Diatom
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32 巻
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論文
  • 中村 憲章, 湯浅 智子, 真山 茂樹
    2016 年 32 巻 p. 1-10
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    Pseudoleyanella lunata Takanoは背腹性の被殻を持つCymatosira科に属する海産種である。本研究では,P. lunataを,その生活環を通して詳細に観察し,細胞分裂に伴う葉緑体の挙動,殻の形成過程,細胞サイズの変化に伴う形質の安定性と変異を明らかにした。殻形はサイズが減少すると,背腹性が弱くなり,最後には円形になった。小型の細胞では帯面観は長方形であったが,増大胞子形成後の長大な被殻ではLeyanellaと同じように帯面観が屈曲していた。しかし,生活環を通して糸毛,管状突起は形成されなかった。分子系統解析では,Cymatosira科の中でP. lunataL. arenariaは姉妹種として示された。また,本研究では被殻を裏打ちするdiatotepumの全形を観察した。Diatotepumは半被殻全体を裏打ちする袋状の構造体であり,トルイジンブルー水溶液によって染色された。透過型電子顕微鏡(TEM)観察では,殻面を裏打ちする部位で胞紋の模様と一致する高電子密度の点状紋様が,また,半殻帯を裏打ちする部位では各帯片の内側の縫い目と一致する線状の紋様が観察された。

  • 柳沢 幸夫, 田中 宏之
    2016 年 32 巻 p. 11-23
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    Mesodictyon japonicum Yanagisawa & H. Tanaka is an extinct centric diatom described and reported from upper Miocene marine sediments. The species had been presumed to be a freshwater species because of the occurrence pattern similar to that of accompanying Aulacoseira species which may be transported from inland lakes to marine environments. However, the possibility that this species was a marine species can not be completely ruled out. In the course of continued study, we have found the mass occurrence of M. japonicum with other freshwater diatoms in the lacustrine deposits of the late Miocene Takatama Caldera (8–9 Ma in age) in Koriyama City, Fukushima Prefecture, and thus confirmed that this species was a freshwater diatom.

  • 三村 武士, 大塚 泰介
    2016 年 32 巻 p. 24-32
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    滋賀県米原市の山室湿原の珪藻植生を調査した。本湿原は谷底に発達した中間湿原で,暖温帯に位置するにもかかわらず薄い泥炭層をもつミズゴケ湿原である。調査を2007年4月21日に行った。水質は弱酸性(pH 5.3–5.8)で低電解質(2.8–3.4 mS m-1)だった。維管束植物およびミズゴケの表面,および泥炭の表層から計24本の試料を得た。22属65種(うち6種は未同定)の珪藻を分類し,顕微鏡写真付きのチェックリストを作成した。種数が最も多かったのはEunotia(16種)で,Pinnularia(8種)がこれに続いた。

  • Marinês GARCIA, Walter Mareschi BISSA
    2016 年 32 巻 p. 33-37
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    南大西洋の化石および現生試料からThalassiosira laevis Gao & Chengが初めて見つかった。本種は東シナ海に面した中国のアモイ港より記載された希少浮遊種である。本種はブラジルサンパウロ州沿岸域における完新世後期群集に含まれ,約5千年前には53%の優占度を示した海水準変動の指標種として重要な化石珪藻である。現生試料においては,リオグランデ・ド・スル州に散在するプライアアズール,トラマンダイやカッシーノといったビーチのプランクトン試料や低砂試料から,またサンタカタリーナ州の湾内ビーチであるジンブロスで採集された低砂試料などから希少種として見出されている。これらの分布データは,本種が沿岸域や河口域に広く生育していることを示している。

  • 田中 宏之, 南雲 保
    2016 年 32 巻 p. 38-46
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    Gomphopleura属の3分類群,G. frickei, G. poretzkiae, G. cf. nobilisが北海道瀬棚町に分布する太櫓層嗣内部層(前期中新世淡水成層)から見出された。G. frickeiは本層から見出され記載された種で (Fricke 1904),他地域からは未だ報告されていない分類群である。G. frickeiG. poretzkiaeは殻面観において楔形であるが,G. frickeiは中央部がほぼ平行,G. poretzkiaeは膨らむ。G. cf. nobilisは上下ほぼ対称である。走査電顕による観察ではG. frickeiG. poretzkiaeは胞紋外側がC字形開口,殻面/殻套境界は肥厚して殻面の胞紋列は殻套へ連続しないが(頭部と足部を除く),G. cf. nobilisの胞紋はスリット状の開口で,殻面/殻套境界には肥厚が無く(例外もある),殻面の胞紋列は殻套へ連続していることで異なっていた。

  • 小島 隆宏, 齋藤 めぐみ, 岡田 誠
    2016 年 32 巻 p. 47-55
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    栃木県に分布する中期更新世の湖成堆積物である塩原層群宮島層から産出した新種化石珪藻Stephanodiscus akutsui sp. nov.を記載した。本種は殻面が円形で同心円状に波打ち,殻套は薄い。殻縁部の束線は2~3列の胞紋からなる。殻面有基突起は0~2つで2または3個の付随孔を伴い,唇状突起は1つである。また,しばしば刺を用いて鎖状に連結していることで特徴づけられる。これらの形態学的特徴の組み合わせは他種と一致しない。よって,著者らは本種を新種として提案する。

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