SD系ラットに,
14C-ロサルタンまたはロサルタンを10mg/kg単回経口または2~3mg/kg静脈内投与し,その生体内動態について検討した.
1.
14C-ロサルタンの経口および静脈内投与後168時間までの雄ラットにおける尿中排泄率はそれぞれ投与量の4.4および5.9%,糞中排泄率はそれぞれ投与量の94および93%であった.また,この時点の体内には放射能は認められなかった.
2.
14C-ロサルタンを雌雄ラットに経口および静脈内投与したのちの全血および血漿中放射能濃度推移に性差はみられなかった.
3.ロサルタンの15~135mg/kgの投与量におけるバイオアベイラビリティは雄ラットで31.5~38.2%であった.ロサルタンは雄ラットにおいて投与量45mg/kg以上で代謝の飽和が示唆された.
4.
14C-ロサルタンを経口投与後48時間までの胆汁への累積放射能排泄率は雄ラットで投与量の62.2%,雌ラットで59.5%であった.また静脈内投与後48時間までの雄ラット胆汁中への累積放射能排泄率は投与量の95,5%であった.経口投与後8時間までに排泄された雄ラット胆汁の腸肝循環率はその投与された胆汁の放射能の約16%であった.
5.
14C-ロサルタンを経口投与すると放射能の多くは消化管内容物,肝臓および膀胱内尿に分布後,経時的に減少し投与後48時間には腸内容物に低い放射能が認められるのみであった.一方,組織内放射能濃度は腎臓および肝臓が高い値を示したが,心臓,気管および膀胱は血漿中と同程度かまたはそれ以下であり,副腎は血漿中の14%以下,大動脈は21%以下であった.また,各組織からの放射能の消失は速く,投与後96時間では肝臓がその最高濃度の1%以下に減少し,他の組織は検出限界以下であった.
6.
14C-ロサルタンを雄ラットに経口投与後の血球移行率は3.5%以下,血漿蛋白結合率は99%以上であった.
7.
14C-ロサルタン注入後3時間の雄ラットにおける平均吸収率は胃,十二指腸,空腸および回腸において,それぞれ19.8,32.1,89.6および51.4%であった.
8.
14C-ロサルタンを経口投与後の雌雄ラット肝臓中に未変化体,M-1,M-2,M-4およびM-5が,雄ラット腎臓中に未変化体,M-1,M-2およびM-4が確認された.雌ラット腎臓中にM-2は検出されず,M-4の濃度は雄ラットに比べかなり低い値を示した.未変化体およびM-4の組織内濃度/血漿中濃度(T/P)の比は腎臓中のM-4を除き,いずれも雌ラットの方が雄ラットに比べ大きい値を示した.
9.
14C-ロサルタンを経口および静脈内投与後24時間までの尿中放射能排泄率は雄ラットでそれぞれ投与量の3.2および4.0%,雌ラットでそれぞれ投与量の12.5および18.4%であった.経口投与後の雄ラット尿中に未変化体,M-10およびM-11が,雌ラット尿中に未変化体,M-1,M-2,M-4,M-10およびM-11が確認された.経口投与後,M-11の尿中排泄率は雄ラットで投与量の1.3%,雌ラットで0.0%であったのに対し,未変化体の排泄率は雄ラットで投与量の0.3%,雌ラットで9.1%であった.
10.
14C-ロサルタンを経口投与後24時間までに,ラット胆汁中に未変化体は雄ラットで投与量の7.8%,雌ラットで7.4%排泄され,代謝物としてM-1,M-2,M-4およびM-5が確認された.経口投与後の未変化体,M-1,M2,M-4およびM-5を合わせると,雄ラットで胆汁中全代謝物の78%,雌ラットで88%を占めた.
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