非炎症性皮疹数および総皮疹数のいずれも,プラセボ群に比べて有意に減少した.また,副作用の発現割合は,BPO-5%群が15.8%,プラセボ群が11.7%で,重症度はすべて軽度,転帰は回復または軽快であり,安全性の懸念は低いことが確認された.BPO-5%の短時間接触療法は,尋常性痤瘡の治療法の新たな選択肢の一つとなることが示唆された.
47歳,男性.肝細胞癌再発に対してソラフェニブ(ネクサバールⓇ)の内服開始2カ月後より,角化性結節や角化性局面が上背部,腹部,両下肢に多発した.結節からの生検組織像では,表皮が下方に圧排され陥凹し,角質が層状に堆積する所見がみられ,局面からの生検組織像は,ポケット状に陥凹した表皮の不規則な肥厚と,内腔に角質が充満してみられた.両者は臨床的に異なる外観を呈したが本態は同一であり,acquired perforating dermatosisと考えた.ソラフェニブ内服中にいくつかの異なる角化性病変が出現することが知られており,過去の報告を交えて考察した.