薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
11 巻, 1 号
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  • 及川 桂史, 神村 秀隆, 渡辺 隆, 宮本 郁夫, 樋口 三朗
    1996 年 11 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    125I-YM866をラットに単回静脈内投与したときの血漿中濃度,分布,代謝および排泄について検討し,以下の結果を得た.
    1.125I-YM866を静脈内投与したとき,本薬の過半量が速やかに血漿中の蛋白と2種の高分子複合体を形成し,これが血漿中における主な消失過程の一つと考えられた.血漿中の総放射能に対するTCA沈澱性放射能の割合は経時的に減少し,本薬が低分子分解物あるいは遊離の125Iへ分解代謝されることが示された.免疫反応性YM866濃度は投与後5分では総放射能濃度の約3/4を占めたが,総放射能濃度およびTCA沈澱性放射能濃度より速やかに消失した.
    2.125I-YM866を静脈内投与したとき血漿中放射能濃度はいずれの組織の濃度より高かった.高い放射能濃度を示した組織は血液,肝臓,腎臓,副腎,脾臓,肺および甲状腺であったが,いずれの組織も血漿中濃度の1/4から1/2であった.脳内濃度は血漿中濃度の1/100と極めて低かった.各組織からの放射能の消失は速やかであった.投与後の主要組織中の放射能の大部分は高分子画分であるTCA沈澱性画分に存在したが,その害拾は経時的に減少した.
    3.125I-YM866を静脈内投与後144時間までに投与した放射能の91.2%が尿中に,3.9%が糞中に排泄された.尿中に排泄された放射能のほとんどがTCA可溶性画分に存在し,ゲル濾過高速液体クロマトグラフィの結果から低分子物質として排泄されることが示唆された.
    4.125I-YM866の実験結果を125I-t-PAの報告と比較検討した結果,YM866は肝臓への移行が低いことも一因となってt-PAより高い血漿中濃度を示し,それがより強い血栓溶解作用の発現に結びついていると考えられた.
  • 及川 桂史, 神村 秀隆, 渡辺 隆, 樋口 三朗, 黒澤 敏, 神 義容, 堤 修一郎, 林 一志, 竹越 敏夫
    1996 年 11 巻 1 号 p. 11-29
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    125I-YM866をラットに0.3mg/kg7日間反復静脈内投与したときの血漿中濃度,組織内分布,代謝および排泄について検討し,以下の結果を得た.
    1.反復投与4および7日目の血漿における総放射能およびTCA沈澱性放射能濃度推移は,初回投与時とほぼ等しかった.GFC分析により,初回および反復投与後の血漿中にYM866とα2-macroglobulinの複合体,およびYM866とα2-plasmin inhibitorの複合体,YM866および低分子代謝物と推定されるピークが認められた.これらの存在比は反復投与により変動しなかった.2.反復投与後の総放射能濃度およびT/P比は,甲状腺を除きいずれの組織においても初回投与時と等しかった.組織に分布した放射能は遊離の125Iに由来する蓄積の認められた甲状腺を除き,ほとんどの組織において速やかに消失した.また,組織内放射能濃度は反復投与により影響を受けなかった.
    3.各回投与後24時間における累積投与量に対する尿および糞中への累積排泄率には反復投与に伴う変化は認められなかった.最終投与後120時間までの尿中には累積投与量の93.0%,糞中には3.0%が排泄された.GFC分析により,尿中の放射能のほとんどは低分子代謝物あるいは遊離の125Iであることが明らかとなった.
    4.以上の結果から,YM866の薬物動態は反復投与により顕著な影響を受けず,蓄積性や残留性を示さないことが明らかとなった.
  • 及川 桂史, 神村 秀隆, 渡辺 隆, 樋口 三朗, 黒澤 敏, 神 義容, 堤 修一郎, 林 一志, 竹越 敏夫
    1996 年 11 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    妊娠ラットおよび哺育中のラットに125I-YM866を単回静脈内投与し,胎児および乳汁への移行性について検討した.
    1.妊娠14日目のラットにおける胎児の放射能は非常に低く,母獣血液の4%以下であった.分布した放射能のほとんどはTCA可溶性であったことから,分布した放射能の大部分は低分子分解物あるいは遊離の125Iと考えられた.
    2.妊娠19日目のラットにおける全身オートラジオグラムでは,母獣血液に高い放射能が認められたが,胎児への放射能の移行は低かった.
    3.分娩後14日目の哺育中ラット投与したとき,乳汁中放射能濃度は母獣血漿中濃度の約1.5倍であった.乳児の胃内乳塊中濃度は乳汁中濃度とほぼ等しく,一方,乳児の血漿中および組織内濃度は乳塊中濃度の1/8以下であった.
  • 外山 誠司, 板橋 武史, 中屋 順子, 杉本 透, 三輪 昌弘, 佐野 廣
    1996 年 11 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Polaprezinc is a zinc complex of L-carnosine. Studies on the drug interaction of some antibiotics with polaprezinc in dogs were performed, because of the reported changes in the gastrointestinal absorption of some antibiotics in the presence of di- or tri-valent cations such as aluminium, ferrous and calcium ion.
    The gastrointestinal absorption of norfloxacin was significantly reduced by coadministration with polaprezinc in dogs, but that of levofloxacin and sparfloxacin not affected. The Cmax and AUC of tetracycline were slightly decreased by polaprezinc treatment. On the other hand, sucralfate, containing aluminium, significantly impaired the absorption of norfloxacin, levofloxacin and sparfloxacin. The effect of sucralfate on the absorption of tetracycline was greater than that of polaprezinc. Differeces between polaprezinc and sucralfate on the absorption of antibiotics may result from different ability of each metal ion for chelate formation with antibiotics.
    In non-fasted dogs, polaprezinc did not affect the absorption of norfloxacin, levofloxacin and sparfloxacin. The interaction of norfloxacin with polaprezinc was markedly reduced by food. The obtained results indicated that the amount of zinc dissosiated from polaprezinc decreased by pH elevation in stomach due to food intake. Sucralfate severely impaired the absorption of norfloxacin, but slightly that oflevofloxacin and sparfloxacin.
  • 白神 歳文, 島谷 憲司, 佐藤 明啓, 岩崎 一秀, 戸塚 善三郎, 秦 武久
    1996 年 11 巻 1 号 p. 45-56
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    The metabolism of omeprazole, a selective inhibitor of H+, K+-ATPase, was studied after oral administration to male rats. In addition to already reported metabolites, 10 unconjugated and 6 conjugated metabolites were isolated from the urine by using TLC and HPLC. The structures of the isolated metabolites were determined by NMR, IR and mass spectrometry. Biotransformation pathways of omeprazole consisted of the oxidation and reduction of the sulfinyl (SO) group, N-oxidation of the pyridine ring, O-demethylation of both methoxy groups, oxidation of the pyridine-5-methyl moiety, aromatic hydroxylation at the 5-position of benzimidazole, and cleavage of the molecule into pyridine and benzimidazole moieties. There was also conjugation with mercapturic acid to carbon at the 2-position of benzimidazole as well as sulfonation and glucuronidation of the hydroxy groups. Based on the structures of the identified metabolites, the metabolic pathways of omeprazole appeared to be very complicated. The tentative metabolic pathways of omeprazole in the rat are presented and discussed.
  • 富田 正俊, 白川 清美, 正木 啓二, 小西 良士, 江角 凱夫, 二宮 真一, 稲葉 厚弘, 益子 俊之
    1996 年 11 巻 1 号 p. 57-80
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    3-MC903をラットに皮下投与(2μg/kg)し,その吸収,分布,代謝,排泄,胎盤通過性および乳汁移行について検討した.
    1.雄性ラットの血漿中放射能濃度は投与後1時間にCmaxを示したのち,2から8時間までt1/22.1時間,24から120時間までt1/22.4日で消失した.雌性ラットにおいても同様な結果が得られた.また,0.4~10μg/kgの範囲では線形性が認められた.
    2.雄性ラットの各組織内放射能濃度は投与後1時間に最高濃度を示したが,24時間以降の消失は緩徐となった.
    3.雄性ラットの血漿蛋白に対する結合率は高く,その結合はin vitroでは可逆的であったが,in vivoでは経時的に不可逆的な結合が増加した.
    4.雄性ラットの尿,糞および呼気中には投与後168時間までに投与量の12.2(尿中トリチウム水として投与量の11.0%),68.5および1.3%が排泄された.雌性ラットにおいても同様な結果が得られた.胆汁中に排泄された放射能には腸肝循環が認められた.
    5.雄性ラットの血漿中未変化体濃度は投与後15分に961pg/ml(血漿中放射能の50.5%)を示したのち,速やかに減少した.主代謝物としては,MC1080,RP7およびEB1057が認められた.投与後24時間までに排泄された尿,糞および胆汁中に未変化体はほとんど認められず,主代謝物として尿中にRU1,糞中にRF19およびMC1235,胆汁中にRB11,RB5およびRB7が認められた.投与後1時間の肝臓および腎臓には未変化体の他に主代謝物として肝臓中ではMC1080およびRL7が,腎臓中ではMC1080およびRK6が認められた.
    6.胎盤通過性を検討した結果,胎児あるいは胎児組織への放射能の分布は母体血液より低かった.
    7.哺育中ラットの乳汁中放射能濃度推移は母獣の血漿とほぼ同様であった.
  • 富田 正俊, 白川 清美, 正木 啓二, 小西 良士, 江角 凱夫, 二宮 真一, 稲葉 厚弘, 益子 俊之
    1996 年 11 巻 1 号 p. 81-92
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    3H-MC903をラットに経皮投与(ODT法,5μg/100mg軟膏/body)し,その吸収,分布,代謝および排泄について検討し,以下の結果を得た.
    1.健常皮膚雄性ラットの血漿中放射能濃度は投与後24時間にCmaxを示したのち,48から168時間までt1/22.9日で消失した.損傷皮膚雄性ラットのCmaxおよびAUC(0~∞)は健常皮膚ラットのそれぞれ23および6.9倍であった.SA法においても同様な結果が得られた.健常皮膚雌性ラットのCmaxは雄性ラットとほぼ同程度であったが,t1/2およびAUC(0~∞)はそれぞれ4.5および4.1倍であった.
    2.健常皮膚雄性ラットの各組織内放射能濃度は徐々に上昇し,大部分の組織が投与後24時間から96時間に最高濃度を示し,各組織からの放射能の消失は緩徐であった.ミクロオートラジオグラムから3H-MC903の吸収は主として角質層からであった.
    3.健常皮膚雄性ラットの投与後168時間までの尿,糞および呼気中にはそれぞれ投与量の2.0,13.3および0.6%の放射能が排泄された.損傷皮膚雄性ラットの各排泄率は健常皮膚雄性ラットのそれぞれ6.2,3.7および6.8倍であった.健常皮膚雌性ラットの各排泄率は健常皮膚雄性ラットのそれぞれ2.3,2.5および2.0倍であった.また,SA法においても同様な結果が得られた.
    4.健常皮膚雄性ラットの投与後24時間の投与部位皮膚および直下筋肉中には主として未変化体が認められた.
  • 富田 正俊, 白川 清美, 正木 啓二, 小西 良士, 江角 凱夫, 二宮 真一, 稲葉 厚弘, 益子 俊之
    1996 年 11 巻 1 号 p. 93-105
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    3H-MC903を雄性ラットに7回反復経皮(ODT法,5μg/100mg軟膏/body/day)あるいは21回反復皮下投与(2μg/kg/day)し,その吸収,分布,代謝,排泄および肝薬物代謝酵素系に及ぼす影響について検討し,以下の結果を得た.
    1.反復経皮投与した際,毎回投与後24時間における血漿中放射能濃度は5回投与でほぼ定常状態に達した.7回投与後のCmaxは単回投与後の8.3倍となったが,放射能の消失は緩徐であった.尿,糞および呼気中排泄率は投与回数に伴い緩やかに上昇し,7回投与後168時間までには累積投与量のそれぞれ5.4,30.7および1.9%の放射能が排泄された.
    2.反復皮下投与した際,毎回投与後24時間における血漿中放射能濃度は9回投与でほぼ定常状態に達した.21回投与後は単回投与に比較して若干高濃度で推移した.尿,糞および呼気中排泄率は11回投与後以降ほぼ定常状態に達し,21回投与後168時間に累積投与量のそれぞれ16.6,72.0および5.6%の放射能が排泄された.
    3.反復皮下投与した際の毎回投与後24時間における組織内放射能濃度は14回投与後以降大部分の組織が定常状態となった.21回投与後では単回投与に比べ消失が緩徐になる傾向を示した.
    4.21回反復皮下投与後15分の血漿中未変化体濃度は605pg/ml(血漿中放射能量の9.8%)を示したのち,単回投与と同様,速やかに減少した.主代謝物としてはMC1080およびRP7が認められた.21回投与後0~24時間の尿および糞中の未変化体および各代謝物の割合は単回投与とほぼ同様であった.21回投与後1時間の肝臓には未変化体はほとんど認められず,主代謝物としてはMC1080およびRL7が認められた.腎臓では未変化体の他に主代謝物としてMC1080およびRK6が認められた.
    5.反復皮下投与した際の肝薬物代謝酵素に及ぼす影響はわずかであったが,可逆的であった.
  • 富田 正俊, 白川 清美, 正木 啓二, 小西 良士, 江角 凱夫, 二宮 真一, 稲葉 厚弘, 益子 俊之
    1996 年 11 巻 1 号 p. 106-118
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    雄性イヌに3H-MC903を経皮(ODT法,100μg/2g軟膏/body)あるいは皮下投与(2μg/kg)し,その吸収,代謝および排泄について検討し,以下の結果を得た.
    1.経皮投与した際の血漿中放射能濃度は投与後24時間にCmaxを示したのち,48から168時間までt1/25.5日で消失した.また,皮下投与では投与後2時間にCmaxを示したのち,4から8時間までt1/27.5時間,24から168時間までt1/23.5日で消失した.
    2.経皮投与した際の尿および糞中には投与後168時間までにそれぞれ投与量の0.6および5.3%が排泄された.皮下投与ではそれぞれ投与量の5.9および78.8%であった.
    3.イヌ(in vitroおよびin vivo)ならびにヒト(in vitro)の血漿蛋白結合率は高く,その結合は可逆的であった.結合蛋白種を検討した結果,MC903は主としてアルブミンと結合するものと考えられる.
    4.皮下投与した際の血漿中未変化体濃度は投与後1時間に最高濃度632pg/ml(血漿中放射能量の74.0%)を示したのち,8時間までt1/21.7時間で減少した.主代謝物としてはMC1080が認められた.投与後0~48時間の尿および糞中には未変化体はほとんど認められず,主代謝物として尿中にはDU1およびDU2(MC1235のグルクロン酸抱合体),糞中にはDF4およびMC1235が認められた.
  • John CALDWELL
    1996 年 11 巻 1 号 p. 119-126
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Drug action is the result of interaction with target sites, for both desired (pharmacological) and undesired (toxic) actions, modulated by the transfer processes, the pharmacokinetic variables of absorption, distribution, metabolism and elimination, by which the drug enters and leaves the body. There exist in general better relationships between effect and internal exposure, i.e. target concentrations, most frequently related to plasma concentration, than with the external dose offered. Drug metabolism and pharmacokinetic studies have essential roles to play in all stages of the research and development process, ideally being involved from the pre-nomination phase in drug discovery through to post-marketing surveillance. There occurs far more inter and intraspecies variation, in animals and humans, in the factors influencing the nature and extent of internal exposure, than in the sensitivity of drug targets and this pharmacokinetic variability is the cause of major problems in drug development. The origins of this may be termed “pharmacokinetic defects” and include, inter alia, poor absorption, very short or very long half-life, enzyme induction and high first pass effect. Failure to take these into consideration can cause expensive delay and/or failure during development and make an approved drug vulnerable in the marketplace. It will be argued that the thoughtful inclusion of new feedback loops will improve decision making at various stages during drug development. These should be based on quality metabolic and pharmacokinetic data and exploit the opportunities which the new biology offers for predicting metabolic pathways, anticipating kinetic variability and understanding mechanisms of toxicity. Such improved decision making should contribute to enhanced time- and cost-efficiency of development and ultimately lead to safer, more easily used, drugs.
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