Dental Materials Journal
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9 巻, 1 号
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  • Paul F. HOGAN, Toshiko MORI
    1990 年 9 巻 1 号 p. 1-11,121
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    マイクロ波による義歯作製法を検討する一手段として,マイクロ波照射下での連続温度測定を試みた。クロメルーアルメル熱電対をインコネル細管中に封入することにより,熱電対への電磁波障害を除去することができた。
    フラスコ内の水(50ml)の温度上昇を500Wと50Wの条件下で測定し.水銀温度計による測定の結果と比較した。500Wでは,水の沸騰は1分以内に観察されたが,熱電対法により,約45秒に100°Cに達していることが明らかとなった。50Wでは,3秒間のマイクロ波照射が32秒の周期でおこり,加熱開始後約6分に100°Cを記録したが,これは短時間の照射のため肉眼観察や水銀温度計ではとらえられず,水の沸騰が観察されたのは,加熱開始後約10分であった。
  • 福島 忠男, 堀部 隆
    1990 年 9 巻 1 号 p. 12-18,121
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    各種メタクリレートの10%クエン酸-3%塩化第二鉄溶液処理象牙質への接着性に及ぼす水の影響について検討するために,2mol%の親水性モノマー(2HEMA, 3MPA)および疎水性モノマー(PylEM, NEM)を含む4種のMMA-TBB系レジンを調製し,水中浸漬1日,1ヵ月,6ヵ月,1年後に30秒間10-3処理した牛歯象牙質への接着力を測定した。さらに,モノマーの構造と接着力の関係を検討した。
    モノマーの構造と接着力の関係はいずれの条件でも顕著に認められなかったが,1年後の接着力はいずれも著しく減少していた。
    1日間水中浸漬した試料の接着力測定後の破壊パターンは,主にレジンやデンチンの凝集破壊であったが,1年水中浸漬した試料の場合は,接着界面の剥離や樹脂含浸層の破壊が多く認められた。
    従って,接着力の減少は,主に水による樹脂含浸層中のコラーゲンの脆弱化や樹脂含浸層内外のレンジの劣化の差に基づくものと考えられる。
  • 山内 六男, 山本 宏治, 若林 学, 川野 襄二
    1990 年 9 巻 1 号 p. 19-24,121
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    エメリペーパー400番研磨,バフ研磨および表面滑沢硬化処理を行った床用レジンへのStreptococci, Blackpigmented BacteroidesおよびCandida albicansの付着について検討した。
    S. sanguisおよびB. gingivalisは,他の供試菌に比べ床用レジンへよく付着していた。床用レジンの表面性状別にみた場合,S. oralis, B. gingivalis C-101およびB. intermedius C-001は,表面粗さの最も大きい400番研磨面への付着が表面粗さの小さいバフ研磨面および表面滑沢硬化処理面よりも多く,S. sanguisでは表面滑沢硬化処理面への付着が少なかった。S. mitisおよびC. albicansでは表面滑沢硬化処理面への付着が多かった。その他の供試菌では,表面粗さと細菌付着との間に有意な関連はみられなかった。
    一方,S. sanguis, B. gingivalis C-101およびC. albicansの各研磨面からの脱離性についてみた場合,C. albicansはエメリペーパー400番研磨面からの脱離率が悪かった。これらの結果から,デンチャー・プラークにとっては,義歯床表面を滑沢することが必要であることが示唆された。
  • 木南 秀雄, 杉村 正仁, 作田 守, 岡崎 正之, 木村 博
    1990 年 9 巻 1 号 p. 25-35,122
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    矯正用ブラケットのディボンディング時にはレジンが歯面に残留しないことが望ましい。これを目指して新しい金属製ブラケットを試作し,その基本的特性について検討した。ブラケットはステンレス製で基本的な外形は直径3.8mm,高さ1.8mmの円筒形である。ツインタイプのウイングと0.018 inch (0.457mm)のスロットを有しており,レジンはベース辺縁の小さな折り込み形態によって保持される。3種類の代表的なレジンを用いて,ブラケットーレジン間における単純引張り強さを測定したところ,平均80kgf/cm2以上の強さを有していた。ヒト抜去歯におけるディボンディングでは,paste-paste typeのheavily filled resinではレジンの歯面残留はほとんどみられなかった。これらの結果から,この新しいブラケットに適したレジンを選択した場合には,十分な接着強さを有しながら,ディボンディング時のレジンの歯面残留が極めて効果的に抑制されることが示された。
  • 原嶋 郁郎, 平澤 忠
    1990 年 9 巻 1 号 p. 36-46,122
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)水溶液のプライマー効果を検討するため,象牙質に対する吸着を検討した。
    HEMAの吸着には,次のような特徴が認められた。
    (1) 平衡到達が遅いこと(72時間),
    (2) 直線的な吸着等温線を描き,急激にプラトーを示すこと,
    (3) プラトーでは2.5wt%の大きな吸着量であったこと,
    (4) 等温線のごく初期は垂直な傾きをもつこと。象牙質粉末の表面にはHEMA吸着後にも形態的な変化はなかったが,加熱すると無吸着象牙質に比べて耐酸性が向上した。また,吸着象牙質をSEM観察すると,耐酸性象牙質層の形成が認められた。
    得られた結果を総合すると,HEMAは吸着中に象牙質実質内に含浸するものと考えられた。
  • 浅岡 憲三, 桑山 則彦
    1990 年 9 巻 1 号 p. 47-57,123
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    パラジウム基の焼付用合金の基本成分であるPd-Ag, Pd-Cu, Pd-Co 2元合金の熱膨張係数の温度依存性について調べた。その結果,Pd-Ag (Ag<50%), Pd-Cu (Cu<30%)合金の室温から600°Cまでの温度での実熱膨張係数が温度の一次式α=C1+C2Tで表されることが明かにされた。また,温度の一次式の定数C1とC2が添加元素含有量の一次式で表示できた。すなわち,上記の任意の組成の合金について,任意の温度,温度区間での熱膨張係数が,ここで示された結果を利用して推定できることが明かにされた。
    Pd-Cu合金の規則-不規則変態(一次相変態),Pd-Co合金の磁気変態(二次相変態)と熱膨張係数の関係について調べ,相変態前後の熱膨張係数の特徴が明かにされた。そして,合金の相変態を利用することにより,陶材/合金補綴物中の残留応力が制御でき,相変態による合金の強化と残留応力を利用した陶材の強化を同時に図る陶材/合金システムを作成することの可能性が示唆された。
  • 石川 邦夫, 今 政幸, 天眞 覚, 桑山 則彦
    1990 年 9 巻 1 号 p. 58-69,123
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ハイドロキシアパタイト(HAP)粉末の水溶液中における湿式合成において,HAP粉末の物性に及ぼす合成温度および二酸化炭素の影響を検討した。二酸化炭素が合成系に存在しない場合,合成温度が高くなるとHAP粉末の結晶性がよくなる。一方,合成温度が低い場合,カルシウムとリンの比(Ca/P)が小さいHAP粉末が得られる。FT-IRで測定したリンと水酸基の比(P/OH)はCa/Pが異なるHAP粉末でも一定であり,このことから低い温度での合成ではCa欠損HAPが生成していることがわかった。100°Cで合成したCa欠損のないHAP粉末は1200°Cで3時間安定であったが,40°Cで合成したCa欠損HAP粉末は800°Cで一部リン酸三カルシウムに分解した。
    一方,合成中に二酸化炭素が存在するとAタイプおよびBタイプの炭酸含有HAPが生成した。低い温度で合成した場合,炭酸カルシウムも副生した。
  • 河野 文昭, 浅岡 憲三, 永尾 寛, 松本 直之
    1990 年 9 巻 1 号 p. 70-79,123
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    義歯床下粘膜が粘弾性体であることを考慮して,有限要素法を拡張した粘弾性解析法を用いて,3種類の異なる荷重条件下での義歯床下組織に生じる応力分布の経時的な変化を計算した。
    その結果から,時間経過にともなう粘膜の粘性流動および荷重点は義歯床下組織の応力の分布状態を決定する重要な因子であることが示された。そして,義歯床下組織の応力の不均衡を改善する方法について議論した。義歯床下組織の応力は,咬合力を口蓋方向に変位させることによって最も均等に分散した。このことは,Poundの提唱するLingualized Occlusionを支持するものであった。
  • 右近 晋一, 松浦 智二, 勝俣 辰也, 赤木 幸一, 緒方 稔泰, 片山 隆昭
    1990 年 9 巻 1 号 p. 80-90,124
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    重合後の義歯掘り出し時の石膏模型分割法に対し,水和膨張性物質を用いた静的分割法を確立するために本研究は行われた。3種類の分割剤充填孔のデザインを考察し,静的分割法による石膏模型の分割時に,レジン床義歯内に発生する動的歪測定から各デザインの安全性を検討した。
    その結果タイプIIのデザインは最も安全であり,かつ効果的であった。動歪の最大値の棄却限界から推定された上限値は,上顎義歯では2.9×10-3下顎義歯では3.4×10-3であった。この値は床用レジンの比例限に相当するcritical strain (11.5×10-3)よりはるかに低く1/3程度であり,床用レジンの弾性限度内の挙動であることから破折,変形の危険のない安全な方法とみなすことができる。
  • 木村 博, 洪 純正, 岡崎 正之, 高橋 純造
    1990 年 9 巻 1 号 p. 91-99,124
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    チタンは耐食性が良く,軽量で,高強度,しかも生体親和性に優れている。一方,通常の金属焼付陶材による修復物は審美性が良く,優れた機械的性質を有するため,歯科界では広く使用されている。本研究では,ポーセレンーチタンの接着強さおよび機械的性質に対する熱処理の影響を調べるため,真空中と大気中で,600から1000°Cまでの熱処理条件を変えて実験を行った。X線回折では,温度の上昇とともに,純チタン表面のα-Tiの相対的ピ-ク強度が低下したが,TiO2のピークは逆に増加した。チタンのビッカース硬さは温度の上昇とともに増加し,特に900°C以上の場合には硬さが急増した。熱処理しなかったポーセレンーチタン接合部の引張-せん断強さは最も高い値を示したのに対し,1000°Cで熱処理した場合は最も低い値を示した。金属顕微鏡で観察した結果,1000°Cで熱処理した場合の界面に最も厚い酸化層が観察された。以上の結果,ポーセレンーチタンの接着強さはチタン酸化膜の増加により低下する傾向があるため,通常の金合金焼付陶材使用時のディギャシングはポーセレンー純チタンの場合には適用できないことがわかった。
  • 藤沢 盛一郎, 門磨 義則, 菰田 泰夫
    1990 年 9 巻 1 号 p. 100-107,124
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    メタクリレート類の生体膜損傷作用のメカニズムを明らかにするため,生体膜モデルとしてりん脂質(DPPC)リポソームを用いて,メチルメタクリレート(MMA),エチレンジメタクリレート(EDMA),トリエチレンジメタクリレート(TEGDMA)の相互作用を1H及び13CNMRで研究した。13Cケミカルシフトの変化から,メタクリレートの二重結合付近のC=C-C-Oの部分がりん脂質と強く相互作用することが明らかになった。特にジメタクリレートのEDMA及びTEGDMAのヶミカルシフトの変化がモノメタクリレートのMMAより強かったことから,メタクリレートの二重結合の数と疎水性の大きさがこのことに関与していると考えられた。DPPC/コレステロール/TEGDMA系リポソームの1H NMR実験から,脂質二重層の中でTEGDMAの流動性が37°Cで高まることが明らかになった。
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