芸術工学会誌
Online ISSN : 2433-281X
Print ISSN : 1342-3061
最新号
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  • 篳篥の「運指」とのクロス集計に基づく検証
    竹下 秋雄
    原稿種別: 論文
    2025 年 90 巻 p. 5-12
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/26
    ジャーナル フリー
    笙は「合竹」という和音をゆったりと演奏するため、一見和声のような機能を持つように思えるが、一般的に雅楽はヘテロフォニーであり、笙の役割は和声ではなく旋律であるとされている。しかし、これまで科学的根拠のある検証はなされておらず、検証が必要である。本研究では笙の「合竹」が旋律と対応しているか、また和声と同じ機能を持っているかを検証するため、『明治撰定譜』記載の楽曲のうち「早拍子」楽曲 61 曲分析対象とし、篳篥の「運指」と笙の「合竹」の対応 17506 拍についてクロス集計を行った。その結果をもとに篳篥の「運指」と音高、笙の「合竹」の構成音、雅楽の「調子」を整理し、西洋音楽の和声・旋律との比較による分析・考察を行った。結果、全「合竹」11 種のうち 7 種類についてはほぼ 1 種の「運指」と対応し、残り 4 種の「合竹」のうち 3 種については1 種の「運指」に対応する訳ではなかったが、1 つの音高に対応しているものと解釈できた。このことから、各「合竹」は基本的に篳篥の音高と 1 対 1 で対応していること、また、和声のような、構成音に含まれる複数の音高と対応する機能はないことが確かめられた。
  • 金箱 淳一, 永田 睦, 圓井 健史
    原稿種別: 論文
    2025 年 90 巻 p. 13-20
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、視覚障害者が駅構内を安全かつ自立して移動できるよう、レーザースキャナと 3D プリンティング技術を用いた触図模型の制作とその有効性の検証である。模型の制作手順として、Leica 社のレーザースキャナ「BLK360 G1」を使用して駅構内を3D スキャンし、得られた点群データをメッシュデータに変換後、データを参照してモデルを作成した。その後、3D プリンタで模型を印刷し、視覚障害者の中学生および職員計 14 名を対象にプロトタイプと完成版の検証を行った。検証の結果、触図模型は視覚障害者の駅構内移動において高い有用性が確認された。全盲および弱視の参加者は、模型を触察することで駅の構造や移動ルートを具体的に把握でき、実際の駅利用時に迷いや心理的負担が軽減された。例えば、階段の段数や手すりの位置を正確に把握できることが安心感を高め、全体の構造を理解しやすくなることで、新たな移動ルートの発見も可能になった。これにより、視覚障害者が自立して移動するための一助となることが示された。本研究は、触図模型が公共施設のアクセシビリティ向上に寄与する可能性を示唆している。
  • 情報グラフィックスとしての形成過程、デザインとその同時代性
    崔 怡テイ, 伊原 久裕
    原稿種別: 論文
    2025 年 90 巻 p. 21-28
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/26
    ジャーナル フリー
    本研究は 1936 年にアルフレッド・H・バーがニューヨーク近代美術館で企画した、《キュビスムと抽象芸術》展覧会用に制作した有名なダイアグラムを、改めて情報グラフィックスの観点から取り上げ、その形成過程、構造、デザインとその同時代性について考察することを目的とする。まず、バーの略歴からダイアグラムの制作経過を遡り、C. モーリィの影響から出発し、自らのオリジナリティを生み出すまでのデザイン過程を明らかにした。次に、ダイアグラムの全体的な構造に対する分析を行い、バーのダイアグラムの特徴として、皿型のデザイン形態と流れのパタンを抽出した。最後に、同時代に出版された R. ブリントンの情報グラフィクスの分類を参照し、抽象芸術の歴史を表すダイアグラムとしての同時代性を確認した。
  • ―アクションぺインティング、瞑想、目の開閉の効果の検討―
    楊 榛
    原稿種別: 論文
    2025 年 90 巻 p. 29-36
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/26
    ジャーナル フリー
    非専門経験者が抽象画を楽しめない理由は創作や表現における「作品らしさ」に対する固定観念があるためだと考えられている。これらは実際の自己表現創作体験が抽象画鑑賞と創作体験の時に、目を閉じることで創作過程を意識的にコントロールしないようにすることで解消される可能性が考えられた。そこで本研究では、瞑想後に目を閉じて行う AP 創作体験が、その後の抽象画鑑賞時のアート等に対する態度にどのような影響を与えるかを検討した。有効回答 67 件に対して3要因の分散分析を行った結果、非専門経験者と美術専門経験者は、目を閉じても開いても、瞑想の後 AP を体験すれば、「現代アートの抽象作品」に対するイメージや「現代アート」に対する関心、「絵を描く『アート創作』時の印象」に対する満足度と「自分自身への注意」をよりポジティブに変化させたが、目を閉じる方法ではリフレーミングが起こらないことが明らかになった。そして、美術専門経験者と非専門経験者は同じ傾向が見られた。
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