Dental Materials Journal
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8 巻, 2 号
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  • 大川 周治, 松川 卓功, 長澤 亨, 津留 宏道
    1989 年 8 巻 2 号 p. 129-134,283
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    近年,ポリオレフィン系高分子を主成分とする新しい義歯床用軟質裏装材Mが開発された。このポリオレフィン系高分子化合物は化学安定性に優れており,従来の軟質裏装材に代わる新素材として注目される。このMを有床義歯装着者28名に対して裏装し,約2年6ヵ月後の予後観察を行った。その結果,約2/3の症例が2年以内に再裏装が必要となったが,6名は現在なお材質の劣化を認めることなく使用を継続しており,生体安全性はもとより,長期間の使用にも耐え得る材質であることが示唆された。再裏装の必要性が生じた主な原因としては,劣化もしくは不適合による咀嚼時疼痛の再発,および裏装による義歯床の機械的強度の低下などが考えられる。したがって,患者に対する義歯洗浄剤使用による義歯の洗浄指導の徹底と,裏装後の義歯床の機械的強度に関しては,十分考慮する必要があると考えられる。
  • 山下 隆史, 伊藤 和雄, 和久本 貞雄
    1989 年 8 巻 2 号 p. 135-140,283
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    水銀を用いない歯科用金属成形材料として試作開発されたガリウム系合金の臨床応用の可能性を検討するために,この試作合金による大臼歯,または小臼歯咬合面のI級修復物について,1年間の臨床経過を経時的に観察した。
    今回用いた試作合金は,Ag, Sn, Cu, Pdから構成された球状粉末合金とGa, In, Sn, Ag系液状合金とを市販のアマルガムミキサーによって練和し,従来のアマルガム修復に準じた手法によって填塞した。
    その結果,この試作合金は,口腔内で1年を経過すると,観察した17症例すべてに,多かれ少なかれ変色,表面粗れ,辺縁破折などが観察され,以前筆者らが報告した高銅型アマルガム合金の臨床経過と比較しても,この試作合金を直ちに高銅型アマルガムに代用させるには,今後さらに改良の必要があることが判明した。
  • 藤光 健, 加藤 裕正, 伊藤 和雄, 和久本 貞雄
    1989 年 8 巻 2 号 p. 141-146,284
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    市販の各種コンポジットレジンの象牙質窩洞における窩壁適合性を検討するために,EDTAによって清掃し,35% HEMA水溶液によるデンティンプライマー処理を施した象牙質円柱窩洞に,市販のボンディング材を塗布後各種市販コンポジットレジンを填塞し,窩洞適合性を検討するとともに,これらコンポジットレジンの焼却前後の重量を計測することによって得られる,無機質フィラー含有量との相関を検討した。
    その結果,無機質フィラーが75 wt%以下のコンポジットレジンでは,ギャップが0.09%以下と比較的良好な窩洞適合性を示したのに対し,75 wt%以上になるとギャップが0.01%を示すコンポジットレジンがある反面,0.43%と極めて大きな値を示すものもあった。すなわち,無機質フィラー含有量が多くなるに従い,窩洞適合性が劣化する傾向がみられたものの,両者間には,統計的に有意な相関関係は見い出せなかった。
  • 即時変色性レジンの開発
    中里 淳一, 伊藤 和雄, 和久本 貞雄
    1989 年 8 巻 2 号 p. 147-154,284
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    可視光線照射により即時に脱色する,各種有機色素を含有した試作可視光線重合型レジンの物理学的特性の変化を,吸光光度計を用いた光吸収特性の分析と,微小硬度計による重合深度の計測によって検討した。
    試作レジンは,Bis-GMAおよびTriethleneglycol-dimethacrylateを等量混和することによって調製し,重合開始剤および還元剤としてCamphorquinone,Dimethyl-p-toruidineを添加して作製した。
    その結果,Methylene blue, Nile blue Aを含有した試作レジンは,色素を加える事によって重合深度がわずかに低下したものの,重合開始直後の脱色性に優れ,充填時に特に辺縁部の過剰充填を容易に識別でき,ひいては過剰溢出の破折による二時ウ触を防止する事が容易となるという利点から,臨床応用も可能であると考えられた。
  • 早川 徹, 遠藤 浩, 長塚 明久, 堀江 港三
    1989 年 8 巻 2 号 p. 155-163,284
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    アルデヒドとしてグルタルアルデヒド,o-フタルアルデヒド,ホルムアルデヒドを用いて,それぞれのアルデヒドとMTYA, HEMAからなるプライマーを調整して,象牙質とコンポジットレジンとの接着性を調べたところ,グルタルアルデヒドが接着性を向上させることがわかった。また,HEMAの代わりにエタノールを用いると接着性が低下することも判明した。さらに,グルタルアルデヒドの濃度を変えてプライマーを調整し接着性を調べたところ,リン酸エッチング,クエン酸エッチングの場合にはグルタルアルデヒドの濃度によって接着強さは影響を受けた。
    また,サーマルサイクル試験を行ったところ,リン酸エッチングの場合,2000回後で接着強さが大きく低下した。
  • 石川 恵一, 伊藤 成光, 畑 好昭
    1989 年 8 巻 2 号 p. 164-174,285
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    2種類の粘稠度が異なるリン酸エッチングエージェントを用いて牛歯から製作した試料およびガラス繊維試料の窩洞内のトータルエッチングを行い,リン酸の象牙質透過後のpH変化と粘稠度の影響を調べた。
    その結果,1分間のエッチング後,洗浄を行ってもリン酸は細管内に残留し,微量ながらも象牙質を透過することが認められた。また,透過する際に生ずるエッチング効果によりリン酸は中和され,強酸性が減弱された。
    しかしガラス繊維試料ではリン酸の強酸性は持続した。
    透過成分の定量分析を行ったところ歯質試料の場合,歯質成分由来のCa, MgおよびZn元素がリン酸由来のPと同程度の濃度検出された。一方,ガラス繊維試料ではPのみが高濃度検出されたが,他の三元素はほとんど検出されなかった。以上の結果はエッチングエージェントの粘稠度の違いによる差は認められなかった。
  • 宮川 修, 渡辺 孝一, 大川 成剛, 中野 周二, 小林 正義, 塩川 延洋
    1989 年 8 巻 2 号 p. 175-185,285
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    燐酸塩を結合剤とし,アルミナ/シリカを耐火材とする埋没材の鋳型に市販のチタンを鋳造した。鋳造体の表層構造をEPMAによって調べ,それが次の4層からなることを明らかにした。すなわち,第1は反応層(焼き付き層),第2は酸素とAlで安定化したα相の層,第3はSi, P, C及び酸素が所々に濃縮された層,そして第4は針状または板状結晶の集合体である。鋳造体の体積が大きいほど,また鋳型温度が高いと,各層が厚くなり,針状結晶も粗大になる。
    この多層構造は鋳込みの際に埋没材が溶湯に巻き込まれてできたものではないことは実験結果から明らかである。埋没材の還元されやすい成分の分解によって生じた元素が鋳造体の内部へ拡散してできたものと考えられる。
  • -第2報- 衝撃特性に及ぼす温度と残留モノマーの影響
    奥 淳一
    1989 年 8 巻 2 号 p. 186-193,285
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    PMMAレジンの粘弾性的性質は,試料の温度,試料中に含まれる残留モノマー量によって大きく変化する。本報で,PMMAレジンの衝撃特性に及ぼす温度,残留モノマーの影響を衝撃試験,クリープ試験,残留モノマー測定等を行って調べ検討した。
    加熱重合レジン,常温重合レジンの衝撃特性は,温度が上昇するにつれて(23℃~60℃),明らかに減少した。また,常温重合レジンでは,重合後の時間経過にともなって残留モノマー量が著しく減少した。この減少にともない衝撃特性値は変化するが,両者の間には明らかな相関関係がみられた。相関係数は衝撃強さに関しては0.92,レジリエンスに関しては-0.95であった。この結果は重合後の時間経過に伴い(残留モノマーの減少に伴い),新しい分子鎖を生じ,そのために弾性率の向上がみられたと考えられよう。この変化はクリープ試験結果からも十分推測できた。
  • 千木良 尚志, 真鍋 厚史, 伊藤 和雄, 和久本 貞雄, 早川 徹
    1989 年 8 巻 2 号 p. 194-199,286
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    Glyceryl methacrylate水溶液の,dentin primerとしての効果を象牙質円柱窩洞内での,可視光線重合型コンポジットレジンのコントラクションギャップの計測と象牙質平面に対する引っ張り接着強さの計測によって評価した。被着象牙質面は,pH 7.4に調整された0.5M濃度のEDTAによって歯面清掃を行った後,5%から45%までのGlyceryl methacrylate水溶液を塗布し,その後市販のリン酸エステル系ボンディング材を併用して市販の光重合型コンポジットレジンを填塞または接着させた。また,コントロールとして35% HEMA水溶液と5% glutaraldehydeを含む35% HEMA水溶液をprimerとして用い,同様の計測を行った。
    その結果,25%と35%の濃度のGlyceryl metha-cryiate水溶液をdentin primerとして用いた場合に,全試片でギャップが全く認められず,完全な窩洞適合性が得られた。また,24時間後には,25%および35%水溶液で,それぞれ平均19.6および18.7MPaの平均接着力が得られた。
  • 接着に対するクレンザーの影響
    柳川 敏夫, 伊藤 和雄, 和久本 貞雄
    1989 年 8 巻 2 号 p. 200-205,286
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    著者らは,既に前報にて象牙質窩洞に対しては完全な適合性を有するコンポジットレジンシステムを開発し,報告してきた。本実験においては,このシステムをエナメル質象牙質双方に窩縁を有する窩洞に応用するため,これら2種類の窩壁に同時に有効な窩洞清掃法の検討を行なった。窩洞清掃としては,EDTAまたは10-3溶液(3%塩化第2鉄を含有する10%クエン酸水溶液)による一括処理法,さらに,コントロールとして,38%リン酸ゲルとEDTAによるエナメル質,象牙質塗りわけ法を用いた。なお,窩洞清掃法以外は,象牙質窩洞で完全な適合性の得られたシステム,つまり,プライマーとして35%HEMA水溶液を用い,4-METAを含有する試作ボンディング剤を塗布し,UDMAをベースとする試作コンポジットレジンを填塞硬化させる方法を用いた。なお,これら窩洞清掃法がレジンの接着性に与える影響は,エナメル,象牙質双方に窩縁を有する円柱窩洞内での,maximum contraction gapの測定および平坦な歯面に対するtensile bond strengthの測定により評価した。その結果,10-3溶液で5秒間処理した場合に最良の接着性が得られ,窩洞全体を同時に処理しうる清掃法の可能性が示唆された。
  • 平 雅之, 若狭 邦男, 山木 昌雄, 田中 伸征, 新谷 英章
    1989 年 8 巻 2 号 p. 206-214,287
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    切削加工が容易な快削性セラミックスの加工性の原理の一つは,へき開性を有する結晶を素材内部に分散させ加工時に発生したクラックが結晶のへき開性により進展を止められる機構を利用したものである。歯科領域においても最近CAD-CAMによる補綴物製作の試みがなされている。本報では,快削性セラミックスの歯科応用についての基礎的研究の一環として,8種類の市販快削性セラミックスとVitaの焼付陶材用shade guideを用いて色彩色差計による色彩学的検討を行なった。
    その結果,長石陶材系のVita shade guideに比較して,いずれの快削性セラミックスも強い不透明感を与える白色を呈することが明らかとなった。今後,産業用に開発された快削性セラミックスを改良して歯冠修復材料として利用するためには,母相と分散相からなる微細構造を変化させ照度(L*)を大幅に下げる必要のあることが示唆された。
  • -第3報-架橋ポリマーの耐衝撃性
    奥 淳一
    1989 年 8 巻 2 号 p. 215-222,287
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    6種類の架橋剤を用いて,加熱重合したアクリル系義歯床用レジンの耐衝撃性を,試作衝撃試験機(第1報,第2報)を用いて調べた。また,このレジンのクリープ挙動,吸水性を調べ,衝撃特性値(衝撃強さ・レジリエンス・靭性)との関係を検討した。メタクリル酸メチルモノマーに対する各架橋剤濃度(2mol%から10mol%範囲で)が高くなるにつれて,重合体の衝撃強さ・靭性値はわずかに低下する傾向を示したが,レジリエンスには変化がみられず,(4.8±0.2)×10-3Jの安定した値を示した。エチレングリコールジメタクリレート系(EDMA, Di-EDMA, Tri-EDMA, Tetra-EDMA)モノマー中の2官能基間の鎖(-CH2-CH2-O-)nにおいて,反復度数(n)の増加にしたがって衝撃強さおよび靭性値は幾分上昇する傾向を示した。また,架橋剤濃度2mol%の試料間では,反復度数(n)の増加にともなってクリープコンプライアンス,吸水率は増加した。
  • 有川 裕之
    1989 年 8 巻 2 号 p. 223-235,287
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    ねじれ自由減衰型粘弾性測定装置をもちいて人歯牙象牙質およびエナメル質の動的弾性率を測定した。
    象牙質の弾性率は約50~100℃において,水分の散逸によると思われるわずかな増加がみられた。損失率は約75℃付近にピークが観察された。一方,エナメル質では温度による弾性率および損失率の変化はほとんどなく非常に安定している。60個の歯冠部象牙質試料のずり弾性率の平均は8.70×1010dyn/cm2であった。同一歯牙における歯冠部象牙質と歯根部象牙質の値に明確な差異はみられなかった。40個のエナメル質試料の値の平均は3.10×1011dyn/cm2であった。エナメル質は象牙質に比べ約3~5倍高い弾性率を示し,これは理論値とほぼ一致した。またエナメル質の損失率は象牙質に比べ低い値を示した。
    象牙質,エナメル質ともに弾性率の値と歯牙の履歴(性別,年齢,部位)との間に明確な相関はみられなかった。
  • 電位差滴定からみたカルシウム共存下におけるセメントポリマーの高分子電解質挙動
    飯岡 淳子, 荒木 吉馬, 松田 浩一, 大野 弘機
    1989 年 8 巻 2 号 p. 236-242,288
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    種々な濃度のカルシウムイオンが共存するポリアクリル酸およびポリカルボン酸系セメントから分離したポリマー水溶液の電位差滴定をNaOH溶液で行った。その結果,これら高分子電解質は,カルシウムイオンが共存しない場合にはいずれも弱酸的挙動を示した。ところが,ポリマー中のカルボン酸基の濃度に対して1/2当量以上カルシウムイオンを共存させると,各ポリマーは強酸型の挙動を示した。つまり,このことはアルカリによってカルボン酸を中和してゆくと,解離したカルボキシレートイオンが共存するカルシウムイオンと強く結合するを意味している。
    したがって,このような挙動は,セメントと歯質の間で起るとされる化学的接着の機構として有力なものと考えられる。
  • 藤井 孝一
    1989 年 8 巻 2 号 p. 243-259,288
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    義歯床用材料(PMMA)に関して,曲げ疲労試験及び引張疲労試験を行った。さらに引張疲労試験に伴う粘弾性と引張特性の変化を調べた。
    その結果,疲労試験後の破面の比較では,曲げ疲労による破面は,引張側の表面からクラックが開始し,その後のクラックの進行を表わすstriationが観察され,破壊にいたるという様相を示す。一方,引張疲労の場合にも類似の傾向が認められる。
    疲労に伴う粘弾性の変化については,疲労が進むと貯蔵弾性率(E')は,測定されたすべての温度領域で低下する。一方,損失弾性率(E”),損失正接(tanδ)はわずかづつ増加する傾向を示した。また,弾性率,引張強さ,靭性などは,104回の繰り返し数で,すでに低下を示していた。これらの結果は,疲労に伴うクラックの発生が材料の劣化を招いたものと考えられる。
    義歯床用材料として使用されている4種類の市販品の疲労特性を調べた。流し込み型レジンの疲れ強さは加熱重合型より小さく,材料間で大きくことなる。このばらつきの一因として,材料組成の違い,未反応物質の量の違いなどが考えられる。
  • 鷹股 哲也, B. Keith Moore, Varoujan A Chalian
    1989 年 8 巻 2 号 p. 260-270,289
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/25
    ジャーナル フリー
    エピテーゼ用材料はその使用目的から,顔面皮膚との色調の調和,皮膚類似性の柔軟性と自然感,生体親和性と物理化学的な安定性,成形が容易で彩色に優れていることなどの諸性質が必要とされる。特に,顔面補綴では,機械的な劣化以上に,変色が原因で再製作を余儀なくされる場合が多いといわれる。変色の要因あるいは原因はいろいろ考えられるが,これらを検討するには,着色していないベースポリマーと着色・彩色の施されているエラストマーについてそれぞれ考慮しなければならない。本研究では,着色・彩色のされていないベースポリマー自体の変色について,色彩の変化を測定することにより,色彩学的な観点から考察する目的で6か月間屋外直接暴露試験を行い,特に太陽光線の影響について検討した。その結果,常温加硫シリコーン,加熱加硫シリコーン共に,太陽光線の影響よりも,経日的な影響が強い傾向が示唆された。
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