薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
12 巻, 6 号
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  • 藤本 博昭, 今若 治夫, 駒場 淳二, 山本 隆造, 平工 誠治
    1997 年 12 巻 6 号 p. 551-565
    発行日: 1997/12/31
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    14C-ONO-5046·Naをラットに単回静脈内投与後の血漿中濃度-時間推移,分布および排泄について検討した.
    1.雄性ラットに14C-ONO-5046·Naを静脈内急速投与(0.1から100mg/kg)すると,消失相における半減期は163.61から192.72分であった.1mg/kgまではAUC0-∞は用量に比例して増加した.0.1から100mg/kgまでの投与量では雌雄間の動態パラメータに大きな差はなかった.
    2.雄性ラットに14C-ONO-5046·Naを0.1,1および10mg/kg/hrの速度で3時間静脈内持続投与した時,血漿中放射能はおよそ1.5時間で定常状態に達していた.また,定常状態の血漿中放射能濃度およびAUC0-∞は用量に依存して増加しており,消失半減期は232.29から631.63分であった.
    3.雌雄ラットに1mg/kgの用量で静脈内急速投与後30分において放射能は全身に分布し,腎臓,小腸および小腸内容物に高濃度の放射能が認められた.投与後24時間では放射能はほとんどの組織で定量限界となり,残留性を示す臓器は認められなかった.
    4.雄性ラットに14C-ONO-5046·Naを1mg/kgの用量で静脈内急速投与した後,24時間の糞および尿中排泄率はそれぞれ24.0および73.1%であった.投与後72時間までに尿と糞に排泄された総放射能は投与量の99.4%であった.一方,雌性ラットでは投与後24時間で糞および尿に排泄された割合はそれぞれ8.2および91.9%と雌雄差が認められた.
    5.雌雄ラットに14C-ONO-5046·Naを1mg/kgの用量で静脈内急速投与した時,2時間までの胆汁排泄率はそれぞれ33.0および14.0%であり雌雄差が認められた.また,投与後48時間までの累積排泄率はそれぞれ35.9および15.4%であった.胆汁中の放射能のほとんどが投与後2時間までに排泄された.
    6.14C-ONO-5046·Naを1mg/kgの用量で静脈内急速投与し排泄された胆汁を受容ラットの十二指腸内へ注入し,胆汁および尿へ回収された放射能から求めた再吸収率は雄および雌性ラットでそれぞれ38.9および42.5%であった.
  • 藤本 博昭, 今若 治夫, 駒場 淳二, 山本 隆造, 平工 誠治
    1997 年 12 巻 6 号 p. 566-575
    発行日: 1997/12/31
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    14C-ONO-5046·Naをラットに反復静脈内急速投与した時の血漿中濃度-時間推移,分布および排泄試験を検討した.さらに,ONO-5046·Naを反復投与した時の肝薬物代謝酵素活性への影響についても検討した.
    1.14C-ONO-5046·Naを1mg/kgの用量で1日1回7日間反復静脈内投与した時の薬物速度論的パラメータは単回投与時と差はなかった.
    2.雄性ラットに14C-ONO-5046·Naを1mg/kgで1日1回7日間反復静脈内投与してもほとんどすべての組織で放射能は単回投与時得られたパターンと同様,速やかに減少した.
    3.7日間反復静脈内投与期間中,投与した放射能は一定の割合で尿および糞中に排泄された.最終回投与後72時間の尿中累積排泄率は雄性ラットで71.9%,雌性ラットで93.9%であった.また,糞中累積排泄率はそれぞれ33.4%および14.3%であった.
    4.雄性ラットにONO-5046·Naを1,10および30mg/kgの用量で1日1回7日間反復静脈内投与した時,ミクロゾーム蛋白含量および薬物代謝酵素活性は変化しなかった.
  • 藤本 博昭, 今若 治夫, 中出 進, 山本 隆造, 平工 誠治
    1997 年 12 巻 6 号 p. 576-588
    発行日: 1997/12/31
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    種々実験動物でのONO-5046·Naの代謝および血清蛋白への結合を検討した.
    1.LC/MS/MSを用いラットの主代謝物M-1の構造を合成標品であるONO-EI-601と比較することで確認した.また,M-1の硫酸抱合体およびグルクロン酸抱合体の存在も確認した.
    2.雌雄ラットに14C-ONO-5046·Na(1mg/kg)を静脈内投与後の血漿中ONO-5046·Naおよび代謝物組成を検討した.投与後15分では血漿中放射能の25.5~26.5%が未変化体であり,56.6~67.5%がM-1であった.また,雄性ラットにおけるM-1硫酸抱合体の血漿中濃度は雌性ラットに比べておよそ10倍高かった.投与後2時間での主代謝物は雌雄ラットともにM-1であった.
    3.雌雄ラットに14C-ONO-5046·Na(1mg/kg)を静脈内投与後の尿中代謝物組成を検討した.尿中において未変化体は認められずほとんどがM-1であった.また,雄性ラットにおけるM-1硫酸抱合体の排泄量は雌性ラットよりおよそ3.5倍高い値であった.
    4.雌雄ラットに14C-ONO-5046·Na(1mg/kg)を静脈内投与後の胆汁中代謝物組成を検討した.胆汁中への未変化体の排泄は投与量の0.1%以下とわずかであった.M-1およびM-1グルクロン酸の排泄量に雌雄差は認められなかったが,M-1硫酸抱合体の排泄量は雄性ラットで3.5倍程度高かった.
    5.ONO-5046·Naはラット,イヌおよびヒト血漿中で安定であった.また,ラットおよびイヌ肝9000×g上清中で速やかに水解された.
    6.ラット,イヌ,ハムスターおよびヒト血清における14C-ONO-5046·Na(10μg/ml)の蛋白結合はそれぞれ99.6,96.7,99.6および99.6%であった.いずれの種においても60μg/ml以上の濃度で血清蛋白結合は低下した.
    7.雄性ラットに14C-ONO-5046·Naを1mg/kgの用量で投与後の血清中蛋白結合は投与後5および30分でそれぞれ99.79および99.07%であった.
  • 藤本 博昭, 駒場 淳二, 山本 隆造, 平工 誠治
    1997 年 12 巻 6 号 p. 589-595
    発行日: 1997/12/31
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    妊娠もしくは授乳期ラットに14C-ONO-5046·Naを単回静脈内急速投与し,胎仔および乳汁中への移行性について検討した.
    1.妊娠17日目のラットに14C-ONO-5046·Naを1mg/kgの用量で静脈内投与後30分で胎仔中の放射能濃度は母獣血漿中放射能濃度に比して0.004倍であり,投与後4時間に至ると放射能は検出限界以下となった.
    2.授乳ラットに14C-ONO-5046·Naを静脈内投与した時に乳汁中への放射能の移行が認められたが,乳汁中放射能のCmaxは349.95 ng eq./mlと血漿中濃度レベルに比べて低い値であった.
  • 増元 浩, 橋本 浩一, 伯水 英夫, 高市 松夫, 横田 喬枝, 本多 尚子, 江角 凱夫
    1997 年 12 巻 6 号 p. 596-609
    発行日: 1997/12/31
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    絶食雄性ラットに14C-ebselen(50mg/kg)を単回経口投与し,その吸収,分布,代謝および排泄について検討した.
    1.血漿中放射能濃度は投与後1時間に最高濃度(Cmax)14.78μg equiv. to ebselen/mlに達し,その後3時間まで半減期(t1/2)2.1hrで減衰した.4時間に第2のピークを示したのち,8時間までt1/2,6.6hrで減衰した.12時間に第3のピークを示したのち,減衰した.
    2.ほとんどの組織において組織内の放射能濃度は投与後2時間までに最高濃度(Cmax)を示した.白色脂肪,褐色脂肪,副腎,皮膚,肝臓,ハーダー腺および腎臓などに放射能は高濃度で分布し,大部分の組織において放射能濃度は血漿中のそれと同程度かそれ以上であった.投与後96時間にはいずれの組織においても放射能濃度は各Cmaxの0.1%以下に減衰し,放射能の組織残留性は小さかった.放射能の血球結合率は投与後30分から12時間までは4.5~28,4%であったが,以後経時的に増加し,投与後72時間では血液中放射能の大部分が血球中に認められた.放射能の血漿蛋白結合率は投与後1~24時間で92~97%と高く,投与後1時間の血漿サンプルを活性炭処理したところ,血漿中放射能濃度は処理前の14%に低下した.ブランク血漿サンプルへの0.2~20μg/mlの濃度の14C-ebselenの添加で血漿蛋白結合率は99%以上であった.18μg/ml14C-ebselenを添加した血漿サソプルを活性炭処理すると,血漿中放射能濃度は処理前の71%となった.
    3.Ebselen未変化体は尿,血漿および胆汁中いずれにおいても存在が認められていない.血漿中にebselenと血漿チオール蛋白とのselenosulfide(Se-S)結合体,S-[2-(phenylcarbamoyl)phenylseleno]protein (Se-Scomplex,ここでproteinは血漿中では主にアルプミン)が存在することが明らかとなった.14C-ebselenを雄性ラットに単回経口投与した時,dithiothreitolによる還元処理で血漿蛋白から解離する放射能量としてSe-Scomplex濃度を算出した.Se-S complexの濃度は投与後1時間にCmax,3.39μg eq. to ebselen/mlを示した後,t1/2,7.0hrで減衰した.これがselenol中間体まで還元され,selenol体が主としてSe原子がメチル化(M-7の生成)あるいはグルクロン酸抱合(M-1の生成)を受け,生成したM-7はさらに酸化代謝を受ける(M-4の生成)ものと考えられる.14C-ebselenを雄性ラットに単回経口投与した時,血漿中ではM-7,M-4およびM-1を含む極性代謝物が主として認められた.
    4.尿および糞中への放射能の排泄は投与後48時間までにほぼ終了し,96時間までにそれぞれ投与量の58.9%および40.1%が排泄された.
  • 増元 浩, 伯水 英夫, 高市 松夫, 横田 喬枝, 本多 尚子, 江角 凱夫
    1997 年 12 巻 6 号 p. 610-618
    発行日: 1997/12/31
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    雄性ラットに14C-ebselen(50mg/kg)を1日1回,最高21日間反復経口投与し,その吸収,分布および排泄について検討した.
    1.毎回投与後24時間における血液中放射能濃度は17回投与後に1回投与後の4倍を示し,定常状態に達した.21回投与後の血液中放射能濃度は投与後2時間に最高濃度(Cmax) 8.04μg eq./mlを示したのち,同4時間まで半減期(t1/2) 2.37hrで減衰した.投与後8時間に第2のピークを示したのち,同24時間から168時間までt1/2,8.64dayで減衰した.単回投与群と比較すると,Cmaxが1.6倍高く,24時間以後の減衰が緩慢であった.
    2.組織内放射能濃度は21回投与後で足関節において単回投与群のそれの7倍,肝,精巣および肺において同様に4~3倍であり,他の組織における濃度は単回投与群のそれらの2倍以下に留まった.甲状腺および血球からの放射能の減衰は他の組織と比較して緩慢であり,濃度は最終回投与後576時間においてもそれぞれの最高濃度の41%および24%であった.
    3.毎回投与後24時間までの尿および糞中への累積投与量に対する排泄率は4回投与以後,それぞれ50.2~54.7%および45.4~48.3%であり,投与回数に伴う変化は認められなかった.
  • 増元 浩, 中岡 稔, 堤 修一郎, 西山 真一郎, 市毛 一美, 唐澤 良夫, 江角 凱夫
    1997 年 12 巻 6 号 p. 619-629
    発行日: 1997/12/31
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    有機セレン含有抗酸化剤ebselenが生体内で代謝されてその分子内Se原子が無機Se化合物として遊離(無機化)するか否かを明らかにする目的で,75Se-ebselenあるいは対照の無機セレン化合物Na275SeO3を雄性ラットにそれぞれ50mg/kg経口あるいは1mg/kg静脈内投与し,血液中放射能濃度,尿および糞中排泄率を測定するとともに,全身オートラジオグラムを作製し,以下の結果を得た.
    1.血液中放射能濃度平均値は75Se-ebselen投与群では投与後1時間に最高濃度(Cmax) 29.17nmol eq./ml(8.00μg eq./ml)を示した後,投与後2時間から24時間まで半減期(t1/2)7.6hrで減衰した.Na275SeO3投与群では最初の測定時点である投与後5分に57.75nmol eq./ml(9.99μg eq./ml)を示した後,緩慢に減衰し,投与後24時間から168時間までt1/2,190hrで減衰した.
    2.放射能の体内分布をARGで検討したところ,75Se-ebselen投与群では投与後1時間で胃内容物および腸内容物にもっとも高く,ついで白色脂肪,褐色脂肪および肝臓に血液より高い放射能が認められた.全体の放射能は経時的に減衰し,投与後168時間では放射能は全く認められなかった.一方,Na275SeO3投与群では投与後168時間においても肝臓,腎臓および血液に高い放射能が残留していた.
    3.75Se-ebselen投与群では投与後168時間までに尿中に投与した放射能の53.8%,糞中に45.8%が排泄された.この時点のカーカス中には放射能は全く認められなかった.Na275SeO3投与群では投与後168時間までに尿中に投与した放射能の44.8%,糞中に8.0%が排泄された.この時点のカーカス中には投与量の41.1%残っており,残留性が認められた.
    上記成績から,ebselen投与後の生体内における分子内Se原子の無機化率は投与量の0.0%であると算出された.
  • 山本 佳男, 東 龍太郎, 東岡 喜作子, 池田 和正, 松島 英司, 永山 績夫, 川口 安郎
    1997 年 12 巻 6 号 p. 630-644
    発行日: 1997/12/31
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    1.S-1投与後の代謝物の同定については,FTに関しては既に明らかにされている以外の新規な代謝物は認められなかった.CDHPについては硫酸抱合体が同定された.OxoについてはCAが代謝物として認められた.
    2.S-1投与後のCDHPは投与後1hrの血漿中総放射能の84.3%が未変化体であり,硫酸抱合体は検出されなかった.腫瘍,肝,腎および消化管組織(胃,小腸,大腸)ではいずれの組織においてもほとんどがCDHP未変化体として存在し,硫酸抱合体はわずかしか検出されなかった.
    S-1投与後のOxoは投与後1および6hrにおいて,血漿中総放射能の10.9%および2.3%が未変化体で存在し,79.0%および46.9%はCAで占められた.組織中代謝物組成については,腫瘍内では未変化体は検出されず,肝,腎においても血漿と比べて低い割合であった.一方,消化管組織において,放射能は投与初期では消化管上部に存在し,時間とともに下部に移行した.
    3.S-1投与後のFTについてはDH-FT,3′-OH-FT,4′-OH-FT,5-FU,FUR,FUdR,FUPA,F-β-alanine,F-nucleotideが確認され,排泄量の多かった主代謝物はF-β-alanine,5-FUであった.CDHPについては,投与後0~24hrで尿中総放射能の73.61%がCDHP未変化体であり,硫酸抱合体は8.95%であった.Oxoについては,投与後0~24hrに排泄された尿中総放射能の9.92%がOxo未変化体であり,CAは31.45%であった.糞中には,投与後0~24hrで投与放射能の51.31%が排泄され,糞中総放射能の21.13%がOxo未変化体であり,CAは50.22%であった.
    4.In vitro試験の結果,FTは肝組織ホモジネートのみに明らかな代謝が認められ,F-β-alanineが経時的に増加した.CDHPは肝臓,小腸,腫瘍,血漿いずれの臓器においてもほとんど代謝を受けず,尿中に認められた硫酸抱合体は生成されなかった.Oxoは腫瘍および肝ホモジネート中で15minのインキュベートで消失し,HPLCで保持されない代謝物ピークが観察され,血漿および小腸においてほとんど代謝を受けなかった.またOxoは盲腸内容物により代謝を受けCAが生成したが,これは腸内細菌の関与によるものと考えられた.
  • Sekio NAGAYAMA, Akira MITA, Hirotoshi MASUDA, Kisako TOKO, Eiji MATSUS ...
    1997 年 12 巻 6 号 p. 645-655
    発行日: 1997/12/31
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    1. S-1, a new oral anti-tumor drug, is composed of 5-fluoro-1-(tetrahydro-2-furanyl)-2, 4(1H, 3H)-pyrimidinedione (Tegafur, FT), 5-chloro-2, 4-dihydroxypyridine (Gimestat, CDHP) and potassium 1, 2, 3, 4-tetrahydro-2, 4-dioxo-1, 3, 5-triazine-6-carboxylate(potassium otastat, Oxo) at a molar ratio of 1 : 0.4 : 1. FT which is masked compound of 5-Fluorouracil (5-FU) plays a role as an effector compound. Both CDHP and Oxo which do not have antitumor activity themselves play roles as modulators.
    After administration of S-1 or FT to tumor bearing rats, the Cmax and AUC of 5-FU were 20.8 pmol/ml and 207.6 pmol·hr/ml, in FT group and 1, 192.0 pmol/ml and 5, 203.0 pmol·hr/ml, in S-1 group. Thus, the S-1 group showed higher plasma 5-FU levels by 57 times in Cmax and by 25 times in AUC than those in the FT group. Similar to the plasma concentration, the concentration of 5-FU in tumor in the S-1 group was also higher than that in the FT group by 23 times in Cmax and by 16 times in AUC.
    2. After administration of S-1 to tumor bearing rats, the plasma concentratio n of CDHP, the reversible competitive inhibitor of dihydropyrimidine dehydrogenase (EC1.3.1.2), showed a Cmax value of 2, 054.8 pmol/ml at 30 min post-dose. The concentration of Oxo, the inhibitor of orotate phosphoribosyltransferase (EC2.4.2.10), in small intestine showed a Cmax value of 36, 156.5 pmol/g at 30 min post-dose, and showed still high concentration of 2, 813.6 pmol/g even at 3 hr post-dose.
    3. AUC of 5-FU in plasma and various tissues after a dministration of S-1 were found to be greater than those AUC after administration of UFT (combination of FT and uracil). AUC of fluoroureidopropionic acid (FUPA) and fluoro-β-alanine (FBAL) in the S-1 group were smaller than those in the UFT group.
  • 池田 和正, 増田 啓年, 吉末 訓弘, 東岡 喜作子, 松島 英司, 永山 績夫, 川口 安郎
    1997 年 12 巻 6 号 p. 656-667
    発行日: 1997/12/31
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    S-1の動物種差について明らかにするためにマウス,ラットおよびイヌを用いたS-1の動態試験を試みた.また,イヌにS-1の投与量を変えて経口投与した時の各未変化体とその代謝物についてpharmacokinetic parameterを算出し,用量依存性について検討した.1.マウス,ラットおよびイヌを用いたS-1の動態試験の結果,血漿中FTはいずれの動物種においてもCmaxに顕著な差は認められなかった.しかし,イヌのAUCは103155ng·hr/mlともっとも高く,ラットが53600ng·hr/ml,マウスは4180ng·hr/mlであった.この種差はT1/2値にも見られた.血漿中5-FUはマウスのCmax、が1081ng/mlと顕著に高く,ラットが282ng/mlともっとも低かった.しかしT1/2値はマウスがもっとも小さく,ラットおよびイヌは同程度であった.血漿中CDHPはマウスのCmaxが1815ng/mlと顕著に高かったものの,AUCはいずれの動物種においても顕著な差は見られなかった.血漿中OxoのCmaxおよびAUCはいずれもマウスで顕著に高く,ラットがもっとも低かった.
    2.ラットおよびイヌのbioavailabilityを算出した結果,FTのbioavailabilityはいずれもほぼ100%であった.一方,CDHPはラットで36.8%,イヌでは27.0%であった.またOxoではラットが3.0%に対しイヌでは9.9%であった.
    3.イヌを用いてFT,5-FU,CDHPおよびOxoの用量依存性について検討した.その結果,FT,CDHPおよびOxoについては用量に比例した推移を示すことが明らかになった.一方,5-FUは用量の増加率以上に濃度が高くなり,線形と仮定した場合の濃度に比べAUCは1.8倍から2.8倍の増加が認められた.これはS-1に配合されている5-FUの代謝酵素の可逆的な拮抗阻害剤であるCDHPが,投与量の増加に従いCmax,AUCが高くなることで5-FUの代謝阻害をより強め,長時間持続するため,5-FUの代謝クリアランスが低下したためであると推察される.
  • 岩坪 隆史
    1997 年 12 巻 6 号 p. 668
    発行日: 1997/12/31
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
  • 高倉 喜信
    1997 年 12 巻 6 号 p. 669
    発行日: 1997/12/31
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
  • 高橋 幸一
    1997 年 12 巻 6 号 p. 670-671
    発行日: 1997/12/31
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
  • 吉成 浩一
    1997 年 12 巻 6 号 p. 671
    発行日: 1997/12/31
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
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