芸術工学会誌
Online ISSN : 2433-281X
Print ISSN : 1342-3061
67 巻
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芸術工学会誌67号
  • Khuplianlam TUNGNUNG, Yuichiro KODAMA
    2015 年 67 巻 p. 32-39
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/12/04
    ジャーナル フリー
    温熱快適性のアフオーダンスを考えるには、社会文化的な 遺産、経済性、エネルギー・資源を考えながら、気候風土との応答を考えなければならない。現在、グローバル化する世界では、交通や便利さや人工的な快適さの追求によって、エネルギー消費の急激な増加を引き起こし、地球環境の持続可能性を脅かしている。今日では、建築計画の初期の段階での地域の気候への配慮は、持続可能な建築の確立をめざすパッシブデザインの基本であるとされる。この論文では、地域ごとに異なる気候の特徴を分析し、アフオーダンスの概念を援用しながら、地域の気候とインドにおける伝統的建築や近代建築との関連性を明らかにした。季節や日々の気候の変化に応じた人々の行動、ライフスタイルは自然エネルギー活用を促し、建築の省エネルギーに有効である。高温になる夏季には、日射熱の侵入を防ぎ、通風・換気を促進することが設計原理となる。通風・換気には、可感気流を増す通風、外部冷気の導入、室内熱の排出のモードがあり、使い分ける工夫が重要である。適切な冷気導入が可能であれば建物熱容量を生かした蓄冷も可能である。逆に、寒冷な冬がある地域では気密性が要求されるときもある。このように、建物の形や外皮における空隙性(開放性)や気密性(閉鎖性)のコントロールが、パッシブデザインの重要なポイントとなることを、事例を通して明らかにした。
  • 金 明煥, 佐藤 優
    2015 年 67 巻 p. 40-47
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/12/04
    ジャーナル フリー
    屋外広告物は、商業施設が集まる都心の繁華街などにおいて、地域にふさわしい賑わい感(Liveliness) を演出する媒体としての役割を担う。それらの地域では、人々が好感を抱く賑わい感のある広告景観を形成するための誘導施策の展開が求められる。本研究では、屋外広告物を中心にした店舗ファサードのデザイン要素についての調査とシミュレーション画像による印象評価実験を通して、活気溢れる賑わい感のある広告景観のあり方について検討する。  韓国ソウル市でもっとも良好な広告景観を保っていると言われる地域3ヶ所の店舗ファサードを対象に、人々が「悪いと思う」ものと「良いと思う」ものを、28人によるフィールドサーベイを通して計198 個収集した。そして、フィールドサーベイの参加者による投票を経て、その中からワースト10とベスト10を選定した。それらの事例における店舗ファサードのデザイン要素を調べるとともに、ワースト10とベスト10の比較を通して、人々が好感を抱く要因を導出した(予備調査)。次に、それらの要因を適用したシミュレーション画像を作成し、広告景観における好感度と賑わい感の変化を検討するための印象評価実験を行った(本調査1)。また、店舗ファサードの複雑度と広告景観の印象が関連すると考えたので、店舗ファサードを装うデザイン要素の増減が好感度と賑わい感に与える影響を確認した(本調査2)。  これらの調査を通して、⑴単調なデザインの建物外装を「良いと思う」傾向があることが把握できた。また、⑵開口部が広く、外部空間が設けられ、遊動設置物を積極的に配置した店舗の構えを好み、⑶屋外広告物に関しては、数、量、色彩を含めたその他の要素を最小限にするなど、さまざまな項目において単純で明瞭なデザインコンセプトをもつものを「良いと思う」ことが確認できた。⑷ 印象評価実験を通して、好感度と賑わい感の相関が認められ、特に「良いと思う」ものでは、人々が好感を抱く要因を取り入れることによって、好感度も賑わい感も高めることができる。また、⑸ 賑わい感を失わずに人々が好感をもつ広告景観を創出していくためには、店舗ファサードの複雑度をコントロールすることが有効であるなどの基礎的な知見を得た。
  • 正多角形と正円を対象として
    木下 武志, 福田 弓恵, 川野 里佳, 水上 嘉樹
    2015 年 67 巻 p. 48-55
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/12/04
    ジャーナル フリー
    視覚メディアのコンテンツには、その構成要素として文字や画像等がある。それらを紙面上やディスプレイ上に配置する場合、視覚的バランスを良好に保つためにデザイナーらによって「スペーシング」や「アイソレーション」等の視覚調整が行われている。このような視覚心理的な影響は、美術・デザインの分野では構成要素の相互関係によって生じる緊張感を指すシュパヌンクによるものであると考えられてきた。従来のシュパヌンクについての検討として、「空間的な力の場( Field of spatial forces )」、「空間勢力」、「空間力」として考察した報告がある。その他にも、木下は図形外部に生じる空間力の視覚心理的な影響についての仮説を立てている。また、空間力に関する実験的検討としては、福田らによる並置した平面図形の間に生じる空間力の強さを評価した報告がある。しかし、平面図形の外部における空間力の「場」の形成についてはこれまでに検討されていない。  そこで本実験では、基本的な幾何学的平面図形を対象として、図形外部に生じる空間力が影響を及ぼす「場」の形成について調べることを目的とする。刺激とした図形は正多角形と正円を対象とし、図形の周囲に空間力の強さを表す点(分布点)を配置した。実験参加者は、同じ強さの空間力を感じる位置に分布点を移動させた。この実験により、空間力の場は、刺激図形と概ね中心を同じとし、相似形に近い状態で形成されことが示された。また、頂点付近では内角二等分線の方向に近い程強く、遠い程弱くなり、 図形の辺の中心で最も弱い結果となった。さらに、空間力には異方性があり、頂点の内角二等分線の方向が垂直、水平に近い場合に強くなる可能性が示された。
  • ブラウン 裕子, 佐藤 優
    2015 年 67 巻 p. 56-62
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/12/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、商品やキャラクターなどの群行動を誘発させる広告解釈の可能性を探るために、感情や色、動きなどの視覚要素の関連を明確にする調査を行った。  高度に発達した情報化社会である現在、流行などの群行動現象は多様化、多発化の傾向にある。群行動現象は対象が複雑であるため総合的に有効な理論は不足しており、感情や色・動きなどの視覚要素との組織的な関連性は未だ明確にされていない。そこで、主に近年に流行・普及した複数の群行動現象を取り上げ、記憶をよみがえらせる手がかりとして群行動現象の写真を提示し、それらについて想起される感情、色、動きについて被験者に回答させた。その結果、「おもしろい」、「新しい」、「子供のころの記憶を思い出す」と知名度との間に有意な相関性が見られ、「悲しい」という感情との間に負の相関性が見られた。また動きを感じる場合のほうが、感じない場合よりも「おもしろい」や「新しい」という感情を与えることが明らかになった。これらの結果は群行動現象を起こさせるような企画や広告を検討する際の一つの指針になる。
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