芸術工学会誌
Online ISSN : 2433-281X
Print ISSN : 1342-3061
55 巻
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  • 武山 良三
    原稿種別: 本文
    2011 年 55 巻 p. 37-44
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    本研究は、景観デザインの中で屋外広告物のコントロール手法について考察するものである。今日の自由主義社会において、事業者はそれぞれの経済活動の中で自らの存在を社会に知らせるために広告を行っている。屋外広告物は、事業所の所在を示すためなどに設置されるが、町並みの中で注目される必要があることから大きな文字や高彩度高明度な色彩が用いられる傾向がある。そのため屋外広告物は周辺景観の調和を乱す要素として問題視されている。そこで、伝統的な町並み保存に力を入れている京都市では、屋外広告物規制を強化し良好な景観の回復に努めている。広告物の大きさや高さだけでなく、質的要素である色彩について制限を加える施策を導入している。平成16年10月の景観法施行に伴って屋外広告物法が改正されたことから、全国の自治体が屋外広告物条例の見直しを行っているが、改正にあたっては京都市を前例として色彩に関する規制を導入する自治体もある。しかし、京都市が導入する規制が本当に効果があるのかの検証は行われていない。従って、このことを印象評価の観点から確かめることは有意義なことである。本論文では、屋外広告物に対してどのような規制を加えることが効果的であるかを明らかにすることを目的とした。研究方法としては、まず京都市内において規制を受けた屋外広告物の事例を写真で収集し、次に規制される前の標準型事例を、規制された事例とできる限り類似する状況で収集した。収集後、規制前と変更後の写真を対にした調査用刺激を作成し印象調査を実施した。提示した刺激がどのような方法で規制されたかを分類し、規制方法と受ける印象の関連性を分析した。最後に、調査を通して明らかになった事項を総合的に捉えて、効果的な規制手法についての考察を行った。その結果、(1)事業者が自主的に行ったデザイン変更は効果がある、(2)媒体を素材から変更したデザインは効果がある、(3)京都市の地色を白にする規制及び面積を制限する規制は、京都らしいイメージづくりに効果が見られるもののデザイン評価を低下させている。(4)京都市の高明度高彩度な色彩を抑える規制は効果が認められる、という点が確認できた。
  • 安達 則嗣
    原稿種別: 本文
    2011 年 55 巻 p. 45-52
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    日本の商業アニメーションは、日本を代表するコンテンツとして期待されて久しいが、期待されているほどの成果が得られているとはいえない。そこで、大手アニメーション制作会社である(株)ゴンゾ及び東映アニメーション(株)の事例研究を通じて、アニメーション制作会社とアニメーション産業の現状についてあらためて検討を実施した。その結果、従来からいわれている課題や新たな課題を含めて、いまだに多くの課題が存在していることが把握された。すなわち、(1)海外展開の困難性、(2)作品の均質化・固定化、(3)ビジネスの不透明性、(4)会計基準の不存在、という課題である。従来から期待されているソフト・パワーと経済波及効果に資する「アニメ(Anime)」ブランドというビジョンを実現するためのビジネスデザインには、これらの課題を克服するという観点が求められる。すなわち、質・量ともにストック豊富という強みを活かしながら、低迷する国内外の市場、特に海外市場を拡大して収益機会を得ると同時に、ビジネス上の課題を解消することでアニメーション関連事業者に適正な利益を還元し、業界を活性化させるというものである。具体的には、海外展開を支援する国際見本市や国際共同製作等の制度を充実し、かつ、作品の均質化・固定化を打破する創造的な人材の育成支援策を実施することで、低迷する市場を拡大させる。そして、作品に係る著作権等の帰属やテレビ放映権収入の有無等のビジネス慣行を透明化し、かつ、会計基準を設定することで、アニメーション関連事業者に適正な利益を還元させる。これらを政策として同時並行的に実施することで、期待されつつも低迷する日本の商業アニメーションのさらなる発展を期待したい。
  • 李 知恩, 林 美都子, 野坂 政司
    原稿種別: 本文
    2011 年 55 巻 p. 53-62
    発行日: 2011/02/01
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    本研究では、キネティック・タイポグラフィの感性に着目し、キネティック・タイポグラフィの感性を理解するために一つの方法としてその感性値を統制する尺度が必要であると考え、音楽用感性評定尺度(AVSM)によるキネティック・タイポグラフィ測定を試みることで、キネティック・タイポグラフィ用感性評定尺度としての使用可能性を検討した。本調査では、音楽用感性評定尺度の24項目の形容語によるキネティック・タイポグラフィの印象評価を行った。キネティック・タイポグラフィの調査は2010年5月から8月まで、北海道教育大学函館校の大学生1〜2年生を中心とした。1分の長さに統制した音楽を添えた場合(4種)・音楽を添えない場合(4種)の8種、ユーチューブにアップロードされている既存2種のキネティック・タイポグラフィの音楽を添えた場合(2種)・音楽を添えない場合(2種)の4種、総12種類(総736件)のデータを収集した。キネティック・タイポグラフィのKMOの測度とBartlettの検定を行った結果、総736件の独立変数の要因分析結果に対する解析KMOの標本妥当性の測度は0.862,Bartlettの球面性検定有意確率は0.01以下であった。また、因子数に5を指定して主因子法・プロマックス回転による因子分析を行ったところ、固有値は、6.88,3.78,2.82,2.26,1.56,0.97…というものであり、固有値1以上を採用して5因子構造による分析が妥当であると考えられた。因子負荷パターンはAVSMの24項目の因子分析結果と一致する明確な5つの因子と因子間相関が得られた。なお、回転前の5因子で24項目の全分散を説明する割合は、65.10%であった。また、各尺度の内的整合性を検討した結果、「高揚」下位尺度でα=.92、「強さ」下位尺度でα=.89、「荘重」下位尺度でα=.90、「親和」下位尺度でα=.80、「軽さ」下位尺度でα=.79といずれの尺度においても高い内的整合性を有していることが確認された。さらに、キネティック・タイポグラフィの音楽有無及び、時間の長さ(1分、2分)による相違を分析した結果、いずれもAVSMの24項目の因子分析結果と一致する明確な5つの因子が得られ、いずれの尺度においても比較的高い内的整合性を有していることが確認された。したがって以降の研究において、キネティック・タイポグラフィの感性評価をAVSMで行うことに大きな問題はないと考えられる。
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